ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
宿題(比喩表現)に手間取ったので初投稿です。
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●前話
【闇の葡萄】の影を捉えたぞ! うん? 候補が50箱くらいあるな……??
はいどーも!
えー、市街地で白粉
現在、時刻は夕刻。
知識神殿が読み解いた、敵の地脈汚染儀式のために最適な星辰が揃う日付・時刻であります。
つまりは襲撃の日であり、迎撃の日であり、逆撃の日です。
地母神寺院は中堅冒険者の指揮のもとで、葡萄園の守りを固めています。
葡萄園防衛の指揮を執るのは、TS圃人斥候が前に所属していた一党―― 半森人の妖術師・斧使い・僧侶―― です。順調に等級を上げています。
あとは、かつて半竜娘ちゃんが山砦を粉砕炎上したときに同行していた貴族令嬢一党や、墳墓のトロルをやっつけたことで名を上げた新進気鋭の一党―― 鮫歯木剣の蜥蜴戦士・交易侍祭・戦女神の神官戦士・只人の軍師・闇人斥候―― もそちらに詰めています。
成長した幼竜娘三姉妹(背丈は只人10歳程度)も地母神寺院の方に行っています。
三人一組の連携を磨いていることと、スクロールやポーションを山ほど持ち込んでいるので、足手まといになることはないでしょう。
そこらの白磁よりは役に立つはずです。
また、半竜娘ちゃんの郎党に所属する新人たちや、同じく郎党に組み込まれている
組織的に動く訓練をしているので、こちらもきっと足手まといになることはないでしょう。
ここで実績と自信をつけて躍進してもらいたいですね。
邪教の本拠地への逆襲撃には、
高位魔神の出現が予想されるため、それに加えて、王都からは
……おや……恐るべき竜に騎乗した半竜娘ちゃんの姿もあります。森人探検家ら一党の他の仲間の姿は見えませんね。騎乗姿がサマになっているので【騎乗】技能を習熟段階まで伸ばしたみたいですね。*2
んー、乗騎になってる恐竜の方は、おそらく高位祖竜術【
それに騎乗してる半竜娘ちゃんも、たぶん真言呪文【
おそらくは闇竜娘ちゃんに喰わせるデーモンのキルスコア稼ぎに来てるんでしょう。闇竜娘ちゃんはうまく
んで、敵の本命と目される地脈汚染の儀式場―― ゴブスレさんがゴブリンゾンビや
人族領域の最前線で
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一方そのころ。
我らが半竜娘ちゃん一党の姿はどこにあるかというと、その姿は夕暮れの市街地にありました。
「待てィッ!!」
「…………!!」
「逃げんなー!」
はい。
追いかけっこですねー。
今も夕日が差す中、民家の屋根の上を逃げる背負子に箱を背負った白粉の森人を、TS圃人斥候がニンジャめいた動きで追っています。マンチ師匠の雪山での薫陶の賜物です。
追っている相手は白粉を厚く塗っているのでわかりませんが、ひょっとしたら森人じゃなくて闇人かもしれません。
この推定:白粉の闇人が背負っているのは、ある商家の倉庫にいつの間にか置かれていた焼き印のない箱です。
由来不明の怪しい木箱があるという情報を聞きつけたTS圃人斥候が、市中から奉納用の葡萄を買い上げる途中でそちらに寄り道し、どうにか引き取れないかと交渉していたところ、物陰から窺っていた白粉の闇人が横取りして逃走―― という具合です。
当然、怪しいので追いますよね~。
「…………ッ!」
「おいこらー! 待てー!!」
「……ッ!!」
「何とか言いやがれッ、このっ!」
無言で走る白粉の闇人に、TS圃人斥候は走りながら、屋根の瓦を裸足の爪先で器用にピックして浮かび上がらせ、空中でキャッチして、前へと投げました。
その瓦は逃げる白粉の闇人の足元へと飛んでいき、その走りを乱れさせました。
「……ッ!?」
「よっしゃ命中! 武技【軽功】発動ッ! 神妙にお縄につけやオラァッ!」
「ッッッ!!?」
その隙をついて武技を使って加速したTS圃人斥候が、逃げる闇人の背中にドロップキック!
