ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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リハビリなので少し短めです。

◆前話
砂塵の国の王宮まで招待を受けた半竜娘ちゃんは、文庫神官ちゃんを従者のように伴って、窓口に指定された “黄金の蜃気楼亭” へやってきて。
酒楼内から叩き出されてきた青い鱗の蜥蜴人を救命ついでに教えを授け(インストラクションし)、その中へと入っていくのでした。
半竜娘ちゃん「竜司祭として功徳を積んだのじゃ!」(なお既に竜司祭Lv10(カンスト)の『竜祇官』称号持ち)

 


40/n 砂塵の国の都にて-5/5(黄金の蜃気楼亭にて)

 

 楼閣の扉をくぐると、そこは別世界でした……な実況、はーじまーるよー。

 

 前回は女商人ちゃんに御挨拶して、砂塵の国の王宮を探る依頼を受け、金字塔(ピラミッド)の大悪霊討滅の称揚にと “黄金の蜃気楼亭” 経由で王宮から呼び出しを受けているというので、その楼閣 “黄金の蜃気楼亭” へとやってきたところまでですね。

 

 あ、ついでとばかりに青い鱗の蜥蜴人の同胞を救命蘇生し、教導してやりましたっけ。

 暗器なんかに頼っているとは、蜥蜴人の風上にも置けない奴でしたが、奇跡の島の “侏羅紀の世界” で鍛え直して更生してくれることを祈りましょう。

 全ては《宿命》と《偶然》の導くままに……。

 

 

 

「ふふん、なかなかじゃのう」

「ええ、お姉さまを呼び出すだけの格はあるかと!」

『なんか、どうにも呪い臭い気がするのです、主様。まあこれだけ人が多ければ、厄物のひとつふたつは紛れ込んでいてもおかしくないのですけど……』

 

 半竜娘ちゃんと文庫神官ちゃん+肩の上の白梟使徒ちゃんが扉を開けた先から、ひんやりと湿り気のある空気が流れてきました。

 水の気配です。

 

 半竜娘ちゃんが水がふんだんに流れる楼閣内を見て上機嫌になります。

 この黄金の蜃気楼亭の楼閣では、沙漠の真ん中にもかかわらず、贅沢に水をかけ流しにしているのです。

 あるいは黄金に輝く調度品の群れに、竜らしい感性を刺激されてのことかもしれません。

 

 豪奢な内装に、出されている料理の絢爛さ。それらは文庫神官ちゃんの御眼鏡にも適ったようですね。

 白梟使徒ちゃん(梟形態)は、吹き抜けの螺旋状に部屋が作られている楼閣内を、梟特有の首の動きでグルリト見渡し、不穏な呪いの匂いに眉毛(眉羽?)を(ひそ)めました。

 

 具体的には呪いを治めるアミュレットがガリガリガリガリガリ……と音を立てそうな感じの青白く輝く魔剣でもありそうな気配を感じているようです。

 多分鞘は鉛で出来ていますね、その魔剣。

 

「まあ実害がなければ放っておくのじゃ。あるいはこの地特有の精霊(ジン)の類の産物で、殊更に邪悪ではないかもしれんじゃろう? 器物であれば持ち主次第じゃろうしな」

『ふん。流石は鏡像の魔神(ドッペルゲンガー)を従えている人間は寛容なのです』

「こら、またお姉さまにそのような口を……」

「良い良い。無理を強いているのは手前の方なのじゃからな」

 

 邪悪を廃すべき使命の知識神の使徒(ファミリア)である白梟に、魔神召喚の呪文で悪魔(デーモン)を食わせて悪魔化した己の影(ぶんしん)をお目こぼししてもらっているだけでも有難いことです。

 善と悪のアライメントが同じパーティに所属することは、本来は非常に難しいことなのですから。

 

 

「さぁて、王宮の代わりに手前を呼び出した代理人に会う──── その前にじゃ。まずはうちの金庫番を探そうかのう。仕掛人(ランナー)の流儀として、面通しにこっちに来ておったはず」

