ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆前話
 商人曰く、闇人(ダークエルフ)の血を引く宰相は、やり手の男。
 しかし、力と知恵と勇気を持っているとしても(簒奪された前王の娘である姫君曰く、力だけの男*1、との評であるが)、華がないとの評価。
 そんな宰相は、武装要塞(アームズフォート)の起動方法に関する古文書の解読を半竜娘たちに頼みたいようで……?
 果たして、国家機密級のヤバいネタを振られるだろう半竜娘たちは、生きて王宮から出られるのか。
 

*1
◆宰相は “力” だけの男:恐らく、ゼルダの伝説シリーズのガノンドロフがモチーフの一つと思われる。一方で、姫君の方のモチーフには、レイア姫(スターウォーズ)やゼルダ姫(ゼルダの伝説)が含まれると思われる。




41/n 時の砂の秘密-2(セーブ&ロードでシーン分岐回収する系黒幕)

 

「改めて……よくぞ参られた。大悪霊の討滅者よ。祝宴は気に入ってもらえたかね?」

 

 王宮に敷かれた豪勢な絨毯の上で、その青黒い肌をした男は腕を広げて歓迎の意を示しました。

 怜悧な顔立ち、酷薄さを隠しきれない笑顔。

 そして強者としての傲慢さが滲む威風(オーラ)

 

 半竜娘ちゃんたち一党が王宮へと招かれた先で待っていたのは、この砂塵の国の簒奪者である宰相の男でした。

 その宰相は豪奢な衣装をまとい、護身用なのか装飾品なのか玻璃(ガラス)の柄のダガーを腰に差しています。

 そのダガーの玻璃の柄は中が空洞になっているようで、不思議な魔法の輝きを宿した砂が詰まっています。

 

 

 黄金の蜃気楼亭で王宮への招待についての話を聞いた半竜娘ちゃんたちは、その後、宿に下がってTS圃人斥候や幼竜娘三姉妹と合流し、黄金の蜃気楼亭の鉱人の娘が言っていた通りに、宵闇のころに王宮に招かれたのです。

 珍しく沙漠に降った雨によってじっとりと湿った空気の中で、半竜娘ちゃんたち一党+幼竜娘三姉妹*1が王宮に上がると、豪勢な食事と歓待の楽団や踊り子たちが一党を出迎えました。

 

 黄金の蜃気楼亭の鴉人の踊り子には及ばないとはいえ、流石は王宮の抱える舞踏団。

 見事な踊りは、ここが現実であることを忘れて、まるで天女の舞う天上の楽園に招待されたかのごとくです。

 

 そして歓待の宴が続く中で、闇人の血を引く宰相は、いよいよ半竜娘に声をかけ、別室へと連れ出したのです。

 

「もちろん楽しませてもらっておるよ、宰相殿」

 

 混血同士の奇妙なシンパシーがあるのか、半竜娘ちゃんは割りと友好的に返します。

 長い尻尾を振って絨毯の上を軽く撫でて均すと、どっかりと身の丈およそ十尺もある巨体をその上に落ち着けました。

 

「それは重畳。冒険者殿にはお智慧をお借りしたい儀がありましてな。……ああ、姫君(ひめぎみ)。冒険者殿に飲み物を」

 

 頼みごとを切り出した宰相は、その話の繋ぎにと、控えていた少女に酒杯を持たせ、半竜娘ちゃんの方に運ばせます。

 ……それにしてもこの宰相、給仕させている娘のことを『姫君』と呼びませんでしたか?

