ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
1.ともだちさがし ~【
急に見えるようになった精霊たちに驚きつつも、良き友人となれるように、
例えば、技能として熟達はしておらんで
また個人的には、技能は使ってこそ、という思いもあり、冒険帰りに、ギルドで【
バケツヘルムの冒険者であったり、疾走の名を冠していつも忙しなくしておる輩が常連じゃのう。結構好評じゃ。……人のことは言えぬが、やつらきちんと休んでおるのか?
まあ、人気なのは水の
ギルドの酒場で水精霊を呼ぶと、大抵は固定でこいつが出て来るのよな。洞窟で呼んでも来んくせに。この間なんか、「花鳥風月~」とか言って、水芸を披露してお捻り代わりに酒を奢られておったわ。どこで覚えてくるんじゃか。
しかしいつも自由精霊を呼べる目が出るとも限らん。そのときは申し訳ないが、【命水】の振る舞いはナシじゃ。そういうときは、疾走を冠する者たちの方からかどこからか、「今日回復POTちゃんおらんやんけ! チャートが狂っちゃーう!」とかいう、ティーアースやナナシに似た声の
それを気にしてというわけでもないが、自由精霊ではなくても、まだ意思を持たぬ精霊《スピリット》の段階でも【命水】を使ってくれる水精霊を呼び出せるならば、より捗るじゃろうと思ったのよ。
ゴブリンの巣穴から解放した捕虜たちに飲ませるのにも使えるしの。
自由精霊より呼び出すのが安定する代わりに、術を使える回数も効力も劣るから、一長一短じゃが。
できれば、酒場でしか呼び出せないとかいうのではなく、冒険にも付いて来て欲しいし、顕現する位階が上がったときには、【
ということで、ギルドの酒場で呼び出した水の自由精霊に、そういった精霊に心当たりがないか聞いてみたのじゃ。
『ま、まさか乗り換える気!? やっぱりみんな若い子の方がい゛い゛ん゛だあ゛~!!』
「いやそうじゃなくての?」
『いやいやいやぁーよ! 私はちょちょいと術を使って、みんなにちやほやされて、ときどきお酒を飲みたいのー! ここで呼び出されるのは私の役目なのーー!! いやいやいやー、捨てないでよ゛お゛ぉ゛ー!!』
めんどくさ! いや、大体の精霊はこんなもんじゃが!
「分かった分かった、まず酒場で呼び出すときはお主を先に呼び出すようにするからの?」
『ぐすっ、ほんと? 捨てない? 約束する?』
「おう。じゃが、うまく術が成功せんかったときは、若いのに譲ってくりゃれよ? 自我のない状態で呼び出されても仕方なかろうし」
『……。それは仕方ないから、妥協してあげる』
なんとか納得してくれたか。顕現時間も短いのじゃから、さっさと話を進めたいのじゃが。
「それで結局、そういう精霊に心当たりあるかの?」
『んー、最初から【命水】が使えて、【酩酊】も使ってくれるようになる精霊でしょ? まあ多分、あそこになら居るんじゃないのー?』
「あそこ?」
『ほら、葡萄がいっぱいあって、お酒造ってるとこ! 私を呼び出すときのお供え物に、あそこの葡萄酒くれたりするでしょ。あれだけ美味しいお酒を造ってるあそこなら、そういうのに興味ある子もいると思うわ。近くに癒やしの波動も満ちてるしね』
なるほど、地母神の葡萄園か。
確かにうってつけじゃ。
流石じゃのう、竜のことは竜に聞くように、やはり精霊のことは精霊に聞くに限る。
『わくわく』
「なんじゃ?」
『ご褒美は?』
「……おう。おーい、女給どのー! こやつに酒じゃー、旨いのを頼むー!」
『そうこなくっちゃー!! 好きー!』
まあ、そのくらいは良かろうさ。これからも頼りにすることじゃしの。
精霊術は、己が力で世界を変える真言呪文や、祖竜と自らの力を合わせて行使する祖竜術とは違って、相手の精霊ありきのことじゃからの。今までの他の術と勝手は違うが、まあ、これもこれで良いものじゃ。精霊は祖竜をも見守ってきた大いなる自然の一部でもあれば、敬意を持って接するのに戸惑いもない。
