ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

128 / 184
 
みなさまいつも閲覧、ご評価、お気に入り登録、誤字報告、ここ好きタップ、そして感想ご記入も、ありがとうございます!

===

●前話
闇人リッチー(昇天中)『うおおおお!? 御光臨いただいたヘル様にヨシヨシしてもらってバブってオギャるつもりだったのにぃいいい!? 放せ天使(ヴァルキリー)!! せめて冥府に……!』
天使(ヴァルキリー)『だめでーす。戦いの最中(さなか)に命を落とした戦士はこちらの管轄でーす。一名様ごあんなーい♪』
闇人リッチー『ちくしょうめええええ!!!』(天に召される)
 


35/n 裏-4(雪の魔女の末路・下山して街にて・奇跡の島へ)

 

1.彼らの世知辛(セチガラ)修行事情

 

 

 雪山を行く冒険者一党。

 彼らは伝説的な圃人の斥候である “忍びの者” に稽古をつけてもらっている幸運な―― 幸運な?―― 一党である。

 

 メンバーは――

 ―― 田舎から出てきたという鉢巻き(鉢金)を巻いた青年剣士、

 ―― その幼馴染の女武闘家、

 ―― 都の学院を優良成績で卒業したというつり目で眼鏡の女魔法使い、

 ―― その弟で飛び級するくらいに優秀でシスコンな少年魔術師、

 ―― そして小柄な体躯に剣を携えた圃人の少女剣士、

 ―――― その5人だ。

 

 今は師匠から言いつけられた、客人たち―― 太陽のような笑顔の少女・凛とした女武人・ミステリアスなフードの魔術師の3人―― の案内を終えたところだ。

 とはいっても、実際は客人たちは案内途中で山頂で起きた異変を察知すると、何かの術法であっという間に空を()けていってしまった。

 

 遠くに見える光条は、ひょっとするとあの客人らによるものだろうか。

 だとすればなんと遠い(いただき)か。

 “忍びの者” ほどの者に案内の筋道をつけるように依頼できるくらいだから、恐らくは非常に高位の冒険者か、あるいは王室か貴族のお抱えかなのだろうが、自分たちがあの領域に辿り着ける日は来るのかと思ってしまう。

 

「「「「「 ………… 」」」」」

 

 思わず言葉少なになるのは、山の頂上に見えるおぞましい気配のするひっくり返った天空大地の幻影―― 幻影ではないのかもしれないがそうだとすればなおさら恐ろしいので幻影ということにする―― から吹き下ろされる死の冷気によるものだけではない。

 それぞれの胸の(うち)では、どのようにすればあれほどの高みに登れるのかという思いが渦巻いていた。

 あるいはそのために、彼らの師匠である “忍びの者” は今回、あの太陽の少女らの道案内を青年剣士ら一党に任せたのかもしれない。

 

 冒険者の頂点を見せるために。

 

 

「……まあそれはそれとして」

 

「ああ」

 

「そろそろマズいですよね~」

 

「……ああ」

 

 冬の雪山に籠って、四方世界でも上位に入る凄腕の斥候である “忍びの者” から教練を受けて……。

 古今東西の武道の奥義のなかから自分に合うものを伝授され、高位の呪文やマイナーな呪文を教授され。

 さてお幾らかかるでしょう?(H o w m u c h ?) というわけで。

 

 頭目を任されている青年剣士は頭痛を和らげるように眉間を揉み解した。

 

「ここらで金策しとかないと、最悪冬山で師匠から放り出されかねないぜ」

 

「分かってる……だが、()てがなあ」

 

 赤毛の少年魔術師の危惧も分かるが、解決策は……となると……。

 

「さっきのお客人のおこぼれ狙い、というのも無くはないんじゃ?」

 

「それはどうかしらね。おこぼれだとしても、私たちの手に負えるとは限らないわけだし」

 

 女武闘家のアイディアに、しかし女魔法使いが難色を示す。

 悪くないアイディアだが実力が隔絶しすぎていてうまくおこぼれを拾えるかというと、リスキーだ。

 客人たち(超勇者一党)が一振りで滅ぼすことができる敵でも、自分たちでは死力を尽くして戦わなくてはならない相手かもしれない。

 