 

 能面のような顔で屈辱を隠して酒杯を運ぶのは、(とうと)身形(みなり)をした娘でした。

 半竜娘ちゃんは、宰相の発言と自身の洞察力により、酒杯を運ぶ彼女の正体を看破しました。

 

「……前王の娘。ふぅむ、(しつけ)の最中ということかや」

「まあそのようなところでしてね。……気に入りませんかな、御客人?」

()()()()。まあよくある事であろうとも」

 

 むしろ前の王の血筋を根切りにしていないだけ有情(うじょう)だとまで、半竜娘ちゃんは思っています。

 弱肉強食にして適者生存の野生の理を是とする蜥蜴人部族の価値観にとっては、この程度は虐待のうちにも入りません。

 ……少々、露悪的で悪趣味で遠回しだな、と思う程度です。まあ殴り倒すよりは文明的で貴族的と言うこともできますが。

 

 半竜娘ちゃんの顔つきは只人(ヒューム)のものですが、その瞳ばかりは爬虫類のような酷薄さを湛えているように、姫君の目には映りました。

 あるいはそれは、面倒事を避けるための半竜娘ちゃんの演技なのかもしれません。

 実際に、その酷薄な瞳を見た姫君は、“この冒険者の手を借りることが出来るとは思えない” と感じ、半竜娘ちゃんに助けを求めようとは思えなくなったのですから。

 

「それより宰相殿。本題に入っていただければ幸いなのじゃが。頼みとやらが直ぐに片付く(たぐい)なら良いが、それでなくとも時間は有限であるからの」

()()()()()……。ええ、確かに、そう()()しれませんな。貴女がたにとっては」

「もったいぶらないことじゃ。その分だけ期待のハードルが上がるのじゃからな」

「ではこちらを」

 

 宰相が座ったまま、己の目の前の広い床に敷かれた9枚の絨毯のうちのひとつ……ちょうど彼から見て()()にある部分をめくります。

 そこに隠されていたのは……。

 

「石板? 依頼はソレの解読ということかや」

「いかにも。話が早くて助かりますな。これは太古の魔術師たちの時代に、彼らに対抗しようとした技術者たちの遺産です」

 

 強大な魔術師に対抗するためには、たとえ要塞であっても物の役には立ちません。

 固定標的など、いくら防御力が高くとも、彼らの天変地異に等しい魔導にかかれば、単なるカモです。

 であれば、それを機動させれば良いのではないか。というのが、魔術師たちに対抗しようとした技術者たちの回答でした。

 

 魔術師という一騎当千の個に対する(for)、人類という群体としての回答(Answer)

 

「それこそが、武装要塞。アームズフォート」

 

 宰相が語って説明します。

 

 曰く、太古の魔術師たちに対抗するべく技術者たちが造り上げた巨大機動要塞。

 曰く、砂塵を駆け、宙に浮き、敵対者を滅ぼす、動く鉄の砦。

 

 古文書によれば、複数のそれらが── 太古の魔術師たちに対するには、当然、一つでは足りなかったのでしょう── 砂塵の下に眠っているのだといいます。

 もちろんこれまでは、そんなものは伝説上の存在でした。

 ですが、宰相は確かにそれに繋がる情報を得て、実際に掘り出して、修復までしつつあるというのです。

 

「発掘し、ある程度は修復したそれを、起動するための方法。それを私は求めています」

「……手前たちで分かるとも限らんが。分かったとして、動き出したソレは王国に向けられることが分かり切っておるんじゃから素直に話すべき道理もないのじゃ。そもそもお主、手前らを生かして返す気があるのかや?」

 

 敵に塩を送ることもありません。

 それにまあ、用済みになれば口封じしてくるのは鉄板ですよね。

 その手の口封じは警戒せざるを得ません。

 

「…………であれば、今回は縁がなかったとお断りになられると?」

()。まあ受けるんじゃが。太古の技術者が造り上げた武装要塞? 気にならん訳がなかろう!」

 

 あっけらかんと半竜娘ちゃんが受諾の意を示します。

 拍子抜けしたような宰相の顔。信じられないと唖然と口を開ける姫の顔。

 どちらも見て、愉快そうに半竜娘ちゃんが呵々と笑います。

 

斯様(かよう)に希少な機会、逃すわけにはいくまいて!」

 

 これで半竜娘ちゃんは知識欲も旺盛ですからね。

 火吹山の魔法使いから薫陶を受け、異界の上位魔神(アークデーモン)の知識を掠め取り、現世で魔法の巻物(スクロール)の製法さえ復活させた女です。

 罠があるからというのは怯んで退く理由にはなりません。竜に後退は無いのだ!

