ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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冒険者登録二日目の朝(新しい日の朝)の半竜娘ちゃんです。
半竜娘ちゃんが装備や技能を選んだ背景など少し。長くなったので分割して1時間後にあと一話投稿します。



6/n まずは休養

 うう、頭が痛い、割れそうじゃ、それに吐き気も……。死にそうじゃ……。

 これは二日酔いではない、ハズじゃ。今まで酒を飲んだことはそう多くはありゃせんが、蜥蜴人は酒には強いはずじゃし、脳みその奥の方が挽き潰されるような痛みは宿酔ではなかろうさ……。

 つまりこれは、あの《N氏(ナナシ)》とかいう神の言うとった、「勇者の薬」の副作用ということか。

 

 これほど重いとは……。

 

 まあ、それはそれとして。

 

 ああ、昨日は、なんという日じゃったのか!

 財宝を掠め、竜や魔神を屠り、祖竜からの御言葉も賜り、冒険者仲間と酒を酌み交わす!

 こんなに良き日があろうか!

 

 ティーアース(T  A  S)のやつはいつの間にやら消えておったが、それはどうやら祖竜の一柱たる慈母龍(マイアサウラ)様のお計らいによるものという! 昨日は直に玉声も賜ったのじゃ!! うらやましかろう!?

 その時聞いたことによると、どうにも、かなり無理矢理に【昇竜誓願】を使わせようとしておったとか。

 【昇竜誓願】など、竜祇官と呼ばれる最高位の竜司祭でもなければ使えぬじゃろうし、手前(てまえ)が使えたとしても、こんな若輩で祖竜の列に加わるのは不敬が過ぎるというものよ。

 

 まあ、いずれは手前(てまえ)も、と夢見てはおったし、それゆえ、ティーアースの言に乗った面もある。が、有終の美を飾るにはまだ早かろう。言い訳じゃが、よもやティーアースが1日で手前(てまえ)を祖竜の列に加えるつもりとは、最初の最初に託宣受けた時は思わなんだのよ。

 

 見たいもの、やりたいこと、それにさらなる強敵との闘いも、この四方世界には満ち満ちておる。

 いけ好かぬゴブリンどもを根絶やしにすることもそのやりたいことの一つじゃが、それが達成できず、それでもなんぞ良い考えでも浮かべば、寿命の尽きるころには【昇竜誓願】で願っても良いやもしれん。

 だが、今すぐではない。だって手前(てまえ)はまだ13歳じゃぞ? ツヤツヤサラサラの瑞々しい(さか)りぞ?

 

 まあ、長い残りの人生、あ奴(ティーアース)にはまだ、命の恩があるゆえ、信条に反さぬ限りは、あと一度くらいは頼みを聞いてやらんこともない。*1

 

 そして今も、慈母龍(マイアサウラ)様に御照覧いただけておるという!!*2

 これで奮い立たねば、竜司祭としての名折れよ!

 

 ますます精励せねばな!!*3

 

 

   ○●○●○●

 

 

「まずは休んで、それから奉仕活動からですかねえ」

 

「なんと、冒険には行けんのか?」

 

「ハッ」

 

「鼻で笑いおったぞ、この受付職員!?」*4

 

 冒険に行くつもりで受付に向かった手前を迎えたのは、荒んだ受付殿からの辛辣な対応じゃった。というかこんなキャラじゃったか?

 

「あのですねえ、昨日、どれだけ大変だったと思います? 急に金等級や銀等級が束になってかからなきゃならないような竜が出てきて、そのための緊急依頼を手配したり、最悪に備えて街の警邏や役所の方に掛け合ったり……」

 

 恨み言があふれ出してきおった……。

 思わず尻尾も萎れて垂れるのじゃ……。

 手前(てまえ)にも分かってきたぞ、ここの受付殿は、逆らっちゃならん類じゃな?

 

「……幸いにも大事にはなりませんでしたが、今度は大量の竜の死体の処理が必要です。それも早急に。春の初めは虫も活発になりますし」

 

「そうじゃのう、その節はほんに済まなんだ」

 

「……はあ、お分かりいただけたなら良いのです。それに、あれだけ大立ち回りしたんです、いきなり昨日の今日で依頼というわけにはいきませんよ。お疲れでしょう?」

 

「確かに本調子ではないが、それでも竜の心臓をしこたま食べとるし、昨日より位階は上がっておるし……」

 

「だめです」

 

「軽くゴブリン退治くらい……」

 

「だめです。あとゴブリン退治は軽くありません」

 

「アッハイ」

 

 ダメじゃなあ、これはこれ以上粘っても心証を損ねるだけじゃろうな。

 うーむ……。どうしたもんかのう。

 

 うむ?*5 手伝いを申し出たほうが良いと?

