ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆前話
蜥蜴僧侶さんに巻物(スクロール)水薬(ポーション)を進呈。思う存分、竜とガチンコしてほしいのじゃ。
女商人さん情報によると、砂塵の国の王宮は半竜娘ちゃんを招こうとしているようで……?
 


40/n 砂塵の国の都にて-4(女商人の依頼、そして黄金の蜃気楼亭へ)

 

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、な実況、はーじまーるよー。

 

 前回は砂塵の国の都で蜥蜴僧侶さんと鉱人道士さんと朝食を食べて、宿をとって、こちらに来ているという女商人さんの泊まっている宿にご挨拶に行ったところまででしたね。

 

「ようこそ、我らのスポンサー」

「おう! 壮健そうで何よりじゃな! 儲かっておるか?」

「損は出しておりませんわ」

 

 瀟洒な服に身を包んだ女商人さんは、豪奢な絨毯の敷かれた部屋で、フカフカのクッション(ひとをだめにするソファ的なやつ)の置かれたソファに腰を沈めて扇情的に脚を組んでいます。

 その手を覆うのは雷精霊が宿ったサイバーじみた手甲です。トルマリンの輝きが高級宿のスイートの応接間でも目を惹きます。

 スケルトンじみた見た目のこの手甲は、異界の機械化悪魔を解析した技術で作られたもので、古代遺跡のハッキングや精霊界への干渉に力を発揮するという逸品です。

 

 女商人さんはかつての小鬼聖戦軍(ゴブリンクルセイダー)との戦いで助け出した雷精霊の助力を得ており、前の冬には転移門の先の南海の孤島 “奇跡の島” で、その精霊の助力と彼女の腕前を生かして遺跡の祖竜再生装置のコントロール権限をハックしてもらうなど、大変お世話になりました。

 

 それだけでなく、半竜娘ちゃんと女商人さんは、出資者と実業家の関係でもあります。

 小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)から奪った軽銀の製法を引っ提げて実家の貴族家に凱旋した女商人さんが興した軽銀商会。

 その設立に目を付けた半竜娘ちゃんはこれ幸いと、自らを竜に近づける冒険に専念するため、女商人さんの軽銀商会に黒鱗の古竜の財宝を預けて資産運用してもらっているわけです。

 単に資産を預けるだけでなく、機械化悪魔(サイバーデーモン)の異界技術を解析させたり、今や蜥蜴人の聖地たる “侏羅紀の世界(ジュラシックワールド)” と化した南海の孤島の運営に噛ませたりと、便宜供与もたくさん行っています。

 

 きっと今回、城塞竜のところで手に入れた財宝の一部も彼女に預けてしまう心づもりなのでしょう。

 

「今回は軽銀の精錬に使う蛍石の鉱脈を探して、わざわざこちらの国にまで商談に来たのじゃったか」

「あら。そのことはお話ししましたかしら」

「なあに叔父貴殿らに()うてのう。その勧めもあってこうして会いに来たというわけよ」

 適当にその巨躯を床に落ち着けながら半竜娘ちゃんは不敵に笑います。

 

 ちなみに文庫神官ちゃんは肩に梟を載せたまま、さり気なく半竜娘ちゃんの斜め後ろに立っています。まるで従者のように。

 恐らくは半竜娘ちゃんを初めて見る商会付きの人員に対して、使徒(ファミリア)を賜るほどの聖騎士が従者につくくらい高貴な者であることを印象付けたいのかもしれません。

 軽銀商会のキャラバンには、当然ながら多くの人員が動員されていますからね。初対面の人員も混ざっているわけです。

 そういう人らに嘗められることのないようにするのは、半竜娘ちゃんのためでもあり、資本関係によって半竜娘ちゃんに(へりくだ)らなければならない女商人さんのメンツのためにもなります。

 

 また、部屋の中や外には商会所属の人員たちだけでなく、女商人さんが雇った冒険者たちも控えており、半竜娘ちゃんと旧知の顔も幾つかありました。

 辺境の街から巣立った鉢巻の青年剣士、赤髪眼鏡の魔術師姉弟、黒髪の女武闘家、圃人の女剣士に、雪山で女商人さん── 令嬢剣士ちゃんの一党を務めていた者たちの姿もあります。

 

「護衛の数も多いがよくも国境で見とがめられなかったもんじゃのう。いくら冒険者とはいえ、ちょっとした戦力じゃぞ」

「ま、そこは私も商人。色々と方法は心得ていますので。……それに隊商の規模として見れば、護衛もそれほど多いわけではありませんよ。現にここに来るまでに小鬼に襲われることも多かったですし、彼らの仕事には事欠きませんでした」

 うんざりした顔の女商人に、部屋の中に侍る軽銀商会の隊商の面々もそろって同じ顔をします。

 

「小鬼、のう」

「ええ。小鬼、です」

 お互いに溜息ひとつ。小鬼が増えるのは、分かりやすい混沌の萌芽です。

 

