ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
1.公衆浴場にて魔女殿と
かぽーん。
「はー、気持ち良いのー」
「そ ね」
いま
いろいろと新たな祖竜術を修めることができたものじゃから、その性質について、家主たる艶やかなる魔導師殿と検討をしていたところじゃったが、行き詰ってきたので気分転換じゃ。
例えば、毒の竜息における、「毒」とは何か、とかのう。短時間で消えるならば、おそらく物質的な毒ではない。となれば、呪的な毒、概念的な毒ということになるが、それは果たして一定不変の性質なのか、あるいは燃えるのか、逆に火を消すのか、とかの。融通が利くのであれば、麻痺や爛れの毒も造れるかも知れぬが、それにも一定の知識が必要なように思われる。
まあ、結論としては、知識を集めて精進し、あるいは実際に毒を身に受け体得し、竜息の術に熟練し、実際に試してみることじゃな。
理屈をこねるのも大切じゃが、確かめるには実験あるのみじゃもの。
しかしそれにしても。
「うむむ。大家殿を見ておると、
「そ う? 貴女も、綺麗だと思うケド」
そう言われても、家主の魔導師殿には及ぶまいよ。上気した肌と豊満な体は、同性であっても、異種族であっても見とれるほどのものよ。夢魔の加護を受けておると言うても信じるぞ。
まあ、
しかし、家主殿の肌と肢体と物腰の艶やかさには比べるべくもない。
「まだまだ、貴女は、成人したて なんでしょう? これから、よ。がんば りなさい な」
「そうじゃのう、確かに、女ざかりはこれからじゃものな」
「そう よ」
ふうと一息。そろそろ熱がこもってきたのじゃ。
胸元や顔は只人の色が濃いとはいえ、ほかのところは鱗じゃし、体温調整はそこまで得意ではない。同胞には風呂を嫌うものもおる。よく気をつけねば、鱗が
のぼせぬように、水でも一回浴びるか、もう上がってしまうかのう。
分身の方も、家で夜食の準備をしはじめたようじゃし、風呂上がりのケアをしておれば、良い時間になろう。
「そうい えば。武術の氣と、真言の融合は、どう なったのだ っけ?」
「おう、真言ひとつと、ほかの技能の組み合わせじゃな。一応手品の類じゃが、こういうこともできるようになったのじゃ」
――
と、射出の真言を唱えて、発勁を同時に。
裏拳ではじくようにして、宙を叩く。
すると、拳の
「へ え。
「真似事じゃがの。おそらく武術の達人がやっておるものとは違う術理よ」
「で も。面白い わ。魔術師で、氣を使う人って、少ないから。考えついても、試せなかった、もの」
まあ、珍しいだけじゃ。
なんかの小技には使えるかもしれんが、実戦ではとてもとても。
何せ、この遠当てじゃと、込めた氣の分しか相手に通らん。それに、氣を込めればその分疲れるからのう。
真の武道家が使う、拳の威力をそのまま遠くに届かせるような奥義には、まったく届いておらん。
「……ま、いろいろ試してみるさ。その時は検証にお付き合いくりゃれよ。っと、そろそろのぼせそうじゃから上がるのじゃ」
「私はまだ、もう少し、入っている わ。あとで ね」
「……上がったら、香油を塗ってほしいのじゃ」
「ふふ、いいわ、よ。お返しに、私の髪にも、お願い ね」
●〇●〇●
2.ゴブリン退治にて(1)
――
――
――
「【
「ちょっと! これ大丈夫なんですか!?」
「実戦投入は初めてじゃが! 問題はないぞ、地母神の神官嬢よ!」
「本当ですか!? って、わあ! なに分身の方を脱がさせてるんですか!」
「身軽にならねば最大威力が出せまいよ! そして十分な加速を行えば、堅牢な城壁すら破砕可能じゃ! 丘の洞窟程度なら問題ない!
「ちょっと!? 壊せるかじゃなくて、壊したあとどうなるかが――」
そして巨大化した分身体が宙に敷かれた道を四度くるくると走ったと思えば、あっという間もなく洞窟の方へとすっ飛んでいった。
直後、着弾。
祖竜術を宿して輝く分身体が、洞窟のある丘をめくるように突っ込み、盛大に土砂を吹き飛ばした。
「うわっきゃああああ!?」「――これは」
衝撃波が周辺の木々をメキメキとしならせ、見ていた女神官とゴブリンスレイヤーを襲う!
