ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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●前話:
滅びの獄(DOOM/ドゥーム)は滅ぼされるようです。
超勇者「勇者推参! くらえ、夜明けの一撃ィッ!! あっ、何か武器落ちてる! プラズマライフル……? って、聖剣に統合された。太陽属性(プラズマ)だから? 何だか分かんないけど、とにかく良し! いっくぞぉ!!」
剣聖「ついに遠くまで届く斬撃を会得してしまいましたか……」
賢者「封印までの時間稼ぎだけで良かったんだけど」
剣聖「全然こっちまで悪魔が流れてこないですね」
超勇者ちゃんはごん太剣ビーム(エクス○リバー!)を習得したようです。


そして半竜娘ちゃんたちも森人の御姫様の結婚式に行けるよ!

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前話の脚注にちょこちょこ判定ダイス(簡略処理)を追記しました(展開に変更はないです)。なお、サイバーデーモンは怪物Lv10で上位悪魔(グレーターデーモン)より少し強いくらい、取り巻きは怪物Lv5の夜鬼相当×16でした。
ちなみに前々話(ヤゴパ)を書くときに複数の野食・昆虫食系サイトの記事を調べたんですが、ヤゴ・トンボはきちんと筋肉だけ食べれば甘みがある(エビっぽい)ということらしいので、そのへん参考にしています。

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ではまずは、堰の砦の上へと向かったゴブスレさん一行+救助された冒険者姉弟のターンです。
 


31/n 裏(堰の上の虹。森姫の結婚。紅玉昇級。そして海へ)(+キャラシ掲載)

 

1.煙とエルフは高いところがお好き

 

―― ポーン

 と響いた不思議な音に釣られて振り返った小鬼呪術師(ゴブリンシャーマン)の視線の先で、尖塔の最上層の開かずの扉が開いていく。

 

『GOBB!?』

 

 尖塔の最上階に居たのはゴブリンシャーマンとその取り巻きにゴブリンアーチャーが十数匹。

 あとの小鬼は捕虜の見張りなどを口実にサボったりしていなければ城壁の方へと回されている。

 何せ城壁には巨大な骨の竜戦士が5体も取り付いて、門を破ろうと、あるいは城壁を登ろうとしているのだ。

 そちらに戦力を集中させることしか小鬼呪術師(ゴブリンシャーマン)の戦術眼では思いつかなかったし、まさかあのような強大な戦力を囮にして冒険者たちが砦の中へと水路から、あるいは樹の枝を伝って入り込んでいようとは想像もしていなかったのだ。

 

 ましてや捕まえていたはずの捕虜までもが一緒になって、砦の機構(エレベーター)を動かして今この瞬間に自分たちの後背を突いてこようとは、まったく思いも寄らぬことであった。

 

「シャーマン1、弓16、剣なし、ホブなし、狼なし」

 

 開かずの扉(エレベータドア)から飛び出した、薄汚れた鎧兜に円盾と鉄の剣を両手に持ち鞘にも携えた只人の戦士―― ゴブリンスレイヤーは一瞬で戦況を把握すると後続に注意を促した。

 

「シャーマンから殺す。ゴブリンどもは皆殺しだ」

 

 ゴブリンスレイヤーら一党にとって幸いなことに小鬼たちは尖塔の周囲へと注意を向けており、すなわち後衛に当たる最後尾にはゴブリンシャーマンだけが位置していた。

 つまり壁際のもっとも開かずの扉(エレベータードア)に近いところに居たのはそのシャーマンであった。

 今この瞬間にゴブリンシャーマンにとっての戦場の前後が入れ替わったのだ。

 

「フッ!」

 

『GGOOBB!!?』

 

 ゴブリンスレイヤーは最下層で拾っていた剣を呼気とともに投擲。

 続けて低く構えて這うように走る。

 

『GOBOBOッ……!!』

 

