ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
半竜娘ちゃんが急に精霊使いになったので、初投稿です。
はいどうもー、ひたすらギルドへの貢献度を高めるRTA実況、はーじまーるよー。
前回、ゴブスレさんに小鬼の殺し方と、RTAの心得を伝授してもらったところですね。
魂で、理解したッ!
そして気づいたら職業【精霊使いLv1】が生えてる件について。
半竜娘ちゃんは経験点とか貯めることができない子かあ。そっかあ。
お金の使い方もそうだもんね。
成長点を残しているだけ優秀、と思うことにしましょう。
いえ、大丈夫です、特にガバじゃないです。
既存の職業レベル上げるのに経験点貯めるの大変だから、別の職業生やしたくなる気持ちは分かるし。
それに実際、覚えた精霊術【
火の属性なら、【
汎用タイプ以外の、他の呪文を覚えた精霊は呼べないのかって? その辺はGMと相談ですね。
例えば特定の精霊と仲良くしていて、いつも自分の近くに憑いてもらっているとかであれば、その精霊を呼び出した時には、使える呪文について別のものを設定できるかもしれません。
重要なのは、そこに多少の説得力があるかどうか、です。(リアル『言いくるめ』技能)
例えば、幼いころにピクシーと縁があって……とかなら【
半竜娘ちゃんは、今のところ、そういうふうな謂れのある精霊との縁はないようなので、呼び出せるのは汎用的な精霊だけ、だと思います。
ただ、今後、そういった特別な縁のある精霊と仲良くなることがないとも限りません。
自由精霊は、高度な思考を持っており、場合によっては人里に紛れて暮らしているパターンもあるとか。
えーと、技能的には、魂魄強化の指輪+3を嵌めた状態なら、精霊術行使の基準値は、魂魄集中12+精霊使いLv1で、13ですか。
2D6の期待値7を足すと、達成値20。期待値が出れば、自由精霊が呼べちゃいますねえ。
自由精霊ともなれば、使える呪文の数が2種類になり、呪文使用回数も3回になりますから結構強力です。
特に水の自由精霊は、【
つまり何が言いたいかというと、精霊術の【使役】は、呪文一つ覚えるだけで、あたかも複数の異なる呪文を獲得したかのような効果が出せる、非常に優秀な呪文だということです。
もちろん、呼び出した精霊が動いてくれるまでのタイムラグで一手損になってしまうので、万能ではありませんが。
さらに、術士にとってはありがたいことに、精霊たちに呪文を打たせず
術をメインとする半竜娘ちゃんにとって、これはかなりありがたいですね。半竜娘ちゃんは【統率】技能が習熟段階なので、1体の味方を、攻撃の代わりに支援に回すことができます。【分身】が統率する分と合わせたら二体を支援に回せるわけです。自由精霊は支援行動により呪文の達成値に+3してくれる優秀ちゃんなので、うまくやれば、呪文行使時に+6のボーナスを得ることができるかもしれません。そうなれば、【巨大】の呪文による10倍拡大も安定して出せるようになると思います。
周りに神秘的な精霊の光をまとわせて加護を得て、呪文を唱え、 10倍に! 巨大化して!! 突撃する!!! 半竜娘ちゃん!!!!
一気に絵面が物騒になりました。神秘的とはいったい……。
さて前回、わざわざお金を払ってまで、ゴブスレさんのレクチャーを受けたのは何故かというと、これも全ては冒険者ギルドからの信用度を稼ぐためです。
――ゴブリンか(ゴブスレ並感)。
そうですゴブリンです。
今のところ、住む場所にも装備にもお金にも困っていない半竜娘ちゃんですが、本RTAの目的のためには【辺境最大】と歌われる銀等級の冒険者に成り上がってもらうことが必要です。
半竜娘ちゃん的にも、冒険者としての研鑽を通じて、広い世界を知り、恐るべき竜に至るにふさわしい格を備えたいと願ってくれていますので、本人の意識からも大きく乖離していません。
じゃけんこれからはギルドからの信用稼ぎのために、
そのとき、ゴブスレさんの薫陶を受けたことがあるというのは、ギルドの査定にプラスになって、より多くのゴブリン退治を回してもらいやすくなります。
また、半竜娘ちゃんが白磁等級のソロであることから、他の白磁の一党に助っ人的に参加させることにも違和感がありません(なおランク詐欺)。最近はギルドの手伝いも良くしているので、
――受付嬢「この依頼に白磁三人だけでは……ここは半竜娘せんせい! お願いします!」
――半竜娘「どぉれ……」
という用心棒ムーブができるかもしれません。有能バウンサー半竜娘ちゃん爆誕!
