怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

エリア51に現れた大量のゾンビは、軍が研究していたものだった。
時代の壁に翻弄されながらも、勇気達はゾンビを倒そうと決意する。
ゾンビを倒すためには動けなくさせるのが必要だったが、水辺はどこにもなかった。
そこで勇気達は、砂地獄を使ってゾンビの動きを止めようとするのだった。


4 - ゾンビ達のリーダー

「来るな! ひいい!」

 ゾンビ達は、逃げるポールを追いかけていた。

「勇気、早く笛を!」

「ああ、分かった!」

 勇気とノノはゾンビ達の方を見た。

「さあ、こっちを見ろ!」

「♪~♪~♪~♪~」

 ノノが歌った後、勇気は横笛を構え、吹き口に口を当てた。

―フゥ~フフフゥ~

 しかし、笛は全く鳴らなかった。

「早くせい!」

「う、うん!」

―フヒ~、フフフ~

「冗談はよして!」

「冗談なんかじゃないよ。よく考えたら、横笛なんか吹いた事なかった!」

「えええ~!」

「はあ?」

「リコーダーと同じ吹き方でいいと思ってたんだけど」

「縦笛と違って、横笛は吹くのにコツがいるのよ!」

「コツって言われても」

 ゾンビ達はポールを捕まえようとする。

 勇気は焦れば焦るほど、ますます笛を吹けなくなった。

「おイ、どうするんだヨ!」

「必死にやってるんだってば!」

「ああんもう!」

 羽心が横笛を奪うように手に取った。

 ゾンビ達を見ながら、横笛を構える。

「羽心、もしかして吹けるの?」

「ええ、こういうのは得意なの!」

「流石羽心チャン!」

 羽心は吹き口に口を近づけた。

 だがそれを見て、勇気は慌てて声をかけた。

「まずは吹くところを拭かないと!」

「そんな事してる場合じゃないでしょ!」

「だけど!」

「ああもうったらもう~!」

 羽心は面倒くさそうに服の袖で吹き口を拭いた。

「これでいい!?」

「うんうんうん!」

「まったく~!」

 羽心は呆れ顔になりながらも、改めて横笛の吹き口に口を近づけた。

「♪~♪~♪♪~♪♪~」

―ピュ~ピュゥゥ~

 ノノの歌声に乗り、綺麗な音色が辺りに響く。

 途端に、ゾンビ達の動きがピタリと止まった。

ウゥウウゥ

アアァアア

 ゾンビ達が羽心とノノの方を見た。

「やったゾ!」

「羽心、ノノ、あいつらを誘導するんだ!」

 羽心は頷くと、笛を吹き、砂地獄のある方向へと移動する。

 ノノも、空を飛びながら羽心を追いかける。

 ゾンビ達は、その音と歌声に導かれるかのように、フラフラしながら付いてきた。

 それを確認し、アリスの父親がホテルから飛び出した。

「ポール、大丈夫かい?」

「あいつら何なんだよ~!」

 父親は、ポールをホテルに避難させようとした。

 しかしその時、目の前の建物の上に、金髪の男のゾンビが姿を現した。

 

ガアァァ!!

 金髪のゾンビは、他のゾンビ達に向かって叫ぶ。

 瞬間、ゾンビ達の動きが止まった。

ウッウウゥ

アアァアア

 ゾンビ達は、金髪のゾンビの方へと歩いて行った。

「どうして?」

「♪~♪~♪♪~♪♪~」

 羽心は笛を吹き、ノノは歌い続けるが、ゾンビ達は全く反応しない。

 すると、ホテルから出てきた隊長が叫んだ。

 

奴だ! 奴がゾンビ達を逃がしたんだ!

 

「逃がしたって、あれもゾンビよね?」

「隊長さん! どういう事なんですか?」

 勇気が尋ねると、隊長は怯えながら話をした。

「昨日の夜だ。一人の少年がエリア51に現れたんだ」

「ふむ」

「そいつはあの金髪のゾンビに何かをしてすぐに消えた。

 その後、金髪のゾンビがリーダーのようになったんだ!」

「リーダーって」

 他のゾンビ達は、意思もなくただ人間に襲いかかるだけだ。

 だが、金髪のゾンビはまるで意思を持っているように見える。

「だから、電話の線も……」

 勇気は、電話線が切られていた理由をようやく理解した。

「だけど少年って。それってまさか」

 勇気は隊長を見つめた。

「そいつは、着物を着ていて、片目に包帯を巻いてませんでしたか?」

「どうしてそれを知っているんだ?」

「やっぱり!」

 少年は、邪鬼だ。

「邪鬼が金髪のゾンビに言って、人間を襲わせるように仕向けたんだ!」

 金髪のゾンビは勇気達を見る。

 その上には、×印状の罅が浮かんでいた。

 金髪のゾンビは建物から飛び降りると、集まってきたゾンビ達の前に立った。

ガガアァァ!!

