ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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お久しぶりです更新~!

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◆前話
作戦会議! まずは穏便に城塞竜と交渉しよう!
ではいざ、ヒンノムの子らの谷(ゲヘナ)の城塞竜のもとへ!
 


38/n 煉獄(ゲヘナ)行き特急航空便-6/6(お宅訪問! 城塞竜!)

 

 人攫い城塞竜の(もと)に我が子を取り返しに行く実況、はーじまーるよー。

 

 オアシスで情報収集と物資補給をして休息の一夜を過ごして、明けて翌朝。

 半竜娘ちゃん一行は駱駝(ラクダ)を駆って、近づく者もいない硫黄が析出した煉獄の谷へやってきました。

 

「……硫黄臭いのう。古代に子供の骸を葬った儀式場が、徐々にただの死体置き場になったのも無理はないのじゃ」

 砂漠用の衣装を巻いた半竜娘ちゃんが鼻を押さえて眉間に皺をよせています。

 

「古代は硫黄の噴出は緩やかだったのかもしれませんよ。……鎧が錆びないと良いのですが」

 鎧を着こんだ文庫神官ちゃんが、金属鎧へのダメージを心配します。

 白梟使徒は暑さ避けに背嚢の中に包まって眠っているようです。朝ですしね、梟にはつらい時間です。

 

「それがいつのころからかこの有り様、というわけね。これだと辿り着くまで息が持つか分からないわね」

 砂漠風の衣装の上から、酸性の瘴気を遮るための外套を羽織った森人探検家。

 そういえば彼女が持つ宝の地図── 1年目の収穫祭のガラクタ市で手に入れたもの── のひとつを解読したところ、この城塞竜が居座った谷にもお宝が何かあるとか言ってましたね。

 

「じゃあ【追風(テイルウィンド)】の巻物(スクロール)を使おーぜ。そんでまずは正面から “おじゃまします” だ」

 TS圃人斥候が、魔法の袋から取り出した巻物を広げると、周囲に薄っすらとした清浄な大気の流れが出来上がり、硫黄混じりの空気を遮断します。

 オアシスで補給した物資の一部を早速使ったわけですが、無駄に消耗したり装備にダメージが入るよりは、お金でカタ付けた方がマシですね。

 

 城塞竜を見張る衛兵の出張所に幾らか握らせて駱駝を預けると、半竜娘ちゃんら一行4人は、谷底に見える城塞へ向けて道を下り始めました。

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

『あらあらお客様? お客様ね? 歓迎するわ!』

 

 不思議と丸くなって眠る竜のようなシルエットに見えるその城塞の門の先に着いたとき、しっとりとした音色の声が、半竜娘ちゃんら一行を迎えました。

 

「……隠密は解いてねーんだが」

 

「城の敷地に入ったら、そこが既に感知圏内なんじゃろ?」

 

「精霊ってそんなもんよ」

 

 自慢の隠形を見破られたTS圃人斥候が肩を落とし、半竜娘と森人探検家がフォローして慰めます。

 

「……なるほど、あれが『城塞の精霊』ですか」

 

 逸話の登場人物に会えて、文庫神官ちゃんの眼がにわかに輝きます。

 伝承の蒐集もまた、知識神の信徒としての生業のひとつですからね。

 

 一般技能【精霊の愛し子】を持っている半竜娘と森人探検家(ふたり)がいるお陰か、城塞の精霊は初めから好意的です。

 

 

『ええと、みんな女の子なのね。圃人(レーア)森人(エルフ)只人(ヒューム)、そして蜥蜴人(リザードマン)のハーフ?』

 

「歓迎していただけるなら、かたじけなく」

 

「手土産もあるから納めてもらえるとありがたいわね。お近づきの印に、ということで」

 

 そう言って森人探検家は、アイテムボックスの魔道具から、清潔な布を取り出して見せます。

 建物の維持や調度に、布は幾らあっても良いものです。

 しかもこのような硫黄の蒸気漂う谷底にあってはなおのこと。

 

『あらあらまあまあ、とても助かるわ。いま、貴方たち以外にも女の子たちが滞在しているから、お客さま用のリネンの替えが欲しかったのよ~』

 

「他にもございますよ。きっと気に入られるかと」

 

 森人探検家が交易神の神官(しょうにん)らしく布の他にも調度の類をちらりと見せて城塞の精霊の気を惹きます。

 

 その間に、残りのメンバーは目配せをしました。

 

