テレビが3D映画のようになる怪奇現象を解決するべく、勇気達は見捨里名画館に行く。
勇気は怪談映画を見るのを嫌がっていたが、羽心によって強引に見せられる。
見捨里名画館で怪談映画を見ていた勇気達だったが、突然、映画から幽霊が飛び出す。
幽霊は観客に襲い掛かり、名画館は混乱状態に陥った。
三人は見捨里市の外に飛び出してくる。
日が落ちた夕方の町は薄暗い。
街灯が点き始める中を、蜘蛛の子を散らすように逃げる観客達。
勇気、羽心、ディアーナも走る。
「何これ!?」
「え!? うわぁ! 3Dみたいだ!」
「実体がないから、あたしの攻撃が効かないわ!」
町の片隅でスマホの動画を見ていた大学生の男女が悲鳴を上げた。
勇気、羽心、ディアーナは思わず立ち止まって大学生の男女を見る。
その周囲に人々が集まってきていた。
「え? 嘘!?」
大学生の男女の持つスマホを覗き込んだ人々が青ざめる。
「心霊スポットを紹介してる動画が立体的に見えるぞ!」
それを聞いた人々が自分達のスマホやタブレットを取り出す。
大学生が見ているのと感じ動画を見始めた。
「なんだこれ? 不思議だ!」
「スマホで3D映像なんて出来るの?」
人々は感心して見入った。
ところが……。
―ピュッ! シュルシュル!
スマホの中から女の長い髪の毛が飛び出して、画面を見ていた人々に絡みついた。
「きゃぁあぁぁ!」
「わぁああぁ!」
心霊スポットに居た女の幽霊の髪が飛び出してきたのだ。
―ガバッ、ザッ! ガシッ!
画面の大きなタブレットからは女の幽霊の手が飛び出して人々の顔を掴んだ。
「ぐぁわぁあぁ!」
顔を掴まれた男性はもがき苦しむ。
「何が起きてるんだ?」
「何なのこれ?」
その光景を呆然と見ていた勇気と羽心が思わず呟いた。
ディアーナは、相変わらず悔しそうに歯を食いしばっている。
実体がないため、攻撃が効かないためだ。
顔を掴まれた男性が、タブレットから伸びた幽霊の手を振り払う。
逃げる男性はタブレットを投げ捨てた。
それが羽心の目の前に落ちる。
「いや!」
タブレットから伸びた幽霊の手が羽心の足を掴もうとした。
「羽心、危ないわ!」
ディアーナはタブレットを蹴り飛ばして、羽心の腕を引いた。
「ディアーナさん、ありがとう」
礼を言った羽心は、上空を見てはっとした。
「見て!」
見捨里市の空に小さな×印状の罅が浮いていた。
「くそっ! やっぱりか!」
勇気が苦々しく言う。
プーカが勇気のポケットから顔を出した。
「キミ達の出番じゃないカ?」
「よし、羽心、ディアーナ、行こう!」
走り出そうとした勇気とディアーナだが、羽心はまだ空の罅を見ていた。
そこから射した光が見捨里名画館の周囲を照らしている。
光に照らされた場所は、長方形に明るい。
「あの光、映写機の灯り……」
「は?」
「映写機……」
勇気には羽心の独り言が理解できなかったが、ディアーナは理解していた。
はっきりしているのは、この町がピンチだという事だ。
「急ごう! 幽霊達が見捨里市に出て来る前に怪を倒さないと」
勇気は羽心とディアーナと共に、通りを走った。
「今度の怪はお岩さんだよね? 江戸時代に行けばいいよね?」
勇気は走りながら羽心に尋ねた。
一刻も早く『時のトンネル』に飛び込みたかった。
しかしそのためには、あらかじめ行き先を決めておかないとならない。
だが、羽心は意外な答えを返し、ディアーナは首を横に振る。
「お岩さんじゃない気がする」
「ええ、ジャネットと同じかも」
「なんだよ、それ。映画にお岩さんが出てきたんだよ」
「スマホやタブレットから出てきたのはお岩さんじゃないわ」
