ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆前話
メダルが足りない! 戻って探そう、迷宮の隅々まで!

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◆牙の塔について
ふわっと対混沌(アンチ・ケイオス)の魔法使い育成機関として妄想しています(なのでオーフェンのあれそのものではないです)。王都の魔法使いの学院(※赤毛の魔法使い姉弟の出身学校)ともまた別。なにが違うかというと、混沌への殺意が違う。つまり、悪の魔術師絶対シバくマン/ウーマン養成所(しかもかつての魔術師(デュエリスト)の時代の知識をある程度そのまま後継している)。
 
※原作小説13巻のネタバレあります(今更の注意ですが)。
 


43/n 『迷宮探検競技』を視察せよ!-5/5(牙の塔。そして【分身】についての戒め)

 

 はいどーも!

 事故事例とヒヤリハットは水平展開しましょうね、そんな実況始まるよー。

 

 前回は迷宮探検競技にエントリーして、最終通過用の証であるメダルを9つ集めなきゃならないということで、迷宮を逆走する羽目になった、というところまででしたね。

 幼竜娘()姉妹がそんな感じでアスレチックを逆走している間も、他の挑戦者チームは同様の迷宮の影(インスタンスダンジョン)を同時並行的に攻略しているようです。

 これも太古からの叡智を連綿と引き継いできた『牙の塔』の凄腕魔術師たちの為せる大いなる御業というわけです。流石はあの白金等級の勇者のお仲間である賢者ちゃんを輩出した機関なだけはあります。

 

 ちなみに迷宮の影、ですが、かつて孤電の術師(アークメイジ)が盤外に至った冒険── あのゴブリンスレイヤーさんが駆け出し(イヤー・ワン)のころに同行したという小鬼に満ちた影の塔の冒険── においても観測されたように、この四方世界では、ありふれたとは言えないまでも、ありえない現象ではありません。

 “あり得る” のであれば、それを再現するのは魔導の御業。

 そもそも、かつての魔術師(デュエリスト)の時代においては、“力” を封じた札から怪物や英雄を呼び出す魔術師たちが跋扈していたのです。

 その時代のからの流れを汲む “牙の塔” の魔術師たちにとっては、やってできないことではない、ということなのでしょう。

 

 

 

 さて、半竜娘ちゃんは幼い姿の自分の分身を鏡の奥から引きずり出して、娘である幼竜娘三姉妹に付けています。

 それは意外と難易度の高いこの迷宮探検競技のサポートをするためでもありますが、半竜娘ちゃん自身が楽しむためでもあります。

 これでも15歳の……あれ、16歳でしたっけ。まあ成人を迎えているとは言っても、まだまだ若い蜥蜴人である半竜娘ちゃんもまた、遊び足りないお年頃というわけです。

 あるいは家族サービスなのかもしれませんが。休日旅行先のお父さんかな?

 

 

 では迷宮探検競技は幼女化した分身体に任せたとして、本体である身の丈11尺弱*1の竜の乙女の本体はどちらに行ったのかというと………。

 

 

 

「ここが『牙の塔』じゃな」

 

 魔術師であれば知る人ぞ知る*2機関ではありますが、なかなかその実態に触れる機会はありません。

 それは『牙の塔』に収蔵されている知識が、遥か太古からの直系であり、今の世の中ではオーバーテクノロジーだからです。悪用されたら世界の危機が頻発してしまいますからね。

 世界を救うための人材を養成する機関が世界の危機を生み出しては世話はないわけです。

 

 だからこそ彼らは、そもそも門をくぐる者を選別しますし、万が一にも闇落ちした候補生を許さないと云います。

 

 

「冒険者等級を上げといて良かったのう~」

 

 そんな厳しい選別を課す『牙の塔』の門をくぐる資格ですが、銅等級以上の高位冒険者であれば多少は緩和されるのだとか。

 まあ冒険者は信用商売ですからね。品行方正にかつ身命を賭して世界を救ってきた先達に感謝です。

 

 

 ちょうどよくアポイントが取れた幾つかの “教室”── 師弟関係で結ばれている『牙の塔』内での集団の単位。氏族や一門衆のようなもの。── に専攻についての話を聞きつつ、魔術研究に関して意見交換をする半竜娘ちゃん。

 他にも、実物も交えて魔導具の作成についての助言を貰ったりもしましたし、豊富な蔵書についても閲覧させてもらい、幾つかの真言や失われた屍霊術、そして別角度から見た祖竜信仰のヒントなどなどについての知識を追加で得ました。得られた知識を咀嚼して我がものとするのにはまだ時間がかかるでしょうから、実戦投入はまだ先になるでしょうが、習熟すれば呪文のバリエーションがさらに広がるでしょう。*3

 

 

「ああ、もうこんな時間かや」

 