民家の屋根の上に倒れる白粉の闇人。
蹴りの勢いを受けて吹っ飛んで倒れる闇人。背負子の箱にも潰されて息を詰まらせたその次の瞬間。
「よーし、捕まえたぜェ」
「……!!」
ドロップキックから身をひるがえして華麗に屋根に着地したTS圃人斥候が、うつ伏せに倒れた闇人に軽やかに近づき、その腰を圃人自慢の裸足で踏んで縫い止め、動きを止めさせました。熟練の捕縛術です。
「へっ、あっけなく踏まれて
「ハァハァ……」
「??」
「……も、もっと踏んでください……」
「!!??」
そして妙なことを口走った白粉の闇人にギョッとすると、腰・背負子の箱・頭と順にタタタッと踏んで渡って、白粉の闇人の真正面にひょいと回ります。
そのたびに推定:闇人の口から恍惚とした声が漏れるのに辟易としながら。
「……おいツラ見せろ。てめ、まさか……」
「へ、へへ。
「―――― あっ、このネックレス、幻影の魔道具か!? ご丁寧にその下も付け長耳と白粉! 幻影と変装の二重仕立てか!」
倒れる闇人の前に回ったTS圃人斥候が、髪を掴んで顔を上げさせると、違和感に気づきました。
掴んだ感触と目に見える光景が一致しないのです。
慌てて闇人―― の幻影を被せられた何者か―― の首元を見れば、【幻影】の効果を秘めていると思われる魔道具が掛かっていました。
それを引きちぎるように取り上げると、幻影の下からは森人か闇人に見えるように付け耳をした、白粉まみれの只人の顔が現れるではないですか!
「しかもテメー! いつぞやの変態
「うひひえへへ……」
「ちくしょう、ダミー掴まされたッ!」
「あひん!? うわぁあああっ」
TS圃人斥候が腹いせにゲシりと蹴っ飛ばすと、魔道具と念のための変装で化けていた変態
その拍子に焼き印のない木箱が壊れ、その中から葡萄が転がり出ました。
―― しかし、そこから広がったのは、芳醇な葡萄の香りではなく、
どうやらこちらはダミーの様子。目的のブツではなかったみたいですね。
経費削減のためか廃棄品のカビたり腐ったりしたやつが詰め込まれてたようで、
「時間を無駄にした……! 葡萄を買い上げる予定の商家まで
そんなダミーの荷物にも、ましてや変態の行く末にも興味ないとばかりに無視したTS圃人斥候ちゃん。
寄り道せずに行けば予定では今ごろ葡萄を買い占めていたはずの別の商家の方を見れば……。
「―― げっ! なんかまた別の “白粉の森人” が今度は向こうから葡萄を運び出してやがる!!?」
さっき蹴り転がした変態
そしてそのあとを追いかける、見覚えのある若者たち―― 半竜娘ちゃんの
おそらく寺院の依頼を受けずに街中に残っていた
「……うちの
変装か。【幻影】の魔道具か。
本物か。偽物か。
どれが虚で、どれが実か。
こちらも配下である郎党の冒険者を投入していますが、
とりあえずこっちはこっちで追いかけるか、と駆けだそうとしたTS圃人斥候でしたが―― その頭上に真っ白いフクロウが音もたてずに空から降りてきました。
「見つけたのです!」
「あん? タンクんとこの使徒じゃねーか。なんか伝言か?」
「ですです、伝言なのです! 外に出たのは、あの半竜の頭目が何とかするのです! だから斥候は、建物の中に隠されてる【闇の葡萄】候補をどうにかするのです!」
「リーダーがどうにかって……」
そうやって伝言を受ける途中。
チラリと推定:白粉の闇人が曳く葡萄を積んだ荷車の方を見れば。
「ィィィィィイイイイヤアアアアアアア!!」
「うぎゃー!? 空から竜が!!?」 「撤収だ! 撤収しろ!」
空から猛禽が獲物を捕るように、両足を揃えて荷車の方へと急降下する半竜娘ちゃん(人面竜形態)の姿がありました。
半竜娘の『そらをとぶ』!!
