ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆前話
タダ働きはしない女! それは半竜娘ちゃん!
 


41/n 時の砂の秘密-3(暗中飛躍)

 

 時間を(さかのぼ)らせる『時の砂』の力を使った砂塵の国の宰相によって、古代の石板を解読できるほどの叡智を掠め取られてしまった半竜娘ちゃん。

 タダ働きはメチャ許せんよなあ! 時間遡行でコスト踏み倒しとか実際悪質です。

 本来であれば時間遡行によって術者の宰相以外はその間の記憶を失うはずでしたが、零落したティーアースの破片(ゆっくりまんじゅう)を契約精霊にしている半竜娘ちゃんは、時間と空間の属性を司るその精霊の加護によって記憶を持ち越せていたのでした。流石に零落したティーアースの破片(ゆっくりまんじゅう)の力量では時間遡行まではできませんが、ループした間の記憶を保持するくらいならなんとかなるようです。

 

ゆっゆくゆー(もうおしまいかなー)??』

「うむうむ、助かったのじゃよ、ティーアースの欠片よ。後できっと、たーんと『時の砂』を喰わせてやるからのぅ。今は……ほぅら、これをやろう、砂漠に落ちたという流星の欠片じゃ」

ゆゅゆ(わぁい)~♡』

 

 歓待のために宰相に呼び出された個室から戻る半竜娘ちゃんの懐には、一頭身のすべすべもっちりした精霊の姿が。

 黄金の蜃気楼亭で手に入れていた物資の一つ、世界の外から墜ちた流星の欠片(時空間属性の上質な触媒)を受け取ったその精霊(一頭身)はご満悦です。餌付けされてますねえ。

 零落した外なる小神であるティーアースの破片は、かつての力を取り戻すために、常に、世界の外側から来たものや、時空の秘密にまつわるものを探しているのです。

 

 ──── それは例えば『時の砂』のような。

 

 かつて奪掠(タスカリャ)神が天上で盗み出したという『時の秘密』に連なる魔導具によって生み出されたという『時の砂』を吸収できれば、ティーアースの破片の力もきっと大きく回復するのは間違いありません。

 

 ……え? 原料(もと)は人の命なのに食べさせて良いのかって? ええ、それは、まあ、はい。

 とはいっても失われた寿命を元に戻せる手立てがあるわけでもなし、宰相に悪用されるのを防ぐためにはティーアースに食わせてしまうのが一番ですよ。

 

 それに半竜娘ちゃんが拠点を置く西方辺境を有する王国の仮想敵であり、現在進行形で混沌に蝕まれつつあるこの砂塵の国の、その切り札ともいえるマジックアイテム……時間遡行を可能とする『時の砂』を失わせることは、戦略的にも有効でしょう。

 首尾よく『時の砂』を奪取し、その件をあとで冒険者ギルド経由で王国に報告すれば、ひょっとすれば半竜娘ちゃんの金等級(序列2位)への昇格も見えてくるかもしれません。

 ほら、冒険者ギルドは国営ですからね。高位冒険者ってのはそういう意味では国家公務員の下っ端みたいなものですし、やはり国への貢献は重要視されますから。

 

「じゃがまずは、取り立てからじゃな」

 

 とはいえそれは後での話。

 今は、タダ働き×9の分の取り立てをするのが優先です。

 ()められっぱなしは面子に障ります。きっちりと応報する必要があります。

 

 さて、おさらいすると、宰相が得たのは次の9つの武装要塞の起動方法でした。

 そして石板を解読した張本人である半竜娘ちゃんも当然、その全てを記憶しています。

 

 『陸蟹(ランドクラブ)』、『巨礎(ギガベース)』、『長城(グレートウォール)』、

 『蝕尽(イクリプス)』、『陽神行路(ソルディオス・オービット)』、『応答剣(アンサラー)』、

 『母なる意思(スピリット・オブ・マザーウィル)』、『地揺らす巨人(カブラカン)』、『黒玉(ジェット)』。

 

 古代の技術者たちが作り上げたという、武装要塞アームズフォート。

 