 いつの間にか日が暮れて黄昏れ(誰ぞ彼)(どき)になっています。

 ここは牙の塔の資料室です。

 とても一日では読み切れないほどの蔵書があり、目星を付けた本にざっと目を通すだけしかできませんでした。

 

灯明の娘(文庫神官)から速読術でも習っておくべきじゃったかのう……」

 

 まあ、必要であればまた来たら良いのです。

 今日の短い時間だけですが、どのようなタイトルの蔵書があるかはだいたい覚えましたし。

 麒麟竜馬の足を以てすれば、西方辺境の街から牙の街(ファング)へは、決して遠すぎるというわけではありません。

 

「名残惜しいが、時間は守らなければな」

 

 所詮ここでは半竜娘ちゃんは部外者です。

 部外者の滞在可能時間は日中のみ。

 決められたルール通りに、夕刻になれば牙の塔からは退去せねばなりません。

 

 

 資料室から外に出たところ、晩秋の傾いた夕日が窓から入り込み、廊下を赤く照らしていました。

 柱や窓枠の()が長く伸びています。

 

「影、か」

 

 分身を扱うアザーセルフの呪文と、そのより原始的な技法による派生により過去の己の影を鏡から引き出した魔法。

 

 迷宮の影を投げかけることによる、迷宮探検競技の会場設営の技術。

 その影の中の様子を、撮()し、投()する興行用の実況中継魔導具。

 

「蔵書の中にあった、魔導の禁忌や事故の事例集。戒め」

 

 ──── 【分 身(アザーセルフ)】は恐ろしい呪文である。ゆめゆめ忘れることなかれ。

 

“生み出した分身に、【分 身(アザーセルフ)】を唱えさせてはならない”

 

 

 愚かな魔術師の話をしよう。

 

 生み出した分身に、【分 身(アザーセルフ)】を唱えさせれば、より強力に己を増やせると思った魔術師が居た。

 一人が二人、二人が四人、四人が八人。

 

 そうやって倍々に増えてゆけば、己はもっと強大になる。

 魔術師はそう思った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 だから増えた影は、最初にまず、【分 身(アザーセルフ)】を唱える。

 同じ影なのだから、同じことを考える。

 当然だ。

 

 己の隣に影を投げかけ、実体を与える。

 分身が増える。

 あっという間に分身だらけになる。

 

 倍々に増えてゆけば、己はもっと強大になる。

 魔術師(ぶんしん)は、そう思った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()。 

 

 己の隣に影を投げかけ、実体を与える。

 分身が増える。

 八人が十六人、十六人が三十二人、三十二人が六十四人。

 

 最初の本体が、あるいは分身の誰かが思った。

 “まずい、潰されるぞ。” と。

 

 もはやほとんどの分身の隣には、新しく分身が増えるスペースはなかった。

 

 だが、分身は増え続ける。

 一人二人が呪文を唱えなくとも、新しく生み出される分身が次の呪文を唱えることを止められない。

 

 いつまで増えるのか、それを魔術師は決めていなかった。

 

 分身が増える。

 

 やがて、分身同士の生み出される座標が重なる。

 

 重なって生み出された分身がどうなるか。

 

 このときは、()()()()()()()()()()()()

 

 2人分が重なった異形の肉塊が生まれ落ちる。

 その肉塊もまた【分 身(アザーセルフ)】を唱えた。

 

 異形の肉塊が【分 身(アザーセルフ)】で増える。

 

 座標が重なる。

 

 新しくまた、別の異形が生まれ落ちる。4人分が重なって。

 

 その異形もまた【分 身(アザーセルフ)】を唱える。

 

 座標が重なる。

 

 新しくまた、別の異形が生まれ落ちる。8人分が重なって。

 

 その異形もまた【分 身(アザーセルフ)】を唱える。

 

 座標が重なる。

 

 新しくまた、別の異形が生まれ落ちる。

 

 その異形もまた【分 身(アザーセルフ)】を唱える。

 

 【分 身(アザーセルフ)】。

 【分 身(アザーセルフ)】。

 【分 身(アザーセルフ)】。

 

 もはや元の魔術師の意思など、何処にもなくなってしまっていた。

 

 分身によって自我が希釈されたのか。

 超過詠唱の反動によって魂が砕けたのか、弾き飛ばされたのか。

 あるいは天刑星の禁忌に触れたがゆえか。

 

 そこに残されたのは、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、あらゆる部位を組織を重ね過ぎたことによって、生命の根源ともいうべき原形質めいた不定形となった巨大な肉塊のみであった。

 

 そのような有様になっても、肉塊は【分 身(アザーセルフ)】を唱え続ける。

 考える脳も、刻まれた魂も失って、しかし、すでに時は遅く。

 

 あるいはそれは、秩序の神々による見せしめであった。

 あるいはそれは、混沌の神々による嘲笑であった。

 