「はーあ。都合よく全身が良い値段で売れる素材になるような、そんな怪物(モンスター)が出てこないですかね~」

 

 できれば私たちが勝てるくらいに弱った状態で。と都合のいいことを言うのは圃人の少女剣士。

 

「そう都合よくいくわけねーって」

 

「なによー。言うだけなら自由でしょ?」

 

 少年魔術師が半目で圃人の少女剣士の妄言を一蹴する。

 そしてかじかむ手をすり合わせて、歩行補助にしている杖を握りなおした。

 

 圃人の少女剣士は唇を尖らせて重ねて言う。

 

「そうね、例えば吸血鬼とか。死霊術師に全身の素材が売れるらしいじゃない?」

 

「はあ。……まー、確かになー。首だけでも生きてられるっていうし、魔眼持ちなら抉り出してしかるべき筋に流せば良い値がつくだろうさ」

 

 溜息一つ。少年魔術師は、圃人の少女剣士の妄言に乗ってやることにしたらしい。

 なんだかんだで付き合いが良いのは、彼の美点の一つだった。

 

「だがなあ、問題はそんなしかるべき筋なんてとこに伝手はねーってことと、そもそも正真正銘の吸血鬼相手にそんな素材を確保するような余裕があるわけねーってことだよ」

 

「分かってるってばー。いいじゃん最後まで乗ってくれてもさー。……伝手については現物払いってことで師匠に売り払えば良いんだし」

 

「えー、9割持ってくだろ、あの人」

 

 鬼師匠のがめつさを思って、少年魔術師がげんなりした顔をした。

 つられて少女剣士も同じような顔をした。おっしょさんならやりかねない。

 

「あとそもそも俺らで勝てるかって問題が解決してない。……吸血鬼だぞ? 術の名手で、鬼の名を冠するだけあって怪力剛力で、殺しても生まれた土地の土の中から復活するとかいうし、個体によっては強力な特殊能力持ちだっていう、アンデッドの中のアンデッド……」

 

「じゃあどのくらいまで弱ってたら勝てるっていうのー?」

 

「そうだな……」

 

 思案する少年魔術師。

 

「例えば、何かの事情で―― 高位の奇跡の余波とか特殊な術とか?―― で大きな傷を負って力を消耗した状態で固定されたまま、やられた吸血鬼がいたとして」

 

「ふむふむ」

 

「そいつが復活したてで態勢が整わないところを奇襲して押し切れば、何とかなる可能性も……? 復活回数を消費してれば逃がすこともねぇし、弱体化の程度にもよるだろうけど、まだ目があるんじゃねぇかな」

 

 あとはこっちが銀や真銀(ミスリル)の装備を持ってるかとかにも()るだろうけど、と続けて、ふと周りにいる年長の仲間たちが静かに緊張を高めていることに気づいた。

 

「え、みんなどうしたんです?」

 

「しっ」

 

 圃人の少女剣士の暢気な声に、女武闘家が静かにするようにとゼスチャーを返した。

 そして行く先に見える窪地を指さした。

 

「……なんかいる……」

 

 窪地の中央、白く、白く、白い人形(ヒトガタ)があった。

 女の形をしたものだ。

 だが()()()()。吹雪いた窪地の中で、まるで別のテクスチャを雑に張り付けたかのようにその存在が浮いている。

 

「ちっ、だいぶ力を失っちまったよ……。まさかあんな小娘(女神官)があたしの【魅了の魔眼】に抵抗してくるとは。だが完全に滅んでさえいなければどうとでもなる。何百年か前に至高神の坊さんに封印された時と同じさ、少しずつ力を蓄えればいい。白銀の矢に塗った魔法の薬のレシピが不完全だったんだろうさ、適当に混ぜただけで十全の効果が出るものか。もし薬が完全だったら、ここで復活も出来ずに完全に滅んじまうところだったが、なんとかなったか……」

 

 耳を澄ますと、そのように、かすかにその女の形をしたものが漏らした独り言が聞こえた。

 

 

 

 それを聞いた青年剣士ら一党が、顔を見合わせた。

 

 “何らかの特効の薬で弱って消耗した”

 “復活したての魔眼持ちの吸血鬼”

 “しかもこちらに気づいていない”

 

 ―― おあつらえ向きでは?