「それゆえ小鬼殺し殿の一党も来とるわけじゃな?」

「まあそのようなものです。急な話でしたから信頼できる一党がこれだけ揃えられたのは運が良かったと思います。もっと多く居てもいいくらいですが」

 言外に半竜娘ちゃん一党も雇えればさらに助かるのに、と滲ませる女商人さん。

 

「手前とお主の仲であろ。遠慮するでない」

「であれば、護衛── ではなく、まあ簡単な依頼(クエスト)を……とはいえ、貴女にしか頼めないことです。古代陵墓の大悪霊を浄滅し、城塞竜と友誼を結んだ貴女にしか」

「聞くとしよう」

 

 居住まいを正した半竜娘ちゃんに、女商人さんが告げるには。

 

「この砂塵の国の王を(しい)し、国政を壟断(ろうだん)する宰相。姫を手中に納め、国中の遺跡に眠る古の戦士や怪物を呼び起こして集めているというその宰相が、貴女のことを探しています」

「ほう? 手前を捕らえるつもりだとでも言うのかや?」

 闘争の予感に半竜娘ちゃんが恐るべき竜のように牙を見せて笑います。

 

「いえ、どちらかというと褒章を与えたいようですね。

 大悪霊の浄滅者である貴女がたを、宰相が探して王宮に招こうとしているとのことです」

「なんじゃ、つまらん」

 漏れ出ていた闘気を沈め、フンと詰まらなさげに鼻を鳴らした半竜娘ちゃんに、女商人さんが苦笑します。

「きっと外つ国の者でも異種族でも、難事を解決すれば賞すると知らしめたいのでしょう。力を称揚する、というのは士気高揚にも分かりやすい手です」

 

 さて。と間をおいて、女商人さんが続けます。

 

「私のお願いはここからです。是非、その招待に乗じて王宮の様子や宰相の人となりを探ってきていただきたいのですよ」

「その程度なら手前でなくとも出来そうなものじゃがな。潜り込ませておる草のひとつふたつはあるじゃろう」

「ですがそれらの者が()()居たとしても、蜥蜴人ほど軍略戦術に詳しくはないでしょうし、まして呪文遣いとして貴女ほど高位にあるわけでもないでしょう。貴女であればこそ気づけることがある、私はそう思います」

 情報源は多いに越したことはないというのもあるでしょうが、半竜娘ちゃんの能力と見識を頼りにしたお願いには間違いありません。

 

「……よかろう。受けるとしよう!」

「ありがとうございます」

 最終的に快諾した半竜娘ちゃんに、安堵の笑みを返す女商人さん。

 

「それで手筈は?」

「間のどこかに気を利かせた者が入ったようで、衛兵ではなく “黄金の蜃気楼亭” というところが窓口になっているようです」

「……なるほど。まあ、そうじゃろうな」

「お心当たりがおありで?」

 女商人さんの問いに、半竜娘ちゃんは「どこから話したものか」と逡巡しながら口を開きます。

 

「まあ端的に言えば、手前らが砂海を渡る切っ掛けとなった件の依頼主……のさらに上司じゃな。大悪霊の件や城塞竜の件も都まで知れ渡るのが早いと思うとったが、この都に話を流したのもその “黄金の蜃気楼亭” かも知れん」

「ああ、なるほど。確かに優秀な者とのコネクションがあることをアピールするのはおかしくはありませんね。窓口を己に指定して独占するのもそういうことですか」

「“黄金の蜃気楼亭” が宰相寄りかそうでないかは分からんがな」

 それこそ行ってみればはっきりするだろう、と早速半竜娘ちゃんは腰を上げます。

 

「あら。もう行かれますか」

「早い方がよかろう。お主らの方もまたこの都から近いうちに動くのじゃろう? 目星(めぼし)い場所の見当が既にあるのか、真面目に蛍石の鉱脈を視察に行くのか知らんが……」

「そうですね、幾つか怪しい場所の目星は付けてありますし、鉱脈の情報も得ています。それに今の都に長居しても要らぬちょっかいを受けるだけでしょうし」

 聞けば、都でこなすべき主だった商談は既に終わっているそうです。

 あとはその『目星』の場所に関する情報と、攻略のために必要な物資を、ゴブスレさん一行が集めているところだとか。

 

「ちょうどその件で “黄金の蜃気楼亭” に出向かれてますから、時間が合えば顔を合わせられるかもしれませんね」

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

 女商人さんの元を辞して、半竜娘ちゃんと文庫神官ちゃんが向かったのは、件の “黄金の蜃気楼亭” でした。

 壮麗な楼閣の、門番が控える重厚な扉を前に、さあいざ入店! というところで、中から(まろ)び出てきた蜥蜴人の男に出鼻を挫かれます。

「なんじゃぁ?」 と片眉を上げて半竜娘ちゃんが誰何しますが、蜥蜴人の男は気を失っているようです。

 

