ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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●前話:
魔界こそ(アークデーモンの脳髄から)こそ噂話(絞った知識によれば)
……太古の魔術師には、ゴブリンストーム使いが居たらしいですよ。
いまもその影響で、緑の月では、奥に炎の祭壇を備えた巣穴が、小鬼を吐き出し続けてるんだとか。

===

◆緑の月の“炎の祭壇”破壊キャンペーンについて
 ゴブスレさんを宇宙に連れ出すために神々が組んだキャンペーン(嘘)
 月にゴブリンが出るのでゴブスレさんがゴブリンを殺す話(いつもの)
 いやー、緑の月でゴブスレさんが窮地に陥ったときに孤電の術士(アークメイジ)さんが盤外世界から駆けつけてくれて、
「炎の儀式には、(スス)がつきものだろう? 君たちは自らが燃やし続けた炎が故に滅ぶのだ。……“煤の儀式/Ritual of Soot”*1 を食らいたまえよ」
 って、雑兵ゴブリンを(ゴブ)体発火現象で一掃して煤に還元してくれたのは胸アツでしたね(幻覚)。緑の月がそのときだけはまるで太陽のように輝きました(白昼夢)
 もちろん、同じ様な祭壇が他にもまだある(別シナリオで生えてくる)可能性は常にありますし、地上に降りて土着したゴブリンまでも消えてなくなるわけではないので、このキャンペーンをクリアしても、ゴブスレさんの戦いは終わらないのですが……(つまり劇場版時空)
 

◆TASルートでの【褒美(プライズ)】の術式と、迷宮の宝箱システムの関係について
 この2つは大いに関係があります。まあ【褒美(プライズ)】自体が、CRPGにおける戦闘後の報酬・ドロップに着想を得ているので……。
 この生存ルートの世界線でも、これまでに得た、死の迷宮の宝箱のシステムを含む知識・着想により、半竜娘ちゃんはやがてはこの新術を開発し、永く生きた後に最終的には慈母龍の一角として昇竜し、自らが生み出した新術を管轄するようになるでしょう(道半ばで倒れない限りは)。その開発のときには、TASルートでTASさんがチートによって絶対成功させていた部分を、真っ当に積み上げた数多の経験という成功要素(判定ボーナスの固定値)で補うことになるはずですね。死の迷宮の宝箱システムに触れた経験は、その成功要素の1つになります。

*1
煤の儀式/Ritual of Soot:コストが3マナ以下のクリーチャーを全て除去する。雑魚だけ殺す全体除去。“見つかったのは巡視兵の鎧のみだった。鼻を刺す突然死の臭いが染み込み、二度と身に着けられるものではなかった。”




33/n ≪死≫の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)-3/3(火計/火刑)

 

 はいどーも!

 これから毎日街を焼こうぜ? な実況、はーじまーるよー!

 

 前回は迷宮の中のゴブリンたちを一掃するべく二手に分かれて、それぞれで掃討しつつ地上出入り口までやってきたところまででしたね。

 

 夕闇の中、迷宮の外に(ひし)めくゴブリンたちを眺めつつ、しばらく出入り口で待っていると、ゴブスレさんたち一党(+文庫神官ちゃん)が、輪郭しか見えない(ワイヤーフレームの)迷宮の闇の奥から現れました。

 

「待たせたか」

 

「いや、今きたところじゃ」

 

 君たちそんなデートの待ち合わせみたいなやりとりを……。

 いや、冒険(デート)だからあながち間違いでもないのか。

 女神官ちゃんが「……(じとっ)」と微妙に湿度が高い顔で見つめてくるのを無視して話を進めます。

 

「こっちの掃討は終わったのじゃよ。消耗も少ない」

 

「こちらも皆殺しにした。ただ、小休止して連戦の疲れを癒したい」

 

「おお、それならこの場は【狩場(テリトリー)】の術で結界を張っておる。安心して休まれよ」

 

 迷宮入り口を塞ぐように、半竜娘ちゃんが祖竜術で結界を張り、敵の小鬼たちの侵入を防いでいます。

 しかし眼前の、両側が切り立った崖になっている峠道は、見渡すばかりの小鬼たちで埋まっていて進めそうにありません。

 魔神の召還や、その討伐を察知して、冒険者たちを逃がすまいと集まってきたのです。

 眼下の峠道の麓には、遠く、迷宮の門前街の姿が見えます。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「矢弾は防げん結界じゃから、あまり出すぎんようにのー」