 投擲された剣が狙い過たずゴブリンシャーマンの喉に刺さり、詠唱を封じる。

 おそらく城壁外の暴君竜牙兵へと向けて呪文を使い切っているだろうが、念のためだ。

 しかし小鬼呪術師は藻掻きつつもまだ倒れていなかった。

 

「上位種は無駄にしぶとい。だが、まず一つ」

 

『BOッ、GBOッ……!??』

 

 直ぐにゴブリンスレイヤーが2本目の小剣を投擲し、今度のそれは小鬼呪術師の脳天に突き立った。

 びくりと痙攣した小鬼呪術師は、たたらを踏んで外縁へと崩れ歩き、そのまま転落していった。

 

『GGOOORR!?』 『GOBB!?』 『GBRRROO!?』

 

 それを見た小鬼弓兵(ゴブリンアーチャー)たちに動揺が走った。

 思いも寄らぬ挟撃。一瞬でやられた頭目の呪術師。夜通し戦い続けた疲労。

 前線から離れた安全圏から矢を射るだけかと思ったら、ここは一転して死地となった。

 あっさりやられた頭目の呪術師に対する軽侮と罵声を混ぜながら、敵が居る後ろの方へと方向転換しようとして――

 

「うらぁっ!!」

「他のみんなの仇よ!!」

 

 斬り込んできた翠玉・青玉の姉弟冒険者が振るう牙刀に手や首を刎ねられていく。

 彼女ら姉弟は2人だけで密林の奥までやってきたわけではなかった。彼女らにも仲間がいたのだが……もういない。

 2人だけでも助かったのは、本当に運が良かった。

 

「ほほう、やりますなあ。これは拙僧も負けてられませんな!」

 

 続いて蜥蜴僧侶が突撃し、爪爪牙尾で暴れまくる。

 切り裂いては引き倒し、噛みついては振り回し、打ち据えては吹き飛ばし。

 後ろから襲い来る竜の暴虐に小鬼どもが耐えられるはずもなく。

 

『GGYYYY!!!?』 『BBOGG!?』 『RROYYYGGO!?!!』

 

 小鬼たちが弓矢を捨てて逃げ出そうと壊乱するまで数瞬と掛からなかった。

 

「逃がさないわよ!!」

 

 故郷の傍に蔓延る小鬼に対する憤りを乗せて、妖精弓手の三連射が次々と小鬼を背中から穿っていく。

 

「ま、術を使うまでもないわいの」 「そうです、ね!」

 

 さらに逃げようとする小鬼たちの行く手に、鉱人道士と女神官が放った投石が降り注ぎ、その足を止めさせる。

 何も当てる必要はない。

 少しだけでも足が鈍れば、前衛の剣が、妖精弓手の矢が、彼らを穿つのだから。

 

 

 この階の小鬼たちが死に絶えるまで、それほどの時間は掛からなかった。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

「ここの小鬼ばらは殺し尽くしましたが、まだまだ敵は多いようですなあ」

 蜥蜴僧侶が塔の外で防衛戦を繰り広げる小鬼たちを見て、楽し気な声を漏らした。

 

「まったくね。ほんと、数だけは多いんだから」

 その隣で妖精弓手が次々と矢を放ち、外の小鬼を減らしている。

 森の中のエルフは矢の数の制約から解き放たれるのだ。今も塔を這う蔦が自ら伸びて矢柄となり木芽鏃となり矢羽根となる葉を生やして次々と矢を供給している。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 しかしそれでもまだ小鬼の数は多く、さらに一部の小鬼は塔の上に陣取った妖精弓手や女神官、翠玉等級の女軽戦士に目をつけて、城壁の持ち場を離れてこちらに向かってくるほどだ。

 指揮をする頭目が居ない以上、城壁に攻め寄せる暴君竜牙兵の相手などよりも女の方へと涎を垂らしながら向かってくるのは小鬼どもにとっては当然のことであった。

 