 

 そして次の瞬間には既に魔術師姉弟は呪文の詠唱を始めており、それぞれに必中の【力矢】の連射の準備を整えていた。

 女武道家はかつて郷里で父から伝授され、最近の師匠との修行で開花した、特殊な呼吸法(武技【転龍調息】)により肉体に太陽の息吹を駆け巡らせた。*1

 青年剣士と少女剣士の武器組もそれぞれに得物を構えて突っ込む準備はできている。

 

 即応して態勢を整えられたのは、厳しい修行の賜物に違いなかった。

 

 狩って剥ぎ取る(ハック&スラッシュ)―― 冒険者の本懐である。

 

「やるぞ」

 

「やりましょう」

 

 そういうことになった。

 

 

<『1.弱り目に祟り目、あるいは棚から牡丹餅』 了>

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

▼△▼△▼△▼

 

 

2.一方、金満冒険者

 

 

 ―― 運よく弱った吸血鬼に遭遇した青年剣士一党は【魅了の魔眼】の他、吸血鬼素材を手に入れた。

 それはすぐあとに彼らの師匠に売却され。

 その師匠はそのうちの一部を半竜娘一党に売りつけることにした。

 

 

「よーう、半竜の」

 

 どこからともなく忍びの者が、下山する半竜娘一党の前に現れた。

 

「なんじゃ。……修行の追加料金なら払わんぞ?」

 

「そっちこそ後から難癖付けてくんじゃねぇぞ? っと、そうじゃねえ、おい、これなーんだ?」

 

 ニヤリと笑う忍びの者がどこからともなく取り出したのは、精巧な目玉の形の石。

 

「それは……」

 

 目聡(めざと)い半竜娘はそれが何か気づいたようだ。

 

「ご明察、魅了の魔眼だァ。【石化】の術で石にしてあるがな」

 

「ほう」

 

「テメエは石喰いなんだってなァ? 魅了の術の籠った石化した魔眼……要るか?」

 

「ぬぅ……」

 

 半竜娘のコレクター魂がうずきます。

 【胃石(ベゾアール)】の術の応用で、半竜娘は力のこもった石から、その効果を己の身に吸収することができるので、戦力アップにも繋がりますし。

 

「あー、要らねえなら良いんだ、良いんだ。邪魔したな。あーあー、折角の出物(でもの)だっつのになー、あー、残念残念」

 

 と、逡巡した半竜娘を置いて、忍びの者は去ろうとします。

 

「あいや待たれい!」

 

(かかった!)

 

 忍びの者が口角を吊り上げました。

 

 ……お買い上げです。―― まいどありー。

 

 

 半竜娘は祖竜術【胃石(ベゾアール)】の応用で、『石化した魅了の魔眼』を吸収した。

 半竜娘は真言呪文【魅了(カリスマ)】を習得した。*2

 

 

<『2.金庫番たる森人探検家「グギギギギ、全員の武技習得、呪文入れ替えの修行のスペシャルコースに、石化した魔眼……まさかあのクソ師匠にこんだけ貢ぐ羽目になるとは……! ぐぬぬぬぬっ!」』 了>

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

▼△▼△▼△▼

 

 

 

3.Q:魔神を街に引き入れた者はどうなるでしょう?

 

 

 A: 衛兵「「「 スタァァァァァップ!!!! 」」」

 

 

 魔神の手引きをしたら、混沌誘致罪とかそういう(カド)衛視隊(ガード)に拘束される。

 残念でもなく当然の仕儀だ。

 

 そうなれば冒険者の等級の昇級も遅れる……どころか、冒険者証そのものを剥奪されかねない。

 そして違法な戦力を運用する者は、やがては都市の影に堕ち、影を走るよう(シャドウランナー)になる。

 

 

 というわけで街に帰ってきた半竜娘は、そうならないように相談に来ていた。

 封具(竜牙のネックレス)の中に入れた闇竜娘(ダークドラコ)が目撃されないように、または目撃されてもいいようにするために、知恵を借りに。

 