 

「……冒険者殿の来歴は調べさせてもらいました」

「ふむ、黄金の蜃気楼亭からかの? あそこの犀人は西方王国で手前らに依頼をした。その時に手前らの情報を集めていても不思議ではない」

「まあそのようなところです。それについ最近は、城塞の精霊との友誼も結んだという話です。だからこそ、是非に貴女がたに依頼をしたい。【辺境最大】と称えられる貴女に」

 

 武装要塞(アームズフォート)もまあ、城塞の一種ではあるのでしょう。

 であれば城塞の精霊の権能の範疇でもおかしくありません。

 宰相は、半竜娘ちゃんを通じて城塞の精霊の智恵も借りられないかと目論んでいるのです。

 

 あるいは、かの城塞竜は、その機能から考えれば、武装要塞(アームズフォート)そのものと言っていいかも知れません。

 半竜娘ちゃんとしても、武装要塞(アームズフォート)の情報を城塞の精霊(マザー・シルキー)に知らせれば、あの城塞竜がその古代の遺物を取り込みに来るのではないかと考えているようです。

 武装要塞の情報は、きっと良い手土産になるでしょう。

 

「さぁて、では解読してみようかの?」

 

 半竜娘の博識判定(古代石板の解読):

  知力集中11+魔術師Lv8+博識0+“城塞の精霊”の加護2+2D642=27

 判定値27 > 目標値25。判定成功!

 

 むむむ、と頭を捻った半竜娘ちゃんでしたが、最近、城塞の精霊と何気なく話した内容にヒントがあったことに思い至ります。

 そこからは、侏羅紀の世界(ジュラシックワールド)と化した南国の島で見つけた電子のカラクリや、異界の機械化大悪魔(サイバーデーモン)の解析結果などを思い出して、芋づる式に解読が進みました。

 

「……つまり、これこれこうして、ここをバイパスさせることでじゃな……」

「ほほう、なるほど……。であれば、こちらの機構は……」

「うむ、そういうわけじゃろうな。必要なのは────」

 

 闇人の血を引く簒奪宰相も、古代技術への造詣が深いためか、半竜娘ちゃんの示した示唆によって、するすると理解を深めていきます。

 ……ひょっとしたら、彼自身の血脈に、古の言い伝えとして何らかの知識が伝わっていて、そのような素地が元々あったのかもしれません。

 

「すなわちこれが、陸蟹(ランドクラブ)なる武装要塞の起動方法になるじゃろうな」

「ふむ、ふむ。なるほど……」

「で、宰相殿。この秘密を知った手前をどうするつもりじゃ?」

 

 解読のために2時間ほどは経ったでしょうか。

 既に夜も更け、かなり遅い時間になっています。

 おそらく半竜娘ちゃん一党の仲間たちと幼竜娘三姉妹は、王宮に宛がわれた部屋で休んでいる頃でしょう。

 

 人質に取られるのは厄介かもしれません。

 とはいえ、逆に王手をかけているのは半竜娘ちゃんの方でもあります。

 この間合いで、一対一で、歴戦の蜥蜴人が負けるはずもないのですから。

 

「……いいえ、何も。何もしませんとも」

「ほほう?」

 

 戦闘になるかとウキウキしていた半竜娘ちゃんが、眦を上げて訝しみます。

 

 まあ宰相側としても、この一騎当千の蜥蜴人をどうにかできるとは思っていないということでしょうか。

 

「それよりも良い方法がありますのでな」

 

 そう言ってニヤリと笑った簒奪宰相は、腰に下げていたダガーの、その砂が収められた玻璃の柄を握ります。 

 

