怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

とある場所で、老紳士がある装置を開発していた。
どうやら、メアリーという女性と話をしたがっているらしい。
そこに、謎の少年が現れ、老紳士にある話を持ち掛ける。
ディアーナは仕事をしようとするが、ジャネットはある不吉な予感を感じ取っていた。


2 - 金曜日の放課後

「え? どういう事? 花恋ちゃんの家のテレビがいきなり3Dになったの?」

「そうなの。映画館の3D映画みたいになったの」

 金曜日の放課後の教室で、羽心は花恋に奇妙な話を聞かされていた。

「でも、3D映画ってメガネをかけるよね? メガネをかけたの?」

「ううん、違う」

 花恋は首を横に振って詳しい説明を始めた。

「昨日は『世界の恐怖動画連発』って番組を見てたのね」

「ああ、年に1、2回放映してる番組ね」

「え? 羽心ちゃんも見てたの?」

「見てない。だってネットで見られる動画を紹介してるだけなんだもの」

 そう答えてから羽心は、花恋をきょとんと見つめた。

 何しろ、花恋は幽霊だの宇宙人だのは全く信じないタイプなのだ。

「花恋ちゃんが、そんな番組を見るのが不思議なんだけど?」

「パパが好きなのよ。あんな動画は嘘に決まってるし、私はそういうの嫌いだもん」

「あ、そうだよね。それで……」

「私は近くで本を読んでたの。

 そしたら、いきなりパパが『なんだこれ!』って言うから、テレビを見たの。そしたら……」

 花恋は不意にゾッとした表情で口を噤んだ。

 昨夜の事を鮮明に思い出したのだ。

「花恋ちゃん、大丈夫?」

 羽心が声をかけると花恋は我に返った。

「あ、ごめん。それでテレビを見たの。

 そしたらまるで3D映画みたいに幽霊が画面から浮き上がって見えたの」

「ええ? どういう事?」

 理解できない羽心の疑問に、花恋は強い口調で答える。

「ほんとなのよ!」

「だけど、花恋ちゃんの知らないうちに3Dテレビに買い替えたんじゃないの?」

 それを完全否定するように花恋は首を大きく横に振った。

「『買い替えてない』って、パパもママも言うのよ」

 自分の事が信じられずに俯く花恋だが、羽心も考え込んでしまい、何も言えなくなった。

 

「何、どうしたの?」

 暗い表情の二人を見て、勇気とディアーナが声をかけてきた。

「花恋ちゃんちのテレビが突然、3Dになっちゃったんだって」

「へえ、3D映画は見た事あるけど、テレビは見た事ないんだよね。

 昔は3Dテレビがいっぱい売られてたらしいけどね」

「何それ……」

 その話は勇気の口から出た途端に跡形もなく消えてしまう。

 羽心と花恋の耳に入らなかったのだ。

 二人は、「う~ん」と唸って俯いているだけだ。

「何をどうしたら3Dになったの?」

 ディアーナは花恋に、テレビが3Dになった理由を聞き出した。

 すると、花恋は頷いて、ディアーナにだけ事情を話した。

「幽霊が画面から飛び出した?」

「うん、そんなの信じなかったけど、確かに幽霊が画面から出たの」

「映像の幽霊なんて、気味悪いわね」

「あのぉ~」

 キユウも幽霊だが、あちらは「実際の」幽霊である。

 映像の幽霊は、流石のディアーナも気味悪がった。

 話を聞いてもらえなかった勇気は、二人の顔を恐る恐る覗き込んだ。

「あ! いけない!」

「わぁ! 何々?」

 突然、花恋が我に返って声を上げた。

 目を白黒させる勇気にはお構いなしに、花恋はランドセルを掴んだ。

「今日は塾なんだ」

「忘れてちゃダメじゃん!」

「うん、急いで帰らないと!」

 羽心も我に返り、花恋は慌てて教室を飛び出していく。

 その背中を見送った羽心が勇気を見た。

「ところで、明日の見捨里名画館には、勇気ももちろん行くわよね?」

 羽心の唐突な質問に、勇気はきょとんとした。

「見捨里名画館って昔の映画ばかり上映してる古い映画館だよね? え? なんで?」

 勇気のその言葉を聞いた羽心は、呆れた様子で声を潜めた。

「勇気、『怪』についてもっとしっかり勉強しないと駄目でしょ?」

「うん。まあ、そうだけど……」

 先日、人魚を倒してからというもの、

 勇気は怪について今まで以上に深く考えるようになっていた。

 セイレも、姉の人魚も、悪い怪ではなかった。

 人間が捕まえようとしたせいで、逃げるために怪の力を使っただけだったのだ。

「怪って、本当に悪い存在なのかな……?」

 勇気はふと、羽心にそう言った。

 羽心はその言葉を聞き、真剣な表情になった。

「それは、私にもよく分からないけど……」

 どうやら、羽心も前回の戦いから悩んでいるようだ。

 しかしすぐに首を横に振った。

「よく分からないけど、私達は見捨里市を守らないといけないでしょ。

 だったら、できる事は何でもしておかなきゃ」

「そ、それは……」

 プーカもゾンビの話をした時に同じ事を話していた。

 ディアーナやノノ、アプリルにチェイニーも、悪い人物ではない。

「やっぱりそうだよね……」

 怪が本当に悪者なのかどうか分からないが、

 邪鬼は怪の力を利用して、この町を襲おうとしている。

 勇気と羽心は、そんな邪鬼の野望を絶対に食い止めなければならないのだ。

 ディアーナも路地裏を守るために、彼らと共に戦っている。

「だけど、怪の勉強と名画館の映画と何が関係してるの?」

「だから、怪の映画が上映されるのよ」

「怪の映画って……?」

「それは観てのお楽しみよ」

 勇気は意味がよく分からなかったが、羽心と映画を観に行く事にした。

 その時、後ろからディアーナの声が聞こえてきた。

 

「あたしを無視しないでよね」

「「あ」」




~次回予告~

怪の正体を知るため、勇気、羽心、ディアーナは見捨里市の名画館に向かった。
そこで上映されていたのは、有名な怪談「四谷怪談」だった。
勇気は怖がり、羽心とディアーナはしっかりと見る。
だが、その映画からは、本物の幽霊が現れていた。
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