 

「そうか」

 

 ということでいったん小休止です。

 結界の外では、小鬼たちが多勢に無勢を確信して下卑た笑い声を上げています。

 あ、何匹かバシバシ肩を叩かれて崖から落ちました。そしてさらにそれを見て笑う小鬼ども。

 

「あーもう、うっさい!」

 それに耐えかねた森人探検家ちゃんが狙撃。迷宮の中では半竜娘ちゃんズがブルドーザーみたいに小鬼をミンチにしていたので森人探検家ちゃんは元気が有り余っています。

 

『GGOBBE!??』

 標的にされた運のないゴブリンに矢が突き刺さり、吹き飛びました。

『『 GGOOOBBB!! 』』 『『 GGOOOBBB!! 』』

 ここでゲラゲラ笑って同胞の醜態を嘲笑(あざわら)うあたりがマジゴブリンですよね。

 それはそれとして恨みは募らせてくるので(たち)悪いやつらです。

 

「……こうやって撃ちまくっていれば片付くんじゃないでしょうか」

 一休みする女神官が呟いた感想にはある程度同意できます。

 

「矢弾が無限にあればそれでいいけどねー」

 妖精弓手の言うとおり、問題はそこです。

 矢の数は無限ではありません。

 

「だが安全に数を減らせるのは良い」

 いち早く休憩を終えたゴブスレさんが、投石紐(スリング)に石を装填して遠巻きに見る小鬼の群れへと投げます。『GGOOB!?』 見事命中。さすがの手並みです。

 

 石ならそこらに落ちてますし、なんなら石壁を砕いて弾にしてやってもいいわけです。

 

「これなら安全に数を減らせるのう」 『GGOOBB!!?』

 鉱人道士も投石紐(スリング)で石を投げます。

 

「じゃあオイラも」 とTS圃人斥候。

「あ、私もやります」 「私も」 女神官と文庫神官も続きます。

「どれ拙僧は石壁を砕いて弾を確保しますかな」 「「 手前らは投げる方に回ろうかの 」」 蜥蜴人組もそれぞれ動き始めました。

 

 投石紐を持っていない者には応急措置用の包帯を加工して渡して参加させると、投石の密度が上がりました。

 蜥蜴僧侶さんが壁を砕いて補充用の石弾を作ってくれるので、弾切れの心配もなさそうです。

 

『GOGOGOOOOBB!!』 『GGBOORIIRI!!』 『BBBOOORRROO!!』

 

 これにはたまらず小鬼たちも後退。

 投石の届かないところまで下がり、岩などの物陰に隠れます。

 

「もっと下がりなさいよー」

 そこへ妖精弓手の容赦ない3連射。物陰に隠れていても関係なく貫きます。

『『『 BBGGGOORRR!!?? 』』』

 エルフの弓矢は、曲がるんですのよ。

 

『『 GGOBGOBOGOB!!?? 』』

 小鬼たちは魔術的な腕前のエルフの弓矢に恐れをなし、さらに包囲網を広げました。

 

 

「遠いな」 投石紐(スリング)を下げるゴブスレさん。

 

「そのうちまたすぐ近づいてくるわよ。だってゴブリンだし」

 

 妖精弓手の言うとおり、こちらに女性メンバーが居る以上は、小鬼たちが下がったのも一時的なものでしょう。

 すぐに股座(またぐら)膨らませて近づいてくるのは間違いありません。

 

「じゃがこっちもいつまでも籠城はできんぞ」

 半竜娘が腕を組んで外を睨みます。

 

「人数も増えたし、もとからそんなに食糧もあるわけでもないしのう」

 鉱人道士の言うとおり、籠城戦をできるような状況ではありません。

 

「であれば突破するしかありますまいよ」

 蜥蜴僧侶の言うとおりです。

 

「んー、まー、小鬼どもの包囲を突破して逃げるだけならどーとでもなんだろ? オイラんとこのリーダーと、そっちの蜥蜴人のお坊さんを【巨大】化させて、【竜翼】を生やして全員載せて飛んでいきゃー良い」

