見捨里市がゾンビだらけになるのを防ぐため、アメリカ・エリア51にやって来た勇気達。
そこにいたアリスという少女は、怪異を全く信用していなかった。
しかも、彼女の父親は極めて雑で、商売の事しか考えていなかった。
父親を改心させるには、痛い目に遭わなきゃならないだろう。
そんな時、エリア51に大量のゾンビが現れて……。
「全員、油断するな!」
髭を生やした大柄な男が、兵士達に言った。
どうやら隊長のようだ。
「勇気、あれ何?」
「そんなの分かるわけないよ」
「ただならぬ雰囲気じゃな……」
「こわいよぉ……」
勇気達は戸惑いながら、兵士達を見ていた。
すると、少し離れた建物の裏手から、一人の青年が現れた。
青年は、フラフラとよろめくように歩いている。
その顔は、青色だった。
「いたぞ、ゾンビだ!!」
隊長が叫んだ。
「ウゥゥウウ」
「アアァアァアア」
気が付くと、他の場所からも次々とゾンビが姿を現す。
その数は、20人を超えていた。
「おお、凄い! 凄いぞお!」
アリスの父親が興奮する。
「おじさん、逃げて下さい!」
「いや、だけど本物のゾンビだよ!」
「いいから、襲われちゃいますってば!」
「まもれなかったら、しんじゃうよ!」
勇気は父親の手を引っ張ると、アリス達と共に宇宙人ホテルへと走った。
プーカの羽が光り輝き、ノノは飛んでいる間に何かを集めたくなり、
チェイニーを礼拝する人々がちらほらと現れた。
「ゾンビがこの世にいるなんて!」
ホテルに逃げ込んだアリスの父親は興奮していた。
「ママ、怖いよぉ」
一方、アリスと母親は恐怖で震えていた。
「勇気、ノノちゃん、チェイニーさん、早くあいつらを倒さなきゃ!」
「あ、ああ!」
勇気は横笛、チェイニーは血液の槍を握り締めると、父親の方を見た。
「この辺りに海とか池はありませんか?」
横笛を吹き、ノノが歌い、チェイニーもゾンビ達をそこまで誘導するのだ。
だが、父親はブンブンと頭を大きく横に振った。
「この辺りは荒野だ。あるのは砂漠ぐらいだよ」
「えー」
「それじゃあゾンビ達を倒す事ができないわよ!?」
「これは本気でやばいゾ」
勇気の服の脇ポケットの中で、プーカも戸惑う。
その時、入り口のドアが開いた。
「きゃああ!」
アリスは、傍の棚に置いてあった宇宙人キーホルダーを掴むと入り口に向かって投げた。
「あいたた! やめろ! 私だ!」
よく見ると、入り口にいたのは隊長だった。
「くそっ、こんなの想定外だ!」
隊長は荒く呼吸をしながら、入り口のドアを閉めた。
「あの、外はどうなったんですか?」
勇気が尋ねると、窓の外を確認したノノが声を上げた。
「たいへん! みんなつかまってる!」
「えええ?」
勇気、羽心、チェイニーは窓に駆け寄ると、外を見た。
兵士達はゾンビに捕まり、一箇所に集められていた。
「くうう、射殺してはならんと上から言われたせいだ」
隊長が苛立ちの表情を浮かべた。
「それって、生きて捕まえるって事ですか?」
「ああ。銃は全て麻酔銃だ。だが、奴らはそう簡単には麻酔が効かん。
そのせいで、我々はまともに戦えなかったんだ」
隊長はアリスの父親を見た。
「電話はどこだ?」
「ええっと、そこのレジの横ですけど」
「ゾンビの癖に調子に乗りおって! 援軍を呼んで殲滅させてやる!」
「何、殲滅じゃと? 流石の軍も、そうせざるを得なかったか」
チェイニーは歯を食いしばり、槍を握る力を強める。
電話をかけていた隊長が、「どういう事だ?」と声を上げた。
「電話が通じんぞ!」
「何だって?」
父親は受話器を受け取ると、耳に当てた。
だが、電話は全く音がしないようだ。
「パパ、あれ!」
勇気達と反対側の窓を見ていたアリスが声を上げた。
「どうした?」
父親が駆け寄り、外を見ると、切れた電話線が木の柱にぶら下がっていた。
「これじゃあ電話ができないぞ!」
「ぬううう、ゾンビ達の仕業だ!」
隊長は苛立ちながら壁を激しく叩いたが、それを聞いた勇気は首を傾げた。
「ゾンビが電話の線を切ったって事?