「ちくしょう、覚えてろよ! ……兄貴、しっかりしてくだせえ、兄貴!」

 とかなんとか、いかにもテンプレートな噛ませ犬のセリフを吐いた男たちも出てきて、中から叩き出されて倒れた青い鱗の蜥蜴人の男の身体を引き起こします。*1

 そしてそのぐったりした青い鱗の蜥蜴人を両脇から支えました。

 いかにも荒くれ者という風情の彼らは、意識を楼閣の中に向けたまま、急いで足を踏み出します。

 

 そして不幸にもというか避けがたい流れでというか、楼閣に入ろうとしていた半竜娘ちゃんにぶつかってしまいました。

 

「ぐっ、おいこら何処に目ぇつけ、て……やが……る……

「…………」

 じろりと見下ろす半竜娘ちゃんの巨体に、荒くれたちの勢いは萎んでいきます。

 抱えている青い鱗の蜥蜴人の兄貴よりも、もっともーっと強そうな蜥蜴人が目の前に現れればそうもなります。

 やっべぇやらかした! と顔を青くする荒くれたちに、半竜娘ちゃんはにっこりと牙を見せて笑いかけました。こわい。

 

「さーせん、すぐ退きますね姉御……へへへ」

「待てぃ」

 卑屈な笑みを浮かべて道を空けようとする荒くれたちを、半竜娘ちゃんが引き留めました。

 

 あ、終わったわ。という顔をする荒くれたち。

 店の前では止めてくれよな、と何が起こっても良いように武器に手を掛ける楼閣の門番。

 

 さて血が降るかと思ったその時。

 

「まあこれも何かの縁じゃ。少し診てやろう、そこな青い鱗の同胞をな」

「へ?」

「ああ、よいよい。勝手に診る」

 半竜娘ちゃんは荒くれどもの肩で支えられてぐったりしていた青い鱗の蜥蜴人を()()()と摘まみ上げると、目を丸くする周囲に頓着せずに処置を進めます。

 

 具体的にはその青い鱗の蜥蜴人の頭と首をがっちり固定してやって、尻尾を器用に動かして背嚢から治癒の水薬(ポーション)を取り出して振りかけ、残りを口に突っ込んだのです。

 どうやら後ろから物凄い力で殴られたらしき容体のその青い鱗の蜥蜴人ですが、半竜娘ちゃんの見立てでは結構危ない状態だったようですね。

 それでも患部を固定した状態でポーションが作用したおかげか、無事に治っていきます。そして彼は意識を取り戻しました。

 

「ぅ……ちっ、負けたか……」

「ふん。負けたのに命があって良かったのう。祖竜の導きに感謝するんじゃな」

「なんだぁ、坊さん……か……? ぐぉっ」

 命の危機が無くなったのを見て取れば、半竜娘ちゃんは青い鱗の蜥蜴人から手を放して落とし、今度はその腕を取りました。

 

暗器(こんなもの)に頼っとるからじゃ。竜たらんと欲するならば、まずは己の爪爪牙尾を鍛えんか」

 そう言うと半竜娘ちゃんはもう片方の空いた手で、青い鱗の蜥蜴人の腕に装着されていたワイヤー付きダートの射出装置を絶妙な爪捌きで解体してしまいました。

「祖竜に詣でるなら “奇跡の島” を訪ねるがよい。そこで爪爪牙尾を研ぎ澄ませることじゃ」

 暗器の射出筒や鋼線、巻取機構などを爪を軋り合わせて粉々にしながら、半竜娘ちゃんが口に出したのは、転移門から繋がるあの南海の孤島のことでした。

 

 そして伝えるだけ伝えればもう興味を失ったのか、目を丸くしたまま状況を呑み込めていない青い鱗の蜥蜴人の腕をとったまま、無造作に大きく振って放し、通りの向こうまで弧を描くように投げ飛ばしました。

 優しいんだか優しくないんだか……。

 

 そのまま路地裏に転がっていった青い鱗の蜥蜴人を追って慌てる荒くれどもの足音を背景に、半竜娘ちゃんは文庫神官ちゃんを連れて楼閣の扉を潜ります。

 

 というところで今回はここまで。

 ではまた次回!

 

*1
青い鱗の蜥蜴人の男:騎士くんのサーベルを分捕ってたやつ。お行儀が悪かったので密偵くんに昏倒させられ、店から投げて出された。




 
 次回こそはゴブスレさん&女神官ちゃんと会わせられるかな。
 あ、あと妖精弓手さん。隊商の護衛冒険者の人数が多いから、妖精弓手さんは原作と違って女神官ちゃんの方に着いてきています。
 とはいえ、赤毛の森人魔術師(まほよめのチセ)ちゃんが女神官ちゃんを助けるイベントは健在だと思います。シティアドには仕掛人(ランナー)組が一日の長があるので。
 
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