怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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コラボ短編の後編です。
集まるのは、赤いフードの少年、秘めたる勇気を持つ少年、紅一点のエルフ、無免許医です。

奇妙な夢を見せている都市伝説の正体とは?


後編

 ――ミドルフェイズ2 都市伝説の正体は――

 

「ねえ、どこに行くつもりなの?」

「教えてよね」

 しばらくして、あたし、勇気、レイは無言のまま前方を歩く赤いフードの少年に声をかけた。

 すると少年は立ち止まり、周囲を眺めた。

「公園にいなかったという事は、恐らくこの辺りにいるはずだ」

「この辺り?」

 見ると、先程の商店街に戻って来ていた。

「まさか、都市伝説の怪物はあの子を襲おうと思ってるんじゃ?」

 公園で目撃した少女達を追って、ここまで来たのかしら?

 早く探さないといけないわ。

 あたし達がそう思って駆け出そうとすると、少年は首を横に振った。

 

「あいつは人を襲ったりしない」

 

「あいつ?」

 どうやら少年は、怪物の事を以前から知っているようだ。

 因縁の相手――ますます、一人で戦うのは危険だわ。

「君が何て言おうが、僕も力になる」

「一緒に戦うわよ!」

「……頼む」

 あたし達は真剣な顔つきになると、少年の方を見た。

 

「あれ?」

 しかし、少年はいつの間にかいなくなっていた。

「ちょ、ちょっと?」

 あたし達は辺りを見渡す。

 すると、少年は商店街の裏にある細い路地に入ろうとしていた。

「ちょっと、一人じゃ危険よ!」

 あたし達は少年の傍に走る。

 だが、少年は何も答えず、路地へと入って行った。

「ああんも~!」

「もうちょっと明るくなればいいのに」

 勇気も仕方なく後に続く。

 細い路地は、商店街に並んでいる飲食店の裏口になっていて、

 生ゴミを捨てるためのゴミバケツがいくつも置かれていた。

 汚い臭いが飛び交うわね……あたし達が住む路地裏とは、大違いだわ。

「多分、ここにいるはずだ」

 少年は歩きながら、ゴミバケツの蓋を開けて、中を確認していった。

「その中にいるの?」

「ああ、あいつは多分何人もの人達に姿を見られたはずだ。

 だから、どこかに隠れなければと思ったんだ」

「それが、ゴミバケツの中って事?」

「あいつは、妙にゴミバケツの中が好きなんだよ――」

「そう……」

 どういう怪物なのか、ますます分からないわ。

 怪と都市伝説の怪物は、やっぱり全く違うみたいね。

 というより、そもそも都市伝説そのものが比較的新しいから、

 人間の主観が色々と混ざってるのよね。

「だが、ゴミバケツの中が好きなら、変な臭いがしそうだな」

 レイはそう言いながら、目の前にあったゴミバケツの蓋を開けた。

 

「ナーデーヤー!」

 突然、ゴミバケツの中から何かが飛び出してきた。

 サッカーボールぐらいの丸く黄色い物体。

 その鳴き声は、女子高生達が言っていた声そのものだ。

「……」

「あなたが、変な夢を見せている都市伝説の怪物ね!」

 あたしと勇気とレイは、少年を守るように身構えた。

 しかし、そんなあたしの肩を少年は後ろから軽く触った。

「大丈夫だ」

 少年は、怪物の方へと近づく。

 そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「勝手にどこかに行かないでもらえるかな。――ジミー」

 

「ジミー?」

 あたし達が戸惑いながら怪物を見ると、

 それは、黄色いフードを被った、人間の顔をした犬だった。

「これって、何……?」

 その言葉に、ジミーが反応した。

「これってなんや? 俺は物やないで。俺は人面犬のジミーや!」

「わっ、人間の言葉を喋った!」

「当たり前や、俺は元々人間なんや」

「あら、獣人だったのね」

 なんだ、ジミーって獣人だったのね。

 てっきり、異形だと思ったんだけど……。

 でも、だとしたら、夢を見せているのは誰なの?