戸惑いはないが……。
『ぷっは~! うまーい!』
先達としての敬意というよりは、こう、放っておけない感じというか、なんというか。
切った張ったの鉄火場の合間に、こういうものたちとの触れ合いがあるというのも、良いもんじゃと感じておる己がおる。
悪くないものじゃ。
そして翌日。
分身体の方を日課となったゴブリン退治に派遣して、
ちょうど治療の手伝いも頼まれておったことじゃしの。
「う、半竜の術士さん。いらしてたんですね……」
「そう露骨に態度に出すこともなかろう、地母神の神官嬢。これでも傷つくのじゃよ?」
「いえ、そんなつもりは……、はい、すみません」
「かかか、冗句じゃて。気楽にな」
どうも少し
それとも、小鬼どもへの容赦ない姿勢や、
「まあ、今日はよしなに頼む。治療の腕前は信頼しておくれよ」
「ええ、そちらはもちろん。頼りにしています」
「そいつは重畳。そちらはこれからゴブリン退治の
「デッ!? ち、違います。今日は、お祈りで。そちらこそ最近ずっとゴブリン退治に行かれてたみたいですが、今日は?」
「分身の方に行かせておるよ。我が爪尾は混沌の奴ばらの血に飢えておるでな。ソロじゃから小鬼殺し殿とは別口じゃが」
「そうですか」
寺院併設の治療院までの道すがらそんなことを話しておると、葡萄園も目に入った。
「ああそうでした、今日は葡萄園の方のお世話も手伝うつもりなんです。この時期に虫がつくと困るので」
「ここの葡萄酒は評判が良いからのう。……おお! そうじゃ、葡萄園! そちらも頼もうと思っておったのよ」
「頼み、ですか?」
「なに身構えるでないよ。治療院の手伝いがひと段落したら、少し葡萄園の片隅で瞑想させてほしいだけじゃ」
「はあ。そういうことでしたら、先輩を紹介しますね。最近葡萄園の取り仕切りを任された方なので」
「おお、さすが頼りになるのう!」
異教の寺院じゃが、良きめぐりあわせに感謝して、あとで幾らか喜捨をはずんでおこう。
そうして引き合わされたのは、褐色肌の陽気な太陽のような娘じゃった。
年は神官嬢より二つばかり上かのう。まさに少女としての花盛りといったさま。修道服を押し上げる豊かな胸はきっともっと大きく育つじゃろう。
葡萄尼僧といったところか。
しかし若干視線に険があるのは、はてどうしたことか。
こちらがあちらを見た以上に、あちらは
「ふうん、あんたがあの子からの紹介の冒険者? 随分と大きい……蜥蜴人?」
「そのとおり。
「そう、じゃ、半竜の術士ね。……あんた、あの子を虐めてないでしょうね? もしそうだったらただじゃ置かないんだから」
なるほど。長幼の序というわけか。納得のいく話じゃ。妹分の心配をしとったわけじゃな。
神官嬢が姉のごとく慕うのも頷ける。
「虐めなどそんなことせぬよ。そもそも
「物騒ね、あと修羅とかなんとかあの子には言わないでよ、只人の女の子には誉め言葉じゃないから。で、なんだっけ、葡萄園で瞑想したいんだっけ」
「片隅でも貸していただければ幸いじゃ。そちらの邪魔はせん」
「何のためか教えてもらっても?」
少し考えるが、まあ教えても良かろう。
祖竜に誓って、隠すような後ろめたいことではない。
「友となる精霊を探しに来たのじゃよ。水の精霊がここの葡萄酒と葡萄園のことを褒めておったでな、我が道行きに加勢してくれるものもおろうと期待してのことじゃ」
「へえ? そうなの」
葡萄園を褒められて満更でもなさそうじゃの。
「ま、いいわ。変なことしないなら」
「ではありがたく」
そうして葡萄園の一角をかりて、瞑想にふける。
風、葡萄の木を流れる水の音、草木の匂い、治療院からの血の匂い、薬の匂い。
力を貸してくれるかのう?
傷ついたものには癒しと活力を与え、我が敵対手には酔夢の中で永久の眠りを与えることに。
生々流転する水よ、魂の輪廻を助ける流れを司るものよ――……。
((ねえ))
((嵐も吹雪も呼べないけれど、それでも冒険に連れてってくれる? ともだちになってくれる?))
