ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆【施錠(ロック)】の使い方の例
 ・毒ガス弾を投げ込んだ部屋に【施錠】し、全ての出口を塞ぐ。
 ・声を上げようとした番兵のお口を【施錠】。
 ・空を飛ぶ竜の翼を【施錠】して無理やり閉じさせて固定し、墜落させる。
 ・斬り落とされた腕の断面同士を合わせて【施錠】して繋いで、応急措置して戦闘続行。
 ・大目玉の瞼を【施錠】し、魔眼を封殺。
 ・怨敵を海中に引きずり込むときに、絶対に逃がさないという決意を込めてしがみつき自分ごと【施錠】して水底へ。
 などなど、生物の関節も有効範囲に収められるのでいろいろと意外な使い道が考えられます。もちろんGMの裁定の範囲で、ですが。あと生物相手だと呪文抵抗判定が入るでしょうし、使い勝手は必ずしも良いものではないかもしれません。

◆前話
聖剣によって大地に縫い留められた金色に輝く半竜の巫女が、呪われたマナを、まるで闇夜にてもなお見えぬ黒き星(ブラックホール)が伴星からその質量(かがやき)を吸い込むかの如く吸収し、聖なる力を宿した五体でもって浄化したそれを無限のリソースとして仲間に配給し、やがては敵を圧倒した。敵の力を己のものにするとは、ふっ、まるで将棋だな……。
 


39/n 裏(召喚されし真精霊、砂塵の国の鉢巻剣士くん一行)

 

1.神にも等しき真精霊(トゥルースピリット)、巨神兵【顕現】!

 

 砂塵の国の古代陵墓群の上空に、都市一つ分の住人の魂が変換されたかのような膨大な量の浄化されたマナが滞留し、凝集し、輝いていた。

 それはまるで、砂漠にもう一つの太陽が生まれたかのようですらあった。

 

 そのマナの輝きの下には、聖剣によって地面に縫い留められつつも、平然と結跏趺坐した半竜の巫女の姿があった。

 彼女の後ろには聖剣の担い手である、知識神に仕える神官戦士の乙女が居る。

 さらに後ろには竜骨で作られた祠もあった。

 

 

 特殊な呼吸法により黄金に輝くオーラを纏った半竜の巫女が、天に向かって請願する。

 

「精霊には、精霊を! 清められた想念よ! 砂塵の地に吹く熱き風よ! この地に澱んだ呪いを吹き散らせ!! 出でよ真なる精霊! 【顕現】せよ! サモン・ハイスピリット!!」

 

 行使されるは、上位の精霊を呼び出す【顕現(サモン・ハイ・スピリット)】の術。

 通常の呪文の二倍の負荷がかかる呪文だが、地脈からのマナを聖剣と【転龍調息】によって聖性を帯びた己の身体で浄化し、【命吸(ヴァイタルドレイン)】によって還流することによって、彼女は既に限界を超えている身を(さいな)む『超過祈祷(オーバーキャスト)』による消耗を即座に補填する。

 彼女ら一党は、この場においては、無限の回復力を持つに等しい。

 

 そして請願に応え、宙に浮かぶ膨大なマナを喰らって、高次元から精霊が── それも、神のごとき力を持った真なる精霊が── 降臨しようとしていた。

 

「古の陵墓を守るは、魔術師の時代の者たち! その想念は、浄化されても残っておる! おお、カードの時代の魔術師たちよ! 決闘者よ! その叡智をまたここに具現化させよ!」

 

 マナを呼び水に、そして、濾過されてもそこに残った太古の王族の記憶が、かつてこの地で力を奮った精霊を、再びこの地に召喚させる。

 

「敵は狂った自然の化身! しからば、対抗するは、文明の化身こそが相応(ふさわ)しい! 文明の記念碑(オベリスク)よ! その象徴よ! これこそが人類の力の証! 大地と灼熱の精霊の御柱(オンバシラ)!」

 

 清浄なマナが、やがて形を取り始める。

 

 現れるのは巨大な、筋骨隆々とした魔神のごとき様相の、超越存在。

 

「降臨せよ! 文明の守護者! 『オベリスクの巨神兵』!!」

 

 圧倒的なパワー!

 精霊を超越し、これは、もはや神と言っても過言ではない存在!