 半竜娘ちゃんは繰り返される解読依頼の時間の中で、その9つのうちのいずれかが、この砂塵の国の王宮地下から繋がるどこかに置かれていることを知っています。ちなみに、それ以外の他の武装要塞の発掘修復地点は、国中に散らばっているとか。

 どうせ『時の砂』で遡れば()()()()()()()()()からと、どこかの周回で宰相が自慢げに話していた情報の一つです。

 宰相は半竜娘ちゃんが時間遡行に耐えて(をレジストして)記憶を保持していたのを見抜けませんでした。それは彼にとって誤算であるはずです。

 

「まったく詰めの甘い男じゃて」

 

 いいえ貴女が規格外なだけですよ、半竜娘ちゃん。

 

 さぁてどうしてやろうか、どの程度取り立ててやろうかと半竜娘ちゃんが舌なめずりしながら、広間に戻ります。

 

 そこは宴もたけなわ、一党の仲間たちが踊り子たちに酒をお酌されながら陽気に笑い合い、幼竜娘三姉妹が踊り子の真似をして踊った挙句に疲れ果てて寝こけている光景がありました。

 

 主観時間で18時間近くはぶっ続けで古文書の解読をしていた半竜娘ちゃんの胸中に曰く言い難い思いが沸き上がりかけますが、努めて鎮火させます。

 

 半竜娘ちゃんも時間遡行前の記憶を持っていることは、宰相に悟られてはいけませんからね。

 何処の誰が宰相に報告するか分からない以上は、不自然のないように気をつけなくてはいけません。

 たとえ『手前(てまえ)が難解な古文書の解読やら記憶をリセットされた風の演技やらで神経すり減らしていたのに暢気に宴をしておってからに……』などとは思っても、顔に上らせるのはダメです。

 

「まあ良い。この後はたっぷりと付き合ってもらうのじゃからな」

 

 何食わぬ顔で半竜娘ちゃんは宴の広間に合流しました。

 

「あっ、戻ってきたのね! あなたも飲みなさいよ!」

 自分の座る絨毯の横をパンパンと叩いて招く森人探検家。

 

「あれー、リーダーは話は終わったのかー?」

 飲み過ぎているのか胡乱な口調のTS圃人斥候は、踊り子の一人の膝の上で葡萄を食べさせてもらっています。

 

「遅かったですね、お姉さま。心配していました」

 楚々と座っている文庫神官も、ほんのりと顔が赤いですね。

 

「「「 Zzzz…… 」」」

 幼竜娘三姉妹は同じ寝相をして、広間の一角に敷かれたクッションの上で寝ていますね。愛らしいことです。

 

 

 

「うむ、宰相殿からの感謝をしかといただいたとも! 存分に飲み、喰らって良いそうじゃ! 遠慮はせずにな!!」

 がははと笑いながら、半竜娘ちゃんは、豪奢な絨毯の上に座り込んで大きな酒杯を手に取り、がぶがぶと勢いよく飲み干しました。若干やけっぱちというか、やさぐれてません??

 

 

 

▲▽▲▽▲

▼△▼△▼

 

 

 

 さて。

 酒宴は終わりましたが、もう遅い時間だということで宿には下がらず、王宮の広めの客室をひとつ宛がわれた半竜娘ちゃん御一行。

 

 さーて寝るかー、という一党の皆に対して、半竜娘ちゃんがおもむろに鞄から魔法の解毒薬(ポーション)魔法の巻物(スクロール)を取り出しました。

 

「んんー? 荷物の確認ー? いいからもう寝ましょうよ……ふぁ……。結局普通に歓待されただけだったわね」

 森人探検家があくびをして寝台に横になります。

 他の面々も同様です。

 

 ですがそうして無害に思わせて油断させることこそが、宰相の狙いです。

 半竜娘ちゃんたちが彼女らが拠点を置く西方の王国にこちらの砂塵の国の様子を伝えることは、宰相も織り込み済み。

 であれば、無害だと誤認させて、その何でもない情報を持ち帰らせて油断させたいという魂胆です。

 