(もちろんじゃ、期待してくれていい。お主には癒しと酔いを頼るつもりじゃ、敵を滅ぼす爪尾の役は
((ならなら、きっと血を見せてよね? 血沸き肉躍る冒険をお願いね? お酒と果物もいっぱいいっぱい頂戴ね?))
(任せるがよい!)
果たして、祖竜の導きか。
辺境の街の地母神寺院の葡萄園で出会った。割と残忍な性格。腹黒いのか無邪気なのか。
使える術は、段階ごとに三つまで増えるが、攻撃の術は使ってくれない。
【命水】(
【酩酊】(自由精霊級から)、
【隠蔽】(大精霊級から)
残忍な性格な割に、直接攻撃は厭う。血は見たいが自分が手を汚すのは嫌いらしい。
命を
地母神の寺院にいたのも、怪我人が多く運び込まれるので、それを見るため。あと、おいしいお酒と果物。
半竜娘からは『
固定パートナーなので、一度に一体しか呼び出せない。
●〇●〇●〇●
2.有能助っ人 半竜娘ちゃん!
冒険者ギルドの受付は、多忙だ。
特に春のこのころは、新米冒険者が多くなって、一層忙しくなる。
その多忙な中で、受付嬢は、不幸なことに、今年の新人の中でもとびっきりに変な冒険者にあたってしまった。
言わずもがな、そのとびきり変なのとは、半竜娘である。
「少し前までは、登録させちゃったのを後悔したものですが……だいぶ印象が変わりましたよね、あの半竜の元問題児さん」
過去の所業をいまさらあげつらったりはすまい。
それに第一印象にとらわれることの愚かさも知っている。
何せ、
まじめな半竜娘は、きちんと実績を積もうとしてくれている。ならば、ギルドとしてもそれを後押しすべきだ。
半竜娘についていえば。
戦力としては、銀等級冒険者に匹敵するだろうし、
最近は見様見真似で只人の礼儀作法も覚えて、なかなかさまになってきつつあるし、聞けば蜥蜴人の中でも軍師課程を経たエリートなのだという。
読み書き計算ができて、仕事の覚えも速く、丁寧だ。むしろこのまま冒険者ギルドのほうに就職してくれないかとすら思う。
「逸材ですよね」
金等級まで上り詰めるような冒険者というのは、ひょっとすればこういう者なのかもしれない。
術の腕前についても、難しいはずだと聞く【分身】を毎日使っていて、ギルドの関係者でも、半竜娘のことを双子だと思っていた者がいたほどだ。
竜司祭としても、最高峰に近い力を持っているのは、地母神の治療院の手伝いなどでも証明されている。
他の冒険者との関係も悪くない。
真面目に訓練もしていて、辺境最高の重戦士一党ともよく手合わせしているのを見かけるし、武僧として武術もかなりの腕だという。
下宿はなんと辺境最強の槍使いの一党のパートナーである魔女のところだというし。あの人の見立てなら間違いない、というくらい、魔女は信頼のおける冒険者のひとりである。身元引受人としては最上だろう。
それについ先ごろは、奇特なことに、辺境最優のゴブリンスレイヤーにわざわざお金を払ってまで、ゴブリン退治を学んでいた。
そしてそれ以降、毎日ゴブリン退治の依頼を請けている。
ギルド職員の手伝いを経験したからか、報告も丁寧で要点を押さえているのは、やりやすい。
やけに遭遇する小鬼の数が多いのが気になるが、水増ししている風でもないので、本当にそれだけ殺しているのだろう。
もし
そして、受付嬢の前には、その帰って来られなさそうな依頼を請けようとする、白磁等級の一党が……。
「受付さん! この依頼お願いします!」
「ゴブリン退治ですか……。一党のメンバーは、3人。構成は戦士、魔術師、神官戦士ですね*3。他のメンバーを募るご予定は? やはり経験者が居るといいと思うのですが」
「大丈夫です!」
……いや、その根拠を聞きたいんですけど。
受付嬢としての勘は、これは帰ってこないパターンじゃないかと囁いているが、さてどうしたものか。
と、以前なら悩ましく思いながらも結局は送り出したところだが、今なら違う。
そう、最終兵器『半竜娘』が居るのだ!