「そんでどうする、かみきり丸。あの数の小鬼どもを相手しながら塔を下りるのは骨じゃぞ」

 鉱人道士が酒を飲みながら尋ねるが、その声音に不安も焦りもない。

 

「手筈通りに―― 竜を呼ぶ。あの、なんだったか」

 

「モケーレ・ムベンベ、ですね」 女神官が小鬼殺しに補足した。

 

「それだ。術で呼べると言っていたが、できるな」

 頷いて続けたゴブリンスレイヤーは、蜥蜴僧侶に兜を向けた。

 

「おお、承知承知。声を届けてみせましょうとも。『大地を冠せし馬普龍(マプロン)よ。仮初(かりそめ)なれど、我らも群れに加え(たも)う』――【念話(コミュニケート)】」

 それを受けて蜥蜴僧侶が発動した祖竜術は、言葉に載せた意思そのものにより異種族との会話を可能とするもの。

 直後、夜明け近い薄闇に響くは、“川を堰き止めるもの”へと助力を求める鍵言(キーワード)を乗せた蜥蜴人の雄叫び。

 

 響き渡った雄叫びが、黎明の密林の鳥たちを飛び立たせていく。

 

 そしていくらも待たずして、()()はやってきた。

 

――『『『 MMOOOOOKKEEERRRLLL!!! 』』』

 

 前足を翼に変えて飛翔する巨大な三ツ首のモケーレ・ムベンベ!

 それが堰の向こうの湖水から飛び立ってやってきたのだ!

 さらに後ろには、一ツ首のも同じく空を飛んで追従している。

 

「ふむ、“術で滞空しながら待て、空中で拾い上げる。できるな?”とのことですぞ」

 川の主の兄(モケーレ・ムベンベ)の言葉を翻訳した蜥蜴僧侶が小鬼殺しに伝える。

 上空の三ツ首竜は、塔の近くを掠めるような軌道に入っている。

 

「だそうだ」

 

「わぁったわいな。……ほれ、飛べ飛べ!」

 

 鉱人道士に急かされて、全員が塔の縁へと行く。

 

「行くぞ」

 

 足の鈍った翠玉・青玉の冒険者姉弟は蜥蜴僧侶に抱えられ。

 他の面々は小鬼殺しの合図に合わせて一斉に飛んだ。

 

「こういう術じゃないんじゃがのう。『土精(ノーム)土精(ノーム)、バケツを降ろせ、ゆっくり降ろせ、降ろして置いてけ!』――【 降 下 (フォーリングコントロール)】!」

 

 落ちる一行を鉱人道士の重力制御の精霊術が絡め取り、ゆっくりと空中に滞留させる。

 

――『『『 MMOOOBBBEEEENNNN!!! 』』』

 

 空中を漂う小鬼殺し一行+冒険者姉弟を、空中要塞じみた三ツ首のモケーレ・ムベンベがその背に拾った。

 後ろを見れば、ちょうど、獣欲を燃やした小鬼どもが尖塔のてっぺんまで登ってきたところであった。

 

「では頼む」

「承知。しかと伝えましょうぞ」

 

 蜥蜴僧侶が【念話】を乗せて礼を返し、そして依頼する。

 三ツ首と一ツ首のモケーレ・ムベンベは蜥蜴僧侶の念話を受けるとぐるりと堰の砦の上を周回して位置取りを調整し――

 

―― 『『『 MMMNNRRRRROOOORROOO!!! 』』』

 

―― 『KKKKEERRRRRRRRRREEE!!!』

 

 ―― そのそれぞれの口から瘴毒のブレスを吐き出して砦中を蹂躙し、さらには塔の中に吹き込んで燻蒸していった。

 

 小鬼たちの断末魔が、夜明けの近い森に響き渡る。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 前脚を翼にして空を飛ぶモケーレ・ムベンベの大きな背の上で、犠牲になった冒険者や商人、狩人らに、そして死に絶えた小鬼たちにも鎮魂の祈りを捧げていた女神官が、ふと眩しさに目を開けた。