 “他の客の女の子” というのは、半竜娘ちゃんたちが引き出したかった言葉です。

 城塞の精霊に招き入れられて、一行は城塞の中へと入りました。

 中は一見すると整って見えますが、少し【魔法知覚】で探ってみれば、見えない部分は片付けが間に合っていないようで、崩れたガラクタが積み上がっているのを感じます。

 城内の様子は、城塞の精霊の元気のバロメーターでもあります。やはりまだ本調子ではないのでしょう。

 

 暫く城の廊下を進み、森人探検家のセールストークの流れが途切れた時、その機を逃さず、半竜娘ちゃんが口を開きました。

 

「城塞の精霊殿……その先ほど言うておった客人の女の子たちじゃが、ひょっとしたら手前と同じ蜥蜴人のハーフではないかの? 三つ子の」

 

『ええそうよ、良く分かったわね! ……そういえばなんかマナの波長が貴女に似てるわね。ひょっとして……』

 

「おお、それが分かるなら話が早い」

 

『あの娘たちのお姉さん?』

 

「ああ、いや、手前は母になるのじゃ。そちらにお邪魔しておるのは娘たちであろうよ」

 

『娘!? へぇ~、あなたとてもそんな歳には見えないわ。これでも城塞の精霊として多くの人々を見て、人物鑑定眼(ひとをみるめ)を養ってきたつもりだったんだけど……。自信なくしちゃう』

 

 城塞の精霊が半竜娘ちゃんを上から下までしげしげと見つめます。

 

 

 とはいえ、これで言質が取れました。

 幼竜娘三姉妹はこの城── 城塞竜の体内に居るようです。

 

 

『あれ。でも確かあの子たちの親御さんは、砂漠の赤い砂嵐に呑まれたんじゃなかったかしら。助けられたのはあの子たちだけだったような』

 

「ふふん。その程度で死ぬような鍛え方はしておらん。見くびってもらっては困るのじゃよ」

 

 あとそもそも城塞竜に追っかけられなければシムーンに巻き込まれることもなかったでしょうし。

 

「というわけで、じゃ」

 

『お迎えというわけね~』

 

 流石に子を持つ母同士、言いたいことは直ぐに伝わったようです。

 

『でも素直に帰ってくれるかしらー……』

 

「ん? どういうことじゃ?」

 

『見れば分かると思うわ~』

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

「「「 や! かえらない!! 」」」

 

「お主ら……」

 

 金銀財宝の上でジタバタ転がりながら、幼竜娘三姉妹はそっぽを向きます。

 ここは城塞竜の中の宝物庫。

 財宝の他にも、古い書物も多く収められているようです。

 

 どうも幼竜娘三姉妹は、財宝の輝きに魅入られてしまっている様子。

 というか半竜娘ちゃんたち一党も、TS圃人斥候と森人探検家は財宝に、文庫神官は書物の棚に、それぞれ目を惹きつけられています。

 この城塞に元から蓄えられていたものか、あるいは森人探検家が解読したという宝の地図の財宝に記されていたゲヘナの宝物を、竜の本能で回収して溜め込んだのでしょうか。

 

 半竜娘は三姉妹を見て、自分の一党の仲間三人を見て、肩を落としました。

 この保護者たちにしてこの子たちあり、ということでしょうかね……。

 

『おねーちゃんたち、かえっちゃうの……?』

 

 そして幼竜娘三姉妹に囲まれるようにして中央に居るのは、城塞竜のアバターです。

 男児の形態をとっており、人間で言うと5歳児くらいでしょうか。

 成長が早い幼竜娘三姉妹はもう10歳程度に見えるので、それよりかなり年下に見えます。

 

 ですが、幼くても、流石は竜。

 アバターから漏れる魔力は極上にして大したものです。

 そしてそれだけの圧倒的な強者のオーラを放ちつつも、このように気弱げに庇護欲をくすぐるような仕草をする、そのギャップに、幼竜娘三姉妹たちは当てられてしまったのでしょう。

 

「帰らないよ!」 「お姉さんたちともっと遊ぼう!」 「ね。ね。ご本も読んであげる!」

 

 まあ竜を崇め、強者を貴ぶ蜥蜴人ですから、三姉妹が城塞竜に入れ込んでしまうのも無理はないのかもしれません。

 

『わぁ~い、ありがとうっ!』

 

「「「 うっ。か、かわいい…… 」」」

 

 そして今しもまさに、無垢な笑顔でハートを撃ち抜かれたところです。

 完全に見た目カワイイ弟分にして、実際は超強いドラゴンという、そのギャップも含めて気に入ってしまっているようですね。

 