前衛も中衛も後衛もこなせて、ゴブリン退治の経験も多く、機転も利く。
背も大きいし、竜殺しの実績もあるから、ナメた新人が言うこと聞かずに暴走ということもない。
明らかにランク詐欺な実力だが、白磁等級だから報酬的にもリーズナブル。
ギルドの言うこと聞いてくれる戦力って、なんて便利……。
受付が
というわけで。
受付嬢は、ギルドに残っていた半竜娘に声をかけることにした。
「半竜の術士さーん、お願いしまーす!」
「どぅれ、さっき言うておったやつじゃな?」
ギルドの奥から現れたのは、巨躯の女蜥蜴人ハーフ。
月の初めに街壁の外に竜の死体を山と積んだ、恐るべき竜に仕える美人プリースト。
そして、ここ数日はゴブリン退治に明け暮れている変わり者。
依頼受注のやりとりをしていた、一党のリーダーの戦士は、流れに付いていけずに固まっている。
「え、半竜の子も来るんですか?」
「はい、彼女と一緒なら、受けていただいて構いませんよ。逆に、そうでないなら、また別の依頼にしてくださいね」
「ちょ、ちょっと仲間と相談しても?」
「かまいません。どうぞ」
一党の仲間の方に戻る戦士に、半竜娘も声をかける。
「
見たところ、前衛が足りぬようじゃから、前衛で入るかの?
ああ、分け前は四等分の端数切り捨てで良いぞー。薬やなんかは
「ま、まずは仲間と相談する!」
受付嬢は、この条件で断るようなら、半竜娘にソロで行かせるつもりでいた。
というか、もともと、半竜娘はこのゴブリン退治の依頼をソロで受けるつもりでいたのだが、受付嬢が「白磁等級がこのゴブリン退治を受注しようとするかもしれないので、他の冒険者の育成のためにも、彼らと臨時の一党を組む前提で少しだけ受注を待ってもらえないか」と言って引き止めていたのだ。
半竜娘の方も、ギルドの評価を高めたいし、受付嬢には苦労を掛けているので報いたいし、新人の中には
そして結局、白磁等級3人の一党に、半竜娘を加えて4人で、ゴブリン退治に行くこととなったのだ。
…………。
……。
夕刻。半竜娘と、白磁等級3人のパーティーは、無事に帰参した。
半竜娘はピンピンしてる一方、白磁等級の方は、息も絶え絶えというところだった。
それも無理はない。
冒険報告によると、
これから村の1つも滅ぼそうという勢いだったという。
「はあー。まじでなんなんあれ」
「ゴブリン、ナメてたわー」
「生きてて良かった……」
白磁等級の新人にはキツい洗礼だったことだろう。
「ていうか、半竜の姉さんがマジで鬼畜。なんなん、体験せねば覚えんやろって。壁抜き奇襲を読んでたんなら教えてくれよ」
「術で治せばいいからって、俺たち3人であのでっかいの……先祖帰りのホブっての2匹と戦わせるとかホントもう……毒も食らうし……」
「まあまあ、それでもその分、解毒剤とかポーションとか持ち出してくれたし。回復の奇跡も使ってくれたし……」
「そうだけどー」
「打ち上げの払いも多く持ってくれるって言うから許すけどー」
本当に相当、厳しかった模様。
その半竜娘はどこかと見れば、酒場の別の席で陽気な水の自由精霊を召喚して、【命水】の精霊術で回復水を作って振る舞わせていた。
魔法の力が込められた水が、酒場にいる冒険者たちのグラスに飛んでいく。全部で30人の冒険者たちに行き渡ったようだ。
もちろん、白磁等級の新人3人もその中に含まれる。
『はーい、みんなー! 今日もお疲れ様! 今日のお恵みよ! この、麗しくも心優しい私に感謝なさいよー!』
「精霊のねえちゃんありがとー!」「今日もイケてるぜー!!」「ひゅーひゅー!!」
『もっと褒め称えなさーい! いえー! カンパーイ!!』
「「「カンパーイ!」」」
疲労と負傷を回復するこの精霊術の施しも、そろそろ名物になりつつあるのかも知れない。
ノリの良い冒険者たちにおだてられて、水の自由精霊もご満悦のようだ。
「受付殿にもこちらをやるのじゃ」
気付けば半竜娘が、受付嬢の方に来ていた。
肩のあたりに深い青色の燐光の玉をひとつ漂わせているが、あの自由精霊とは別口の精霊なのだろうか。小さなトカゲのような蛇のようなビジョンが見えたような気もする。
半竜娘が指を振るうと、受付嬢の口元まで、淡く光る小さな水の玉が、半竜娘の持つコップから、ふわりとやってきた。水精霊にお願いしたのだろうか。
「これは……?」
「新しく仲良くなった水精霊の御披露目に、苦労かけておる受付殿へ【命水】のおすそ分けじゃ。奥の皆にも、の」
そういうと、半竜娘も自分の前に小さな水の玉を浮かべて、見本を見せるようにパクリとひと飲みにしてみせた。
バックヤードを見れば、残っている職員たちの口元にも同じような水の玉が飛んでいくところだった。
「では、今日の冒険に乾杯、冒険
ずいぶんと気の利くようになった半竜娘は、礼を言う間もなく酒場に戻っていってしまった。
「ふふ、じゃあ、いただきます」
パクリと飲んだ回復水は、甘く、爽やかで、体に染み渡る感じがした。
●〇●〇●〇●
3.地下未踏遺跡を踏破せよ!
