ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
閲覧、評価、お気に入り登録、誤字報告、ここ好きタップ、感想、いつもありがとうございます! なんとかGW中に投稿できました……。
ゴブスレTRPGサプリももうすぐ発売で楽しみです。吸血鬼プレイも公式でサポートされるので、例えば、宵闇幻燈草子の
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◆オーガ領域でのゴブリンの扱いについて
まあ昔の野良犬の有様・扱いに近いと思われます。集落のそこかしこで割と見かけるので、よく適当に虫の居所の悪いオーガに棒で打たれては死に(小鬼も歩けば棒に当たる)、新しく手に入れた弓矢の的にされては死に、新しく覚えた魔術の的にされては爆散し、稀に家屋に侵入してきてオーガの赤子や
ゴブリンを飼い馴らしてる物好きもいると思います(
(オーガによる人間の畜産の試みについては、『ミノタウロスの皿』というよりは『デミウルゴス牧場』(オーバーロード)的な感じになりそうですよねえ)
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●前話:
ハチマキの青年剣士一党、雪山修行中! 彼らも
35/n 雪の魔女の洞窟-1(蜥蜴人モフ化計画&離陸)
はいどーも!
竜の怒りが
前回は【ウィズボール優勝】の実績を解除しつつ、半竜娘ちゃんが
時間は秋から冬に飛び、例年よりかなり厳しい冬に疑問を覚えて知識神様にお伺いを立ててみたら、「実は混沌の勢力の陰謀だったんだよ!」 「な、なんだってー!?」と
闇よ落ちるなかれ! と知識神の信徒である文庫神官ちゃんが聖句を唱えて目を瞑ったのは、きっと半竜娘ちゃんの怒りのオーラが恐ろしいからではないはず。
そう、半竜娘ちゃんはお怒りなのです。
『
うわあ、【
まあそれも当然。
半竜娘ちゃんが崇める祖竜は、天の火石が落ちたことによる寒冷化によって滅んだとされています。
そんな宗教体系を持つ祖竜信仰の竜司祭である彼女にとって、冬を長引かせる陰謀は、まさしく信仰に対する挑戦と同義!
蜥蜴人自体も寒さに弱いのですから、これは生存闘争でもあり、宗教戦争でもあるのです。
赫怒のままに暖炉の前で半竜娘ちゃんが立ち上がり、半竜娘ちゃんの上に乗っていた幼竜娘三姉妹たちがコロコロと転がって落ちました。
「冬を長引かせるじゃとぉ……!? 何もかもを凍り付かせるじゃとお……!?」
「いや、そこまでは言ってないわよ」
森人探検家ちゃんが突っ込みますが半竜娘ちゃんの耳には届かないようです。
「そのような陰謀、この
GGRRRUUUAAARRRR!!! と半竜娘ちゃんが吠えて、拠点の家がびりびりと震えます。
外からは、がらがらドサッと、家の軒先にぶら下がった氷柱や屋根に積もった雪が落ちる音が。
「遠征じゃぁっ!!」
「知ってた」 「まじかー」 「行きましょう、お姉さま!」
リーダーである半竜娘ちゃんの決定に異を唱えることもなく、森人探検家・TS圃人斥候・文庫神官たちはそれぞれ準備を始めに立ち上がりました。
……あ、幼竜娘三姉妹ちゃんたちは、お留守番です。さすがに生後1年未満の幼児―― といっても只人の9歳児くらいには育ってますが―― を雪山には連れていけませんからね。
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というわけで!