実際、前衛張れて、高威力の呪文が使えて、召喚で頭数増やせて、バフ/デバフこなして、回復もできる、というのは、どこの一党に放り込んでも機能する構成と言えるでしょう。
ゴブスレさんの言い分じゃないですが、かなり「便利」なんですよねえ、半竜娘ちゃん。
前回洞窟を潰したときに巨大化突撃の魅力に取りつかれてしまったっぽいのは……、ままえやろ。
二言目には「大丈夫? 巨大化する?」って聞いてくる系のキャラにならないように、いや、なってもいいのか??(錯乱)
まあ【辺境最大】を目指すにはかえって好都合と思っときましょう。
それで、当面の目標ですが、地道な活動のほか、直近で名を売る機会としては、やはり
都合のいいことに、巨大化が非常に有効に働く、開けた場所での野戦となります。
また、襲撃察知から接敵までに十分な時間があり、バフを積めることも非常に好材料です。
これはもう! 巨大化して突撃しろということですよね!! 間違いない!!
懸念点は、魔神将級の古竜とその一族を滅ぼしたことで、混沌の勢力のタイムテーブルが読めないことです。
今日明日にでも魔神王が討伐されても驚かんぞ。
これによる影響と、二周目モードの難易度上昇がどう出るか。雑兵が増えるだけなら、たいていは蹴散らせると思うんですが、さて。
では、ここから少し倍速です。
半竜娘ちゃんは、朝は軽く武術と投擲の訓練、訓練が終わったら依頼を受けて、昼間は【分身】と手分けして、主に日帰りで行ける範囲のゴブリン退治をしてもらいます。
夕方は、呪文使用回数が残っていて、首尾良く水の自由精霊が呼び出せたら、【命水】を振る舞い、冒険者たちに恩を売ります。また、【命水】は疲労も癒すので、体調が良くなった冒険者たちの死亡率低下にも繋がり、ギルドからの評価も期待できます。水の自由精霊を呼び出しやすくするために、上質な触媒を用意しときましょうね。
あるいは、ポーション工房の近くででも精霊を探してみて、【命水】を最初から使える小さな
半竜娘ちゃんには、重戦士一党の
夜は魔女さんのお家で真言呪文や祖竜術の研鑽を行います。すっかりTASさんとゴブスレさんに毒されたのか、マンチ的研究に余念がありません。魔女さんがいるときは魔女さんと一緒に、いろいろと考察などします。
ただ、新しく覚えた精霊術の方は感覚的な術なので、考察が捗らずに四苦八苦しているようです。
他にも、冒険に使う毒煙玉などの調合を行います。装備の手入れもですね。
また、昼間は教会から治療の手伝いを依頼されればそちらに、あるいは街の土木屋さんから助っ人を頼まれればこちらにと、基本的に先約がない限りは頼まれたことは断らず、八面六臂の大活躍をしてもらっています。
結構【職人:土木】の技能が役立ってますねー、これは【力場】で構造体を創るのにも、巨大化突撃で建造物の弱所を見抜くのにも役立つ、いーい技能だと思いますよ!