槍使いと魔女が辿り着いたのは、下水道から繋がっていると新たに発見された未踏の遺跡の最奥だった。
そこにたどり着くまでには、不潔な害獣や害虫の群れを越えてこなくてはならなかった。露払いにと、ある程度下水道に慣れた新人たちをつれてきていなければ、なかなか精神的に苦しい道程になっただろう。
だが、あるところを過ぎると、急に雰囲気が変わり、臭気も薄れた。
そこが遺跡と下水道の境目を成していた場所なのかもしれなかった。
出てくる怪物も、キメラめいた異形が増え、強力になっていった。槍使いの出番も増えたが、しかし彼の敵ではなかった。
白磁等級の新人たちを休ませるために、休憩を多めにとったのは、正解であっただろう。
最奥と思しき場所に辿り着いたら、なんらかの装置らしきものから這いだそうとしている不定形の粘液体に出くわしたのだ。万全で挑むべきであった。
「これが半竜の嬢ちゃんの言ってやがった、巨大粘液体か? それにしちゃあ、小さいな。手負いって訳でもなさそうだ」
「そ ね。生まれたて……なの、かも?」
「はっ、じゃあ後ろの装置は召喚器か何かかよ」
槍使いと魔女、そして新人たちは、半竜娘の報告により明らかになった、辺境の街の地下の未踏遺跡の調査に来ていた。
下水道は臭く暗く不潔で勘弁してほしいが、自分の住む街の地下にそんな怪物が潜み続けるというのもぞっとしない。槍使いはそう思って、街の領主からの依頼を受けたのだ。受付嬢に頼られたというのも、もちろんある。
依頼に示された目的は、遺跡の不活性化と、怪物を生み出す巨怪の存在確認。あわよくば、その討伐。
「ありゃあ、槍はそのままじゃ効きそうにないな」
「
「頼む。付与したら次はまず魔法で先制だな。動きは鈍いという情報だ。
おい、新人どもは、一撃入れたら、産み落とされて出てくるっつー雑魚を引きつけろ! だが基本は速攻だ! 術使いは術用意! 付与使いは戦士に付与して、戦士は突撃準備!」
槍使いの指示に、新人たちのうち投射タイプの術が使える者たちが準備を始める。
「合わせろ! さん、にい、いち、いま!!」
槍使いの号令に合わせて術が飛び、粘液体を吹き飛ばす。
そして槍使いを筆頭に、前衛の戦士たちが突撃した。
「一撃入れたら下がれ! 奴の動きは鈍い! 取り込まれるな!」
次の瞬間、粘液体が沸き立ち、雑多な動物たちが、そして奇怪な変異体たちが産み落とされる。
やがて粘液体が全て動物や変異体に置き換わると、奥の装置からさらに別の粘液体が這い出ようと、あるいは生み出されようとしているのが見えた。
呪文の流れ弾も当たったろうに、装置に目立った傷は見られない。
「おかわり、みたい ね?」
「持久戦か……だが、そうはいくか!」
「そ ね。アラーネア…ファキオ…リガートゥル 《
「雑魚の動きを止めてるうちに、次のが出て来られねーように装置を壊す!! 大槌、大剣持ちはついてこい!」
槍使いの号令に、幾人かの新人が続いた。
時間をかければ不利になる以上は、相手の補給回復を絶っての速攻しかない。
これが決まらねば、撤退が必要となろう。
…………。
……。
粘液体の怪物の死に際に転化して吐き出された動物たちには、雑魚しかいなかったのが幸いし、死闘の末、なんとか新人にも死者を出すことなく切り抜けることができた。粘液体が成長途中だったからだろうか。
道中の強力な変異体は、おそらく半竜娘が見つけたという巨大粘液体から転じたものの生き残りだったのだろう。粘液体は、育てば強くなるタイプの化物だったようだ。