 

 

 夜明けの光だ。

 

「わぁ……っ」

 

 そして、旋回する竜の背の上で朝日と同時に目に飛び込んできたのは、大きな虹。

 堰の上から飛び立ったモケーレ・ムベンベが纏っていた水気が散って、もたらされたものだろう。

 

 モケーレ・ムベンベ……それは“川を堰き止めるもの”であり、また、“虹”を意味する言葉でもある。

 

 小鬼殺しは、虹と朝日とそれを受けて輝く仲間たちを、女神官を、そして助け出せた冒険者の()()たちを、ただ静かに見ていた……。

 

 

<『1.モケーレ・ムベンベ「この暴君竜牙兵は出来がいいから眷属にしてやるか。我が【竜血】により位階を上げるとよい」』 了>

 

 

 5体の暴君竜牙兵は、神 獣(モケーレ・ムベンベ)の【 竜 血 (ドラゴンブラッド)】を与えられたことにより位階上昇!

  近 衛 竜 牙 兵 (インペリアル・ドラゴントゥースガーダー)に変異!

 呪文使用回数+2! 祖竜術Lv2獲得! 祖竜術【竜牙兵】【狩場】を会得!

 称号【神獣の眷属】、【堰の砦の番兵】を獲得!

 

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

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2.森姫の婚姻

 

 

 

 “愛はさだめ、さだめは死――”

 

 朗々と歌い上げられる森人たちによる旋律は、聞く者の心を捕らえて離さない。

 

 森人の里へと賢者からの伝言を携えてやってきた半竜娘とその一党は、そのまま森人の長の氏族の結婚式に参列することになった。

 川を堰き止めるものとも友誼を結び、実際に森の中の堰の砦に現れた大悪魔を殺した英雄である。

 当代の勇者の仲間からの手紙も携えているとなれば、邪険にするはずもなし。

 

 森人の婚姻における“初の共同作業”というのは、夫の持つ弓に妻が矢を番え、二人で上空へ向けて力強く放つというものだ。

 放たれた矢は、その婚姻を祝福するがゆえに木々が空けた枝葉の間の道を通り、虚空高くに消えていく。

 

 半竜娘たちが宴席に入ったのは、ちょうどその“夫婦の初の共同作業”が終わった頃合いであった。

 大樹の(ウロ)に湧く水場で身を清めて、借りた衣装を身に着けている間に少し出遅れたのだ。

 

 愛と生と別れと死を歌った詩が、森人たちの竪琴と太鼓の旋律に乗って流れてくる。

 それを機に厳かな式は終わり、いよいよ楽しい宴会の時間だ。

 

 森人たちはめいめいに珍しい客人である冒険者たちを囲んで、彼らに冒険譚をねだっている。

 鉱人道士が好奇心に目を輝かせる若手のエルフたちに質問攻めにされ、蜥蜴僧侶は自らの部族の伝説を謳って年かさの森人から茶々を入れられたり―― 何せ彼らは千年やそこら前のことであれば文字通りの生き証人なのだ!――、森人の上品なお酒を飲んでほんのりと頬を上気させた牛飼娘と受付嬢が美しい花嫁を見てあーだこーだと結婚への憧れを語ったり……。

 

 そんな中に入ってきた半竜娘の巨体に、森人たちもどよめいた。耳聡い事情通の森人が「あれが【辺境最大】、【鮮血竜姫】か」と噂する声も聞こえる。

 一党の者らは森人風の薄絹のドレスを借りて着ているが、半竜娘だけは、着られる服がなかったため布を折って巻き付けたのを宝飾された紐で縛っただけの古代風の装いだ。

 妖精弓手がゲストを見逃すわけもなく―― それは性格的な意味でも身体能力的な意味でも立場的な意味でもそうだ―― 手を振って声をかけてきた。

 