 

 国が違えども仕掛人の流儀はそう変わるものではありません。

 むしろ地元を離れて仕掛をするときに()()()が起こらないように、異国の流儀であっても精通するのが礼儀というもの(エチケット)です。

 その流儀に従い、街中の符牒を読み取った結果、この “黄金の蜃気楼亭” は砂塵の国の都における仕掛人向けの拠点の一つであるようです。

 

 となれば樽に乗る者(マンチクソ師匠)の弟子であり、ゴブリンスレイヤーの姉弟子にもあたる、森人探検家さんが、この “黄金の蜃気楼亭” に出向くのも道理というものです。

 

「あ! 居ましたよ!」

 

 文庫神官ちゃんが、フロアに満ちる座席や横台(カウンター)の並びの中から、見慣れた金髪と長耳を見つけ出しました。

 半竜娘ちゃんの一党における遠距離物理攻撃ダメージディーラー、弓師の森人探検家ちゃんです。

 エルフには珍しい交易神信仰の娘(約200歳)ですが、商売と旅を司る()の神の信徒らしく、如才なく周囲の商人らしき客たちと情報交換をしているようですね。

 

 こちらの気配をその野伏(レンジャー)としての鋭敏な感覚が察知したのか、長耳をピコピコと上下させれば、半竜娘ちゃんたちの方に流し目を送りました。

 同じ女性でもドキッとするほどの色気のある動作です。

 その証拠に、話し相手を務めていた若い商人は呆けて見つめてしまっていますよ。罪作りですね。

 

 森人探検家は話していた商人たちに「連れが来たから失礼するわ」と断ると、グラスを持って席を立ち、半竜娘ちゃんたちを手招きして適当な空いている卓へと(いざな)います。

 さりげなく大型種族でもしっかりと座れるような席を選んでいるのは流石の目敏さですね。

 

「そろそろ来る頃なんじゃないかと思ってたわ。ま、座りなさいな」

「なんじゃ、その様子じゃと手前が来た理由はもうわかっておるようじゃのう」

「ええ。王宮に呼び出されてるんでしょ? そっちは……大方、貴女が出資している軽銀商会の女会頭からでも聞いたってところかしら」

「ま、そういうことじゃな」

 

 森人探検家ちゃんは既に半竜娘ちゃんが王宮に呼び出されたという情報を得ていたようですね。

 流石の情報収集能力です。

 ついでに肌色成分の多いラミアの女給を捕まえてテキパキと注文をこなしていきます。

 

 地元の悪所やタブーなど、この地の者たちにとっては常識として知られている事柄を中心に、幾らか情報交換をするうちに、注文したものがやってきます。

 まずはバラの香りとハーブの香りが調和した飲み物。

 

「ローズウォーターに地元の小粒辛子(ホソエガラシの種)とサフランを加えて煮出したもの。ヒダル神が取り付いたときに良いそうよ」

「ふむ。スッとしておるのじゃな。いくらでも飲めそうじゃ」

「えぇと、ハーケシール、と云うのですか。地元の飲み物っていいですよね」

 

 ジンジャエールみたいなものでしょうかね?

 周囲から香る水タバコの匂いとも相まって、不思議な異国情緒に満たされる気持ちです。

 

「あとはやっぱり砂海鷂魚(サンドマンタ)の油茹でかしらねー。ええと、アヒージョ?って言うのかしら」

「身がふわふわで美味しいですね! ……私たちが乗った砂船が仕留めたものだったりするのでしょうか?」

「あの蟲人の僧正殿が卸したものやもしれんぞ? ふむ、手前はこの太い軟骨を丸ごと揚げたものが良いのう。絶妙な歯ごたえじゃし、髄が美味い!」

 

 “かすべ” と、この辺りでは呼ばれることもあるとか。

 サフランを始めとする香辛料がまぶされた、あの巨大な砂海鷂魚(サンドマンタ)の料理は砂漠における重要な蛋白源なのかもしれませんね。

 