召喚器らしき装置も破壊したため、これ以上、化物が出てくることもないはずだ。
「ま、これで一段落ってわけだ! さあて、お待ちかねだぜ新人ども! 遺跡には宝物がつきもの、とはいえトラップで死んだら詰まらねえ。手に負えなさそうだったら無理すんなよ!」
わあ! と疲れながらも歓声を上げる新人冒険者たち。
魔女は苦笑している。
というのも、ここはどうやら、高度な錬金術を応用した工房の跡地のようだったからだ。
そこにあるものの価値を見抜ける者が、果たして新人にどのくらいいるというのか。
まあ、魔女には分かるので、適当なところで指揮をして、彼ら新人には人足として協力してもらえば良いか、と考えたようだった。
おそらく万能変異する粘液体、その細胞は、あの召喚器だか製造装置だか分からないものの中に残っているだろう。動物への変化は不可逆のようだったが、使い魔のベースにはもってこいではないだろうか。そのまま使うには不安があるから、研究が必要だが。それにちょうど良く、古竜の素材もあることだし、カスタムメイドの使い魔を作ってみるのもいいかも知れない。
魔女は口元に妖艶な笑みを浮かべ、喉奥で笑った。
ともあれ、今日も冒険者たちの働きで、街の平和は守られたのだ!!
●〇●〇●〇●
4.リザルト
半竜娘は、水の精霊【ミズチ】と仲良くなった!
半竜娘は、水の精霊【ミズチ】を精霊術【使役】で呼び出せるようになった!
半竜娘は、【精霊使い】のレベルが上がった! 精霊使いの職業レベルが2になった!
半竜娘は、新しく、【
半竜娘は、付与呪文が上手になった! 冒険者技能【呪文熟達:付与呪文】の初歩を身につけた!
半竜娘は、【魔術師】のレベルが上がった! 魔術師の職業レベルが5になった!
半竜娘は、新しく、【
半竜娘は、付与呪文がさらに上手になった! 冒険者技能【呪文熟達:付与呪文】に習熟した!
半竜娘は、瞑想のなかで自然や精霊たちの声を聞いた! 一般技能【瞑想】の初歩を身につけた!
半竜娘の破壊衝動!
半竜娘は、建物を壊したくてうずうずしている……!
冒険者ギルドからの評価が一定に達しました。
黒曜等級への昇格審査を受けますか?
>はい
いいえ
《使役》でカスタム精霊を呼び出すのは独自裁定です。やりすぎるとゲームバランス壊すので、何らかのペナルティーが必要でしょう。例えばご機嫌とりに毎日上質な触媒を消費し、呼び出すときも上質な触媒で呼び出すのが礼儀で、そうしないと機嫌損ねてペナルティー、など。(いやでも維持コスト銀貨10枚/日ってかなり重いな……。半竜娘ちゃんは金満だから払えるけど……。上質な触媒のお供え物は、毎日じゃなくて毎週にするか)
(多分ですけど、酒場がお気に入りの水の自由精霊を酒場以外で呼び出そうとすると、達成値に-20くらいのペナルティー食らうと思います。)
作者備忘のためステータス掲載。特に見なくても大丈夫です。
◆名前:半竜娘
年齢13歳(成人直後)。緑かかった烏の濡れ羽色の鱗と髪を持つ。
顔と胸元だけ只人の遺伝が現れ、残りの部分は蜥蜴人な混血。胸元は豊満だが、哺乳動物ではないので本当に単に膨らんでるだけ。
やる夫スレならAAは「長門(艦これ)」を当てると思う。
つよい(確信)。最終的にゴジラになれる素質がある。
巨大化して建造物を壊したり、敵軍を轢き潰したりしたい
TASさんとゴブスレさんの薫陶を受けたせいか、自主的に和マンチの道を歩み始めている。
◆累積経験点 53500点/ 残り経験点0点
(ゴブスレッスン +1000点