 

 陵墓から溢れ出す敵の軍勢は、未だ健在。

 なれど、このオベリスクの巨神兵の前では、何の意味もなさない!

 

「ソウルエナジーMAX!!! かつての神よ! この地を取り戻したまえ!!」

 

 召喚された真なる精霊、オベリスクの巨神兵の手に、強大すぎる力が集まっていく!

 

 敵味方の区別なく、そのパワーを前にしては、動きを止めざるを得ない。

 墳墓から現れたミイラの軍勢も、狂った水と森の精霊も、散り散りになった怨霊や毒蟲たちも。

 すべては、神のごときこの精霊の前で裁きを待つ矮小な存在に過ぎないのだ。

 

 やがて、神の拳が振り下ろされ、清浄なエナジーの波濤が、敵のすべてを吹き祓った!

 

 

<『1.ゴッド・ハンド・インパクト!!!』 了>*1

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

2.古代陵墓内にて

 

 すべての敵が消滅した(『全体除去』の効果が適用された)古代陵墓群。

 文明の守護者。記念碑(オベリスク)に宿る精霊たる『オベリスクの巨神兵』は、既に役目を果たして送還された。

 

 これ以降は、この一帯の陵墓群の全てを城郭と見なして力を高めるべく、城塞竜の母たる城塞の精霊が君臨することとなるのだろう。

 

 半竜娘たちは、その身に余るマナを受け止め続けたことによる反動が起きる前に、本当に残党が居ないかの確認をしている。

 といっても、半竜娘は聖剣で尾を大地に縫い付けたまま、離れた高台に(しつら)えた竜骨の祠の前で、余った清浄化されたマナを逆流させて地脈にこびりついた呪いを除去しなければならないのでそちらに残っている。

 聖剣の主たる文庫神官と、術のスペシャリストである高位デーモンの闇竜娘に、同じく文字通りに叡智を司る知識神の使徒である白梟使徒も、半竜娘を補佐するべく留まった。

 相当無茶をして地脈を運用したので、その修復にそれぞれの技量と知識を活用する必要があるのだ。

 

 

 ということは、古代陵墓の方の確認を行うのは、森人探検家とTS圃人斥候となる。

 もちろん彼女らだけでは手が足りないので、敵が一掃されるまで雑兵の相手をしていた竜牙兵の軍団も付けられている。

 竜牙兵の軍団はある程度自律的に動いているが、これは死霊術の応用で、この古代陵墓にとらわれていた王家側の魂に、竜牙兵の身体を間借りしてもらっているためだ。

 

 きびきびと小隊単位で陵墓の安全確認をしていく竜牙兵の軍団に、TS圃人斥候は感心しきりだ。

 

「勝手知ったる何とやら、だなー」

「当時を知っている魂に直接案内してもらえるとか、贅沢というか、ズルっこというか」

「まあ楽できるならいーじゃんね」

「それはそうかもしれないけれど」

 

 冒険の醍醐味である『未知なる遺跡の探検』、というのが味わえなさそうで、森人探検家は少し肩透かしを食らったような表情をしている。

 てきぱきと倒れた石像ゴーレムを起こして元の位置に設置し直していく竜牙兵たちを見ながら、TS圃人斥候が森人探検家を慰めた。まあ、次があるって!

 

「そうね。次に期待、としましょうか。四方世界に、冒険の種は尽きまじと云うものね」

「そーそー。……ところでこの石像、また動き出して襲ってこねーよな?」

「大丈夫でしょ」

 

 遠隔で半竜娘が古代陵墓群の中枢も掌握しているだろうから、再起動したとしてもこちらを襲ってくることはないはずだ。

 これら魔導石像によるメンテナンス機構は便利なので、制御権を掌握し直したのちに、城塞竜に引き継ぐつもりだという。

 

 

 

 そして二人が一通り見て回り、呪いの残滓が無くなったことは確認し終えたころには、もう日も落ちようという頃になっていた。

 

「あー疲れた……」

「そしてあっついわ、マジでー」

 

 半竜娘からの膨大なマナの配給も落ち着き、いよいよ大戦の疲労も誤魔化せなくなってきた森人探検家とTS圃人斥候は、竜牙兵たちに担がれるようにして竜骨の祠まで戻ってきた。

 

 そこでは同じく疲労困憊の半竜娘と文庫神官が、竜骨の祠に寄りかかるようにして意識を失い崩れ落ちていた。

 ちなみに聖剣は既に半竜娘の尾から抜かれて、その傷も治っている。

 姿の見えない闇竜娘は、封具に戻って休んでいるようで、白梟使徒はどこかから捕まえてきたスナネズミを祠の上で食べてご満悦だ。

 

 森人探検家とTS圃人斥候は、周辺警戒を竜牙兵たちに任せると、意識を落とした……。

 

<『2.白梟使徒は「まったく、世話が焼けるのです」と言いながら、竜牙兵を指揮して野営の準備を整え、張った天幕に皆を寝かせた』 了>

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

3.城塞竜、到着!