 ──── そんなに【分 身(アザーセルフ)】が好きならば、延々と唱えているが良い。

 

 地底を蠢く肉の塊。

 不幸をもたらす混沌たる大敵。

 寿命なき原形質。

 

 

 木星の鏡像にして()

 

 すなわち、太歳星君(ジュピターゴースト)

 

 

 かくして、それは生まれた。

 

 増え続ける影が肉を得た、災いの化身。

 戒めを伝えるもの。

 禁忌(エラッタ)の残滓。*4

 やり過ぎれば魂を取り上げられ(キャラロストし)混沌の尖兵に落ちる(N P C 化する)という実例。

 

 

 

 

「ゆめゆめ忘るることなかれ、というわけじゃな」

 

 教訓話にして、いまだこの地に封じられた実存する災いについての注意喚起でもあります。*5

 

 魔術師たるもの、()の扱いには慎重を期さねばならないということですね。

 

 

「………ん? なんじゃ。何か騒がしいようじゃのう」

 

 そのとき半竜娘ちゃんが、牙の塔の魔術師たちの動きがなんだか慌ただしいことに気付きました。

 

 いったい何が起こったのでしょう?

 少し聞き耳を立ててみましょう。

 

 

「混線している? どこからだ」 「まだわからん。恐らくは何らかの()が伸びてきて混ざったようだ」迷宮の影(インスタンスダンジョン)の方への影響は?」 「少し待て、確認する……。地下大空洞のギミックが怪しいようだ。洞穴の暗がりと、夕暮れ時の影の伸びが悪い具合に噛み合ったか」 「だがそれならそこに落ちなければひとまずは安心か」 「確か蜘蛛の巣と大蜘蛛が配置されていたはずだな?」 「ああ、そのエサ役として圃人型人形のビリーボブもな」 「じゃあそれに干渉して、参加者が万が一にも、メダルを探して下に落ちたりしないように注意喚起を……」 「一足遅かったようだ! ひと組み既に蜘蛛の巣を焼き払って地下空洞に入っている! 蜥蜴人の姉妹だ!」 「なんだと!?」

 

 

「………まさか!!」

 

 不吉な予感に慌てて【幼き日の影(ヤング・アザー・セルフ)】との繋がり(パス)を辿ろうとする半竜娘ちゃん。

 果たしてみんなは無事なのか。

 

 

 というところで今回はここまで。ではまた次回!

 

 

*1
◆半竜娘ちゃんの身長:陽神行路(ソルディオス・オービット)の吸収前後で、身長(踵から頭の先まで)は吸収前2.9m(10尺弱)→吸収後3.2m(11尺弱)と成長している。竜になるまでまだまだ育つぞ!!

*2
◆『牙の塔』知ってる?: 〈魔術知識〉判定 成功。普通に知ってた。

*3
◆追加的な呪文の知識:より高位の呪文、またはオリジナルな呪文の取得キャップ開放の布石。実際に取得させるかは経験点や成長点と相談。あるいは、竜への階梯を進めるための追加的なオリジナル一般技能『竜の智慧(仮)』の習得の前提条件をクリアした扱いにでも出来るかもしれません。

*4
◆原作小説13巻の太歳星君について:あんまりマンチマンチしてんなよ、という話。原作から特大の釘を刺された形なんだよな……。心当たりがあり過ぎたので当時は読んでて心臓が痛かったデス。なぜならTAS編の当初プロット(ゴブスレTRPGの公式Q&Aの分身に関する裁定を見る前)では半竜娘ちゃん倍々ゲームをやるつもりだったので……。たぶん並行世界では、禁忌を侵して何番目かの太歳星君に堕してしまった半竜娘ちゃんが居ます。

*5
◆太歳星君について:原作小説では賢者ちゃんがその由来や名称を知っていたので、おそらく彼女が学んだ場所にはそういった資料があると想定。また、禁忌を侵した魔術師が一人だけとは限らない(というかゴブスレTRPGのQ&Aに載ってさらにサプリでも修正入ったわけなので、絶対他にも沢山マンチがいたはず)ので、太歳星君ジュピターゴーストは複数存在するものと考えています。もしくは幾つかに分けて封印していてもおかしくないですしね。




 
◆ダイマ!
今回の話に対応する原作小説13巻の試し読みはこちらからー!
https://www.sbcr.jp/product/4815623791/

アニメ ゴブリンスレイヤーⅡ BlueRay & DVD 発売中!!
https://goblinslayer.jp/bd/03.html

『ゴブリンスレイヤー』ドラマCD一挙復刻決定! 発売中! 電子版の10・12・14巻は今月末まで! 今回はデータ販売もあるのですよ。でもドラマCDのデータのダウンロード期限には要注意じゃよ。
https://ga.sbcr.jp/bunko_blog/cat383/20231006/
 
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