「しかし貴女たちも絶妙に間が悪いわねぇ」

「?? なんのことじゃ?」

 

 幾らか食も進み、お互いの情報も交換できたところで、森人探検家ちゃんが半目で半竜娘ちゃんを見て溜息をつきました。

 半竜娘ちゃんは不思議そうにしていますね。

 何かのタイミングが悪かったりしたのでしょうか。

 

「ほら中央に舞台があるでしょう? ここって鳥人の歌姫が魅せる剣舞と歌声が名物なのよ。遠くから良い席を取りに来る客で予約がしばらく先まで埋まったり、どの席の予約が取れるかで商人の間で格付けがされるくらいに」

「ほう。それが? 今から始まるのかや?」

「いいえ、ついさっき終わったばっかり。だから間が悪いわね、と」

 

 なるほど確かにそれは惜しいことをしたかもしれません。

 次に来る機会がいつになるか分かりませんし、見られなかったのは残念です。

 

「……なんじゃ、もったいぶらずに教えんか。ただ高名な舞台だからというだけではないのであろ?」

「そうね、貴女が一等に気に入りそうな演目だったのよ。当ててみる?」

「随分と()らすのう。……ちょくと待て、考えるのじゃ」

 

 半竜娘ちゃんが気に入りそうな演目となると……?

 しかも砂塵の国で人気になるようなもの……。

 

「もしや!」

「あ、分かったっぽいわね」

 

「手前らの大悪霊討滅が早速舞台になったのじゃな!」

「 ち が い ま す 」

 

 そうだったら良かったですし、実際大悪霊の討滅は歌になるほどの偉業ですが、残念ながらハズレです。

 そんなすぐ舞台化はしませんよ、半竜娘ちゃんあなたろくに取材だって受けてないでしょうに。

 

「正解は……」

「──── 地底湖の黒竜殺し。蜥蜴人の勇者のお話ですね?」

「なんと! まことかや!」

 

 正解をかっさらったのは文庫神官ちゃんでした。

 ネタばらしを不意にされた森人探検家ちゃんが苦笑しています。

 

 そして幼いころから聞かされて憧れて育った、部族の大英雄の絡む演目の舞台と聞いて、半竜娘ちゃんが目を輝かせます。

 

「そう、それが正解よ。地底湖の黒竜退治」

「おお! あの竜殺しの話じゃな! 美貌の魔剣士の女を含む一党が、暗黒の城塞を踏破したあとの話じゃ」

 

 大金棒遣いの蜥蜴人の勇者が云々と半竜娘ちゃんが滔々と講釈を垂れます。

 合いの手を入れつつそれを聞く2人+1羽ですが、はたと半竜娘ちゃんの語りが止まります。

 

「む、話しておったらその舞台が見たくなったのじゃ。次はいつ始まるのじゃ?」

「何言ってるのよ、終わったばかりだから今日はもうしばらくやらないわよ」

「   」

 

 半竜娘ちゃんは口を開けて目を見開き、愕然としました。

 

 その様子を見て森人探検家ちゃんが愛おし気にくすくすと笑います。

 

「だから間が悪いわね、って言ったのよ」

 

 




 
半竜娘ちゃん「次の公演始まるまで居座るのじゃ~~!!」
森人探検家ちゃん「そういう訳にもいかないでしょ」
半竜娘ちゃん「王宮からの呼び出しなんぞ待たせとけばいいんじゃ~!」
文庫神官ちゃん「でも軽銀商会の方でも動きがあるみたいですし、それが方々に波及する前に済ませておいた方が良いのでは?」
半竜娘ちゃん「むうぅ……」
森人探検家ちゃん「ま、いい席手配しといてあげるから。それまで(こら)えなさいな」


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……これで大体全部かな? 多分そう。ヨシ!
追記:目次にbiimシステム風イメージ画像を追加しました。

 

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