ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
◆前話
“かくかくしかじか” で済む話を8000文字くらいかけて演出したけどまあ当作ではそういうこともあるさ! さて、準備は整った。冒険者たちよ、王宮を進み、武装要塞の発掘修復場所の情報を手に入れるのだ!
「……こんな遅くまで仕事しとるのかや、宰相は」
「熱心過ぎるでしょ」
「独裁者なんてなるもんじゃねーな」
「これじゃあ執務室から情報を抜くのは難しいですね、お姉さま……」
情報の奪取のためにと砂塵の国の王宮(タマネギ屋根)を右往左往していた半竜娘ちゃんたち一党の分身たちは、宰相の執務室を見つけることに成功しました。
……まあ、絶賛深夜残業中の宰相が中にいたわけですが。
ループで得た情報を忘れないように纏めているのかもしれませんし、普通に溜まった政務をこなしているのかもしれません。簒奪までに自分がこなしていた宰相の業務に加え、簒奪後は国王の業務が上乗せされているとすれば後者かもしれませんね。
「……そうしたら発掘修復現場の方を探すかの……」
「そうするしかないかしら……。途中で『時の砂』を納めた蔵か何かも見つかると良いけど」
「進むとしたら罠に注意……だなー。タンクは特に気を付けろよ?」
「が、がんばります!」
姿を透明化して足音を【軽功】の業で消しながら執務室に忍び寄った一党ですが、流石にここは転進すべきでしょう。
…………突っ込んで宰相を暗殺する、という選択肢も無くはないですが、仕掛の依頼を請けている訳でもなし、余計なリスクを負う必要はありませんし、18時間分の
ふっ、危なかったな、半竜娘ちゃんの
『時間を操る魔導器を持ってるのに、時間を無駄にしようとしないとか、勤勉ってレベルじゃないな』
『混沌のくせに真面目なのです。一番たちが悪いのです』
真面目に仕事をする宰相に、闇竜娘ちゃんが呆れ、白梟使徒は勤勉さの無駄遣いを嘆きます。
まあ多分、時間を自在にできるからこそ無駄にしたくないとかそういう心理なのでしょう。
あるいは予定を詰め込んでおいた方が、何かあったときに戻す時間が間延びせずに短く済んで節約できるとかそういう思考なのかも?
「行くのじゃよ、
『ほいほーい』 『分かっているのですよ』
透明人間と化している半竜娘ちゃんたち(分身体)が、宰相の執務室の前から去りました。
▼△▼△▼
「む」
「あ、ここね」
半竜娘ちゃんと森人探検家が、廊下のある一か所で立ち止まります。
二人は一般技能【魔法知覚】によってアストラルサイドの情報を読み取れるので、その超現実的な感覚によって
恐らくは、強力な力を宿す魔法の品の発するオーラか、あるいはそういったものを封じているがために魔法的空白となった場所を。……目当てのものだと良いのですが。
ちなみにここに居る彼女らは魔法で作られた分身体ですが、その能力は本体と遜色ありませんし、本体も寝床の中で分身の操作に集中しているので、集中力が散漫になることもなくマイナス補正はありません。
「何かあるのですか? 扉のようなものは見当たりませんが……」
「隠し通路か隠し部屋かねー。よっしゃ、オイラに任せな!」
文庫神官は武技【虎眼】にまで鍛えて昇華させた、後天的な暗視能力で廊下の壁を見ますが、特に何かを見つけることはできませんでした。
斥候Lvと技量点が足りない!