 まあ、確かに、手前(てまえ)がティーアースに乗せられてやらかしたせいで、余分な苦労を背負わせとるし。うむ、責任を取るのが道理であるな。向こうも奉仕活動とかいうとるし。

 

「受付殿、そしたらその奉仕活動いうたか、それを紹介してくれんか。ピンピンしとるのに後始末に参加せなんでは他のモンからの心象も悪かろうし、それか受付殿の手伝いでもなんでも申し付けてくれれば幸いじゃ……」

 

「そうですね……。もしお願いするとすれば……、竜の死体の片づけは体力使っちゃいますし、ギルド内の手伝いとかでしょうか。でも、本当に休まなくていいんですか?」

 

 好いておらん相手に気遣いするとは、なかなか人間ができておるのう。

 培った教養、礼法のなせる業かのう。

 手前(てまえ)も、こちらの礼法を覚えるべきよの。この受付殿に付いて働けば、多少のきっかけくらいは掴めようか?*6

 

「なるほどのう……しかしまあ、休むのと手伝いと、両立させればよかろう?」

 

「えっ、いや両方同時には無理ですよ……って、もしかして」

 

「ご賢察であるな。呪文で【分身】を作ってこちらの手伝いをばさせる。本体である手前(てまえ)の方は、安静に休む。これなら両立できるのじゃ」

 

 分身の方なら、いくらかこき使ってもよかろうさ。それに呪文ひとつくらいなら、この体調でも使えんことはなかろ。*7

 

「呪文使うのも良くないと思いますが」

 

「7回のうちの1回じゃて」

 

「ななっ?! 昨日は4回って言ってませんでしたっけ」

 

「じゃから位階が上がったんじゃて。別に昨日虚偽申告したわけじゃないのじゃよ?」

 

 そう、位階を高めたゆえ、呪文の使用回数も増えたのじゃ。

 

 ではいざ。いーでむ(どういつ)う んぶ ら(か、 げ )……

 

「うぶぶっ、だめじゃ、頭の奥の奥のなんかよくわからんとこが、われつぶれさけそうにいたい……」

 

「ほらやっぱり」

 

 涙目になってうずくまる手前(てまえ)に、受付殿は呆れておるようじゃ。

 もうこのままべしゃりと床に臥せ広がりたくなってきたわい。

 

「今日はよく休んでくださいね~。スタミナポーションは……かえって良くないかもですね。とにかく休んだ方がいいですよ」

 

 確かに魔法薬の後遺症に、薬を重ねるのはまずいじゃろうなあ。

 

「あ、でも休むところあるんです? 昨日街にきたなら、まだ宿もとってないでしょう?」

 

「うううぅぅぅ」

 

 そうなのじゃ。昨日は宴会から寝落ちしてそのままなし崩しに酒場で夜を明かしたから、宿をとっておらんのじゃ……。

 荷物も身に帯びておるものだけじゃし、戦利品は艶やかなる魔女殿に託しておるから置き場に困っておるわけでもない。

 しかし休む場所は必要じゃ。

 

 ギルドの部屋くらい貸しますけど(街中で野宿とか許しませんよ)? という受付殿に甘えるかのう……。

 

 

 

「あ ら。半竜の、ね。もう、起きていい の? 受付さん も、お はよう」

 

「あ、おはようございます。そう、ちょうどその話をしてたんですよ」

 

 と、その時、しゃなりと現れたのは、艶やかなる魔女殿じゃった。

 そして受付殿から話を聞いた魔女殿は、こう提案してくれたのじゃ。

 

「部屋……ないなら、うちに、くる?」

 

 ……よいのか?*8

 

 

   ○●○●○●

 

 

 そこは、冒険者ギルドからそう離れておらん家じゃった。

 

 道すがら聞けば、銅等級以上の冒険者には、それとなく冒険者ギルドが街の家を勧めるのじゃとか。

 まあ、いつまでも宿暮らしというのも、ものが増えると不便なものというのは分かるし、家を持つというのは分かりやすいステータスじゃ。

 定住すれば、それだけで信用が上がるじゃろうし、優秀な冒険者を街に留めるのにもつながる。

 