「そうだけど……。じゃあ、僕達は『時のトンネル』でどこに行けばいいの?」
「とにかく、書斎に急ぎましょ!」
家に辿り着いた勇気が鍵で玄関扉を開ける。
そして、羽心とディアーナと三人で家に走り込んだ。
母親は仕事に行っていて留守だ。
一階を走り抜けると、半分地下室になった父親の書斎に急いで入った。
書棚の前に立った羽心は、本を見回しながら勇気に尋ねる。
「ねえ、勇気。罅から射してた光が、映写機の灯りみたいじゃなかった?」
「言われてみれば、映画館の一番後ろからスクリーンに向かって出てる光に似てた」
「そうでしょ」
「映写機、ねぇ。英雄が開発したらしいけど」
羽心は書棚の一点に目を留める。
「あ、これよ!」
羽心は『エジソン』の本を書棚から取り出した。
「エジソンが蓄音機や白熱電球、それに映画を発明したのは知ってるでしょ?」
「ううん、まあ、本で読んだけど……」
「実は映画の作品もいっぱい作ってるのよ」
「ええ? そうなんだ」
「それに、『霊界通信機』も作ろうとしていたのよ」
「え? 『霊界通信機』? それって一体何なの?」
「霊フォン、死者と通信できる奴よ。ほら」
勇気に羽心はエジソンの本の一部を見せた。
~トーマス・エジソン~
トーマス・エジソン(1847~1931)は、蓄音機、白熱電球、映写機などを発明した。
1891年に発表した最初の映写機はキネトスコープという名前で覗きメガネ式だった。
その後、フランスでスクリーンに映像を映すシネマトグラフが開発された。
それに刺激を受けたエジソンは、
やはりスクリーンに映像を投影するヴァイタスコープを発明した。
これらが現在の映画に発展した。
エジソンは1893年に自身の映画スタジオを設立。
そこで約1200本の映画作品を生み出している。
晩年には『霊界通信機』の発明に挑んでいた。
勇気は頭の中を整理しようとした。
「つまり、エジソンは自分で映画作品をいっぱい作ってて、『霊界通信機』も作ろうとしていた。
×印状の罅からは映写機のような光が射していて、
お岩さんや様々な幽霊が映画や動画から現れた」
「今回の怪を作り出してるのはエジソンよ」
「エジソンが怪……?」
「はあ? ツタンカーメンはともかく、彼はれっきとした英雄なのよ? あり得ないわ」
ディアーナは勇気の発言を否定する。
「とにかく、エジソンの研究所に急ぎましょ」
「でも、ディアーナが英雄って言ってたエジソンなんて倒せないよ」
「勇気クン、バカだナ。エジソンを倒すわけにはいかないヨ」
「でも、武器は……?」
「武器はないヨ。説得するんだヨ」
プーカが勇気に的確な助言をする。
「『霊界通信機』の発明をストップさせるんだヨ」
「そういう事よ」
「なるほど、そうだね。分かった」
勇気は強く頷く。
「オイラも手伝うヨ」
「1920年代だから、プーカの時代に逆戻りよ。でも、アメリカだけど」
「霊フォン、見たいわね」
「それは楽しそうダ」
勇気、羽心、ディアーナは小さな仲間の協力を心強く思った。
勇気は両手に太陽と月のグローブを嵌めた。
羽心は、ポケットから、星のグローブを取り出して、右手に嵌めた。
「よし、行こウ!」
「ええ!」
プーカが勇気の胸ポケットでしっかり身構える。
勇気は、壁に近づくと、左手をかざして呪文を唱えた。
「
~次回予告~
エジソンを止めるため、アメリカに向かった勇気、羽心、ディアーナ、プーカ。
そこでは、エジソンが必死で霊界通信機を開発しようとしていた。
英雄が発明した数々のものに驚く勇気と羽心。
そこで勇気達が出会った、もう一人の人物とは……。