「あっ! よく来たわね! こっちいらっしゃいな!」

 

「お招きいただき恐悦至極、じゃ! “星風の娘”様よ」

 

 半竜娘が合掌して礼をして応じた。

 その後ろでは、森人探検家が「ああ碌な持参品もないのに……」とオロオロしたり、TS圃人斥候が早速「そんなことよりおなかがすいたよ」とばかりに葉皿や木の実椀に盛り付けられた料理に向かって死角を縫って突撃したり、文庫神官が異種族の文化を記録するため目を皿のようにしつつ歴史の生き証人に話を聞くべく耳をそばだてたりしている。

 彼女らもそれぞれで、この宴を楽しんでいるようだ。

 

「まさか堰の砦(あんなところ)で会おうとは思わなかったのじゃ」

 

「それはこっちのセリフよ! まさかうちの近くで会うなんて!」

 

「いやよく考えてみれば、小鬼が居るところに小鬼殺し一党が居るのは不思議じゃない……かの?」

 

「あのねえ、私だって好き好んで小鬼退治ばっかりしてるわけじゃないわよ。あいつに付き合ってあげてるんだから! 今回だって、ねえ様のお祝いに来たら小鬼が湧いてたっていうから仕方なくよ」

 

「ああ、それじゃよ。姉君が結婚するというなら、砦で教えてくれれば良かったじゃろうに」

 

「あれ? 言ってなかったっけ。てっきり知ってるものかと」

 

 辺境の街で妖精弓手の姉の結婚が話題になったときには、半竜娘一党は既に川を遡っていたのだが、そのあたりで何か勘違いしていたのだろう。

 

「まあいいがのう。ともあれ、吉事の言祝(ことほ)ぎを逃さずに済んでよかったのじゃ。うちの三姉妹の面倒も里の者らで見てくれたようで礼を言うのじゃ」

 

「ここでは小さい子なんか早々見ないからねー。しかも蜥蜴人の三姉妹なんて、里のみんなも珍しがって、いろいろ構ってあげてたみたい」

 

 視線の先では、着飾った幼竜娘三姉妹に対してエルフたちが色々と蘊蓄を垂れたり昔話をしている。

 

「うちの娘らにも、得難い経験になったじゃろう。森人の里に、まして森人の姫の結婚式など、生きているうちに招かれることはそうそうあるまいからの」

 

「そーかなー」

 

「上の森人の感覚でものを言うでない。ああ、いや」 半竜娘はニヤリと笑って続けます。「千年後にはお主が叔父貴殿の花嫁になってくれるのじゃったか? 竜の花嫁に」

 

「あら、誰から聞いたの? まあ考えといてあげるってくらいよ。チーズ好きな竜の花嫁ってのも乙かもね、ってね」

 

「くく、そのときまた式に呼んでもらおうかの。そして義叔母上(おばうえ)とでも呼ばせてもらおうかのう? 手前も、千年万年と竜になって生きるつもりなのでな」

 

「いいわね! 大歓迎よ! 昔話できる知り合いは多い方がいいもの!」

 

 

<『2.上の森人(ハイエルフ)の1000年先は、只人で言うと10年かそれ以下の感覚と思われる』 了>

 

 

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3.未知の技術

 

 

 半竜娘らは、花冠の森姫と輝ける兜の森人の結婚式の宴を数日間楽しむと、里に馬車や麒麟竜馬を預けて、再び上流の堰の砦へと行き、その修繕に従事した。

 彼女らのほかには、森人の里からの人員に、只人の都からやってきた鉱人と只人の技術者たちも参画している。

 人足としては半竜娘の馬力と、森人に協力する精霊たち、そしてモケーレ・ムベンベの眷属となった近衛竜牙兵たちが活躍した。森人は、只人の人足を森に入れるのを好まなかったからだ。

 

 

「いやぁ、密林の奥地(こんなところ)までお主自身が来ずとも良かったろうに」

 

「パトロンからの仕事な上に、森人の里と繋がりができるとなれば、会頭の私が出向くのに不足ありませんわ。それに国としても重要な封印の再建ともなれば、関われる人材は限られておりますもの」

 

 ――自慢じゃありませんが、王宮でも重用されておりますのよ?