「だけどさっき、ナーデーヤーって」

「はあ? 俺は『なんでやねん!』って言ったんや!」

 どうやら、それが鳴き声のように聞こえただけらしい。

 公園で女子高生達が聞いたのも、同じ言葉だろう。

 ただの勘違いだったのね……はぁ、あたしの努力は何だったのよ。

「まったく、俺は変な臭いなんかせえへんで。そもそも、ゴミバケツが好きなわけやない。

 今回も、公園から商店街まで来たら子供達に見つかりそうになって、

 それでバケツの中に慌てて逃げただけや!」

 ジミーはゴミバケツの中が好きだと言われた事を気にしているようだ。

 そんな彼の前に、赤いフードの少年が立った。

「それで、もう機嫌は直ったのかい?」

「そ、それは……」

 ジミーは急にシュンとして、頭を下げた。

「俺が悪かった。たまには遊園地にでも行って羽を伸ばそうなんて言って。そりゃあ怒るよな。

 しかも俺、急に怒られたから逆ギレして、お前とはもうコンビ解消やなんて言うてもうて」

 どうやら、二人は相棒らしい。

 喧嘩をして、少年のもとからジミーが逃げ出してしまったようだ。

「俺、自分が情けないわ。お前に心配させて……」

 ジミーがそう言うと、少年の口元が僅かに緩んだ。

 

「別に心配はしてないよ。君は僕のもとへ必ず帰って来てくれるから」

 

 その言葉に、ジミーは目を潤ませる。

「あ、当たり前やろ。俺はいつもお前と一緒や!」

 ジミーは笑顔で言うと、少年の足に嬉しそうに身体を擦りつけた。

 でも、一つだけ解決していない問題がある。

 それは、夢を見せている都市伝説の怪物の事だ。

「話は変わるけど、肝心の元凶はどこにいるの?」

「……そんなに夢の謎を解きたいんだね。だったら、僕と一緒に行こう」

「よし! 都市伝説回収、見せてもらうわよ! ね、レイ、勇気?」

「……うん」

「……ああ」

 

 ――クライマックスフェイズ 決戦――

 

 あたしは、少年と勇気とレイと一緒に、この夢を見せている都市伝説の怪物を探した。

 夢の中なのに、意識がはっきりしている。

 やっぱり、これは都市伝説の呪いによって生まれた夢なんだ。

 周りには誰もいない。

 多分、都市伝説の怪物が周りの人を遠ざけたんだと思う。

 そうよね?

 

 あたし達が町の奥まで行くと、本を持った男の姿がいた。

 でも、その男は黒い煙に包まれていて、まるで怪のようだ。

 ……この姿、もしかして……。

「あなたは……都市伝説『夢男』!」

「その通り。夢の中で相手を殺して、それを回避したら『夢と違う事をするな』と言う怪物だ」

 勇気はごくり、と唾を呑む。

 直接あたし達を殺しに来た怪はそこそこ多いが、こんな方法で殺しにかかるのは初めてだ。

「この夢から覚めるには、どうすればいいの?

 うぅぅ、分からないわ、こうなったらこの旋風剣で……」

「やめろ」

 そう言ってあたしが旋風剣を取り出すと、レイモンドがあたしを止めた。

「夢の中で死んでも意味はない。夢から覚めるには、こいつを倒すしかない」

「倒すって……どうやって!?」

「君達は奴を引き付けるんだ。弱った時に、僕が回収する。時間はない、やるんだ!」

え、ええええええ!?

 

 あたし達は少年に言われるがままに、都市伝説「夢男」と戦った。

オオオオオオオオオオオ!!

 夢男はレイに向かって闇の波動を放つ。

 レイはメスを巧みに操って、夢男の攻撃を打ち消した。

みずのせいれいよ、わきあがるすいりゅうとなりててきをのみこめ! Aqua Spread

 あたしは周囲に漂う水の精霊に呼びかけ、夢男に大量の水を放った。

 水は夢男の身体を飲み込み、動きを鈍くする。

「浄化する!」

 レイはメスを抜き、夢男に斬りかかる。

 夢男はまたもや攻撃をかわしたが、それはフェイントだった。

「喰らえ!」

ギャアアアアアアアアアアアアアア!!