「……? 自刃するのならば興ざめじゃが」

「まさか。

 ──── 少し、この国の王家の話をしましょうか。かつて時の秘密を盗んだという奪掠(タスカリャ)神が加護を授けたというその血脈の話を」

 

 宰相が、傍らに控える姫君の方をちらりと見ました。

 彼女は下唇を白くなるほど噛み締め、宰相を睨んでいます。

 

 いえ、正確には、その宰相の持つ、ダガーの柄の中の怪しげな輝きを宿す()を、でしょうか。

 

「天上で時の秘密を盗んだという奪掠(タスカリャ)神が、加護を与えたという一族。それがこの国の王族です」

「……その一族にも、時の秘密を操る力がある、とでも?」

「半分正解で、半分外れ、というところですね」

 

 半竜娘ちゃんは、宰相の歴史講義にしばし付き合ってやることにしたようです。

 

「正確には、彼らの命を、とある魔導器で加工することによって、時を逆戻すアイテムにできるのですよ」

「……逆戻し(ロールバック)、とはこれまた魂消た権能であるな」

「ええ、ええ。まさしくその通り。その逆さ戻しの力によって、この国の王族は最善の政治を為すことが出来ました」

 

 交渉の失敗を巻き戻す。

 情報を拷問して抜き出して、その事実自体を無かったことにする。

 暗殺襲撃を受けても、時を戻してから逆に暗殺者を奇襲する。

 

 いくらでも悪用方法は思いつくでしょう。

 

「しかし、命と言ったかや? 代償がソレでは、そう軽々に使えるものではあるまい」

「それがそうでもないのですよ。王位の継承にあたっては、不要な王族というものは幾らでも出るものですから」

 

 あー、継承権を競った敵対候補の粛清も兼ねていた、と。

 それなら納得です。

 

「ふむ。つまりは前の国王も?」

「ええ。ここにありますのが、彼の命そのものですとも」

 

 ダガーの柄に納められた砂……玻璃の器の中でサラリと流動するそれを、憎々し気に、あるいは愛おし気に眺める宰相。

 

「そしてそこな姫君の命もまた?」

「ええ、ええ。彼女が強情にも私に従わないのでしたら、やがてはそうなるでしょうな」

 

 宰相が、姫君の命に結びついた魔法の砂時計── すなわち時を遡る “時の砂” を特定の血族の命から精製する魔導器── を思い浮かべ、酷薄に嗤います。*2

 

「じゃが良いのかや? その “時の砂” を生み出せる血族は、そこな娘が最後であろうに」

「ふふふ、やがてと言いましたが、今すぐとは言っていませんよ。適当に種を仕込んで血族を増やしてから、その寿命を “砂” にしてもらうのですとも。王位継承の承認のこともあり、無理強いするよりも、納得して協力してもらった方が、はるかに良いですからこうして迂遠な手を取っておりますが……」

 

 ジロリと睨む宰相の瞳に、姫君が身を一瞬竦ませましたが、気丈に睨み返します。

 半竜娘ちゃんが、そんな姫君を感情の色のない瞳で見遣ります。

 

「いざとなればその尊厳を劫掠することに躊躇いはない、と」

「砂漠の民は、そもそも奪掠が習いですのでな。商売と同じく」

「であるか。まあ、それもまたヒトの叡智であろうな。つまり、時の砂のために家畜化するというわけじゃろう」

 

 只人の街に行って初めて牧畜という概念に触れた過去を持つ半竜娘ちゃんの指摘に、宰相がニィと三日月に笑います。

 そうです、宰相は、かつての王の血脈を家畜のような奴隷に貶め、時の砂を精製するためだけに飼い殺すつもりなのです。

 

「家畜化とは人聞きが悪い……。重要な血脈を()()するだけですとも」

「ものは言いようじゃな」

 

 半竜娘ちゃんが溜息をつきました。

 言い方を変えたところで本質は変わらないでしょうに、まったく只人というのはそういう言葉遊びが好き過ぎます。

 