やってきました冒険者ギルド。
酒場も併設されたギルドの広間の中では、冬休み中の冒険者たちが
冬は人の往来も少なく、怪物は大体が鳴りを潜めますので、冒険者たちもあまり冒険には出かけません。
酒場の方では、羽衣の水精霊の祭壇に供え物がされ、冬のせいか装いを氷姫じみたものに変えた羽衣の水精霊が、その供え物を飲んで陽気に冒険者たちと話しています。すっかり居ついていますね……。
さて。
山間の村々への救援依頼を多くこなしている半竜娘ちゃん一党が不在になることは、ギルドに知らせておいた方がいいでしょう。不義理をしてはいけません。
あと、やっぱり情報収集と言えば冒険者ギルド……なんですが、冬のフィールドの情報は、村々の救援に野に空にと駆けずり回った半竜娘ちゃん一党が一番情報持ってますから、わざわざ聞くまでもないかも知れません。たぶん今回の情報収集フェイズはある程度はスキップできますね。
ずんずんとギルドの中に入っていく半竜娘ちゃん&その一行。
それに気づいたのか、暖炉の前にいた大きな二つの影がのっそりと振り返りました。
「おお、姪御殿……」
一つは半竜娘ちゃんの叔父でもあり、ゴブスレさんと一党を組んでいる蜥蜴僧侶さん。
暖炉の前で丸まっています。
「尼さんじゃねーか、ちょうどよかった……」
もう一方は、鮫歯木剣の蜥蜴戦士。
恋人である交易侍祭が、少しでも温めようと、ぴったり寄り添ってくれています。
お熱いことですね!
「この寒さは耐えらんねー……」
アツアツの恋人ですが、物理的に温かくなるかというとそれにも限界があるわけで。
鮫歯木剣の蜥蜴戦士が、面目なさげに、しかし切実に懇願してきます。
「また【
口に出したのは鮫歯木剣の蜥蜴戦士だけですが、半竜娘ちゃんの叔父である蜥蜴僧侶さんも同じ気持ちのようです。
寒冷耐性が低い蜥蜴人にとっては切実な問題ですからね。
大きな体を丸めてウルウルした瞳で見つめてきます。
「そんな暇はないのじゃ! これでも飲んどれ」
そんな懇願を切って捨て、怪しげなポーションを相手のお口にシュゥゥゥーッ!!
「ガボボボーーッ!?」 「な、なにすんですかー!?」
狙い過たずに鮫歯木剣の蜥蜴戦士の口にぶちまけられた怪しげなポーションに、彼の恋人の交易侍祭が悲鳴を上げます。
同じものを叔父の蜥蜴僧侶さんの方にも投げてますね。蜥蜴僧侶さんは暖炉の前で丸まったまま、危うげなくそれを尻尾でキャッチ。「ふむ、これは……」と
が、半竜娘ちゃんは、鮫歯木剣の蜥蜴戦士のダメージも、その恋人の交易侍祭の抗議も、叔父の蜥蜴僧侶の疑問も無視して受付の方へと、ズシン……ズシン……と歩いてきます。
そして、顔を引き攣らせる受付嬢さんと、「資料整理しないと~」とか言って戦略的撤退をする監督官さんを見据えて進む半竜娘ちゃんの後ろで、鮫歯木剣の蜥蜴戦士の身体に異変が!!
「ぐぅぉ……」 呻き声とともに蹲る鮫歯木剣の蜥蜴戦士。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」 それを心配する恋人の交易侍祭さん。
「が、あ。か、身体が――」
「い、いま、【解毒】の奇跡を――」
「―― からだが、
すわ、やはり毒物か!? と【解毒】の奇跡を嘆願しようとした交易侍祭さんの前で、鮫歯木剣の蜥蜴戦士のシルエットがポンッと一回り膨らみます!
「え?」
呆然とする交易侍祭さんと、ギルド中の冒険者が見たものとは――?
「お、おお。なんだ。うん。痒いのは治まったけど、いったい、何が……」 「……モフモフ……」 「うん?」
「も、もふもふ! モフモフです!! えぇっ、なにこれすっごい! かわいい! もっふもふ!!」
そこには鱗を羽毛に変換した鮫歯木剣の蜥蜴戦士の姿が!!