「おっと、すまんのじゃ」
しかし、それを素早く滑るような武術の歩法で回り込んだ半竜娘が、その巨躯で遮った。
「……あ、ありがとうございます……って、全然大丈夫じゃないですよ! これ!!」
「む、また来るぞ」
「ええっ!?」
抗議しようとした女神官だったが、ゴブリンスレイヤーの声にさえぎられた。
周囲に気を回せば、また何か大きなものが走るような地響きが……。
「そう、我が分身体は! まだ4回の呪文使用回数を残しておる! ループターン用に【力場】の
「参られい、じゃない! ひゃあ、あ、危ない! に、逃げましょう、ゴブリンスレイヤーさん!」
「そうだな」
「ふぅはははははあはははははあっはははっは!! 見よ! この力を!! 強靭! 無敵! 最強!! 粉砕! 玉砕! 大喝采ィィ!!」
「あの人はもうだめです! 完全にだめです! ダメな人ですよコレ!!!」
――のちに女神官が語るには。
『ええ、第一印象はやっぱり、怖い人、ですね、綺麗な顔ですけど、背は高いし眼光は鋭いし。
その次は、やさしい人、ですかね。初めての依頼に行く私たちに、ぽんと銀貨を渡してくれましたし。
でも、その依頼帰りに見たときは、ドラゴンの血でまみれてて、血に飢えた獣みたいな人なんだな、と。
そのあと、何度か神殿で患者さんたちを治してるところにご一緒して、あれ、意外と話が通じる普通の人かも? って思ったんですけど……。
え、今ですか。そうですね、頭の回転も速いし、頼りにはなるんですけど――ええ、度し難い人、だと思っています。』*1
●〇●〇●
3.ゴブリン退治にて(2)
ずん、と音が響いて、川の流れの中に大岩がいくつも、間隔を置かれて投げ込まれた。
ばきばきと周囲の木々が折られ、大岩に引っかかるようにさらに投げられる。
さらに川岸が崩され、ついには川が堰き止められた。
「これで良いかのう、小鬼殺し殿」
「ああ、あとは巣穴の方の堤を切って、水を流し込むだけだ」
「そうか。ではそろそろ【巨大】の効果時間が切れるゆえ、術を掛けなおすまで暫し待たれよ」
「ああ」
巨大化した半竜娘が、ゴブリンスレイヤーの指示に従って工事をしている。
もちろん、橋を架けるとか、水利のための工事をしているとか、そういうことではない。
ゴブリンスレイヤーがやるのだから、これは小鬼を殺すためなのだ。
(便利な術だな)
ゴブリンスレイヤーは、巨大化した半竜娘を見て、そのような感想を抱いた。
いつもであれば、自分で発破するなりで水を小鬼の巣に流し込んで殺すのだが、今回は同行者であり依頼人であり、言ってみれば生徒でもある半竜娘にその作業を手伝ってもらっている。
先ほど粗相をした詫びも含めて、だという。
(古代の遺跡は、こうやって巨人の力を使って作ったものもあるのかもしれない)
ゴブリンが住み着く遺跡には、古代のものも多くある。
神代のものは、神々が作ったのだろう。
しかし、それより時代が下っても、今の人族には到底作れそうにもないようなものも多くある。
それはこのように只人の何倍も大きな巨人の力によるものだとしたら、多少は納得がいく。
再び巨大化した半竜娘が、今度は堤を切って、そしてその辺から引っこ抜いた丸太でゴブリンの巣の方へ溝を掘っていく。
ゴブリンスレイヤー自身も巨大化させてもらって手伝うということも考えたが、筋力を考えると、限られた【巨大】の呪文をゴブリンスレイヤーに使うのはもったいないだろう。
半竜娘に使った方が効果的だ。
(やはり便利だ……)
今回は半竜娘の依頼による教導――これも十分おかしな依頼だが半竜娘の本質が冒険者ではなく学者の類と考えればそう不思議ではない――だが、場合によってはこちらから協力を依頼することもあるかもしれない。
●〇●〇●
4.ゴブリン退治にて(3)
小鬼殺し殿から一通り、ゴブリン退治の要諦や、小鬼どもの生態、その思考回路について学ぶことができたと思う。