 

 

 ことの顛末を城塞竜と城塞の精霊にまで知らせに、風の精霊を飛ばして待つこと幾日か。

 先日の戦いの疲れを癒すためにゆっくりと休みを取っていた半竜娘たちの頭上に、何か非常に大きなものの影が差した。

 

「おお、ようやく来たかや」

「干からびるかと思ったわ……」

「待ちくたびれたぜー」

「これはもう、お城の竜の中で、天蓋付きのフカフカベッドで休ませてもらうしかありません……」

 

 飛行形態の城塞竜が、ヒンノムの子らの谷(ゲヘナ)からこちらまで飛来してきたのだ。

 

 それはゆっくりと、陵墓群の中央にある広場── ネクロポリスは都を模しておりセレモニーのための広場もある── に降着した。

 ズゥゥンと、重い音とともに、砂が巻き上がって流れていった。

 

『わー、ご苦労様~~! すっごい綺麗になってるのね!! マナも清らかで潤沢! 素晴らしいわ~~!』

「それはもう苦労したからの!!」

 

 城塞竜の身体の出窓から身を乗り出して、暢気な言葉を放つ城塞の精霊に、半竜娘が胸を張る。

 一歩間違えたら膨大なマナの奔流に自我が希釈されて廃人になるところであったのだ、実際。

 それでなくとも都市二つ分のリソースを相手取ったのだから、一言では済ませられないくらいに大変であった。

 

「ん。では、地脈の占有権限と、陵墓全体の魔導機構の統括権限を委譲するのじゃ」

『ありがと~~。ここまで早く、しかも完璧に片づけてくれると思ってなかったわ~~!! 御礼も別にしっかり渡すわね~~』

「それも期待しておるが、しっかり御子息の傷を治して、手前の娘らの説得の方を頼むのじゃよ!」

『まっかせなさい!』

 

 元はと言えば幼竜娘三姉妹を連れ帰るためのおつかいだったので、そこを蔑ろにされると困るのだ。

 

『まあ、それはそれとして、しばらく泊まっていきなさいな! 城塞の精霊として、歓待するわよ!!』

 

「それはぜひ頼むのじゃ! 娘らの様子も気になっておったしな!」

「助かるわ! もう体中が砂だらけで!!」

「きちんとした屋根のある場所で寝られる!」

「やったーーーー!!」

 

 

<『3.古代陵墓群の中央に立つ城塞竜の中の最高級の一室で、城塞の精霊に歓待される宿泊経験──── プライスレス』 了>

 

 

 半竜娘ら一党は、呪われた古代陵墓群を浄化し、解放した!

 経験点2000点獲得! 成長点5点獲得!

 城塞竜&城塞の精霊とのコネクションを獲得!

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

4.その頃のゴブスレさん一行

 

 

 王国東部国境を抜けて、軽銀商会が発起人を務める隊商が砂漠を行く。

 東部国境を越えて小鬼(ゴブリン)がやってくるというのは本当だったらしく、実際、王国の東隣の砂塵の国への道中において、狼に乗った小鬼の群れに襲撃されることが幾度かあった。

 

「も~~! またゴブリン! ゴブリンばっかり!」

 

 砂漠に合わせてヒラヒラした薄手の布の服に身を包むのは、この乾いた砂漠においても香しい林檎のような森の香りを纏う森人の姫、妖精弓手だ。

 隊商中央の馬車の幌の上に陣取って、四方八方へと百発百中の矢を射る彼女の手によって、押し寄せる小鬼どもは次々と数を減らしていく。

 隊商は編成されている幌馬車の数も多いが、それ相応に護衛の冒険者も揃えているのだ。

 

「合わせなさい!」 「了解、姉さん!」

 