一方で、こういったことに対する本職であるTS圃人斥候がざっと廊下の壁を確認します。
暗視の武技【虎眼】によってTS圃人斥候も暗闇を見通せますが、それよりもこの局面で頼りになるのは指先の感覚です。
廊下の壁や床をつつーっと撫でて、違和感を探ります。
「……ここだな。少し他よりも壁際の床がすり減ってやがる」
どうやら違和感があるところを探り当てたようです。
TS圃人斥候は目星をつけたところを中心に、壁に耳を付けながらトントンと指で壁を叩きます。
いわば聴診です。壁の中の機構を探ろうとしているのです。
「……どうじゃ?」
「んんんー……。手持ちの鍵開け道具は置いてきちまったからなあ。痕跡残さず……壊さずにってなると、こりゃちょっと時間がかかるぜ、リーダー」
分身体は装備品は複製できるものの、道具類までは複製できてませんので、必要な道具類は分身作成後に渡しておく必要があります。
しかし、今回は場合によっては行った先で分身を消滅させることも想定されましたので、ほとんど道具類を持たせていません。朝になって人が増えると分身体たちの帰りの経路を確保できなくなる可能性があり、その場合は痕跡を残さないように綺麗に消える必要があるからです。
そうすると、手に馴染んだ道具を分身体に持たせても、消滅地点に置き去りにしてしまうことになりますし、下手をするとそこから足が付くかもしれません。
なので鍵開けも、いつもの道具ではなくてその辺にあるものを手持ちの短剣で【手仕事】技能で加工したものくらいしか使えません。
「時間がかかるのはあまり良くないのう」
「あー、【
まあ、TS圃人斥候が覚えている呪文を使えば、こういったなにも手元に物品がない時でも対応可能ですけれど。
魔力の力場の手を隙間から潜り込ませたり、影を固めて鍵開け道具を作ったりすれば、隠し扉の仕掛けも攻略できるでしょう。
TS圃人斥候の呪文使用可能回数は、4回。回数だけ見れば中堅のスペルキャスター並です。
主に搦め手を充実させるために、半竜娘ちゃんに見てもらいながら術師としての勉強をした、その成果というわけです。
「確かお主はあと4回は呪文が使えるのじゃったか?」
「ああ。見つかりかけた時用にカムフラージュでおっかぶせる【
「……そうじゃな。では頼めるかの? 少しでも隙間が空けば、そこから精霊を
「あいあい、リーダー」
TS圃人斥候は小声で真言を唱えると、ズッと微かな音がして、隠し扉が少しだけ開きました。
それに伴い、隠し部屋の中に向けて施されていたであろう魔導的な封鎖結界も綻んだのか、扉の向こうにある何かのマジックアイテムのオーラが廊下に漏れてきます。
「どうやら当たりのようじゃ。『時の砂』の気配がする」
半竜娘ちゃんには覚えのあるオーラです。
“時間” が不安定化したとき特有の、嗅覚ではない部分で感じる微かな刺激臭。
間違いありません、『時の砂』のニオイです。
「隙間あけてる今のうちに! リーダー!」
「うむ!」
そこにすかさず半竜娘ちゃんが時空間の精霊である “零落したティーアースの破片” を精霊術により召喚して捩じ込みました。*3
にゅにゅにゅにゅにゅ……スポンッと、召喚された
「閉めるぜ!」
そして直ぐにTS圃人斥候が扉を押さえていた魔法を解除して、ピシッと元通りに閉めました。
あとはきっと、隠し部屋の中の『時の砂』は、ティーアースの破片がもりもりと平らげてくれることでしょう。
「じゃあ先を急ぎましょうか。さっき『時の砂』とやらのオーラが漏れ出て気取られていないとも限らないわ」
「そうするとしよう」
森人探検家に促されて、一党は隠し扉の前を後にします。
透明化はまだ持続しており、今のところは見つかる心配もなさそうです。
半竜娘の契約精霊『零落した
零落した
零落した
零落した
▼△▼△▼
その後も透明化したまま、半竜娘ちゃんたち一党は王宮の探索を続けました。
そうして息を潜め、足音を殺して探索することしばし。
ついに彼女たちは、地下へと繋がる隠し通路を発見しました。
「…………鏡、ですね。これほど大きいものは現在の技術では作れないでしょうから、やはり遺物でしょうか?」
その隠し通路の入口は、大きな姿見の鏡でした。
廊下の突き当たりの壁に嵌め込まれたその鏡は、そこの壁を覆うほどに大きく、隠すためか衝突防止のためか、上から垂らされた絨毯で覆われていました。
突き当たりの壁の上方に打ち付けられて垂らされた、そのズッシリとした絨毯を少し持ち上げて、文庫神官がその下の姿見の鏡を検分しています。知識神に仕える神官としての考古学的興味、というやつです。
「無駄に歩き回る羽目になったのじゃが、恐らくここじゃろう」
「というか、他に候補はないものね」
「虱潰しに歩き回ったからなー……」
どうやら消去法で辿り着いたようですね。ご苦労様です。