 しかし時間遡行でループした回の記憶を持ち越している半竜娘ちゃんには、その手は効きません。

 巨大な機動要塞たちの情報は、何としても持ち帰らなくてはなりません。

 

 問題は、どうやって一党の他のメンツにその危機感を共有するかです。

 

「(手前の持つ情報を共有したいところじゃが、声に出してはここを監視しておる者が()った場合にバレかねぬ)」

 

 ここは砂塵の国の王宮。仮想敵国の本拠地にして、その中枢です。

 どこに監視の目や盗聴の耳があるか分かりません。

 実際、半竜娘ちゃんの魔術師としての魔法知覚── 魂から漏れる魔力のオーラを介して周囲を知覚する能力── は、扉の前に陣取る召使いの存在を感知しています。そして巡回する兵士たちの気配も。

 

「(じゃが一方で、悠長にやっておったら、せっかく王宮にまで招かれておるという千載一遇の好機を逃しかねんしのぅ)」

 

 仲間たちに詳しく事細かに事情を伝えているとあっという間に朝になってしまうでしょう。

 再び王宮に忍び込むことの難しさを考えると、今夜のこの機に石板翻訳の労力分の取り立てはしておきたいところ。

 

「(かと言って、賊として捕縛されてはかなわん。三人娘たちを危険に晒しとぅもないし、翌朝には何食わぬ顔で王宮を後にしたいところじゃな。──── まあもっとも、守りながら追手を退けて逃げるのも無理とは言わぬが……そうなると余波で王宮そのものが崩れそうじゃし、それは最終手段かのう)」

 

 森人探検家・TS圃人斥候・文庫神官(+闇竜娘&白梟使徒)は、まあ王宮の兵士に追われてもどうとでもできるでしょうが、幼竜娘三姉妹たちはそうもいかないでしょう。

 確かにいざとなればこの砂塵の国に来た時のように、巨大化して全員を背に載せて、手を翼に変えて流星のように空を飛び、一目散に逃げることも可能です。

 しかしそれは奥の手、秘密兵器としておきたいところ。怪獣映画をおっぱじめるにはまだ早い。今の局面では、冷静(クール)に、狡猾(クレバー)に、繊細(テクニカル)に事を運ぶのが上策でしょう。

 

 幸いにして、手段を選べるくらいの余裕はあります。

 半竜娘ちゃんがループの記憶を持っていることを宰相は知らないのですから、きっと当日夜にコトを起こすだなんて全く考えていないはずです。その油断を突きます。

 主導権(イニシアチヴ)は半竜娘ちゃんにあるのです。しかもそれは宰相が使った『時の砂』のお陰なのですから、これほど痛快なこともありません。

 

「(となれば、宰相側に見つかるような派手な動きは厳禁。少なくとも、手前らが翌朝に王宮を辞するまでは疑いを抱かせてはならぬ……と)」

 

 出来るだけ露見しないように……(あた)うなら翌昼くらいまではバレないようにする必要があります。

 隠密行動は前提として、何かを盗んだり破壊したりしたとしてもそれを偽装工作なりで誤魔化す必要があります。

 あるいは、そもそも物理的なものには手を付けないという方針もありでしょう。

 

「(……ふぅむ。キーワードは情報の非対称性……かの。となると……)」

 

 半竜娘ちゃんの中で考えが纏まったようです。

 彼女は寝入ろうとする仲間たちを見回し、声を掛け……たりはせずに、どうにか情報を共有することにしたようです。

 

 

 

 

「どうしたの? あ、一緒の寝具に入りたいの? もう、しょうがないわね……」

「あっ、抜け駆けはダメですよ?! お姉さま、それなら是非私も隣に……! よっ……と!」

 

 半竜娘ちゃんの視線を受けて何か勘違いしたのか、森人探検家がいそいそと半竜娘ちゃん用と思われる特大サイズの寝床に上がって端に寄り、それに触発された文庫神官が、タンク特有の馬力で自分の寝台を持ち上げてその隣へと動かし、枕を並べました。

 でも残念ながら色っぽい話(そういうこと)じゃないんだよなあ……。

 