 そう言って堰の砦を再建する現場で半竜娘に微笑んだのは、軽銀商会の若き会頭である女商人だ。

 

「それはパトロンとしても鼻が高いのう。迅速な石材その他の物資の運搬が助かったのも事実じゃし。それに、こいつは直接渡したかったからのぅ」 少し声をひそめる半竜娘。

 

「確か地獄の高度な技術で機械化された強敵を倒したのだとか。その解析を任せていただけるのですか?」

 

「そうじゃ。まあ建て前は水の街の冒険者ギルドまでの運搬を委託するわけじゃが。その間にじっくり見るだけにするもよし、届けた後にギルドや国と交渉して解析する正規の権利を勝ち取るもよし、手に負えぬと判断すれば他に権利を斡旋してもよし、じゃよ。上手くやっとくれ」

 

「なかなかにやりがいがありそうですわね」

 

「お主もそのために鉱人の技術者の手配に一枚噛んで率いてきたのじゃろう? 鉱人が森人の領域に来るなぞ、何かの見返り(エサ)がなければこれほど早く話がまとまるものかよ」

 

「あら、お見通しでしたのね。前から思ってましたが、冒険者にしておくには勿体ない識見ですわ」

 

「これでも郷里では軍師過程を修めておるからの。じゃが、冒険者の方が性に合っとる。そういうのはお主に任せるのじゃよ」

 

「責任重大ですわね」

 

「そりゃそうじゃよ、いくら投資しとると思っとるんじゃ」

 

 ――がはは! うふふ! と笑いあう2人を、現場監督に来ていた輝ける兜の森人(花冠の森姫の夫君)は、胡散臭そうに見ていた。

 

 

<『3.輝ける兜の森人「まったく定命の者(モータル)はせわしないものだな」』 了>

 

 

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4.紅玉昇級! そして海へ……

 

 

 

「というわけで、昇級おめでとうございます」

 

「お、おう?」

 

 森人の結婚式に出たあと、半竜娘一党は、堰の砦の再建に従事し、森の特産品を仕入れたり採取したりしてから(往路で助けた女巫術士(ドルイダス)一党ともまた会えたりした)、麒麟竜馬で川の上を走って下って、水の街の神殿に犠牲者たちの遺体をおさめて、辺境の街に帰ってきたところ。

 

 一連の冒険を改めて冒険者ギルドに報告した際の受付嬢の言葉がこれである。

 

「ギルド職員であるお主も知っておるじゃろうが、冒険者ギルドの依頼を受けていったわけじゃないのじゃが? それに活躍したというなら小鬼殺しの一党もじゃろうに」

 

「ええ存じてます。森人(エルフ)の御姫様の結婚式のときに経緯は聞きましたし」

 

「ならばなぜじゃ?」

 

「成り行きとはいえ、地獄の封印が開かんとする事態にいち早く居合わせ、勇者の到着まで悪魔を押さえたことを評価してのことですね。ゴブリンスレイヤーさんの一党の方は、貴女方の後から到着して、小鬼を蹴散らしただけ……ですから」

 

「良くも悪くも小鬼退治の範疇だと判断されたわけかの」

 

「ええまあ」

 

 受付嬢も上層部の“たかが小鬼を退治しただけだろ?”という扱いには納得していないのだろうが、それも仕方ないことだとは理解しているようだ。

 