土木工事だけやってた方が稼げるのでは? は禁句です。
それ言うと、竜の死体を素材として売り払った利益の半分が、魔女さんとの共有資産として転がり込んできた時点で、働く必要がほぼなくなってるので。
そうそう、ゴブスレさんと依頼の行き帰りの道でご一緒することもありますが、基本的にはターゲットの巣穴は別々になります。
そうだよね、ゴブリンを殺す手は、多いほうが良いもんね。手分けできるならそうするよね。
よっぽど半竜娘ちゃんしか出来ないようなことを頼みたいときじゃないと、ゴブスレさんはこちらを頼ってくれません。逆に言えば、半竜娘ちゃんの担当する分の巣については任せてくれてるわけで、実力には信を置いてもらってる模様。
ゴブスレさんは、たとえ戦場が違っても、ゴブリンを殺しまくっておけば勝手に好感度が上がるタイプなので、これからもゴブリンは殺せるだけ殺していきましょう。ゴブリン殺すべし、慈悲はない。
しかしこれだけ請けてても、それでもゴブリン退治の依頼はなくなりませんねー。
ゴブリンが多いのも全部、魔神王ってやつが悪いんだ。
ちなみに半竜娘ちゃんがゴブリンの巣を潰す時の、よく使う手管についてご紹介です。
白磁のお守りしてるときは、ゴブリンスレイのレクチャーのために後方先輩面しながら巣穴に突入するのでまた違いますが、基本はソロで本体と分身で手分けして二カ所同時攻略しています。
半竜娘ちゃんは、呪文使用回数が7回もあるので、そこそこ贅沢に呪文を使っていきます。本体の方は、武術重点でいくこともありますが、分身ちゃんソロだと、指輪の付け替えができず、回避を強化できないため呪文重点でいきます。
手順は以下のとおりです。
・真言呪文【加速】を、あらかじめ自分にかけておきます。これで、あらゆる行動が成功しやすくなります。(呪文使用1回、残り6回)
・精霊術【
あまり複雑な命令は受け付けてくれないので、命令内容は『巣の形や抜け道を調べて』『巣の中で、
・特に捕虜がいなければ、毒気を出す道具で
あとはゴブリンが出てきたところを殴り裂いて殺す簡単な仕事ですので、
・捕虜が居る場合は、燻さずに押し入ります。念のために【竜牙兵】を呼び出して前衛にします。最初に呼び出した風の精霊も連れて行きます。(残り呪文使用回数4回)
・前衛に竜牙兵、後衛に風の精霊を置いてるので、奇襲はあまり受けませんが、ときどき壁抜きされるので注意。半竜娘ちゃんは知力が高いので、奇襲や罠はだいたい察知できますが。
・ゴブリンが待ち伏せしている場合は、毒の【竜息】でまとめて吹き飛ばします。捕虜が肉の盾にされていても、視認できればブレスの影響範囲から外せるので問題ないです。
あるいは、【停滞】で動きを止めて始末します。風の精霊には、支援行動でもさせときましょう。
(残り呪文使用回数3回)
・そのあと、どうせ隠れていたゴブリンが奇襲してくるので迎撃します。
・捕虜が居れば、ポーション類を飲ませて回復させます。捕虜が多ければ、水の自由精霊の召喚による【命水】を試しても良いですが、呼び出した風の精霊からの支援行動に加えて、上質な触媒を使っても今ひとつ安定しないので、過信は禁物です。
衰弱死しそうな捕虜がいるときは、スタミナポーションか、それでも足りないときは【賦活】を使いましょう。人命優先です(ギルド評価のためにも)。
本体の方の半竜娘ちゃんの場合、寝る前に【分身】を更新する用に、呪文使用回数は1回分残すのが望ましいですが、そこは臨機応変です。
まあ、このとおりに行くことばかりではないですが、概ねこんな感じです。
だいたい一つの巣あたり、20から30のゴブリンと遭いましたねえ。400匹くらい殺してる気がします。
ホブやシャーマンが居ても、大抵は毒の竜息で吹き飛ばせますので、加速状態を維持して先手を取れるように気をつけてれば、そうそう面倒なことにはなりません。クスリの後遺症で判定にペナルティがあるため、ときどき加速状態が維持できなくなってしまうことがありますが、そのときは諦めて、かけ直しはせずにいきましょう。
クライマックス戦闘もなく、作業としての狩りを延々と行っただけですので、10日間くらい毎日ゴブリン退治の依頼をこなしても、トータルで経験点1500点、成長点3点程度にしかなりませんでした。でもギルドの評価は高まったみたいなのでオールオッケーです。
半竜娘ちゃんは、早速、経験点を職業【精霊使い】に突っ込んで、Lv2にしたみたいです。これで、残り経験点は500点です。
新たに覚えた呪文は、精霊術【
いえ、落下死は怖いので、これを覚えるのは実際有効です。
そして、使える成長点は、繰り越し分3点と獲得分3点と経験点変換分2点を合わせて、8点ですね。
【加速】や【巨大】などの付与呪文系統を安定させるため、成長点を使って冒険者技能【呪文熟達:付与(初歩)】を習得します。これで付与呪文系統の行使、維持にボーナス+1です。習得コストは5点です。暫くはこの技能を伸ばしたいところ。
これで残り成長点は3点です。新しい技能は生やさず、繰り越しときましょう。
そしていつものようにギルドに帰って来ると、なんか見習聖女ちゃんが、受付嬢さんに、結構な剣幕で掛け合っているところに遭遇します。
あれ、君、新米剣士くんは一緒じゃないの? あと、その手の剣、新米剣士君のだよね?