半竜娘ちゃんは、荷車の木箱を蹴散らすと、地面を蹴って、翼になった腕をはばたかせて上昇。次の獲物を狙うようです。
1サイクル30秒程度なので、空から見える範囲に運び屋がいれば、逃がす間もなくすぐに木箱を狙って破壊できるでしょう。
落着地点の通りに出ていた屋台や
「―― うん、屋台の補償とかはあとで考えよー。とにかく、外のは任せて大丈夫そうだな。で、オイラはどっちに?」
「目星をつけてた場所から運び出されて別の場所に移された葡萄の木箱が、既にあるのです。建物の中に入れられたので、頭目は手を出せないのです。そっちに案内するから着いてくるのです!」
「りょーかい。こっちは飛べねーんだから配慮頼むな?」
「ファイトなのです」
「おいィ?」
「こっちだってご主人に目を貸して空から戦域把握するお仕事があるのです! たぶん途中で森人の流し紐付きの鏑矢が誘導を代わってくれるはずなのです」
「エルフパイセンの? 分かった」
「流し紐の色は白。要確認対象は、鏑矢が突き立った倉庫の中なのですよ!」
「はいはい
▼△▼△▼
文庫神官ちゃんは卓に広げた紙に書き込まれた精緻な地図に、いくつもピンを配置し駒を動かしています。
使徒である白梟と視界共有して、知識神殿仕込みの製図術で作り上げた航空地図です。
「これがここで、あっちのあれはこれで……。あ、鏑矢はこっちにお願いします」
「はいはーい、わかったわ」
「お願いします」
文庫神官ちゃんは大弓に弦を張り直した森人探検家ちゃんに声をかけると、地図上でニンジャっぽい駒―― おそらく卓上演習用のものの流用―― の行く先のピンの場所を指さします。
それを確認した森人探検家ちゃんが酒場の2階へ行って窓から屋根に上り、つがえた流し紐付き鏑矢を引き絞って放ちました。
「ん。よし」
ピィッと甲高い音を響かせる鏑矢が夕暮れの空を切り裂き、正確に文庫神官ちゃんの地図が指示していた建物に突き立ちます。
それを追って、街の建物の上を小柄な影―― TS圃人斥候―― が走り、鏑矢の突き立った建物へと突入していきます。
その間にも文庫神官ちゃんは、白梟使徒の視界を借りて【闇の葡萄】と思しき数十の木箱の動きを監視し。
半竜娘ちゃんや
また、緊急性が低い伝言は矢文用の書にしたためて、隣りに侍る酒場の従業員にそれを持たせて屋根上の森人探検家に渡して
獅子奮迅の働きを見せています。
「―― それにしてもやることが多すぎでは!?」
【
消耗をスタミナポーションで誤魔化し、隙を見て【
敵の手駒も減らしているのでどんどんと楽になっていくはずですが、相手の手札の枚数の底はまだ見えず、積み重なる消耗と目減りするリソースに焦りが出てきます。
「そもそも本命の【闇の葡萄】は本当にこの中にあるのでしょうか……」
買収に応じなかったり、あるいは不審な木箱が残置されているということで、事前の情報収集で目星をつけていたのが50か所。
既にそのうちの半数近くは処理済みですが……。
“果たして本当に本命がこの中に存在するのか”という疑問が――、自分たちは
「いえ。心配・懸念・弱気は、まずは見えている問題を片付けてからです」
ぴしゃりと自分の頬を張り、酒場の従業員が作ってくれた
「おそらく【闇の葡萄】を運び込み、混入させるのは、地母神寺院の葡萄園への襲撃に合わせて行われるはずです。……それまでに怪しいところはできるだけ潰しておきませんと」
文庫神官ちゃんは額の汗を拭うと、駒を動かし、処理済みのピンに印をつけ、雑念を振り払って指揮に専念します。
▼△▼△▼
そして――。
半竜娘ちゃん一党の奮戦の甲斐あって、葡萄園の襲撃が始まる夜半までには、50もあった【闇の葡萄】疑いの候補は全て処理されました。
ただ……、そこまでやっても首謀者である白粉の闇人の身柄を押さえることだけは叶わなかったのが気がかりです。
……案外、葡萄園襲撃の乱戦の中に紛れ込んでコトを為そうとしていたところで、流れ弾にでも当たって果てちゃってるのかもしれませんが。
そして首尾よく、葡萄園の防衛も、陽動の邪教本拠地襲撃も、塚山の地脈汚染儀式阻止も、冒険者たちの奮戦により、全ては秩序側の勝ちに収まりました。