 TS圃人斥候がさっさと座って休みながら言います。蜥蜴人組が小一時間【瞑想】しながら休んで、呪文使用回数を少しでも回復させれば、さらに確実でしょう。

 小鬼を皆殺しにしたいゴブスレさんは難色を示すかもしれませんが、全員の生存という観点ではこれがベストかもしれません。

 

「もしくは、この結界を保ったまま進んでいってもいいかも知れません。【矢避(ディフレクトミサイル)】も併用すれば、より安全かと」

 確かに文庫神官ちゃんの言うとおり、【狩場(テリトリー)】の祖竜術は中心となった術者とともに移動可能ですし、投石や弓矢など、主な遠距離攻撃もTS圃人斥候が【矢避(ディフレクトミサイル)】を張れば対処可能です。

 

「結界で押し出していけば、勝手にこの峠道から落ちそうよねー」

 妖精弓手の言うとおり、結界頼りで押し出していくことも有効かも知れません。

 

「いやさすがにあの物量を全て押し出していくのは、手前も骨が折れるぞ?」

「えー、頑張ったらいけるんじゃなーい?」

 あ、流石に半竜娘ちゃんも押し出す数が多すぎると荷が重いようですね。からかう妖精弓手と軽口をたたいています。無理ではないようですが。

 

「………………」

 あーでもない、こーでもないと案を出す面々の中、ゴブスレさんは沈思黙考中です。

 

 

 小鬼は殺す。仲間は守る。

 ベストを求めるなら、両方やらなくっちゃあなりませんが、しかし、そんな風に冴えたやり方があるでしょうか。

 

 

 ―― と、その時でした。

 

「待って、何か聞こえる。馬蹄の音、車輪が転がる音――」 妖精弓手の長耳が結界の外から近づく何かの音を捉えました。「―― ゴブリンを轢き潰してる。援軍? でも誰が……」

 

 

「いっけー!」 「ひきつぶせー!」 「ぺしゃんこにしろー!」

『『『 GOOOOBBBUUUUURRRR!!!??? 』』』

 

 妖精弓手の呟きに呼応するように、出入り口前の門前の峠道を、ゴブリンを蹴散らしながら現れるものがありました。

 遠目に見えるのは、2頭立ての装甲馬車―― まるで戦車(チャリオット)のような勢いです。

 

「おかーさーん!」 「むかえにきたよー!」 「きへいたいのとうちゃくだ~!」

『『『 GOOBBUUUUUUUU!!!??? 』』』

 

 狭い峠道に詰めていたゴブリンたちですが、その密集具合が災いして、逃げ場がないところを無理に避けたがために、両脇の崖を転がり落ちていくものが続出しています。

 

「おお!? 我が娘たちよ、ようもこんなところに!! 助かったのじゃ!!」

 

 半竜娘ちゃんが驚きに目を見開きました。

 装甲馬車を曳いていたのは、鱗持つ巨馬―― 麒麟竜馬。半竜娘ちゃんの使い魔です。

 そして装甲馬車に乗っていたのは、南の海のギルマン集落で待っているはずの、幼竜娘三姉妹!

 

 単為生殖で産んだとはいえ愛しい我が子らであることに変わりありません。

 幼竜娘三姉妹は、南の海で受信した慈母龍の託宣(ハンドアウト)に従って、遠路はるばる国土縦断、こうやって、はじめてのおつかいをこなしに来たのです。

 

「いまいくよー!」 「まっててね!」 「おんまさん! あとひとはしり!!」

 

 ゴブリンたちを跳ね飛ばし、轢き潰し、馬蹄で肉と泥を混ぜながら上りの峠道を登ってきた麒麟竜馬と装甲馬車が、結界の中にまで入ると、石を跳ね飛ばして車輪を滑らせて(ドリフトしながら)、迷宮の門の前に到着!!

 

「おー! 御苦労、よくやったのじゃ! しかしまあ、どれだけトばしてきたのじゃ? 南の海からは随分と遠かろう」

「むりはしてないよー」 「あれから何日もたってる」 「おんまさんのあしは温存(おんぞん)してある!」

「ほう? ……ということは、深海にいた時か、あるいは転移の時にでも、時間の流れが狂ったか」

 

 あ、ようやく半竜娘ちゃんが、死の迷宮に来た時点で、空間のみならず時間までもが狂っていたことを認識したみたいです。

 今の状況にはさほど影響しませんけどね。

 

「まあよい。さて、麒麟竜馬も血肉で彩られて随分と格好良くなったのう!