 

 

 

『とまあ、こういう訳ですよ。三姉妹のおかあさん竜さん』

 

「はぁ……なるほどのう」

 

『私も親ですから、こうやって迎えに来ていただいた以上は、子供さんたちをきちんと親元に帰してやりたいとは思いますし、今後は本格的にうちの子も説得するつもりなのですが……』

 

「そうは言っても、こんどは手前らの子らが、城塞竜殿が元気になるまでは離れない、と言い出しそうじゃのう」

 

 実際、幼竜娘三姉妹は、本調子じゃないにもかかわらず変形して空を飛んでまで会いに来てくれたという漢気にも感銘を受けたのでしょうし。

 それに慈母龍マイアサウラの眷属としては、傷ついた竜を置いて離れることなどしないつもりでしょうから。

 

 半竜娘ちゃんはこれでも娘に甘い(たち)です。

 オアシスで集めた情報と、この城塞竜内部の宝物庫までの道すがら尋ねたことをもとに、頭を切り替えます。

 

 

「確か、このゲヘナの谷底よりも、古代の陵墓の方が回復には良いということじゃったよな?」

 

『ええ。その通りです。ここはマナは豊富なのですが、いかんせん硫黄の瘴気が酷くて……』

 

「じゃが、古代陵墓に封じられていた大悪霊が暴れておって、向こうには行けぬ、と」

 

『そうなんですよー、しかも精霊を狂わせる呪法を使うみたいで相性悪くって……。全く迷惑しちゃいますよね』

 

「なるほど、のう。そして、見た限りではうちの娘らの説得にも相応の時間を置くべきじゃろうな」

 

 半竜娘ちゃんは思案し、提案を口に出します。

 

 

「手前らが古代陵墓の悪霊払いをしてこよう。そして、その間にうちの子らの説得を頼むのじゃ」

 

『あら。よろしいのかしら。私はとても助かるけれど』

 

「うむ。それもまた冒険者(アドベンチャラー)の仕事じゃて」

 

 ま、砂漠に来たなら古代陵墓(ピラミッド)の一つや二つは攻略するのが冒険者の華とも言えるかもしれません。

 

 

 というわけで── 依頼受諾!!

 

 

 

 QUEST! 古代陵墓の大悪霊を浄滅せよ!!

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

「ほほーう、そしてあれが古代陵墓の金字塔(ピラミッド)かや」

 

 というわけで、リネンだの家財だのを城塞の精霊に卸した一行は、受諾したクエストを達成しに、砂船や駱駝に乗って、目的地の古代陵墓までやってきました。

 

 時刻は、城塞の精霊に会って依頼を受けたその日の夜。

 奇跡や魔術を駆使した得意の早駆けによる賜物です。

 

「ピラミッドについての情報収集もばっちりしたし」 森人探検家が遠くの砂漠のピラミッドを鋭く睨みました。

 

「詫び代わりの支度金にと城塞竜の宝物庫から予算も貰ったしなー」 TS圃人斥候がその予算を使って潤沢に補充した消耗品を確認しています。

 

「あとは死霊の力が弱まる夜明けを待って侵入ですね」 夜になって元気な白梟使徒の羽を撫でながら、文庫神官が腰の退魔の剣を確かめました。

 

 

「古代陵墓に巣食い、精霊すら狂わせる大悪霊……おのおの油断するでないぞ?」

 

「分かってるわよ」 「誰にもの言ってやがる」 「はい! 油断しません!」

 

 祖竜術【狩場(テリトリー)】により侵入者感知の結界を敷いた半竜娘ちゃんの言葉に、一党の面々は三者三様の返事をし、明日の突入に備えることにしました。

 地母神の奇跡【聖餐(エウカリスト)】が込められた魔道具のランチョンマットから顕現させた温かな食事を摂りながら、一行は火も焚かずに息を潜めて朝を待ちます。

 

 種族柄【暗視】技能を持たないTS圃人斥候と文庫神官ですが、鍛錬によって身に着けた武技【虎眼】によって彼女らも暗闇を見通すことが出来るようになったからこそできる、火のない夜営。

 周りの砂漠に同化するような(まだら)な砂色の帆布を被れば、敵の勢力に見つかることはきっとないでしょう。

 

 さて、ではよく眠って、鋭気を養うこととしましょう。

 

 

 ……というところで、今回はここまで!

 ではまた次回!

 




 
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次回はピラミッド攻略!
 

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