「だから! 下水道の依頼やってたら急に消えちゃって!」
……あっ。
これはあれですね、TASさんがフラグ立ててた、地下の未踏遺跡だかの転移トラップの件ですね。
フラグ放置して解決してなかったので、新たな犠牲者が出たみたいです。
原作イベだと新米剣士くんは、鼠に刺した剣を巨大ゴキブリに喰われて失くしちゃうんですが、そっちのイベントとも化学反応したのかどうだか分かりませんが、今回は逆に剣だけ残して
まあ、転移するだけなので、即死とは限りませんが、時間を置けば死亡確率が高まります。
あー、どうすっかなー!
半竜娘ちゃんも、呪文の使用回数減ってますし、そこそこ
……。
よし、いきましょう。
多分このタイミングで発生したのはGMの罠で、殺意も高いでしょうが、功績を稼ぐチャンスでもあります。
何より既に、半竜娘ちゃんがやる気です。分身ちゃんの方も同じくです(中身同じだから当たり前)。
であれば、よりよい結果を導くために、ささやかな啓示を与えるのが、こちらの役目でしょう。
おっと、そんな風にやる気になってる半竜娘ちゃんに、魔女さんがそっと近づき、『物探しの蝋燭』を渡してくれました。
「行くんで しょ?」
さすまじょ! ついでに
魔女さんからの餞別を受け取り、出来る限りの準備をしたら、受付嬢さんと見習聖女ちゃんに話しかけます。
――安心めされい!!
▼△▼△▼△▼
そして下水道へ。
『物探しの蝋燭』の効力は1時間です。とにかく走っていきます。幸いにも、朝っぱらから掛けていた加速の効果は維持できていました。
荷物は本体の方の半竜娘ちゃんが背負い、見習聖女ちゃんは分身ちゃんが背負って走ります。
幸いにも、見習聖女ちゃんは、奇跡の使用回数を残していたそうなので、連れてきました。
【聖撃】が使えるとのこと。
というか、志願したので連れてきました。
『物探しの蝋燭』の反応は、徐々に強くなっていきます。魔法の力で導く灯火は、罠すら明るく照らし、最短ルートを示します。
しかし最短ルートであるはずにも関わらず、半竜娘ちゃんズと見習聖女ちゃんは、下水道を下へ下へと潜っていき、人跡未踏の区画へと立ち入っていきます。
いよいよ疲労の色が隠せなくなってきたところで、ひときわ強く蝋燭が燃え上がりました。
しかしここには何もありません。
不思議に思って『物探しの蝋燭』を床に近付けると、いっそう強く燃え上がりました。
「下、みたい」
抜け穴や階段は近くに見あたりません。探しているうちに蝋燭は燃え尽きそうに思えます。
精霊術を使うべきです。土の自由精霊なら、【
分身ちゃんが詠唱します。しかし1回目はファンブル! 不発です。スカったのを馬鹿にするように、どこからか降ってきた小石が分身ちゃんの頭にコツンと当たりました。腹立つわあ。
気を取り直して今度は本体の方が【使役】を唱えました。2回目の正直。
成功です! 土の
分身ちゃんの方は呪文はあと2回、本体の方も、同じく残り2回といったところ。ファンブルが痛いです。
飛び込んで落下する前に本体の半竜娘ちゃんが発動準備しておいた、【力場】が発動し、段々になった足場を作り出します。
直接一足飛びに降りるには高さがありすぎますし、下には『物探しの蝋燭』が指し示した新米剣士くんの他にも、敵がいたのです。一気に下に降りるわけにはいきませんでした。
そこは、一面のスライムの海でした。
新米剣士くんは、崩れた柱の上に登って、なんとかスライムたちから逃げています。
真上からやってきた半竜娘ちゃんズと見習聖女に気づいた彼の顔は、かなり憔悴していました。
「た、助かった!?」
半竜娘ちゃんは、そのスライムたちの奥に、ひときわ巨大な粘液体があることに気付きます。
明晰な頭脳で記憶を掘り起こしますが、該当する怪物は思い当たりません。
なにしろ、巨大な粘液体は、その端から、大鼠や大黒蟲や沼竜や、様々なスライムを生み出しているのです! しかも、生み出したものどもを、また捕食して取り込んでいます!