 どこへ、というと……。

 魔神契約にも詳しいだろう人物―― ウィッチの先達、銀等級の魔女のところへ、だ。

 

「あ ら。いら っし ゃ……い」

 

「邪魔するのじゃー」

 

 半竜娘の巨体が、かつて下宿していた魔女の家の扉を窮屈そうに潜り抜ける。

 1年と少し前の収穫祭で分身体を吸収して巨大化したときに、生活スペースの問題でここの下宿は引き払ったのだ。

 魔女のような知識豊富な先達と毎日魔術談義できる機会を無くすのは惜しかったが、一党全員で住める工房屋敷を建築して暮らすようになったので、差し引きそれほど悪くはないだろう。

 

 魔女とも完全に没交渉になったわけでもなく。

 彼女が街外れの半竜娘ら一党の工房屋敷まで、街中では難しい実験をやりにきたり。

 半竜娘の興行に合わせて火吹き山の闘技場併設の大図書館へと一緒に行ったりで、接点はある。

 

「な るほど、ね」

 

 魔女が厚い唇に煙管(キセル)を咥え、蠱惑的に煙を吹いた。

 

「……じゃあ、ま ずは……その()との、契約 内容の 検討 から、かしら」

 

「そうじゃの。魔神契約書(Deal with the Devil)はここに」

 

「拝見す るわ、ね」

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 闇竜娘(ダークドラコ)との契約内容は、ざっくり言うと2つ。

 

『半竜娘の死後に肉体と魂の所有権を闇竜娘に移すことを担保に、契約を結ぶこと』

 

『定期的に他の魔神の魂を喰わせることを対価に、半竜娘に従うこと』

 

 違反時の罰則条項や禁止事項などの細かいものはたくさんあるが、概ねこの2点を理解していれば良い。

 まあ、入会費と年会費、みたいな理解でいいだろう。

 戦闘狂な魔神を相手にした契約のテンプレートに近い。

 

「食べ させ る、魔神、の 調達、は?」

 

「それは死体を媒介にして、死霊術の【魔神(サモンデーモン)】で調達するつもりじゃ」

 

「死体、は?」

 

「ふぅむ。小鬼の巣でも潰して調達するつもりじゃが」

 

 どうせ喰わせるためだけに召喚する魔神なら、その程度の怪物の死体を素材にするのでも十分。

 

 しかし魔女は溜息をついた。

 もし今後も死人占い師(ネクロマンサー)としてやっていくなら、もっと上等な死体の調達先を知っておいて損はない。

 また、万が一にも闇竜娘の餌として召喚した魔神を逃がすわけにもいかないから、結界用の魔法陣だとかの知識も必要だ。

 

 そして、それを紹介するのは、先達の役目。

 

 闇竜娘(ダークドラコ)魔女集会(サバト)でお披露目する根回しが必要だろうし。

 ―― Lv8の魔神(闇竜娘)はサバトの他のメンバーの契約魔神の中でも上位の位階なはず。上手くやらないと序列にこだわる一部のメンバーが反発して血を見る羽目になりかねない……。

 

「……? 手前の顔になんかついとるかの?」

 

「はぁ……」

 

「いきなり溜息つかれると流石に傷つくんじゃが!?」

 

 半竜娘の場合、むしろこれ幸いと嬉々として積極的に喧嘩を売って他のメンバーの契約魔神を自分の契約魔神(闇竜娘)のエサにしかねない……。

 冒険者ギルドや治安当局に “明かす” か “隠す” か、明かすならばどのように話を持っていくかも考えなければ。

 どうやら闇竜娘(ダークドラコ)人に化けられる(角や羽を隠せる)ようだから、隠す方向でもいけるだろうが、【邪悪感知(センスイーヴィル)】が怖いし……。

 万が一にも、デーモン飼ってるのが意図しない形でバレたのが切っ掛けで、半竜娘が混沌側に転ぶようなことが無いようにしないと……。

 

 