ゾンビって意思もなく、ただフラフラしながら人間を襲うだけだよね?」
「じゃきにあやつられてるのかな?」
ノノは首を傾げるが、考えていても仕方がない。
「とにかく、早く連絡をしてください! スマホなら電話できるでしょ!」
勇気はそう提案した。
据え置き型の電話が通じなくても、スマホなら通じるはずなのだ。
だが、隊長達はきょとんとした顔になった。
「スマホ? 何だそれは?」
「ええっと、だから電話ができる、ケータイみたいなもので」
「ケータイ?」
隊長達はますますきょとんとなった。
「勇気、この時代にはまだスマホもケータイも普及してないわよ」
「ああっ、そうだった!」
「これが、ディアーナの言っておった、時代の壁か」
今は1990年だった。
勇気は以前、母親から電話の歴史を聞いた事があった。
この時代は、スマホはおろかケータイも普及していなかったのだ。
「ぐぬぬぬ、我々がゾンビ如きに負けるとは……」
隊長は苦々しい表情を浮かべた。
そんな中、チェイニーはある事が気になった。
「お主……もしやゾンビを知っておるのか?」
隊長はまるでゾンビの存在を以前から知っているような口ぶりだったのだ。
すると、隊長が急に焦ったような顔になった。
「そ、それはだな」
隊長は言うのを躊躇するが、羽心やアリス達がじっと見ている事に気づいた。
そんな彼らを見て、隊長は戸惑うが、やがてゆっくりと口を開いた。
「あれは、ゾンビは……我が軍の研究対象になっているのだ」
隊長は、ホテルの中に飾られている宇宙人グッズを見つめた。
「君達は何も分かっておらん」
「分かってない……?」
勇気達が困惑していると、羽心が一歩前に出た。
「まさか、エリア51にいるのは、宇宙人じゃなくてゾンビだったって事!?」
その言葉に、隊長は小さく頷いた。
「我々は奴らを捕まえ研究していた。だが、施設から逃げ出してしまったんだ」
「なんでにげちゃったの?」
「それはだな……」
「誰か助けてくれ!」
突然、窓の外で悲鳴が上がった。
見ると、長い髪をしたおじさんが、ゾンビ達から逃げていた。
「ポール!」
アリスの父親がおじさんを見て叫ぶ。
「ポールって、宇宙人ラブラブロックの?」
どうやら、トレーラーハウスから出て来てしまったようだ。
「勇気、何とかしないと!」
「分かってるよ! だけど、どうやってゾンビ達を倒すんだ? 沈める場所なんかないんだぞ!」
「沈める場所?」
アリスの父親が勇気達の方を見た。
「君達はさっき、海とか池がないか聞いてきたよねえ?
あれは、ゾンビ達を沈めるためだったのかい?」
「そうです。誘導して沈めれば、ゾンビを倒せるんです!」
勇気の言葉に、父親は「う~ん」と唸った。
「海や池じゃないけど、『砂地獄』なら近くにあるよ」
「えっ!」
砂地獄とは、砂でできた底なしのような場所である。
一度入ってしまうと、身体が沈んでいき、脱出する事は困難だ。
「勇気、それだったらゾンビ達を沈められるかも!」
「うんうン! オイラもありだと思うゾ!」
「儂も手伝うぞ!」
「ノノも!」
「あ、ああ!」
迷っている暇はない。
勇気は父親に砂地獄のある場所を聞くと、一同を見た。
「今からゾンビを誘導します! その隙にポールさんや兵士のみんなを避難させてください!」
「まさか、君がゾンビと戦うというのかね?」
隊長が驚きながら尋ねると、勇気ははっきり「はい」と答えた。
「僕達は、そのために来たんです!」
勇気、羽心、ノノ、チェイニーは互いの顔を見る。
次の瞬間、四人は同時に前を向くと、ドアを開け、勢いよく外に飛び出した。
~次回予告~
ゾンビは非常に数が多く、軍が戦ってもきりがなかった。
むしろ、倒せば倒すほど、ゾンビの数が増えているだろう。
チェイニーはゾンビ達を操っている指揮者がいると思い、勇気達と共に指揮者を討つ事を決断。
たった四人+一人で、ゾンビの指揮者を討ち取る事ができるだろうか。