この世の物とは思えない、総身の鱗が逆立つような光景です。
下水道の害獣害虫が尽きない原因は、そして最近沼竜が現れるようになった原因は、ひょっとすると、こいつなのかも知れません。
「な、何アレ……! 自分で生み出したのを、食べてる……!」
見習聖女が戦慄しますが、ともあれ新米剣士の救出が先です。
分身の方の半竜娘ちゃんが、【
その吠声を聞いた全ての敵に、かつて恐るべき竜がもたらした、命の螺旋に刻み込まれた原初の恐怖を呼び起こします。あまりの恐ろしさに、雑多な動物たちは、震えるからだを引きずって、我先にと逃げ出していき、そして、その先にあった巨大粘液体に捕食されていきます。巨大粘液体の動きも鈍ったようです。
チャンスです。本体の半竜娘ちゃんが、【力場】の段差を動かし、見習聖女ちゃんが手を伸ばして新米剣士くんを拾い上げます。
もたもたしていると、【隧道】で開けた穴が閉じてしまいます。
そのとき。
何を思ったか、【力場】の足場を上に縮める勢いに逆らい、分身ちゃんが、土の自由精霊を連れて、下へと突っ込みました。
決意を示すように、【
「え! 何してるのよ!」
「おいおい、トチ狂ったのかよ!?」
まあ、ある意味狂っていると言えるかも知れません。
【分身】とはいえ、操っているのは本体の精神。こんな、無謀な特攻では、その精神は、きっと死を味わうことでしょう。
その程度のことで、分身とはいえ死を忌避しない特攻を行うのは、十分に狂っていると言えるでしょう。
本体の半竜娘ちゃんは、【力場】による足場の操作を一度止め、最後の支援のため呪文を詠唱します。
階下の分身ちゃんを援護するために唱えられた、本体の半竜娘ちゃんの【停滞】が、【生命の遣い手】たる熟達の手腕により、会心の手応えで決まります。巨大粘液体やその周りの雑多な害獣害虫たちは、【竜吠】による萎縮も合わさり、ほぼ動きを止めました。そこに、土の自由精霊の【土弾】が炸裂する轟音が響きます。
本体の呪文使用回数もこれでゼロ。しかし、動きを止めたのは大金星です。土の自由精霊は、あと1回の呪文が使えます。
半竜娘ちゃんの分身は、いまだ巨大粘液体の間合いの外であるようです。また、逃げてくる雑多な動物たちを捕食するのに忙しいのか、巨大粘液体は、分身ちゃんたちの方には目も向けず、ノロノロとあたりのものを貪っています。
分身ちゃんの【統率】技能により率いられ、土の自由精霊は、分身ちゃんと同じタイミングで動き出しました。
土の自由精霊は素早く【石弾】の呪文で攻撃。分身ちゃんは、肉薄して攻撃です。左右の竜の爪が、巨大粘液体を抉りますが、すぐに塞がっていきます。しかし、【竜爪】の効果か、ダメージは多少なりともあるようです。巨大粘液体に取り込まれないようにまた下がります。
【停滞】により動きを止めている間に削ってしまえば倒せるかも知れませんが、今も粘液体からは、新たな害獣害虫が産み落とされています。しかもそいつらは、【停滞】も、【竜吠】による恐怖の効果も受けていないのです。
さらにどうやら、周りのモブを食べることで、巨大粘液体は回復しているようにも見えます。
分身ちゃんは決断します。
肉薄して、全身全霊の【発勁】を、片手ずつ二連撃。
それで、削れるところまで削ります。
それほどの氣を込めれば、分身ちゃんの衰弱死は必至。
しかし、やるだけの価値はあります。
光を帯びる両の爪。
恐るべき竜のごとき、裂帛の吼え声。
二発のくぐもった轟音。
直後、爆発したかのような音とともに、巨大粘液体の上半分が吹き飛びました。*1
そして、
「裁きの司 つるぎの君 天秤の者よ 諸力を示し候え 【
見習聖女ちゃんの【
いまにも階上に上ろうとするところから降り落ちた聖なる稲妻が、露出した巨大粘液体の内部組織を焼き払い、核らしきものを露出させます。
しかし、あと一手が足りません。
分身ちゃんは氣を使い尽くして、今にも消滅するでしょう。
土の自由精霊も呪文を放ったばかり。
見習聖女ちゃんは言わずもがな。
新米剣士も疲労困憊。
となれば――
「良うやった! ここでトドメに動かねば蜥蜴人の名折れよ……イヤーッ!!」
【加速】により、二回の行動が可能になった半竜娘ちゃん本体の、決断的な
「もう一度じゃ! イヤーッ!!」
露出した核に二本の
倒せたでしょうか?