 レイのメスが、夢男の身体を貫く。

 呪いを浄化する力を込めており、夢男には効果的だった。

「ぼ、僕だって! 怖いけど、戦うぞ!」

 勇気は落ちていたレンガを拾って、怖がりながらも夢男に近付いてそれで殴った。

 随分と都合の良い展開だこと。

オオオオオオオオオオオ!!

 夢男が強大な力を拡散し、広範囲に効果を与える。

 攻撃を食らったら、ただではすまないかも……!

ひかりのせいれいよ、かたきまもりをわれらに! Ether Armor

 あたしは光の精霊に呼びかけ、せめて勇気だけでも守ろうと思った。

 力は少年とあたし、レイに影響を及ぼし、勇気は光の壁によって守られた。

みずのせいれいよ、わきあがるすいりゅうとなりててきをのみこめ! Aqua Spread

 あたしの水魔法が当たって、夢男が水に飲み込まれる。

 もう少しで、奴にとどめを刺せそうだ。

「……頼むわよ!」

「ああ!」

 少年は男を睨むと、真っ赤な手帳を取り出し、開いた。

「セラテイロノ セツウイロノ シャ・エイ」

 少年は呪文を唱える。

 

 

 

 次の瞬間、男から奇妙なマークが現れ、キラキラと輝き、

 開かれたページに反転して写し取られた。

 男は黒い霧になり、この世界から消え去った。

 

「……終わったのね」

「ああ、終わった……」

 都市伝説との戦いは、終わった。

 世界の風景が、どんどん歪んでいく。

 やはり、この夢の世界は、あいつが作ったものみたいだ……。

「……あくまでもこれは夢の中だから、僕達の世界には影響がないけれど。

 君達と戦えて、本当によかった」

 どうやら、少年はあたし達と一緒に行動できて、本当に嬉しかったらしい。

 まぁ、本当に嬉しいかどうかは、定かではないけれど。

「行こう。次の町へ」

「ああ、そうやな!」

 少年とジミーはその場から立ち去ろうとする。

 そんな二人を、あたしはじっと見ていた。

 すると、少年がふと、あたし達の方を見た。

「僕の名は千野フシギ。キミ達に出会えて楽しかったよ」

 フシギという子は笑みを浮かべて、ジミーと共に去って行った。

 

「千野フシギ……」

 あたしには、彼が何者なのかは分からない。

 でも、一人じゃない。

 フシギにはジミー、あたしにはノノ、アプリル、チェイニー、ジャネットという仲間がいる。

 仲間という大切な存在がいれば、きっと、どんな困難でも乗り越える事ができるだろう。

 

「次に目が覚めたらそこはあなた達の部屋、今回はここでお別れです。

 また、どこかの夢で会いましょう……」

 

 ――エンディングフェイズ 彼女は目覚める――

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 あたしはようやく、長い夢から覚めた。

 汗をびっしょりかいた。

 ある意味で、とんでもない夢だった。

「随分うなされていたようじゃの。一体何があったのじゃ?」

「あ、チェイニー」

 あたしは夢の内容を、チェイニーに話そうとした。

 でも、霧がかかったみたいに、夢の内容は思い出せない。

 夢にしてははっきりとしたのに、何故か思い出す事はできなかった。

「えーっと、赤いフードの少年が夢に出てきた、って事は思い出せるけど、彼が元凶?

 あぁ、もう、何も思い出せないわよ……!」

 こうなったら、また休むしかないか……。

 

「変な夢を見ませんように!」

 

 それ以降、あたしは変な夢を見る事はなくなった。

 でも、またその夢は見るかもしれない。

 その時はきっと、楽しい夢になる事を願っている。




コラボ短編はどうでしたか?
戦闘シーンは派手に書けたと思っています。
まぁ、これくらいやらないとね!
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