<『3.半竜娘ちゃん「まあ最悪バレたら火吹き山に拠点を移せば良いしのう」(※なお拠点移動により【辺境四天王】の称号が獲得不能になるので再走案件になる模様)』 了>

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

▼△▼△▼△▼

 

 

 

4.うさぎ おいし かのやま

 

 

 “新米” を脱した棍棒剣士と “見習” が取れた至高神の聖女が、ゴブスレ一党(ゴブスレさん不在)と協力して、山奥の兎人(ササカ)の村を救って。

 彼らの助力を受けて、見事に村の怨敵たる“雪の魔女”に、文字通りに一矢報いた白兎猟兵はというと。

 その恩義に報い外の世界を見るために、村に残る父母、弟妹達に別れを告げ、棍棒剣士の一党に加わった。

 

 村の食糧危機は、白兎猟兵の父―― 兎人猟師―― を雪男の(アギト)から救ってくれたという半竜の一党が放出してくれた物資で何とかなった。

 しかし、あれだけの物資を持ち歩いているとは、行商人か何かなのかと問うてみれば、実際行商人でもあるのだという。

 

 そして後顧の憂いなく山を下りて。

 人の波と石の街に目を白黒させ。

 街の料理に舌鼓を打ち。

 いくつかテンプレートな冒険をこなして棍棒剣士と至高神の聖女、仲間たちとの連携を深め。

 街での暮らしにも慣れたころ。

 

「……ッ!?」

 

 白兎猟兵は冒険者ギルドの酒場で、急な悪寒を感じて毛を逆立たせ、首筋の後ろに手をやった。

 

「? どした?」

 

「い、いやぁ、最近なんか、こう、視線を感じるんですゎ……」

 

 棍棒剣士の問いに答えつつ、白兎猟兵が耳をピコピコ、視線をきょろきょろ、死角を潰すように巡らせる。

 

「街中で? 兎耳が珍しいから、とか?」

 

「そういう視線は、最近減ってきたんですけどねぇ……」

 

 至高神の聖女の言う好奇の視線は、街に来たばかりはともかく、既に馴染んできた最近は減っている。

 

「むしろこう、捕食者に狙われる的な……」

 

 

<『4.幼竜娘三姉妹「「「 うさぎさんだー。じゅるり…… 」」」 白梟使徒「くっ、どうしてもあの兎耳と兎尻尾を目で追ってしまうのです……っ!」』 了>

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

▼△▼△▼△▼

 

 

 

5.奇跡の島へ

 

 

 半竜娘は、鮫歯木剣(テルビューチェ)の蜥蜴戦士、そして叔父である蜥蜴僧侶とともに酒場の卓を囲んでいた。

 知己を得た蜥蜴人同士の交流会だ。

 ちなみにまだ寒い日が続くため、蜥蜴僧侶と鮫歯木剣の蜥蜴戦士は【『換羽』のポーション】で羽毛を生やしたままだ。

 

「羽毛は羽毛で案外手入れの手間がかかるんだな。油塗らなきゃボサボサになっちまうし」

 

「そういう割には艶々ではないかの」

 

「だろぉ?? うちの(交易侍祭)が塗ってくれてなあ! これがまた気持ちいいんだわ、羽繕いってやつか? 少しずつ鳥人の気持ちも分かってきたかもな」

 

「ほう、なるほどのう。自分で塗っとるのではないと思うとったが、だから背中まで艶々なのじゃな」

 

「尼さんに融通してもらったあのポーションのおかげで、今年の冬は(ぬく)たく過ごさせてもらってるぜ。というわけで感謝の一献だー、もっと呑めー」

 

「おう、かたじけない。……そういえば叔父貴殿も羽の艶は良いようじゃが、誰ぞかに油を塗ってもらっておるのかの。なんぞ蠱惑的な匂いもするし、特別な油かや?」

 

 半竜娘の問いに、チーズを丸かじりしていた蜥蜴僧侶が目をぐるりと廻して答える。

 

「んむんむ。甘露! そうですなあ、このあいだ、鳥人の女性(にょしょう)から小瓶に入った油をいただきましてな」

 

「……あっ(察し)。どおりで蠱惑的な匂いが……」*3

 