確認する時間はありません。
痛手は与えたかも知れませんが……。
いよいよ分身ちゃんが消滅し、最後のあがきなのか、断末魔なのか、巨大粘液体の全てが、なんらかの動物に変異していきます。
土の自由精霊も囲まれてしまっています。このまま精霊が消えれば、【隧道】もどうなるか分かりません。
早急に階上に戻らなくては。
「ま、倒せておらんでも、これだけ情報が分かれば、次はどうとでも出来ようさ」
捨て台詞を吐いて、半竜娘ちゃんは【力場】による足場を操作して縮めて階上へ戻りました。
土の自由精霊の召喚も解除します。
召喚解除前に、精霊も術を解除したのか、ほぼ同時に、【隧道】で開いていた穴が閉じます。
さて、先ほどの巨大粘液体から生まれ落ちた害獣害虫たちが、津波のように下の階から溢れてくるかもしれません。そうなる前に、ギルドに戻りましょう。
帰り道は、頭脳明晰な半竜娘ちゃんの頭の中にしっかりと構築されています。新米剣士くんにスタミナポーションを飲ませ、急かします。
無事に戻るまでが、救出任務ですからね。
▼△▼△▼△▼
というわけで、下水道の転移罠のフラグと、沼竜のフラグと、ついでに原作のローチキラーのイベントフラグを変則的に処理できました。
あ、半竜娘ちゃんと新米剣士くんと見習聖女ちゃんは、無事に地上までたどり着けましたよ。ご安心ください。
ついでに言うと、あの巨大粘液体はきちんと死にました。あの個体は、ですけど。他に居たりするんでしょうかね、果たして。
まあそれでも、沼竜はもう追加で現れないでしょうし、下水道の害獣害虫も徐々に減るかもしれません。
それに、再稼働していた罠は、巨大粘液体の生体エネルギーで動いていたようなので、それも一旦は止まります。
そこまでは、半竜娘ちゃんたちには、調査しない限り知りようのない情報になりますが。
地下の未踏遺跡の怪物について、駆除依頼が出るかどうかは、辺境の街の行政庁と、冒険者ギルドの判断になるようですね。恐らくは、懸賞金が掛けられるか、それか調査依頼が出るのではないでしょうか。
地下深くに潜んでいることと、これまで表に出なかったことをどう評価するかによって、行政側の対応が変わってくるでしょう。
救出任務と、沼竜が出没するようになった謎の解明で、依頼二つ分として経験点を2000点。成長点を6点獲得。
これで、繰り越し分と合わせて、経験点が2500点、成長点が9点ですね。
あと装備は南洋投げナイフを2本紛失しました……残念。買い直しですね。
レベルアップについては、おすすめは職業:魔術師をLv5にすることですが、得た経験点と成長点をどう振り分けて成長させるかは、半竜娘ちゃんに任せますのでお楽しみに!
……あとさGM、ちょっと言わせてもらっていい?
あの地下の怪物さー、絶対にショゴスとかそういうあれだろ?!
いつ「テケリ・リ」とか鳴き出すか、気が気じゃなかったんだからな!!
めっちゃ怖えーよ!! グロいよ!!
PLの精神に
え、救出が1日遅れてたら(フラグ発生から20日経過で)、次の段階に移行して新米剣士くんが取り込まれて複製されて量産されて敵として出てきてた?
PCにもトラウマになるやつじゃないですかー! 「俺を……俺たちを、殺してくれ……」とか言ってくるんでしょ? ヤダー!
え、完全放置で、居なくなったはずの冒険者が
そんな情報知りとうなかった!!
てけり・り
地下の怪物は、アブホースとかウボ=サスラとかショゴスとかそういうあれのイメージ。