 それで、ギルマンのところに置いていった装備や物資はそこにあるのじゃろう?」

 

「もっちろんー」 「そのためにきたの!」 「おつかいせいこう! だいせいこー!」

 

 いえーい! と3人でハイタッチしてピョンピョンと馬車から跳ね降りてきた幼竜娘三姉妹。

 トトトっと駆け寄ると、早速半竜娘ちゃんに飛びついて登っていきます。

 

「ようやった、ようやった! それじゃあ、まずは装備を整えるとしようかのう」

 幼竜娘三姉妹(むすめたち)を撫でまわしながら、半竜娘ちゃんは馬車へと向かいます。

 そしてそのあとに続く彼女の一党のメンバー。

 分身ちゃんだけは、装備更新に伴い再作成されるのが決まっているので、現時点の残り呪文使用回数を使い切るべく、麒麟竜馬の疲労を癒すための【命水】を出す水精霊を召喚したり、この後に備えて念のため風や火の精霊を呼び出したりするようです。

 

 …………。

 ……。

 

 さて、半竜娘ちゃんたち一党がいつもの装備に着替えて出てきました。

 物資も十分な量があるため、なんなら籠城も可能かも知れません。

 冒険の途中で行商もする半竜娘ちゃんたちの荷物には、文字通りに売るほどの物資が積まれています。

 

「補給も十分じゃし、ここを突破するのは、十分休みをとってからの方が良いのではないかや?」

 

「そうだな」

 

 特に呪文使用回数を回復させるためにも、その方が良いでしょう。懸念だった補給の不安も解消されましたし。

 半竜娘の【狩場】の祖竜術による結界を以てすれば、一晩の安寧を得るのは容易(たやす)いことです。

 彼女らの持ち物である空調付きのテントや、馬車自体の居住性を考えても、普通の野宿よりはずっと上等です。

 

 早速この場の2パーティーで手分けして、準備に取り掛かっています。

 テントを広げ、折り畳み式のテーブルを広げ、(かまど)を幾つか作り、火を(おこ)していきます。

 

「そういえば、おかーさん」 「()途中(とちゅー)におてがみもらった」 「(ぎん)(かみ)のメイドさんからー」

 準備を手伝っていた幼竜娘三姉妹が、何やら紙切れを手に持って半竜娘ちゃんの方へとやってきました。

 半竜娘ちゃんにそれを手渡すと、すぐにまたパタパタと駆けて野営準備の手伝いに戻っていきます。

 

「銀の髪のメイド? 手前には心当たりがないが、あ、いや……」 半竜娘ちゃんはかつて退魔の剣の封印があった迷いの森で出会った金剛石の騎士の従者のことを思い出しますが、直ぐにその考えを打ち消します。まさか、ここに王家ゆかりの者が居るはずもないですし。いないよね? 「……うん、ないのう。して、小鬼殺し殿の方はどうじゃ?」

 

「こちらの護衛対象の付き人だろう。詳細は話せんが」 王妹殿下の社会科見学 兼 護衛でここまで来たなんてことは、特に言う必要もないことですからね。ゴブスレさんもそういうことを吹聴するような素人ではありません。「迷宮街の外で、それなりの人数の手練れに守られているから、こちらの護衛対象との合流に気を使ってもらう必要はない」

 

「であればよか。あえて知ろうとも思わんのじゃ。王族関係、来とるんじゃないかや、これ

 半竜娘ちゃんも、銀髪侍女さん関連ということで、王族案件だと察したので深くは聞きません。

「それで、この手紙、宛名は書いておらんし、手前が開けてしまうがよろしいかの?」

 

「構わん。共有する必要があればあとで伝えてくれ」

 

「分かったのじゃ。……さて、なになに……」

 

 手紙を読み進める半竜娘ちゃんの頬が、裂けるように切り上がっていきます。闘争を期待する笑みです。

 

「ふっはっはっはははは! これは良いのう! 手前好みじゃし、きっと小鬼殺し殿も気に入るじゃろうて! しかも、お主の護衛対象の発案らしいぞ? 冒険者稼業の実地見学とやらは役に立ったようじゃの!」