「まあ、ゴブリンスレイヤーさんの方はともかく。貴女方は、いち早く川の水の呪いに気づいて浄化のために遡上し、密林の奥の神獣には使い魔を献上し、森人の王族との(コネ)も結び、高度な技術で機械化された悪魔の残骸を国に納めたわけですから、これまでの功績を鑑みて、昇級は妥当だという判断です」

 

「であるか。ならば、ありがたく頂戴しよう」

 

「はい。あ、一応は、形式だけに近いですが面談もしますので、お仲間の方々には順に応接室までいらっしゃるようにお伝えください」

 

「了解なのじゃ」

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 というわけで、全員が一つづつ等級が上がった。

 

「お、おおお……。ついに男のとき(まえ)よりも等級が上に……!」

 TS圃人斥候は青玉の冒険者証を掲げて、感無量な様子だ。

 

「紅玉かー。冬の年越し前に昇級してからだから、結構いいペースよね。等級が上になるほど昇級しづらいって言われるし」

 と言いつつ等級にはあまり興味がないのか、森人探検家はドライなものだ。

 

「私も翠玉になりましたし、今回の冒険では神様にお納めする新たな知識をたっぷり見聞できて、とってもいい冒険でした。盾と鎧は整備しないといけませんけど……」

 文庫神官は新たな冒険者証を文鎮代わりに、冒険で得た知見を紙に書き付けている。やがては書物にまとめて、知識神の文庫に納めるつもりだ。

 

 ギルドの卓についた彼女らの前には、今回の依頼元であった羽衣の水精霊がふるまってくれた【命水(アクアビット)】の回復水が入ったジョッキがある。

 精霊の力でこの晩夏の暑い中でもキンキンに冷えているし、サービスなのかしゅわしゅわしている。

 同じ卓についている幼竜娘三姉妹は、しゅわしゅわを飲んで、刺激が強かったのか揃って「べー ><」と目を×(ばってん)にして舌を出している。

 

「さて。そしたら次はどこに冒険に行くかの?」

 

 しゅわしゅわを飲みながら話題を振った半竜娘に、森人探検家が勢いよく手を上げた。

 

「あ、それなら私に腹案があるわ!」

 

「うむ、聞こう」 「「「 きこー! 」」」

 

「去年の収穫祭の時に手に入れた宝の地図なんだけどね、この間の花冠の姫様のご成婚の折に昔冒険者だったっていう森人(エルフ)から情報を聞けて解読が進んだやつがあって、特に1つ、これは確度が高いわってやつがあるのよ!」

 

「へー、アレ当たりあったんだな。良かったじゃんエルフパイセン」

 

「それで、どこに何があるというんじゃ?」

 

「フフフ、聞いて驚きなさい! ズバリ、コレが示していたのは“宝を積んだ沈没船”の場所というわけよ!」

 

 森人探検家が宝の地図らしきものを取り出し、卓に広げた。

 

「つまり、地図ではなく海図であったと?」

 

「そういうこと! というわけで、海へ行くわよ! 南の海へ!」

 

「「「 うみー! やったー! 」」」

 幼竜娘三姉妹も大喜びだ。

 

<『4.その後ろではゴブリンスレイヤーが「行ってみたが海ゴブリンは鰓人(ギルマン)だった。ゴブリンではなかった」とか言って受付で依頼をキャンセルしていた』 了>

 

 

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5.リザルト

 

 

 

 半竜娘一党は大河の呪いを浄化し、地獄の氾濫を防ぐのに大いに貢献した!

 経験点2000点獲得! 成長点5点獲得!

 『水中呼吸の指輪』を幾つか買い足し、水中探索に備えた。

 

 

 半竜娘は紅玉等級に昇級した!

 半竜娘は冒険者Lv10(MAX)に成長した! 成長点ボーナス35点獲得!

 半竜娘は死霊の無念を晴らし神獣の眷属として固着させた! 死霊術ポイント+3!

 半竜娘は死霊術パラメータのうち、干渉範囲:時間、空間、顕現度をそれぞれ上昇させた!