 ちなみにTS圃人斥候は、小型種族用か子供用か分かりませんが、用意してあったミニマムサイズの寝台をさっさと4つ確保して幼竜娘三姉妹をそのうちの3つに寝かせると、「さっさと寝よーぜ……」、と残った4つ目に潜り込んで並んで眠る態勢です。

 

 

 

「(まずは情報共有からじゃな……)」

 

 そんな一党の面々に深夜残業を強いるべく、半竜娘ちゃんは手で複雑に真言呪文の印を結び始めます。

 

 慣れた術師であれば、詠唱に代わって、身振りや魔法陣で世界を歪められるのですが、それにしたって半竜娘ちゃんのこの行いはあまりにも唐突でした。

 呪文行使は世界を歪める負荷のせいか、脳や精神、ひいては魂への負担も大きく、みだりに使えるものではありません。

 それはいくら日に9回は魔法を使えるような、規格外の術師である半竜娘ちゃんであっても同じ。おいそれと使うべきものではありません。

 

 そうであるのに、事前説明もなく手印を結び始めたのですから、さあ大変。

 

 いきなりそんなことをし始めた半竜娘ちゃんに、森人探検家は目を瞬かせつつも遮蔽をとれるように寝台から静かに滑り落ち、TS圃人斥候はすわ “敵襲か!?” と即座に動けるように掛物を跳ね上げ、文庫神官は部屋の窓などの開口部から半竜娘ちゃんへの射線の通りを確認しつつも、いつでも身を挺して守れるように、四肢を(たわ)めて飛び出す準備をしました。

 銀等級の率いる一党に恥じない最速の動き。もちろん音は立てません。

 半竜娘ちゃんが声を出さないということは、そうする必要があると、みんな分かっているのです。

 ……あ、流石に幼竜娘三姉妹はくーすかぴー、と寝ていますよ。

 

 そんな中、半竜娘ちゃんの手印による真言呪文が完成します。

 切られた印は、当然3つ。それより多くても、少なくてもいけません。

 

 

 自己(エゴ)> … <想念(アッフェクトゥス)> … <付与(オッフェーロ)

 

 

 一般的には知られていない組み合わせですが、いずれの真言も、正しくその力を発揮しました。

 それも当然のこと。それらの真言の一つ一つは、既に半竜娘ちゃんが習得済みの真言呪文に内包されているものでした。であれば、その魔術的意味だって完全に理解して、モノにしているに決まっています。

 魔術への理解を深めた先にある、自在な真言の組み合わせ。確かな理解のもとに紡がれた手印は、オリジナルな組み合わせであるにも関わらず、 暴発することも不発することもなく、術者である半竜娘ちゃんの意図したとおりの効果を発揮しました。

 

 すなわち────

 

「(これは……! 頭の中に……!)」

「(お姉さまのお考えが────!?)」

「(入ってきやがる……?!)」

 

 ──── 己の想念を他者に付与する真言呪文が成立したのです。

 

 名付けるとしたら、【伝心(テレパシー)*1といったところでしょうか。

 

 そう、扉の傍で召使いが控えて聞き耳を立てているなら、どうするべきか?

 事情説明に無駄に時間を取れない状況とすれば、どうするかべきか?

 それに対する半竜娘ちゃんの回答がこれです。

 

 

 ──── 聞かれないように、テレパシーで情報を伝える。

 

 

 貴重な呪文行使回数のうちのひとつを消費することになりましたが、半竜娘ちゃんは必要経費だと割り切ったようですね。

 

 

 

 そして訪れたのは静寂。

 思わず多少ドタバタとしてしまったせいか、召使いが一瞬だけ客室の扉から顔をのぞかせましたが、動きがないことを見て取ると── 同時に何か賽子の転がるような音がしたような──、特に何も言わずに顔を引っ込めました。

 

 どうやらそこまで不審には思われなかった(ファンブルではなかった)ようです。セーフ!