ただ、洞窟内での戦闘はまだ体感していないので、体験したいというと、小鬼殺し殿は素早く、小鬼の潜む洞窟を見つけてきてくれた。
さすが場数を踏んでおるだけある。
「では、
「ああ、それでいい」
「わ、私はどうすれば」
「後ろに通す気はないが、神官嬢は基本的に小鬼殺し殿の指示に従っていただければ」
「ほっ、そうですか」
「あ、念のため、【
「??!」
近寄ってきた地母神の神官嬢を確保する。そして、自分の爪で指先を切った分身が、その指から神官嬢に血を飲ませる。
己の血に宿る祖竜の命の螺旋を媒介に、己にしか掛けられぬ祖竜術でも他者に掛けられるようにする【
同時に分身が、体表の光を捻じ曲げて風景に溶け込ませる祖竜術【擬態】を神官嬢に掛ける。
「ぺっぺっ! いきなりなにするんですか! って、ええっ、服が、体が!?」
「背景に同化する力を与える術じゃ。一時間は持つゆえ、これで見つかりづらくなるじゃろう」
「ゴブリンどもは鼻が利くが」
「
「ないときはゴブリンの肝を使う」
「ほう。だがすまんが、今は無用に願いたい……」
「……そうか」
「心配はもっともじゃが、もちろん肉弾戦用に装備を変える。技量強化の指輪と、体術熟達の腕輪じゃ。この二つがあれば、小鬼どもの攻撃など当たらぬよ。それに本当に危なくなったら呪文を解禁する」
「……まあ、試してみるといい。総評は後で、だったな」
「そのとおり。まずは一通りやってみてからの方が、忠言も身に沁みようて」
「ああ、確かに」
そうして洞窟に入ったが、やはり小鬼殺し殿の言うことは正しかった。
次から次へと、小鬼がやってくる。
「GOOBBBBRRRR!!!」
「来おったか! だがのぉっ、貴様らの攻撃など見えておるわあ!!」
臭いに惹かれてきた五匹の小鬼の集団。奴らにとっての『夜』に起きておったということは、これは見張りか?
こちらは魔剤の副作用で身体がなまっているとはいえ、そうそう遅れは取らん。
両手の爪を開いて小鬼ばらの群れに突貫し、【薙ぎ払い】を行う。
「GOB!?」「GROO!?」
巻き込んだのは2体。
どちらも閃いたわが爪を避けること能わず。
頭蓋骨が輪切りになり、脳漿と血があふれ出す。
「GBBBRRRRR!!」
残った三匹が一斉にとびかかるが、
掠らせもせんよ、その程度の攻撃など。
不利を悟ったか、三匹のうち二匹は逃げようとする。
「逃がすわけなかろうて。地に返るがよい」
「GRRR!?」「GRUUOO!?」
逃げ腰の二匹へ向かって、壁を蹴って跳ねて近づき、両手の爪で【薙ぎ払い】。
暴風のように回転しながら切り裂いて着地し、それと同時にゴブリンどもの胴体は輪切りとなって崩れ落ちる。
残った一匹が遮二無二、せめて一撃とゴブリンスレイヤーの方へと行こうとするが、首根っこをつかんで引き戻す。
「お前はこっちじゃ!」
「GRRRIO!」
そして今度は縦に真っ二つよ。
「ふむ、まあこんなもんかの。じゃが、数が多いと面倒くさい。これは水攻めや発破が正解じゃの」
呪文を縛っておらねば、【竜息】で吹き飛ばすところじゃ!
「さて次、次。次行くのじゃ」
蜥蜴人は【暗視】できるゆえ、松明はいらぬ。
ふん? どうやら罠があるようじゃな。するとシャーマンか、その
呼子か何かじゃろうが、かえって手間が省けて良いわの!
「罠とは小癪じゃ! かかってやるゆえ、出て来んか!」
がらがらと大きな音が鳴り、にわかに洞窟の中の氣がざわめく。
ふん、眠っていたものも起きたようじゃな!
「GGGBBBBRRRROOOO!!!」
来た来た来おった、わらわらと!
ひの、ふの、みの……十六!
うち四つは弓持ち!
「やることは変わらぬわ!!」
突っ込んで両の爪で【薙ぎ払い】!
動きの良いのが二匹おるが、先頭に出てきたのが運の尽きじゃ。
そのまま、撫で切りの輪切りじゃ!
残り十四!
弓が飛んでくるがすべて掴んで止める!