 半竜娘は冒険者技能【機先】を達人段階に成長させた!(先制ボーナス+3→+4。成長点25点消費)

 半竜娘は冒険者技能【追加呪文:祖竜術】を熟練段階に成長させた!(祖竜術追加習得。成長点15点消費)

 半竜娘は祖竜術【竜鱗(ドラゴンスケイル)】を習得した!(強固な鱗により装甲値増加。ただし軽鎧、重鎧は鱗と干渉するため移動力にペナルティあり。【竜血】によりポーション作成可能)

 半竜娘は冒険者技能【盾】を初歩段階で習得した!(盾受け値+1、盾受け時装甲+1。成長点5点消費)

 半竜娘は一般技能【長距離移動】を初歩段階で習得し、習熟段階に伸ばした!(長距離移動判定+2。移動力+2。成長点6点消費)

 

 

 森人探検家は紅玉等級に昇級した!

 森人探検家は経験点や成長点を温存した。

 

 

 TS圃人斥候は青玉等級に昇級した!

 TS圃人斥候は斥候Lv7→8に成長させた!(経験点7000点消費。成長点14点獲得!)

 TS圃人斥候は冒険者技能【頑健】を習熟段階に成長させた!(生命力補正+5→+10。成長点10点消費)

 TS圃人斥候は冒険者技能【受け流し】を習熟段階に成長させた!(吊盾を使った受け流しによる回避補正+1→+2。成長点10点消費)

 

 

 文庫神官は翠玉等級に昇級した!

 文庫神官は戦士Lv6→7に成長させた!(経験点5000点消費。成長点10点獲得!)

 文庫神官は冒険者技能【呪文抵抗】を習熟段階に成長させた!(呪文抵抗補正+1→+2。成長点10点消費)

 文庫神官は冒険者技能【鉄壁】を初歩段階で習得した!(移動妨害判定+2。成長点5点消費)

 文庫神官は一般技能【騎乗】を習熟段階に成長させた!(騎乗判定ボーナス+1→+2。騎乗中に発揮できる職業レベル制限をLv3→Lv6まで緩和。成長点5点消費)

 文庫神官は『錫杖』を『司教杖』に買い替えた!(奇跡行使ボーナス+1→+2)

 

 

<『5.山の次は海へ! 手前たちの夏はまだまだこれからじゃ!!』 了>

 




 
女神官ちゃんは【浄化(ピュアリファイ)】のマンチな使い方(敵の血液の真水化)は、今回はしませんでした。
地母神さま「ほっ……」
()()()、ですが……。ゴブスレさんの薫陶を受けている以上は時間の問題でしょう。レギュレーション違反スレスレな(マンチマンチした)使い方を通じて、女神官ちゃんが自らの信仰を見つめ直す日はきっと近いはずです。

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感想評価&コメをありがとうございます! 感想はよく読み返させていただいてまして、たいへん励みになっています!
いやあ、100話も続く―― 続けられるとは……感慨深いです。これもすべてお読みいただき、さらには評価や感想をつけてくださる皆様と、素晴らしい原作のおかげですね! 感謝感謝です! ありがとうございます!!

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次回以降は原作小説8巻序盤に入りつつまずは海で宝探しです。敵は鮫とか蛸とかそんな感じかもしれません。
ゴブスレさんが海に行った話(海ゴブリンはゴブリンではない件)は原作小説8巻の試し読みの範囲に入っているので、まだご覧になってない方は是非! 剣の乙女さんの表紙・口絵(エロい)も見られますし是非是非。

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以下は作者備忘のためキャラクターシート画像を掲載していますが、見なくても支障ないので飛ばしていただいて構いません。(容量削減のため画質は粗いです)


半竜娘

【挿絵表示】



森人探検家

【挿絵表示】



TS圃人斥候

【挿絵表示】



文庫神官 成長点残り 誤 22点→ 正 2点

【挿絵表示】

 

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