 しかしみんな極力音を立てないようにしていたというのに気付いたということは、召使いはとても耳が良いのかもしれません。

 やはり【伝心(テレパシー)】で情報伝達したのは正解だったかもですね。

 

 ちなみに今は、半竜娘ちゃんがループして石板解読させられていた約18時間分の情報を、掻い摘んで皆に【伝心(テレパシー)】によって脳直で流し込んでいるところです。

 ……この術、共有する情報量次第では、処理しきれずに相手が廃人になったりするのでは……? 割と危ない術なのかもしれませんね。

 

 ついでに宰相から正当な対価を取り立てるに当たっての作戦(目標と手順)も【伝心(テレパシー)】によって全員に共有しているようです。

 

 

 

▲▽▲▽▲

……>>思念伝送中>>……>>思念伝送中>>……>>思念伝送中>>……>>思念伝送中>>……>>思念伝送中>>

▼△▼△▼

 

 

 

 というわけで情報共有、終了!

 

 時間にしてみれば30秒(1ラウンド)も経っていません。

 圧倒的な伝達効率。

 まあわざわざ呪文使用回数も消費したんだから、多少はね?

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 そして事情を共有した半竜娘ちゃんたちは4人して黙々と無言で準備を進めます。

 とりあえず召使いに悟られないように、【沈黙(サイレンス)】の真言の印を結び、音を消しました。

 

 衣擦れの音すら消したならば、次は完全装備に着替えます。

 特に今回は知覚系の判定を多く行うことが予想されるのと、呪文維持のために【知力強化の指輪+3】*2を優先して装着します。

 

 そして酔い覚ましに【解毒薬(アンチドーテ)】をぐびっと。

 

 続いて自在に操れる分身を創り出す【分身(アザーセルフ)】の魔法の巻物(スクロール)(自家製)を開いて4人それぞれが分身を作成。巻物が青い炎とともに燃え落ちます。

 完全武装の分身たちが現れました。矢弾など必要な消耗品を持たせることにしますが、それは最小限にします。証拠を残すわけにはいかないからですね、携行品は最小限に。

 

 そして本体たちは武装解除して寝間着に着替えます。アリバイ工作のために本体はこの客間に残るのです。

 

 一方で分身たちは透明化する【透過(トランスペアレント)】の魔法の巻物(スクロール)(自家製)を使用。またしても羊皮紙が燃え落ち、分身たちの姿が見えなくなりました。

 あ、この段階から使い魔な闇竜娘ちゃんが顕現し、使徒な白梟使徒ちゃんも獣人形態になってスクロールを使っています。悪魔も梟も夜行性ですからコンディションは良いようですが、こっちは分身ではないので身の安全には注意が必要ですね。*3

 これで一党六人のフルメンバーですね(ウィザードリィ並感)。

 

 透明化の巻物により分身と使い魔たちの姿は消えました。

 潜入にあたっては、あとはできれば足音を消したいところ。

 サイレント系の魔術や奇跡だと、番兵の声や足音まで消してしまって違和感を持たせてしまいますから、出来れば別の手段で。

 

 まあ武技【軽功】を習得している半竜娘ちゃんとTS圃人斥候は、足音を消すくらい造作もないですし、闇竜娘と白梟使徒の使い魔ペアも飛べば良いとして……。

 残りの森人探検家と文庫神官には、半竜娘ちゃんの血から造られた【閃技(サクセション)】の祖竜術が込められたポーションを飲んでもらいます。

 これによって任意の武技を一時的に習得できますので、【軽功】を習得させます。カンフー映画を見た後に “今なら自分も主人公のように動ける気がする……!” と錯覚するやつのスゴイ版だとでも思っていただければ多分合っています。

 

 あとは緊急対応用に幾つか魔法の巻物(スクロール)を持たせて、隠密透明人間化した分身たち4人+使い魔ペアの6人フルパーティを送り出し、自分たちは寝床の中からそれらの分身を操作すれば完璧です!