交易侍祭さんが、モフモフになった恋人の蜥蜴人―― 蜥蜴人? に「もっふもふー!」と言いながら抱き着きます。
「おお、なるほど。このポーションは、鱗を羽毛に生え変わらせるものであったか」
手元の羽の絵ラベルのポーションを掲げて冷静に分析したのは、蜥蜴僧侶さんです。
そう、何を隠そうこのポーションは、羽毛化ホルモン成分と、水鳥の羽毛を溶かしたものと、【竜翼】の祖竜術を込めた【竜血】を混ぜ合わせた逸品。
もともと【竜翼】の祖竜術は、ドラゴンのような膜翼以外にも、鳥のような羽毛に覆われた翼にも派生させられる術です。
その羽毛要素に絞って効果を強調し、効果時間を延長させる工夫をしたのがこの『換羽のポーション』です。
「おお! ぬくい! 寒くないぜ!」
「もふもふだ~! これはこれでアリですね!」
羽毛が生えたのを受け入れた鮫歯木剣の蜥蜴戦士と、その恋人の交易侍祭さんは嬉しそうにしてます。 ヨシ!
ちなみに【竜翼】の術と競合するため、【竜翼】で空を飛びたい場合は併用できません。
なので半竜娘ちゃんは自分では使わなかったわけですね、これから高速移動するために空を飛ぶ必要がありますから。
「しからば拙僧も。―― おお、確かにこれは
蜥蜴僧侶さんもグイっとポーションを飲んで、モフッと羽毛を生やしてぬくぬくしだしましたね。
妖精弓手さんが騒動の気配に起きたのか、ギルドの2階の宿泊スペースからひょっこり顔を出して、モフモフになった蜥蜴僧侶さんを見て「ええっ、鳥になってる!?」と目を丸くしています。
なお、幾人かいる鳥人の女性冒険者がザワザワしてました。羽毛を生やした蜥蜴僧侶さんを見るその目は妖しかったことを付記します。
蜥蜴人の美丈夫ってのは、鳥人基準でも、もともとイケメンの扱いなのですが、羽が生えることで、鳥人的にもさらにイケメン度が上がって見えたのでしょう。
背後の喧騒を無視して、半竜娘ちゃんはズンズンと受付に進み、どっかりと座り込みました。
受付の向こうで座っている受付嬢さんと、胡坐をかいた半竜娘ちゃんの視線がほぼ水平にぶつかります。立ったままだと声も聞こえづらいですからね、お互い。
「あ、あの~、な、なにか御用でしょうか……?」
「…………」
「(目が据わってるー! な、なんとかいってください~~!)」
私何かしましたかぁ? と涙目になりつつある受付嬢さんですが、そこに救いの手が!
「おうおうどうした、【辺境最大】! 随分と虫の居所が悪い見てえじゃねえか。だぁが! 受付さんに当たるのはいただけねえなぁ。それにお前さんもかわいい顔が台無しだぜ? ほれ、笑顔笑顔!」
はい。槍使いさんですね。
特に理由のある叱責と、特に理由のない口説き文句が半竜娘ちゃんを襲う!
あ、ちなみにゴブスレさんは本日不在です。
食糧不足の村の救援に、牧場から牛飼娘さんと一緒に物資を積んで出発したそうです。牧場主さん経由の頼み事だとか。
半竜娘ちゃんも特に使う予定のなかった―― 申し出を受けた昨日時点では―― 独立懸架式突撃機動馬車(空間拡張
ゴブスレさんとしては牛飼娘さんを守るために可能な限りの手を尽くすのは当然、というところでしょう。
というわけでゴブスレさんが不在なので、いい感じに槍使い兄貴が受付嬢さんに助太刀したというわけですね。
半竜娘ちゃんは据わった眼をジロリと槍使い兄貴に向け、槍使い兄貴を見ている元大家で研究仲間で恩人の魔女さんに向け―― 先達の顔を立てる必要があり、受付嬢に激情のまま八つ当たり気味に接するのは確かに筋が違うと思い直し――
「……。フゥー。そうじゃな、少し気が立っておった」
深く溜息をつくと端的に用件を話し始めました。
「今年の厳しい冬が、混沌の陰謀であるとの確証を得たのじゃ。故に――」
青い灯を宿すガンギマリの眼で半竜娘ちゃんが宣言します。
「我らこれより修羅に入る!」
端的……、端的とは?