「それにやがては、このような非効率的な時間遡行ではなく、もっと効率が良く安定した方法を研究して編み出して見せますとも」

「……そうか。まあ、手前なら、その砂を焼き固めて楽器でも作るかもしれんな」

「おお! なるほど! 流石は竜の叡智……。特定の旋律をトリガーに、奏者の消耗を引き換えにすれば、ごく短時間の時間遡行は可能になりそうですな……! 砂を加工して作るなら、陶器かガラスか……となればオカリナが適当ですかな……? 差し詰め、時のオカリナ、といったところ……」*3

 

 なんか半竜娘ちゃんが余計な気付き(アイデア)を与えた気がしなくもないですが、先ほどまでの石板解読談義の余韻でポロっと溢してしまったのでしょうね。

 まあ仕方ないことです。覆水盆に返らず。

 

「……やはり冒険者殿を招いて良かった。実り多い一夜でしたが……そろそろ遡行限界。お時間です」

「やはり、わざわざ喋ったのは、どうせ時間を遡らせるからじゃろう?」

「そういうことです。ネタばらしというのは、気分のいいものですからな。ついやってしまう」

 

 得意満面の笑みの宰相が、“時の砂” が詰まったダガーの柄頭を外しました。

 

 途端に砂が魔力の奔流となって揮発し、赤い光の筋となって溢れ出します!

 

「記憶を持って遡れるのは、このダガーを握った者のみ。では冒険者殿。()()()()()()()()()()()()()

「ふぅむ、ではまた、とでも言っておこうかの?」

「ええ、ええ! また、時の流れの遡った先で……! ふふふふ、ふはははハハハハハハハ!!」

 

 宰相の哄笑とともに、過ぎ去った時間が残影となって、逆再生のように戻っていきます……!!

 

 …………。

 ……。

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

 さて、時間が遡りました。

 場面は、宰相が半竜娘ちゃんに対して石板を披露するところからのようですね。

 

「こちらをご覧ください、冒険者殿」

 

 先ほどと違うところがあるとすれば、それは絨毯の上に座る宰相が腰に差した “時間のダガー” の柄の中の砂が目減りしていることでしょうか。

 流石に時を遡るリソースまでは、再生しないようです。

 

 そして違うところは、まだあります。

 先ほどの周回では、宰相がめくったのは宰相から見て右前の絨毯で、『陸蟹(ランドクラブ)』の石板でした。

 

 しかし、今度めくった絨毯は、9つあるうちの己の正面のものでした。

 

「冒険者殿には、その解読を頼みたいというわけです。受けていただけますな?」

「ふむ。ここで受けねば冒険者の名が廃るというもの。受けるのじゃよ!」

 

 そして同様の流れを経て、半竜娘ちゃんが石板の内容を解き明かします。

 

「すなわちこれが、巨礎(ギガベース)なる武装要塞の起動方法になるじゃろうな」

「なるほど、ありがとうございます。冒険者殿」

 

 その後、またしても “時間のダガー” の柄を開け、“時の砂” を消費して時間を遡らせる宰相。

 

 まーきーもーどーさーれーるーぅ~~~!

 

 …………。

 ……。

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 合計で都合9回ほど巻き戻しに付き合わされました。

 実況する側としては、遅延行為は止めてもらえます?? って感じですが、仕方ありません。

 

 ええと、結局、宰相は自分が準備していた全ての石板を半竜娘ちゃんに解読させて、さらにもう一度巻き戻しています。

 今は、その全解読後の逆さ戻しを経た時間軸ですね。*4

 

 宰相が持つ “時間のダガー” の柄に貯められていた、“時の砂” も、すっかり残り僅かになっています。

 最初の解読と同じくらいの時間を、その後の解読でも費やしたならば、すっかり空になっていたと思うのですが、半竜娘ちゃんってば、段々と解読の速度が速くなっていったのですよね。

 そのお陰で、遡らせる時の量が少なくなり、砂の消費も抑えられたようです。

 