「おっ、そしたらその鳥人の娘に塗ってもらってんのか? 坊さんも隅に置けねえな」

 

「いや流石に戦士としては、よく知らぬ女性(にょしょう)に背中を預けるわけにもいかぬのでしてな」

 

「ああ、まあそれは分かる。俺も今の連れ以外には塗らせる気にはならねーな。……ん? そしたら誰に塗ってもらってるんだ?」

 

「それが見かねた野伏殿が塗ってくれましてな」

 

「あー、あの上の森人(ハイエルフ)の。まあ戦友ならそもそも背中を預けることもあるし、あの美貌なら男冥利に尽きるってもんだな」

 

「ハハハ」

 

「(深く考えると鳥人と叔父貴殿と野伏殿で、えらく倒錯的な三角関係になっておるような気がするのじゃが……いや、深く考えるまい)」

 

 などなど愚にもつかぬ話をする中で、話題は移り変わり。

 

「あー、そういや坊さんと尼さんは知ってるか? “奇跡の島” の話」

 

「いや寡聞にして。しかし “奇跡” とは大仰な名前ですなあ」

 

「手前も知らんのじゃ。中身を聞けば思い当たるかもしれぬが」

 

「んじゃ詳しく話すか」

 

 そういって鮫歯木剣の蜥蜴戦士が開陳するところによると。

 

 とある遺跡の転移装置がつながる先の南海の密林にて、“恐るべき竜” を復活させる試みが進んでいるのだという。

 

「“恐るべき竜の下に集え” だとよ。つっても聞いたのは少し前だし、そのわりには “恐るべき竜” が世を席巻したなんて話も聞かねえし、おおかた与太話だったんだろうよ」

 

「ふぅむ。本当であれば拙僧も一度参じてみても良ぉございましょうが、その遺跡まで少し遠いですなあ」

 

「興味深いのじゃ。その程度の遠方であれば十分に圏内じゃし、転移先が密林というのも良いのう。春になるまでそちらでバカンスも良さそうじゃな」

 

 半竜娘は乗り気だ。

 次の目的地は決まったようだ。

 

 

<『5.ジュラシックな島でバカンスを』 了>

 

*1
武技【転龍調息】:波紋法、サンライトイエローオーバードライブ! 的なやつ。あるいは“全集中、水の呼吸!”でも可。もちろんネーミングの元ネタは北斗神拳、転龍呼吸法からだと思われるので、筋肉が膨れ上がって服を破く演出をしてもいい。この武技は消耗を一段階軽減し、気により肉体を「銀製の魔法武器」の扱いにするが、使用時に反動ダメージがある。

*2
真言呪文【魅了(カリスマ)】:前はTS圃人斥候が覚えていたが、そっちはリビルド時の呪文入れ替えで忘れている。魅了の魔眼そのものを移植するルートも考えたが、蜥蜴人は多分自分の肉体のパーツをあんまり入れ替えたがらないだろうなぁと思ったので没に。

*3
蠱惑的な匂いのする鳥人特製の油小瓶:おそらくは雌の鳥人が自前の尾脂腺から採取した脂をベースに調合したものと思われる。半竜娘ちゃんが感じた匂い的には発情してるっぽい蠱惑的な香り。蜥蜴僧侶さん、イケメンだからね。潮? さてねえ……。




 
次はゲームマスタリーマガジンVOL.10(p.71)に掲載されたシナリオ「爬虫帝国(レプティリアン)の野望」……がもう終わっちゃったあとの舞台に、半竜娘ちゃんたち一行がお邪魔する話です。当該シナリオのネタバレがありうるのでご注意ください。
(原作9巻(雪の魔女、晩冬)と原作10巻(葡萄畑を巡る陰謀、初夏)は季節一つ分の時間が空くんですよね。試しにGMマガジンのシナリオと絡めて一つやってみます)

===

実は当初のプロットだと原作小説9巻編のクライマックスは、森人探検家ちゃんの悲願である師匠との対決の予定だったのですが、サプリの導入のためにお流れに。……また今度ね。

===

ご評価ご感想、いつも大変励みになっております! あな嬉しや! ますます精進します!
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。