 特に魔導の道を進むなら、モノの置き場は宿の一室では足りるまい。

 なかには、魔法で創った異空間に全部しまい込むような卓抜した魔導師もおるそうじゃが。

 

「ここ、よ。……ようこそ」

 

「ほほー、良いところじゃのう!」

 

「ふふ。そう、で しょう?」

 

「しかし、良いのか? 手前(てまえ)が転がり込んでも?」

 

 とてもありがたい話であるし、手前(てまえ)としては是非ともお願いしたいのじゃが。

 

「ええ、いっぱい、貰ったから、ね。気に しないで、ね。その分配とか、気に 入ったの を、持ってったり とかも、一緒に住むと、やりやすい、でしょ?」

 

「むう、渡した竜の素材や魔法の品のことを言うとるなら、それは約定を守っただけじゃて。恩に着せるつもりはないのじゃが。言うとることの理は認めるが、沽券にかかわるというか……」

 

「それなら、それで いい わ。じゃあ、改め て 貸し、にしとくから、受けなさい、ね?」

 

 ……ここまで言われて頑固に断るほど手前(てまえ)も拗らせてはおらん。ここは、借りておくのじゃ。

 

「かたじけない。では、先達たる魔導師殿。よろしく頼む」

 

「ええ、いい わ…よ」

 

 

   ○●○●○●

 

 

 扉を潜ると、本と香煙の匂いのする空気が迎えてくれた。

 いかにも術師の部屋じゃの。

 じゃが、ほかに気配はないのが意外じゃった。

 

「おろ? あの槍を持った御仁はおらんのか?」

 

「……いない、わね」

 

「てっきり一緒に住んどるものじゃと」

 

「そ、でもないの、よ。気になる の? 彼、が」

 

 なんかゾクッとするのじゃ……。*9

 

「あっあっあっ。いや確かに蜥蜴人は強者に惹かれるものじゃて、あの御仁には手合わせ願いたいとは思うとるが、それ以上は思うとらんぞ」

 

「ふ、ふ。なら、いいわ。気を使わせ ちゃったわ、ね」*10

 

 槍使いの御仁とは住んでおらんのか。お互い、変に遠慮しとるのかのう。お似合いじゃと思うのじゃが。

 只人のつがいの機微はよくわからんし、異種族の手前(てまえ)が口を挟んでもこじれそうじゃし。まあ、いいか。

 

 とりあえずはご厚意に甘えて休むことにしよう。

 ああ、そうじゃ、今後、家事の分担もするやもしれん。その時のために、料理のひとつも作れた方がよいかのう……。

 

 Zzz……。*11

 

 

*1
ナナシ「やめといた方がいいと思うなあ。1日達成TASをまたやらされて、今度は邪教徒の塔を乗っ取らされて、そこを踏み台に魔神王のとこにワープさせられて魔神王を魅了させられてゴブリン絶滅号令出させる『ふっ、おもしろい女だな』ルートとかで走らされそうだよ? 乙女ゲー展開にハマってるTASさん居るらしいし。ちなみに【ゴブリンジェノサイダー】獲得TASとしては、混沌陣営に寝返るルートの方が早いとは言われてる」

*2
ナナシ「殺意高めのGMだけどね。恐竜さん系は試練が好き過ぎて困る」

*3
ナナシ「いやまず休めよ」

*4
ナナシ「こんな受付嬢さん初めて見るぞ!? えっ、受付嬢さんの好感度ひっく!? 犯罪者一歩手前の扱いとか相当やぞ!」

*5
ナナシ「好感度上げよう。文字も書けるんだから代書でも書類整理でも、それか竜の死体の片づけでもなんでもさ、手伝いを申し出るんだ。実際できるか別として、気遣いするんだ」

*6
ナナシ「それだっ! 礼儀作法スキル大事!!」

*7
ナナシ「いや、それはどうかなあ? キャラシ上は全快してるけどさあ……」

*8
ナナシ「キマシ……?」

*9
ナナシ「おっと? 恋敵認定されると大変だぞ?」

*10
ナナシ「セーフ?」

*11
ナナシ「完全に(寝)落ち(し)たな……」




魔女さんがどこに住んでるか、既出の情報あったかな……。

※未解決フラグ一覧(オリジナル要素)
 ・水路の沼竜
 ・下水道の未踏遺跡、急に消える冒険者(放置によりランダムで白磁等級冒険者がロストします)
 ・経験点に軍令ボーナス乗ってたけど、軍籍残ってるってこと?(出頭命令フラグ)


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