ほら、受付嬢さんポカーンとしてますよ。
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事情を説明した半竜娘ちゃんに納得を見せた受付嬢さんと、槍使い兄貴。
「そういや
冬でもその武名を
「ああ、毎年の恒例のあの依頼、ですね」
「ま、まあ俺にかかれば、あんな巨人どもなんてひとひねりってなもんですよ! はっはっは!」
受付さんに気にかけてもらえて満更でもない感じですね。
「手前らも山の方には配達依頼でさんざっぱら回っとるのじゃ。去年の様子との違いをまとめたりして、寒波がひどい方向も目星はつけとる。元凶はおそらく、北の山の方じゃろうな」
「それでしたら、もう、すぐ出立されるんですか?」
受付嬢さんの問いに、半竜娘ちゃんは首を振ります。
「ああいや、それだけではのうてな。手前は、今まだ無事な村の位置しかわからんからの、過去の依頼の状況から廃村も含めた地勢を頭に入れておきたいのじゃ」
あ、一応、冒険者ギルドでも情報収集するんですね。
何かあった時に逃げ込める―― あるいは混沌や山賊の策源地になっている可能性のある―― 廃村の跡地についても、分かっているに越したことはないですからね。
「なるほど、それでしたら、5年10年飛ばしくらいで、冬の配達依頼の履歴を調べてきましょうか」
「手間をかけるが、よろしく頼むのじゃ」
「はいはい、少々お待ちくださいませ。冬の依頼の数は多くないのでそこまで時間はかからないと思いますよ」
受付嬢さんが奥に引っ込みます。
「聞こえてました?
監督官さんとの会話が少し漏れ聞こえてきましたが、早く情報が揃うならそれに越したことはないので放置でいいでしょう。
…………。
……。
追加の情報も仕入れて、物資の追加調達もして、出立をギルドに知らせて……。
これでまあ、街での準備はだいたい終わりでしょうか。
それでは、いざ、出発です。
「分霊人形が恒常維持中の【加速】呪文、活性化。
【竜翼】のポーション摂取による飛行形態への変形、寒冷対応のため羽毛モード並行励起。
【分身】のスクロールで分身作成。
本体から分身へ、マナコントロール補助」
ギルドの前に出てきた半竜娘ちゃんが、冬休み中の冒険者たちに興味深そうに(あるいは嫉妬混じりに)見つめられるなか、自前の魔法の道具を大盤振る舞いしていきます。
スクロールで作成された分身ちゃんが、さらに魔法強化を引き継ぎます。
「自己強化、
本体の巨大化、
航路確保と体温低下防止のため術者中心に強制快晴化、
空気抵抗低減のため風精霊に祈請、≪
本体の方が巨大化し、天の雪雲にぽっかりと穴が開き、穏やかな風が吹きます。分身が使える9回の呪文のうち4回を消費。
ギルドの中から見ていた冒険者たちが驚きに目を丸くします。贅沢な使い方ですからね。
さらに追加で森人探検家が【
「で、方向はわかるんですか?」 分からなければもう一度知識神様の奇跡を嘆願しましょうか、と文庫神官が問うてきます。
「【天候】呪文の効きが悪い方へ悪い方へと向かえば良いのじゃ。寒波が術による不自然なものであるならば、天候操作と競合し、抵抗を覚えるはず」
「なるほど」
背を屈めたフル
「≪俊敏なりし
北の空へ向かう一陣の風―― いえ、流星となって、
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1.そのころのゴブスレさんの話
「さっきは危なかったねー」
「そうだな」
ゴブリンスレイヤーは、山村への食料救援のために牧場主経由でもたらされた依頼を引き受けて、牛飼娘とともに雪山を馬車で縦走していた。
良質な軍馬に匹敵する脚をもつ麒麟竜馬のおかげで、数日かかる道程をずいぶんと短縮できている。
それに無骨な馬車は、荷物の積載量だけでなく居住性にも配慮しているようで、中は冬とは思えないほどに暖かいようだ。
そのおかげか、御者席と馬車の間の小窓を開けて話しかけてくる牛飼娘は、ずいぶんと薄着だ。