 使い魔たちは高位呪文の【跳躍(ジョウント)】や、梟化して夜闇に羽ばたくことで離脱できるので、回収するものがあった時には彼女たちに持って帰ってもらいましょう。

 

 分身に王宮を進ませる第一目標は、ずばり情報の奪取。

 具体的には9基全ての武装要塞(アームズフォート)の所在についてです。

 そうそう気軽に動かせるものでもないでしょうから、場所さえわかれば破壊工作の芽もあるでしょう。

 砂塵の国の旧王派閥(レジスタンス)に情報を流しても良いかもしれませんし、西方の王国に持ち帰って(はかりごと)は金獅子の国王陛下に任せても良いでしょう。

 非常に隠密にコトを運び、誰にも気取られないことが一番重要です。

 ……情報があるとすれば宰相の居室か執務室か、あるいは、王宮地下から繋がる武装要塞の修復拠点でしょうか。

 

 第二目標は、『時の砂』の破棄。

 時間遡行の手札は、あらゆる盤面をひっくり返しうるものですから、出来るだけストックを削っておきたいところ。

 まあ、これは保管庫を見つけたら、契約精霊である『ティーアースの破片(ゆっくりまんじゅう)』を召喚して放り込んでおけばいいでしょう。すぐにばれないように偽装工作は必要かもしれませんが、勝手に平らげてくれるはず。

 

 第三目標は、この砂塵の国の王城地下から繋がる先にあるといういずれかの武装要塞、その破壊。

 これは流石に、バレないように破壊工作が出来る目処が立てば……という程度の優先順位です。

 最上位命題は、決してバレないこと、ですからね。……逆に言えば、バレてしまえば開き直って派手に行く、ということもできます。というか、本体が逃げる時間を稼ぐためには分身側がド派手に囮になってやる必要があるでしょうから、必然的にそうなるというか……。

 

 

 

 ……さて、もう夜更けです。

 時間もありませんし、準備ができたらさっそく動き始めましょう。

 

 契約魔神(デーモンLv9)である闇竜娘が印を切り、高位真言呪文の【跳躍(ジョウント)】を発動させます。

 次の瞬間、透明化した分身たち4人+使い魔ペアの6人フルパーティは、次元を跳び越えて、射程ギリギリまで離れた廊下の隅にワープしました。壁抜けです。

 もちろん石の中にいる、なんてことにならないように、半竜娘ちゃんが魔法知覚で空間がある事は確認済み。周囲に人影も無し。巡回の兵は遠く、王宮は寝静まっています。

 

 一方で分身たちを送り出し、客間に残った本体4人は、【沈黙(サイレンス)】を解除して寝たふりをしつつ、分身体の操作に集中します。

 

 

 では。さあ。いざ!

 砂塵の国の王宮を攻略しましょう!!

 

 

*1
◆オリジナル真言呪文【伝心(テレパシー)】:自分の想念を<対象>に伝送する。こいつ、直接脳内に……!? あるいは「縛道の七十七『天挺空羅(てんていくうら)』」でも良いです(良いのか?)。

*2
◆知力強化の指輪+3:黒鱗の古竜の宝物庫から強奪したマジックアイテム。知力系の判定に+3。プラスの値が大きいと指数的に値段が高くなる。同様の指輪には、体力点、魂魄点、技量点に補正をもたらすものがあり、半竜娘ちゃん一党は幾つもそれらを所持している。

*3
◆使い魔の【分身(アザーセルフ)】:理論上は使い魔も分身を出せるはずだが、今回は遠慮してもらった。実卓では1PLが動かせるPCがマスター本体、マスター分身、使い魔本体、使い魔分身の4キャラになるので非推奨。




 
王宮地下から繋がる先に眠る武装要塞はいったいどれなのか……。原作小説11巻のモチーフの一つはスターウォーズEP4……ということはクライマックスに出てくる敵の要塞は必然、球体の……?
あと、次話で出なかったアームズフォートのうちのどれかも、今後の原作小説12巻相当の話で出します。その代わり、重戦士一党の少女巫術師ちゃんと少年斥候くんの東の国境の要塞へのお使いの難易度が大幅にアップしますが(転移の巻物を受け取って顔つなぎすればいいだけのお仕事から、砂塵の国から押し寄せた武装要塞に取り付かれた国境要塞の救援任務にレベルアップ)(二周目レギュレーションゆえ)。
 
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