 赤毛の魔術師姉弟が小器用に一言真言(ワンワード)で「「 <ヤクタ(投射)>! 」」と唱えれば、身軽な女武闘家がまるで投石器(カタパルト)に投げられたかの如く、遠くの敵陣へと投射された。

 

 恐らくは【軽功】の武技を修めているであろう女武闘家は、「ハイッヤァアア!!!」と叫びながら、敵の小鬼どもの密集地帯に空中から突撃すると、腕に着けた竜爪(バグナウ)を振り乱して、当たるを幸い蹴散らし始める。

 練り上げた気功の業が炸裂し、腕の一振り、蹴りの一発で、ゴブリン程度なら四肢や頭を吹き飛ばす。吹き飛ばされたパーツは砲弾のような勢いで、周囲のゴブリンを襲った。

 しかし多勢に無勢。女と見て襲い掛からんとする小鬼の群れのただ中で、女武闘家だけでは不運(ファンブル)が怖い。

 

 いましもまさに、女武闘家の死角からゴブリンが一匹、飛びかかろうとしていた。

 

 その時!

 

「うぉっりゃあああ!!」

 

 砲弾のごとく飛んできた圃人の少女剣士の長剣が、そのゴブリンの(くび)を刎ねた!

 彼女は頸を刎ねた勢いそのままに砂地に着地── いくらか勢い余って転がったが── し、その圃人の身には大きな長剣を振り回し始める。

 

 女武闘家が圃人の少女剣士が飛んできた方を見れば、重装に身を固めた鉢巻の青年剣士が、盾を構えていた。

 きっと、盾を踏み台にさせてシールドバッシュでこちらに吹き飛ばしたのだろう。

 

「ありがと! 助かった!」

「ああ、無事でよかったぜ!」

 

「ちょっと、私には何もないんですか!?」

「そっちもありがと!」 「おう! いい働きだったぜ!」

 

 女武闘家と鉢巻の青年剣士と圃人の少女剣士ら、この一党の前衛組が互いのコンビネーションを称えつつ殲滅を続行。

 装備の関係で移動速度が出せない鉢巻の青年剣士ですが、その声に赤毛の魔術師姉弟から「「 <クレスクント(成長)>! 」」の一言真言をかけてもらうと、大声でゴブリンたちを挑発。

 挑発に気を取られて、女武闘家と圃人の少女剣士の包囲を崩してしまう小鬼たちに、「「 隙あり! 」」と二人が躍り掛かる。

 

 

 

 逞しくも強き冒険者となった同期と後輩のパーティを笑顔で見つめる女神官。

 『いつかは竜退治』、そう語り合った自分たちは、きっといま、その道の途上にあるのだ。

 彼らはしっかりと成長している。自分も成長できているだろうか。彼らに負けない冒険者になれているだろうか。

 

 ── うん。きっと冒険できている。

 

 女神官は自信を持つと、馬車の荷台から投石紐で石を投げてゴブリンを殺し続ける、薄汚れた鎧の男を見た。

 

 その男こそは、ゴブリンスレイヤーだった。

 

 砂塵の国に、“小鬼の影あり” という。

 となれば、彼の出番に違いなかった。

 

<『4.ともあれ、ゴブリンは殺すべきである』 了>

 

*1
◆オベリスクの巨神兵・ソウルエナジーMAX!!!・ゴッド・ハンド・インパクト!:実はこっそりコストとして味方の竜牙兵を捧げて発動している。敵フィールドを一掃し、さらに無限の攻撃力で相手を撃破する。もちろん元ネタは遊戯王の三幻神のひとつ『オベリスクの巨神兵』。




 
その後、ゴブスレさんたち一行(軽銀商会の隊商)は、シムーンには巻かれずに、サンドマンタの群れなどを横目に、蟲人の砂船の船団と交易したりもしつつ、つつがなく砂塵の国の都まで辿り着いたようです。

さて、どこで半竜娘ちゃんたちとゴブスレさんたち一行を合流なりニアミスなりさせるべきか……。
あと、魔剣を持った青年(『生』と『死』の神ら主催のキャンペーンと思われる、砂塵の国の世直し騎士の物語)とも少し関わり持たせたいし……。
となればやはり半竜娘ちゃんたちもとりあえず砂塵の国の都に行ってもらうべきですね、これは。
 
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