ゴブリン退治10連勤+1500点
沼竜発生原因調査 +1000点
新米剣士救出 +1000点)
◆残り成長点 3点
◆能力値
装備:魂魄強化の指輪+3、知力強化の指輪+3
状態異常:狂魔覚醒剤後遺症(各判定時-2(残り9日))
能力値 | 体力点 5 | 魂魄点 8 | 技量点 3 | 知力点 6 |
集中度 4 | 9 | 12 | 7 | 10 |
持久度 3 | 8 | 11 | 6 | 9 |
反射度 3 | 8 | 11 | 6 | 9 |
生命力:【 38(28+10) 】
移動力:【 24 】
呪文使用回数:【 07 】
呪文抵抗基準値(魂魄反射+冒険者LV+呪文抵抗):【 19 】
◆冒険者レベル:【 8 】
職業レベル:【魔術師:5】【竜司祭:9】【精霊使い:2】【武道家:6】
◆冒険者技能 初歩/習熟/熟練/達人/伝説
【免疫強化】 ● ○ ○ ○ ○
【魔法の才】 ● ● ● ● ○
【呪文熟達(創)】● ○ ○ ○ ○
【呪文熟達(付)】● ● ○ ○ ○
【追加呪文(真)】● ○ ○ ○ ○
【追加呪文(竜)】● ● ○ ○ ○
【生命の遣い手】● ● ● ○ ○
【機先】 ● ● ○ ○ ○
【頑健】 ● ● ○ ○ ○
【忍耐】 ● ○ ○ ○ ○
【武器:格闘】 ● ● ● ○ ○
【体術】 ● ● ○ ○ ○
【鉄の拳】 ● ○ ○ ○ ○
【発勁】 ● ○ ○ ○ ○
【薙ぎ払い】 ● 〇 ○ ○ ○
【二刀流】 ● 〇 ○ ○ ○
◆一般技能 初歩/習熟/熟練
【竜の末裔】 ● ● ●
【暗視】 ● ○ ○
【祈祷】 ● 〇 〇
【瞑想】 ● 〇 〇
【沈着冷静】 ● ○ ○
【信仰心(竜)】 ● ● ●
【統率】 ● ● 〇
【礼儀作法】 ● 〇 〇
【調理】 ● 〇 〇
【精霊の愛し子】● 〇 〇
【職人:土木】 ● 〇 〇
◆呪文
呪文行使基準値(知力集中):【 10 】
(魂魄集中):【 12 】
職業:魔術師:5 竜司祭:9 精霊使い:2
技能:呪文熟達(創造呪文):+1
呪文熟達(付与呪文):+2
生命の遣い手:生命属性の呪文が出目10以上で大成功
装備:真言呪文の発動体+3 紅玉の杖(真言呪文行使+1)
真言:【 19 】 奇跡:【 0 】 祖竜:【 21 】 精霊:【 14 】
◎習得呪文:
《 分身 》 難易度:20 (真言呪文 創造呪文(生命))
《 力場 》 難易度:15 (真言呪文 創造呪文(空間))
《 抗魔 》 難易度:10 (真言呪文 付与呪文(なし))
《 巨大 》 難易度:10 (真言呪文 付与呪文(生命))
《 加速 》 難易度:15 (真言呪文 付与呪文(生命、精神))
《 停滞 》 難易度:15 (真言呪文 支配呪文(生命))
《竜牙兵》 難易度:15 (祖竜術 創造呪文(生命))
《 竜爪 》 難易度:10 (祖竜術 創造呪文(物質))
《 狩場 》 難易度:15 (祖竜術 付与呪文(空間))
《 竜眼 》 難易度:10 (祖竜術 付与呪文(生命))
《 竜血 》 難易度:なし (祖竜術 付与呪文(生命))
《 擬態 》 難易度:10 (祖竜術 付与呪文(光))
《 竜吠 》 難易度:15 (祖竜術 支配呪文(精神))
《竜息/毒》 難易度:10 (祖竜術 攻撃呪文(闇))
《 突撃 》 難易度:10 (祖竜術 攻撃呪文(なし))
《 賦活 》 難易度:10 (祖竜術 治癒呪文(生命))
《 小癒 》 難易度: 5 (祖竜術 治癒呪文(生命))