新しく買った“よそゆき”の服を着ているのは、“似合っている”とゴブリンスレイヤーは思ったし、感想を乞われて実際に口に出しもした。
まあ、街の外は危険であるし、何があるかわからない。もっと暖かく、動きやすい格好の方が望ましいとは思うのだが……。
「ふんふふーん♪」
「…………」
とはいえ、幼馴染の牛飼娘が嬉しそうなので、それはそれで良いのかもしれない。
あるいはソロで活動していたころの自分であれば、それを油断と断じたかもしれない。
今年の冬は雪が多い。
陽に当たらないと気鬱になるとか言うし、こうして気分転換に少し離れた村へのお使いに行くことも良いのだろう。
護衛として、無事に荷物と牛飼娘を届けなければならない、と、ゴブリンスレイヤーは薄汚れた兜の面頬の下で、顔に決意を上らせた。
だが、いつだって問題は――
「でも、こんな寒い中でもゴブリンって出るんだねえ」
「ああ。奴らはどこにでも出る」
―― そう、ゴブリンだ。
道中、やけに多くの
大方やつらは無計画に食料を浪費し、この雪の中で略奪に出る必要に駆られたのだろう。
あるいは、馬車に乗っている
「いやー、それにしてもこの子達ってやっぱり凄かったんだねえ」
「確かに並みの馬ではこうはいかなかったかもしれない。……いい馬だ」
先ほどは小癪にも小鬼が木と木の間に綱を張って馬の足を取ろうとしていたが……。
麒麟竜馬はそんなものはものともせずに、そのまま馬車を突っ切らせた。
常識はずれなパワーだった。
さらに随分と賢いようで、ゴブリンスレイヤーが鏃を緩めた矢―― 鏃が体内に残ることで化膿させ負傷した小鬼を中心に病を発させる工夫―― を放つ間も、理想的な進路を保ったままであった。
殲滅はできなかったが、数匹の小鬼は馬車が跳ね飛ばしたし、何匹かの小鬼は緩めた鏃が刺さったまま体内に残ったはずだ。
結局、半竜娘から借りた馬車と麒麟竜馬は、小鬼どもを難なく蹴散らして振り切ることに成功した。
―― 配達先の村に食料を置いたら、周辺の小鬼の掃討をするべきだな。
「ねえ」
村についたときの算段を立てていると、牛飼娘の声に意識を引き戻された。
「……えっと、ありがとね」
「何がだ」
「ゴブリンから、守ってくれて」
「当然だ。俺はゴブリンスレイヤーだからな」
「うん、でも。当たり前でも、私は安心したから、お礼は、ね。―― ありがとう」
しばし沈黙。
牛飼娘は、ゴブリンスレイヤーの言葉を待っている。
「そうか」
「うん。そうだよ!」
返事は“どういたしまして”の方がいいと思うけど。と付け足した牛飼娘の言葉は
あるいは、あの故郷の村の生き残りを、ゴブリンから守れたことに、
不意に空が、まるで何かに引き裂かれたかのように一直線に晴れて、葉を落とした枝の間から太陽の光が差した。
配達先の村はもうすぐのはずだ。
<『1.超音速半竜娘ちゃん(強制快晴化仕様)が上空通過中』 了>
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2.兎人の猟師が、パイにされる直前の話
――
――お山に黒蓮が咲き誇り
――冬だ。冬だぞ。俺らの季節がやってきた!*2
「約束どおりに来てやったぞ! 氷の魔女よ! これ以上は村に手出しはさせん!!」
村に
兎人の猟師は、妻を、そして娘と息子と娘と息子と息子と娘と息子と娘―― 8人の子供たちを、また、村の仲間たちを守るために、単身、氷の魔女の
もちろん兎人の猟師は、白銀の矢も、魔法の薬も、渡すつもりなどない。
抵抗手段を失った村が遠くないうちに
「(故に、ここで氷の魔女を仕留める! この白銀の矢を代々継いできたのは、この日のためなのだから!)」
統率する氷の魔女さえいなければ、雪男たちの勢いも削がれるだろう。
毎年のこととして喰われる御同輩はどうしても出てくるだろうが、それでも兎人の多産さを考えれば、許容範囲に収まることだろう。