『いいからさっさと行こうぜ、主殿よぅ』
『こら大人しくするのですよ、
まあ、どちらも透明化しているので、空気の動きや声の出元でそう推定されるに過ぎませんが。
『さっさと入っちまえば良いだろう?』
『あ、待つのです!』
姿見を隠していた絨毯が大きく
そして、トプン、と、まるで水に物を投げ込んだかのように鏡面に波紋が起こりました。
フクロウなので音はしませんが、白梟使徒は空中に離脱しているようです。
恐らく闇竜娘だけが鏡を通って、その向こうの秘密通路の中に入ろうとしているのでしょう。
……ですが途中で動きが止まりました。
鏡は透明化して飛び込んできた闇竜娘の胴体の断面形に表面を波立たせたままです。
やがてズルリと闇竜娘が身体を鏡のゲートから引き抜きました。
そして辟易して言います。
『主殿、これ……影を奪う鏡だ』*5
「なんじゃと?」
闇竜娘が、自分が潜りかけた鏡のゲートの感想を聞かせます。
一党の中で、最も多様な術に通じているのは、半竜娘の
魔神を喰って己もそう
『恐らく、影を奪って、分身を作るやつだな。無事に通るには、事前の魔力波紋の登録と、合言葉が必要だろう』
「そんな正規手段は持ってないし、探す時間ももうないのじゃよ。……無理やり通るとどうなるんじゃ?」
『影が奪われて、その影が実体化して追ってくる。しかもその
ということは、その
『自傷行為になるというわけだな。奪われた
「そもそも、今ここに居る手前らの身体は、【
それもそうですね、半竜娘ちゃんの疑問は、当然のものです。
「
己の “影” の占有権が先着順とすれば、半竜娘・森人探検家・TS圃人斥候・文庫神官の影は、既に【
その場合は、きっとこの鏡を通っても
一方で、この鏡の “影” の奪取力が強ければ、鏡を
さあリスクを取って鏡を潜るのか、それを考えねばなりません。
『まあ、【
「じゃあその手じゃな」
空間跳躍がチート過ぎる……!
透明化して姿が見えないので、みんなで闇竜娘に触れることで呪文の対象にとってもらい、揃って【
秘密通路に入ってしまえば、武装要塞の発掘修復拠点まであと少しのはずです。
▼△▼△▼
秘密通路を進むこと暫く。
仕込み弓矢や
文庫神官はよく罠を踏む一方で、その使徒である白梟使徒は、梟形態の小さな体を生かして、罠の解除や修復に大活躍だったようです。
「うぅ……すみません、足を引っ張ってしまって……」
『……ご主人、気を落とすことはないのです。それに本体の方でマッピングしながらだから散漫になるのは仕方ないのです』
お陰で
それによると現在地は、都の一角にあるラクダレースやダチョウレース、
さて、秘密通路の中は暗闇で時間が分かりませんが、王宮の寝床に残っている本体たちの方の感覚によれば、もう空が明るくなってきているようです。
整った石造りから、天然砂岩を削り出したような造りに変わった秘密通路をさらに黙々と進んでいきます。
「ん。この先に大きな広間があるわ。とても大きい……」
種族柄、耳の良い森人探検家が音の反響から行く先の様子について得た情報を、全員に共有します。
地下空間は、地上のレース場の真下に位置するようです。
「となると、いよいよですね! お姉さま!」
「うむ。古代の技術者たちの集大成、折角じゃから、しかとこの目に焼き付けねばな!」
武装要塞は非常に大きな脅威ではありますが、同時に太古の遺産でもあり、学術的にも技術的にも魔術的にも興味深いもののはずです。
そのため、文庫神官と半竜娘ちゃんはウキウキしています。
「ええ、本当に楽しみね……!」
そしてそういう遺跡のロマンにとりつかれて冒険者をやっている森人探検家も、非常にウキウキしています。
やがて広大な地下空間に見えてきたのは────………
「幾つかの巨大な球形のシルエット……下半分は埋まっておったり、部品取りに解体されておるのもあるが、間違いないのじゃ……!」
半竜娘ちゃんが、解読した石板の知識から当てはまるものを導き出します。
「武装要塞アームズ・フォート……!
◆一方そのころゴブスレさん
夜明けのころなので、ゴブスレさんたちは、小鬼の養殖に使われていた砦をサンドマンタの大群を呼び寄せてぶっ壊しているくらいかと。ゴブリンは皆殺しだ! え、コラテラルダメージ? 知らない子ですね……。
女商人さんは流石に商会の取りまとめもあるので砦攻めには加わらず、代わりに鉢巻剣士くんの一党がゴブスレさんの方に同行しています。
一休みするために砦から脱出後、近場で目に付いた神殿跡っぽいところに砂船で向かうものの、そこには先客()が居て……。
さあ次は竜退治だ!(白目)
◆一方そのころ密偵くん
砦に居た覚知神の
密偵くん一党には、好奇心と知識欲の権化みたいな知識神の神官*1がいて、彼女は宰相の計画の中身を少し見てしまった。……ので。 → 知識神の神官ちゃん:「軽銀商会の新製品で良い