 ……宰相もそれを少し不審に思ったようですが、まあ、ダイス目(宿命と偶然)の妙だと思っているようですね。

 おそらく王宮のどこかには、前王の命を変換して精製した “時の砂” の在庫はあるのでしょうが、それでも砂自体の消費が少ないに越したことはないのでしょうし。

 とはいえ、もうまともに一時間単位で遡行できるほどのストックは、ダガーの柄にはありません。

 

 しかし全ての石板の解読は終わっていますので、それで問題ないようですね。

 

 これまでに解読された石板には、それぞれ対応する武装要塞(アームズフォート)の起動方法が記されていました。

 

 『陸蟹(ランドクラブ)

 『巨礎(ギガベース)

 『長城(グレートウォール)

 

 『蝕尽(イクリプス)

 『陽神行路(ソルディオス・オービット)

 『応答剣(アンサラー)

 

 『母なる意思(スピリット・オブ・マザーウィル)

 『地揺らす巨人(カブラカン)

 『黒玉(ジェット)

 

 まあいずれも完全品として残っているとは考えづらいのですが、一部だけでも修復して稼働させられるというなら、宰相たちの持つ技術力は大したものです。

 

 さて、最後の談笑を終えて、宰相は半竜娘ちゃんに石板をどれも見せもせずに、大悪霊討滅の功績だけを賞して帰しました。

 

 相手に何も知られることなく、自分だけが情報を得る。

 この情報の非対称性こそが、“時の砂” の恐ろしさです。

 

 たらふく食って満足げな半竜娘ちゃんは、他のメンバーが歓待されている大広間に戻っていきます。

 

 そして彼女の懐には、もちっとしてぷにっとした、一頭身の精霊の姿がありました……。

 

「ふん、宰相殿よ。時の秘密に触れて入門しておるのがお主だけとは思わぬことじゃ。のう、ティーアースの欠片よ」

『ゆ??』

 

 それは奪掠(タスカリャ)神との関係も噂される、時間と空間を司る神格が零落した精霊:ティーアースの欠片でした。

 つまり半竜娘ちゃんは、その精霊の権能を借りることによって、時間遡行に伴う記憶の欠落を防いでいたのです!

 

「都合9回も智慧を貸してやったというのに、それを踏み倒そうとは言語道断」

 

 くつくつと喉奥で笑う半竜娘ちゃんは、王宮の地下に意識を向けました。

 そこから繋がる先に、いずれかの修復中の武装要塞が眠っているというのを、繰り返す時間の中で彼女は知っていたのです。

 

取り立ての時間(ペイバック タイム)じゃて」

 

 

 

*1
◆半竜娘ちゃんたち一党+幼竜娘三姉妹:半竜娘(武僧)、森人探検家(射手)、TS圃人斥候(ニンジャ)、文庫神官(タンク)、闇竜娘(in 竜牙のアクセサリ)(使魔(ファミリア))、白梟使徒(使徒(ファミリア))の6キャラで構成される一党。幼竜娘三姉妹は、前の年に半竜娘が単為生殖した卵から生まれたが、蜥蜴人の成長は早いため、既に只人の10歳児相当くらいの背丈には育っている。

*2
◆砂時計の魔導器:ゲーム『プリンス・オブ・ペルシャ』シリーズに登場。姫君を助けに行く若者が死んでも蘇られるのは、姫がこの魔導器で時間を巻き戻してくれるお陰! プリンス・オブ・ペルシャは、ゴブスレ小説11巻のモチーフの一つと思われる。

*3
◆時のオカリナ:ゲーム『ゼルダの伝説』シリーズのキーアイテムの一つ。

*4
◆全部解読後の時間軸:宰相は、半竜娘に解読させる石板について、1~9まで選ぶことが出来た。一夜に付き1枚解読できるが、半竜娘ちゃんは一夜しか解読に付き合わせられない。そのため、8回時間遡行して9種類の石板を解読させ、さらに最後に1回巻き戻して、『何も解読させない』という10番目の選択肢を選んだところ。




 
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