 

「なんのことだ」

 

「ほれ、読んだ方が早い」 半竜娘ちゃんはゴブスレさんに手紙を放ると、ウキウキとした様子で銀髪侍女との遠距離連絡の算段を立て始めます。「……さて、狼煙で返事をせんとなあ。あいや、この時間(夕暮れ)じゃとランタンを(またた)かせた方がいいかの。ここは高台じゃし」

 

 ゴブスレさんは、半竜娘ちゃんから受け取った、銀髪侍女からの手紙をざっと一読すると、「なるほどな」と頷きを一つして、すぐに焚火にくべてしまいました。

 

「仕掛けるのは明朝―― 払暁か」

 

「そういうことじゃ。呪文遣い(スペルリンガー)はこのあとすぐ休めば、交代で休んでも何とか朝までに呪文の回数も回復しきるじゃろ」

 

「見張りは任せておけ」

 

「お主も休むのじゃよ? 術で癒したとはいえ、魔神の腕にさんざっぱらな目に遭わされたのじゃから、無理してはならんぞ」

 とはいえこの面子ですと、呪文使いじゃないのって、ゴブスレさんと妖精弓手さんだけですからね。

 負担が偏ってしまうのは心苦しいですが、一番睡眠が途切れ途切れになる3交代の中番はこの2人にお願いすることになるでしょう。

 

「ああ。無理や無茶をして勝てるならいくらでもするが、それで上手くいくなら、苦労はしないからな」

 

「おお含蓄のある事を言うのう。まさしく、そのとおりじゃて」

 

 というわけで、英気を養うために、十分な休養を取ることにしました。

 

 遠く迷宮の門前町の周りを見下ろせば、街に繋がる道の側に、野営の明かり・炊事の煙が増えているのが見て取れました。

 様々な神の聖印を刺繍し、染め抜いた旗が翻っているのが、【竜眼】のポーションの作用で強化された半竜娘ちゃんの瞳には映りました。

 

 

 そうです。

 援軍です!

 

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼ 

 

 

 

 明けて翌日。

 ちょうど霊峰の山頂が太陽に照らされ始めた早朝の時間帯。

 眼下に見える、霊峰の山腹に開かれた≪死≫の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)の麓に広がる迷宮前街は、いまだに朝靄と薄闇の中です。

 夜行性である小鬼にとっては夕暮れにあたる時間であり、冒険者としては攻め時でもあります。

 

「行くぞ。準備はいいな」

 

「おうよ。さぁて、そろそろ()()があるはずじゃが」

 

 ゴブスレさん一党と半竜娘ちゃん一党は、既に野営具を撤収し、【聖餐】の奇跡が込められた魔道具で出した朝食を分け合って軽く食べて、出発の準備を整えています。

 夜中、祖竜術の【狩場】の結界にゴブリンがぶつかり続けていましたが、みんなよく眠れたようで、顔色は悪くありません。

 

 

 装甲馬車の中には、幼竜娘三姉妹と後衛である女神官ちゃんと鉱人道士さんが乗り込みます。

 車内にはたくさんの荷物も載せられていますので、これ以上の人員は中には乗られなさそうです。

 後衛組は、窓から術を使って援護することが役目です。

 

 馬車の屋根には、ゴブスレさん・TS圃人斥候(斥候組)と、妖精弓手・森人探検家(野伏組)が。

 矢狭間になる装甲板を立てて準備は万端です。

 

 御者席には文庫神官ちゃんが着いています。

 騎士家の出なので馬の扱いは上手なのです。

 

 半竜娘ちゃんズと蜥蜴僧侶さん(蜥蜴人組)は、【竜翼】のポーションで腕を翼に変え、【巨大】化の術をかけて大飛竜モードです。

 2パーティー分の人員を馬車に乗せるとなれば、さすがにもとから巨体な彼女らは乗れませんでしたからね。しかたないね。

 

 

 準備万端にして、その時を待ちます。

 

 

 

―― KABOOOM!!

―― BOMB!! BOMB!!

 

 しばらくすると、街の方から爆発音と火の手が上がり始めました!