「出てこい、氷の魔女め!」
だが、相手が“一人で来るように”と言ってきたところで、相手も一人で来てくれるとは限らないのだ。
「間抜けな兎め! 誰がまともに相手をするもんか。お前たち、やぁーっておしまいなさい!!」
「「「 アラホラサッサー! 」」」
どこからか響いた氷の魔女の声に従い、勇敢な兎人の猟師の前に、雪色の毛皮の大猿のような姿の怪物――
白銀の矢は、氷の魔女には、特効。
だが……
「くっ!」
しかも、矢も薬も、一射分しかないのだ。
兎人の猟師は白銀の矢をしまい込むと、通常の矢に切り替え、また、山刀をいつでも抜けるようにした。
兎人の猟師は奮戦した。
小柄で敏捷な身体を生かし、
しかし、雪の中の雪男の動きは、なかなか侮れないものがある。また、問題なのは奴らの巨体だ。大きな体を生かした跳躍と、長い手による掴み攻撃は、徐々に兎人の猟師を追い詰めていく。
逃亡も考えた。
しかし、いつの間にか、洞窟の前は多くの
そして、ついに
あっけないほどに残酷に、猟師の身体が宙を舞い、切り札の白銀の矢はどこかへ吹き飛んだ。
全身の骨が枯れ枝を踏むように砕ける激痛が、宙を舞って雪の上を転がった彼を襲った。
「(ぐ、ぅ、ぁ……。失敗した、失敗した失敗した失敗した……! たかが猟師の分際で、俺は、勇者にでもなったつもりだったのか! なぜ洞窟に忍び込まなかった! なぜ奴らの前にわざわざ姿を現した! 猟師の戦い方をすればよかったのだ、この大馬鹿野郎が!)」
後悔したところでもう遅い。
見ろ、
走馬燈がめぐる。妻よ、子供らよ……すまない……。無念のうちにその生涯を終えようとした兎人の猟師の長い耳に、ついに踏み付けの轟音が響いた。
「……生きている?」
だが、踏み潰されたのは、兎人の猟師ではなかった。
「GGGRRRUUUUOOOOO!!!」
「ドラゴンだぁっ!?」 「ドラゴンが落ちてきたぁっ!?」 「兄貴がドラゴンに潰されたぁっ!!」
泡を喰った声を上げる
兎人の猟師が痛む身体で見上げれば、自分を踏み潰そうとしていた
その巨大な竜の足の裏から、鮮血が雪へと染み込んでいた。
さらに見上げれば、羽毛に覆われた足首、民族風の衣装、翼、そして青い
この人面の巨竜が、助けてくれたのだろうか?
兎人の猟師が洞窟の中で戦っていれば、この人面の巨竜の応援はなかっただろう。
皮肉なことに、兎人の猟師が、洞窟の前の開けた場所で、勇者のように大立ち回りをしたからこそ、間一髪で救いの手が間に合ったのだ。
「チィッ、良いところで―― だが、矢は回収できた! どこの竜だか何だか知らんが、
氷の魔女の使った【吹雪】の呪法が、人面の巨竜を包み込む。
人面の巨竜は、吹雪を嫌ったのか、広場から飛び上がる。
―― 兎人の猟師をふうわりと優しく雪ごと蹴り上げて、それを口に咥えて。
兎人の猟師が意識を失う前に見た最後の光景は、浮遊感とともに迫る、てらてらと光る、人面の巨竜の口の中だった。
<『2.兎人の猟師「食べないでくださーい!」 半竜娘ちゃん「たべないよ!」』 了>
原作小説9巻(リンク先には試し読みもあります)の雪の魔女編ですが、ファイティングファンタジーシリーズの「雪の魔女の洞窟」がモチーフの一つだと思われます。雪の魔女の攻略だけで終わらず、急いで次の目的地に駆けつけないと色々と間に合わないあたりも、原典をリスペクトした構成かと。
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原作小説最新15巻の特装版に妖精弓手さんのメタルフィギュアがつくそうですよ!→https://ga.sbcr.jp/bunko_blog/cat381/20210427/
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みなさま、ご感想やご評価をいただきまして誠にありがとうございます! 精進いたしますので引き続きよろしくお願いいたします!