こんなもの当たるか!
「って、貴様ら
前衛が侮りがたしと思ったら、後衛へと突っ込んでいきおる。
神官嬢の姿は見えぬはずじゃが、嗅覚頼りか?
じゃが行かせるわけがなかろう!
だてに大きな体はしておらん!
「貴様らは後ろに戻っておれ!」
脇を抜けようと来た小鬼どもを尾の一振りで弾き飛ばして押し戻す。
それを隙と見たか、他の小鬼が掴みかかってきやがるが、逆に頭を爪で半分に抉ってやったわ!
残り十二!
次々と襲ってくる、または脇を抜けようとする小鬼どもを、掴んでは切り裂いて、あるいは投げ飛ばしてゆく。
十、八、六!
「ぬっ、浅かったか!」
そのうちの二匹、動きが雑になったせいか、一撃では終わらなんだ。
じゃが、もう奴らは士気が崩壊して逃げ腰じゃ。
ふん、逃がしはせんがの。
地面に頭を擦り付けて許しを請う――ふりをして、隙を伺う小鬼の頭を氣を込めて蹴り飛ばし、頭と胴体を泣き別れさせる。
「小鬼など皆殺しよ!」
四、二、一、零!
これで全て殺したが……。
「存外に疲れるのう、これは」
雑魚相手でも傷は負わぬが、疲労は貯まる。
同じ規模の群れをもう一度相手にすれば、多少は息が上がり、動きが鈍るじゃろう。
さらに倍では、途中で休憩を挟み、疲労を回復させる術かポーションがなければ戦いきれぬな。
「であれば、戦わぬのが上策か」
「そうだ」
「おう、小鬼殺し殿」
「まともに相手をする必要はない。罠も分かっているなら踏むな。相手に何もさせるな。道具や術を使え。よく考えろ、考え続けろ。想像力を武器にしろ」
「忠言痛み入る。そうじゃな、身に染みたわい」
しかし、これは全く面倒くさい。
こいつらを根絶やしにするには、並大抵のモチベーションでは無理じゃぞ。
根本的に構造を変えねば、誰も積極的に小鬼を狩りつくそうなどとせんじゃろうよ。
ああ、いや、小鬼殺し殿は例外か。
銀等級――辺境最優、か。
●〇●〇●
5.リザルト
ふうむ。
何とかかんとか小鬼殺し殿の手腕は、一通りの触りのところを学べたかのう。
いまの
誰かとともに戦うとき、
術に頼らぬ道具も揃えたり、研究したほうがよさそうじゃ。道具を使えば、術よりは疲れない。その分、他のことに術が使えるわけじゃし。
なにも一人ですべてやる必要があるわけでもないが、今のところ仲間の当てがあるでもなし。(艶やかなる魔導師殿と槍使いの御仁の一党? いや、あの二人の間に入るのは野暮じゃろ。助っ人に求められればまだしも)
手を増やすのであれば、竜牙兵がおるが、あれは魔法は使えぬ。
分身も出せるのは一体だけ。
それに属性対応が今の構成では少し不安じゃ。
うーむ……。
ん? なんぞ、あたりに光の粒が舞っておるような。
これは……、まさか精霊か?
〇一般技能【精霊の愛し子(初歩)】を取得しました。(成長点1点消費)
精霊たちが力を貸してくれやすくなるので、精霊術に触媒が不要になります。
でも、精霊たちとは日頃から触れ合って、仲良くね。
〇職業【精霊使いLv1】を取得しました。(経験点1000点消費。成長点2点追加)
精霊術の行使が可能になります。レベル数と同じ数の呪文を覚えられます。
〇精霊術【
火、水、土、風、いずれかの属性の精霊を呼び出し、実体化させ、簡単な命令を行えます。
達成値に応じて、より高位の精霊を呼び出せます。また統率技能を持つ場合は、精霊から支援効果を得ることができます。
〇一般技能【職人:土木(初歩)】を取得しました。(成長点1点消費)
職人としての腕前があります。職人:土木の場合、土木工事や測量に関係する判定にボーナスを得られる可能性があります。
残り使用可能経験点 0点、残り成長点3点。
唐突に生える精霊使い技能。でもモブを侍らせるというコンセプトからはズレてない。
Q.半竜娘ちゃんの爪って、ゴブリンをズンバラリとなますに出来るくらい長いの?
A.