 中央以外の端から燃え上がり始めています。

 

「密偵どもはいい仕事をしたようじゃな! 石の街とてゴミや家財道具など、燃えるものはそこら中に残されておる。そこに手前らの荷物の中から提供した油やテルミットを仕掛け、時限式に発火。火の海にするというわけじゃ!」 「ならば手前らも助勢せねばな! 昨日呼び出しておいた、火の精と風の精よ! 大いに遊んで火を広げるのじゃ! いってこい!」

 

 夜のうちに、王妹殿下の護衛として影から付き従っていた密偵たちは、小鬼の目を盗んで街のあちこちに仕掛けをしていたのです。

 文字通りに“火付け役”です。

 熟練の密偵たちの手に掛かれば、小鬼を出し抜くことなど造作もありません。小鬼たちが気付くことなどなく、街を火の海にする準備が進みました。

 

 その際の資材には、幼竜娘三姉妹が走らせてきた馬車に積まれていた可燃物や爆発物も使われています。

 そして駄目押しに、昨日のうちに呼び出して伏せておいた、火の精霊と風の精霊。

 火の勢いを増すべく、精霊たちが小鬼しかいない廃れた街へと飛んでいきます。

 

「うわ、結構火の回りが早いわね」 妖精弓手が迷宮門前街を両翼から包むように燃え広がる炎に、顔をひきつらせます。

 

「急がねーと街の中を抜けられなくなるかもしれねー」 馬車の客車の天板の上で、投矢銃を構えたTS圃人斥候が心配します。燃えてるのは外周からとはいえ、迷宮入り口から街までは距離もありますから、峠道を下るうちに街が完全に炎の底に沈まないかという心配です。

 

「ゴブリンどもも動揺しておる様子。さて、駄目押しと参りましょうや!」

 飛竜モードの蜥蜴僧侶さんが飛び立ち、峠道の小鬼たちの上空へ。

「『偉大なりし暴君竜(バオロン)よ! 白亜の園に君臨せし、その威光をお借りする!!』 ―― GGRRRRROOOOOWWWWW!!!

 

 竜の咆哮!!

 

『『『 GOOBBUURRUUUU!!!??? 』』』

 

 蜥蜴僧侶さんの祖竜術【竜吼(ドラゴンロアー)】に小鬼どもが耐えられるはずもなく。

 もとより、街が燃えて浮き足立っていた小鬼たちは、ついに我先にと峠道を下りようと壊走を始めました。

 

「行くぞ、ゴブリンどもは皆殺しだ」

 

 それを好機と、ゴブスレさん&半竜娘ちゃん一党は、装甲馬車で峠道を下ろうと発進します!

 途中にゴブリンいるだろうって?

 当然、轢きます。

 

 

 

 あ、半竜娘ちゃんは既に街の方に飛んでいって、可燃性有毒ブレスを吐いて、建物を更に燃やす手伝いをしていますよ。

「「 汚物は消毒なのじゃ~~!!! 」」

 めっちゃ楽しそうなのが遠目からも分かりますし。

 

 上空から見ると、小鬼たちは唯一火の手が回っていない、街道へ続く門へと逃げるために集まっていくのがよくわかりました。

 

 しかし、その街道への門には邪教徒となった小鬼たちを滅ぼすべく、剣の乙女の号令に応じた王都のあらゆる神殿寺院の聖職者たちが軍勢となって陣を敷いています。

 たかが小鬼だろうと、邪教徒相手であるならばこれは聖戦です。

 彼らの気迫は凄まじく、彼らが敬愛する大英雄たる“剣の乙女”の号令ということもあり、向かい来る小鬼を必ずや殺し尽くしてくれることでしょう。

 

 さらには、迷宮入り口からの峠道を駆け下りつつ、3匹の飛竜を従えたゴブスレさんたちが、逃げ散るために街道へと向かう小鬼たちへと迫ります。

 

 つまり“鎚と金床”の形になるわけですね。

 この場合、“金床”は燃える街の炎と聖職者たちを指し、“鎚”はゴブスレさん&半竜娘ちゃん一党の混成チームが、その役割を果たします。

 もはや小鬼どもには、勝機も逃げ場もありません。

 

 というわけで、燃える街を眺めながら、今回はここまで!

 ではまた次回!

 




 
次回は裏ということで、王妹殿下や剣の乙女さんの動きについてになるかなと思います。あと、霊峰に落ちた隕石(天の火石)にくっついてきた物体Xを処理してる超勇者ちゃんとか。

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