怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

中世ヨーロッパで、漁師のヨハンと人魚のセイレと出会った勇気達。
まるで恋人同士のような雰囲気に、アプリルは二人を応援する。
だが、アプリルはどこか諦めたような声だった。
勇気達は、本当に人魚が悪事をしているのか疑問を抱く。
その時、領主とその仲間がセイレを捕まえようとして……。


5 - 迫りくる領主達

「ありがとう、助かったよ!」

 勇気達は、村から少し離れた場所にある小さな砂浜まで逃げて来た。

「ここは、村でも俺と親友のミハエルしか知らない秘密の漁場なんだ」

 周りにはいくつも岩があり、砂浜はその隙間に隠れるようにあった。

 この周辺に魚が集まって来るのだという。

 砂浜のあちこちに、ヨハン達が使っていたであろう魚の道具などが置かれていた。

 ヨハンは、布に包まれたセイレを見た。

「すぐに海に浸けてあげるからね」

 ヨハンは波打ち際へと行くと、セイレをゆっくりと海の中に降ろした。

「ありがとう、ヨハン」

「苦しかっただろ。もう大丈夫だよ」

 その光景を、羽心とアプリルは嬉しそうに見ていた。

 そんな羽心に、勇気は話しかける。

「ねえ、羽心。僕達は人魚を倒しに来たんだよね?」

 それを聞いた羽心は、神妙な顔つきになり、小さく頷いた。

「だけど、二人を見てたら助けなきゃって思ったの」

 羽心は勇気をじっと見つめた。

「セイレさんは、悪い怪なんかじゃない。勇気だってそう思うでしょ?」

「そ、それは、そう思うけど……」

 セイレは怪だが、一人の女の人にしか見えない。

 すると、プーカが勇気の服の胸ポケットから飛び出した。

「怪だって、人間と同じだヨ。悪い奴ばかりじゃなイ」

「プーカ」

「オイラだって、とっても素敵ないい怪だ」

「素敵かどうかは分からないけど、確かに悪い怪じゃないよね」

 勇気の言葉に、プーカはニッコリと笑った。

 

「その生き物は何だい?」

 ヨハンが、プーカを見て目をパチクリさせていた。

「あっ、えっと、彼は……」

「オイラはプーカ。妖精族の王子だヨ!」

 プーカは、パタパタと羽を動かしながら、ヨハン達のそばまで飛んで行った。

「よろしくネ!」

「え、は、はあ」

 プーカはヨハンに手を差し出す。

 ヨハンは戸惑いながらも、プーカと握手をした。

「可愛い、妖精さんね」

 セイレはクスクスと笑った。

 その姿を見て、勇気、羽心、ディアーナ、アプリルも心が和む。

 だが、アプリルはすぐに笑顔が消える。

「人魚姫の話……知ってるのか……?」

 アプリルの呟きは、聞こえない。

「けど、だったらどうして見捨里市に歌の力が?」

 勇気はセイレに、人魚の歌の力が×印状の罅を通って町に来てしまった事を話した。

 しかし、セイレはその話を聞いて首を傾げた。

「確かに、歌には人間を眠らせてしまう力があるわ。だけど、×印状の罅というのは何かしら?」

「邪鬼という少年に会いませんでしたか?

 そいつがあなたをたぶらかして、人魚の力を利用しようとしているんです」

「邪鬼? そんな少年は会った事がないけど」

「目に包帯をしてて着物を着て刀を持った少年です」

「私には覚えが……だけどもしかしたら――」

「きぃぃ~、全部あの領主のせいダ。ギャフンと言わせてやル!」

 プーカは宙に浮かびながら、拳を握り締めた。

 

「ふん、私をギャフンとだと?」

「えっ?」

 勇気達が振り返ると、そこには領主と村人達がいた。

「どうしてここが?」

 焦るヨハンを見て、領主はニヤリと笑った。

「彼が教えてくれたのだよ。秘密の砂浜があるとね」

 領主の後ろには、オドオドとしている小柄な青年が立っていた。

「ミハエル!」

 ヨハンの親友で、この砂浜を知っているもう一人の人物だ。

「ミハエル、どうして教えたんだ!」

「だ、だって、領主様の命令は絶対だから。それぐらいお前だって分かるだろ?」

「ふん、馬鹿な奴だ。人魚など退治されて当然の存在なのだぞ」

 領主は村人達と共に、ジリジリと近づいて来た。

「勇気!」

 羽心は焦った表情で勇気の方を見た。

 ディアーナとアプリルは、身構えている。

「あ、ああ……」

 勇気はセイレとヨハンを見る。

 そして、領主と村人達を見た。

「僕は……」

 次の瞬間、勇気はディアーナ達と共にセイレ達を守るように、領主達に向かって構えた。

「そうこなくっちゃ!」

「いいぞ、やっちゃエ!」

 羽心も隣で構える。

 プーカも勇気の肩にしがみつき、応援した。

「くうう、妖精に人狼までいたとは。忌々しい怪物どもめ」

「オイラ達は忌々しくなんかないゾ!」

「そうよ!」

「怪物が人間様に意見する気か? 子供達よ。お前達もその男と同じで怪物の味方という事だな。

 いいだろう、こいつらを全員捕まえるのだっ!」

 領主の命令を受け、村人達が一斉に駆け込んで来た。

 ディアーナが双剣を振ろうとした時。

 

―パシャッ

 

 少し離れた海面で何かが跳ねた。

「あれは!」

 セイレと同じ美しい人魚だ。

「もう一匹いたのか!」

 領主が苛立ちながら海の方を見ると、人魚は傍の岩場に腰を下ろした。

聴くがよい。愚かな人間達よ!

 人魚はそう言うと、大きく息を吸い込んだ。

「やばイ! 歌を歌う気だゾ!」

 プーカの言葉を聞き、勇気、羽心、ディアーナ、アプリルはハッとした。

 慌ててヘッドホンとイヤホンを耳に着け、ディアーナとアプリルも耳を押さえる。

「ヨハンさんも耳を押さえて!」

「えっ、あ、ああ!」

 ヨハンが耳を押さえた瞬間、人魚の歌声が響いた。

「ル~、ラララ~♪」

 その美しい歌声に、村人達は思わず立ち止まり、聴き入る。

「おい、お前達、何をしている! 早く捕まえるのだ!」

 領主は村人達に怒鳴りつけるが、だんだん動きが鈍くなっていった。

「何か……眠くなって、きたぞ……」

 領主はうっとりとした表情になった。

「あ、あああ……」

 次の瞬間、領主は眠りに落ちると、そのまま前のめりに倒れた。

 村人達も次々と眠り、倒れていく。

「これは……?」

 それを見て、ヨハンは戸惑う。

 その中、セイレが人魚の方を見て叫んだ。

姉さん、やめて!




~次回予告~

もう一人の人魚が、中世ヨーロッパにいた。
彼女もまた邪鬼の被害者であり、異変を起こしている加害者だった。
全ての住民を眠らせようとする人魚。
人魚を助けようとしたディアーナだったが、問題行動になると知り……。
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