もちろん、水の街の酒商を襲った小鬼禍も、ゴブリンスレイヤーの手によって致命的な被害を出さずに終わりました。
やがて“酒の日”―― 乙女たちが葡萄を踏んで地母神に捧げる豊穣の御神酒を仕込む神聖な儀式の日でもあり、酒を呑んで陽気に騒ぐ祭りの日でもあります―― がやってきて、地母神寺院ではお祭りです。
ワイン色の装束に身を包んだ若い神官の娘たちに混ざって、今回の防衛依頼の縁で招かれた冒険者の少女たち―― 2000歳でも少女です―― も同じワイン色の衣装できゃらきゃらと笑いながら、大きな桶に入った葡萄を踏んで潰しています。
半竜娘ちゃん? 桶が壊れるからちょっと……。そもそも着れるサイズの装束もないですし。
一党の他の面々は参加してますけどね。
「それで、どうじゃった? 妙な葡萄は紛れ込んでなかったかや?」
日向で陽気に当たっていた半竜娘ちゃんが、傍らに気配が立ったのを察して話しかけました。
隣にやってきたのは、葡萄の香りのする乙女の気配です。
「そっちの言った通り、嫌な感じのする葡萄が混ざってたよ」
隣にやってきたのは、地母神寺院の酒仕込みの責任者である褐色肌人の女―― 葡萄尼僧でした。
彼女が抱えてきたのは、他のものと混ざったりしないように厳重に封がなされた木箱でした。
それこそが半竜娘ちゃんたちが探し求めていた【闇の葡萄】でした。
「……やはり、か。これでも打てる手は全部打ったんじゃがのう」
【闇の葡萄】は半竜娘ちゃんたちの大捕り物の間をすり抜けて、地母神寺院まで到達していたのです。
こればかりは、半竜娘ちゃんたちが
しかし、半竜娘ちゃんは、それすら見越して根回しをしていました。
「まあこっちも言われなきゃ気づかなかったかも、だけどね」
「そういうこともなかろうさ。なんせお主は酒造りの専門家じゃもの。きっと気づいておったじゃろうよ」
「だといいけど」
根回し―― つまりは、地母神寺院に【闇の葡萄】とかいう妙な葡萄が混ざり込む可能性について知らせておいたのです。
【闇の葡萄】それ自体は、半竜娘ちゃんたちには、普通の葡萄と見分けがつきません。
しかし、葡萄作りと酒造りの専門家である葡萄尼僧にとっては、どうでしょうか。
素人には分からなくても、専門家である彼女であれば、見分けられるのではないか―― そう考えた半竜娘ちゃんの目論見は当たりました。
情報を得た葡萄尼僧は、見事に【闇の葡萄】を見分け、酒造りの原料からそれを選り分けて隔離することに成功したのです。
「ようやってくれたのじゃ。これで今年の
「こっちはこっちの仕事をしただけよ」
「それがまさしく尊いことなのじゃて」
日常は尊いもので、それを守り営む普通の人々もまた、尊いものなのです。
そして葡萄尼僧はしばらく歓談し、地母神寺院を貶める噂を打ち消したりといった半竜娘ちゃんたちの働きに礼を言うと、離れていきました。
半竜娘ちゃんは、初夏の陽気と、祭りの喧騒、娘たちの葡萄踏みの歌声に包まれる中、葡萄尼僧が置いて行ってくれた葡萄酒の瓶を持ち上げました。
その瓶の首を自慢の爪で切り落とすと、一気にがぶがぶと浴びるように呑み干していきます。
「うむ。これもまた甘露よな」
冒険の報酬に一杯の酒。
それでこそ冒険者というものでしょう。
というところで今回はここまで!
ではまた次回!
なお【闇の葡萄】は酒造神の神官さんがすかさず引き取りに来たみたいですよ。
酒造神官「お嬢さん! その葡萄、分けちゃもらえませんかね!? このとおり!」
葡萄尼僧「え、いやこれはあまり良くないもので……」
酒造神官「いやいや、それはそれで貴重なもの! 扱いは間違えませんとも、この双つの杯の聖印にかけて!」
葡萄尼僧「まあそこまで言うなら」
酒造神官「おお! これはありがたい! では早速、誓約の一献を交わしましょうぞ!」
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ご評価、ご感想いつもありがとうございます!
次回は本編裏ということで、地母神寺院防衛とか、邪教本拠地襲撃とかの、並行して進行していた作戦の様子についての予定です。次回もよろしくお願いします!