《 降下 》 難易度:10 (精霊術 付与呪文(土、空間))
《 使役 》 難易度:10 (精霊術 支配呪文(火、水、土、風))
※使役できる固定の精霊(名称:ミズチ)がいる。当該精霊が使ってくれる呪文は以下のとおり。
【命水】(
【酩酊】(自由精霊級から)
【隠蔽】(大精霊級から)
固定のパートナーのため、機嫌を損ねると言うことを聞いてくれないことも。
毎日、触媒(酒や果物など)をお供え物として消費し、週に一回は上質な触媒を供える必要がある、呼び出す際も上質な触媒を用いなくてはならない。上質な触媒を用いない場合は達成値-4。
◆攻撃
命中基準値(技量集中):【 7 】
職業:【武道家:6】
技能:【武器(格闘):熟練(+3)】
近接:【 16 】 弩弓:【 7 】 投擲:【 13 】
◎武器:【 素手(爪) 】
用途/属性:【 片手or両手格軽/斬 】
命中値合計:【 16 】
威力:
片手:1d3+5(内訳:鉄の拳+1、発勁+1、竜の末裔+3)
両手:1d3+7(内訳:両手+2、鉄の拳+1、発勁+1、竜の末裔+3)
効果:投擲不可
◎武器:【
用途/属性:【 片手格軽/殴 】
命中値合計:【 16-2 】
威力:1d3+2(内訳:発勁+1)
効果:投擲不可
◎武器:【 南洋投げナイフ 】(2本所持(再購入))
用途/属性:【 片手投軽/斬刺 】
命中値合計:【 13+4 】
威力:1d6
効果:投擲専用、強打・斬(+1)、刺突(+1)、斬落
(紅玉の杖は基本的に武器として用いない)
◆防御
回避基準値(技量反射+武道家レベル+体術スキル):【 14 】
◎鎧:【 衣鎧+鱗 】
鎧:魔法の司教服(+3)(装甲7、回避修正+2、移動修正-4)
鱗:外皮+3(竜の末裔)
属性:【 衣鎧(布)/軽 】 回避値合計:【 16 】
移動力合計:【 18 】 装甲値合計:【 7+3 】
隠密性:【悪い(静穏性はあるが視覚的に派手)】
盾受け基準値(技量反射+武道家レベル(大篭手着用時)):【 12 】
◎盾:【 小型盾 】
盾:魔法の大篭手(+3)(盾受け修正5、盾受け値4、武道家の適正装備扱い)
(両手と尻尾に同じものを装着)
属性:【 小型盾(金属)/軽 】 盾受け基準値合計:【 17 】
盾受装甲値合計:【 14 】 隠密性:【 良い 】
◆所持金
銀貨:250枚(直近で稼いだ分。とりあえずの手持ち)
(足りないときは、財布を預けてる魔女さんに相談しようね!)
◆その他の所持品 (分身の分を余分に所持)
冒険者ツール ×2
内訳(鈎縄,楔x10,小槌,火口箱,背負い袋,水袋,携帯用食器,白墨,小刀,松明x6)
携帯食×7日分、衣類
背負い袋(蜥蜴人用特大サイズ) ×2
ベルトポーチ ×4(主にポーション類を入れる)
ずた袋 ×2
小袋セット(3枚/1セット) ×2
竜司祭の触媒入れ ×1(移動力修正-2)
魂魄強化の指輪+3 ×1(装備中)
知力強化の指輪+3 ×1(装備中)
技量強化の指輪+3 ×1
体力強化の指輪+3 ×1
武術熟達の腕輪+3 ×1
体術熟達の腕輪+3 ×1
真言呪文の発動体+3 ×1(装備中、形態:ネックレス)
毒煙玉 ×4
治癒の水薬 ×6
強壮の水薬 ×4
解毒薬 ×4
鎮痛剤 ×2
燃える水 ×2
火の秘薬 ×2
能力上昇の秘薬(各種) ×2
【使役】の上質な触媒(各属性) ×2
水精霊【ミズチ】用の上質な触媒 ×4
◆出自/来歴/邂逅/動機
軍師/戦場/家族/託宣