 金髪のゾンビが叫ぶと、ゾンビ達は一斉に隊長の方を見た。

「む、何だ?」

 ゾンビ達が一斉に隊長に襲いかかった。

「くそっ、やめろ!」

「隊長さん!」

「くうう、生け捕りになどしてる場合じゃない!」

 隊長は銃を取り出し、ゾンビ達を撃とうとした。

 だが、その手をゾンビ達に押さえられてしまった。

「くそ、離せ! うわ、やめろ! うわああ!」

 隊長はあっという間にゾンビ達に取り囲まれ、見えなくなった。

 

ガガアァァ!

 金髪のゾンビの声が響くと、ゾンビ達はアリスと母親にも襲いかかろうとした。

きゃあああ!

「嫌、来ないで!」

「アリスちゃん!」

 勇気達は慌ててアリスのもとへ向かおうとする。

 だがそれよりも早く、アリスの父親が走った。

 

僕の家族に何をするんだ!!

 父親は取り囲んでいたゾンビ達を引き剥がすと、アリスと母親を守るようにして立った。

「パパ!」

「アリス、お前達は僕が絶対に守る!」

 父親は勇気達を見た。

「君達、早くゾンビを!」

 ゾンビと必死に戦いながら、父親は勇気達に叫ぶ。

「何とかしないと!」

「よし、ゆくぞ! 皆の者、来るが良い!」

 勇気、羽心、ノノ、チェイニーは、金髪のゾンビに立ち向かった。

 ノノは鳥に変身して、チェイニーは力を解放し、勇気の服からプーカが飛び出す。

 

「チェイニー!」

「ああ!」

 チェイニーが血液から創造したナイフに、プーカが鱗粉をかける。

 すると、血液のナイフは宙に浮き、金髪のゾンビに突き刺さった。

 羽心は横笛を吹くのを一旦やめて、チェイニーを援護した。

「♪~♪~♪♪~♪♪~」

 ノノは歌声で金髪のゾンビを攻撃し、勇気は金髪のゾンビを挑発する。

「どうした! お前は命令する事しかできないのか!」

ガァァ! ガガァァァ!

 金髪のゾンビは、フラフラと歩きながら、勇気に向かって拳を振り下ろす。

 勇気はチェイニーの力を借りて、攻撃を防ぐ。

「はぁぁぁぁぁっ!」

 チェイニーは血液から創造した槍を金髪のゾンビに突き刺す。

 頭は狙えなかったが、致命傷を与える事ができた。

「ほ~ら、オイラを捕まえてみロ~、ベロベロバ~!」

ガアアッ!

 金髪のゾンビはプーカを捕まえるのに夢中になる。

「今よ!」

 チェイニーはタイミングを見計らって槍を構えると、

 羽心の指示で金髪のゾンビ目掛けて突き刺した。

 槍は金髪のゾンビの頭部に突き刺さり、

 さらに神の殺意によって威力を高め、金髪のゾンビは倒れた。

 

「何とか倒せたね」

 勇気、羽心、ノノ、チェイニー、プーカは、

 作戦通り、ゾンビ達を砂地獄に誘い、次々と沈めていった。

 砂地獄からは黒い煙が出た。

 勇気達は見事、ゾンビ達を倒す事に成功したのだ。

 

「それにしても、アリスちゃんのお父さんは、結構勇気あるわよね」

 町へと戻りながら、羽心は命がけでアリス達を守ろうとした父親に感心していた。

「何だかんだ言っても、いいお父さんなのかも」

「改心したのじゃな」

 羽心とチェイニーの言葉に、勇気は頷く。

「僕もあんなお父さんがいればいいなあって思ったよ」

 2歳の時に死んでしまった父親の事は、写真でしか知らない。

 だが、アリスの父親と同じように、家族思いで優しかったはずだと、勇気は思った。

 

 やがて、勇気達は町に戻ってきた。

 すると、ポールのトレーラーハウスの前に兵士達が集まっていた。

「何だろう?」

 勇気達が駆け寄ると、兵士達に囲まれ、金髪のゾンビが倒れていた。

 身体から黒い煙が出ている。

 どうやら、他のゾンビ達が消え、金髪のゾンビも同じように消えようとしているようだ。

「やった! 我々の勝利だ!」

「隊長、やりましたね!」

「ああ、ゾンビの癖に調子に乗るからだ!」

 隊長達はゾンビに勝つ事ができ、大喜びしていた。

 アリス達家族や、ポールも、その後ろで喜んでいる。

 そのなか、金髪のゾンビがふと、勇気の方を見た。

コノ世界ハ……オ前達ダケノ……物デハナイ……

「しゃ、喋った?」

アノ少年ハ、我々ニトッテ……神ダ……

「えっ」

 金髪のゾンビの全身から、黒い煙が漏れ出す。

 黒い煙は四散し、金髪のゾンビも消えた。

 空に浮かんでいた×印状の罅も消える。

 

「神とは、どういう事じゃ……」

 羽心、プーカ、ノノ、チェイニーは、勇気の方を見た。

「邪鬼が、怪にとって神……?」

 勇気は、険しい表情になると、金髪のゾンビが消えた地面をただじっと見つめるのだった。




~次回予告~

ゾンビ異変解決後、勇気達は消えたキユウの行方を探そうとする。
どうやら邪鬼は、怪達にとっての神らしい。
そして、久しぶりにディアーナは異変解決の仕事に行く事になる。
ジャネットはある本を出して、ディアーナを諫めようとした。
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