ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
◆前話
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※AIさん(DALL・E3)に出力してもらった挿絵あり
ここは『迷宮探検競技』の舞台であるその迷宮の奥深く。
迷宮の一部が崩落し、広大な地下洞窟へと繋がったと設定されたこのエリアは、チリチリと燃え墜ちる蜘蛛糸の残光で一瞬だけ茜色に染まった。
半竜娘の分身体が噴いた祖竜術【竜息】による
「おかーさん、ありがとーっ!」 「でも私たちだけでもやれたと思うの」 「過保護~!」
「………これまでの人工的な墳墓や遺跡めいたダンジョンのつくりとは随分と様子が違うのじゃな。まるで天然の洞窟のようじゃ」
「話を逸らしたっ!」 「でも確かに。造りが違う~?」 「途中から崩落して外の洞窟と繋がったぽい設定かも」
「そのようじゃの。さて、いかにもここには、迷宮探検競技クリアのために集めねばならない9つのメダルのうちの一つが隠してありそうじゃが………何か見つけられたかの?」
「メダルは見つけたよっ!」 「捕まってグルグル巻きになってた人が持ってた」 「蜘蛛の保存食にされかけの圃人さん~。下の洞窟から迷い込んだんだって〜」
「そうかそうか! よくやったのう、お手柄じゃのう」
「「「 えへへへ~~ 」」」
穴の淵の崩れかけの床を避けてぴょんぴょんと小鳥のように跳ねて移動する三姉妹。
成長著しいとはいえ、肉付きはその骨の伸びに見合ったものとは言えず、幼女(あるいは少女)特有のすらりと細く長い四肢が躍動する。
まだまだ発展途上ではあるが、単為生殖によるために、蜥蜴人の中でも最高峰の才能を持つ半竜娘の血を色濃く受け継いでいる三姉妹のポテンシャルと成長速度、そして学習速度は驚異的だ。
「それで、これでメダルは幾つじゃったかの?」 近寄ってきた幼竜娘三姉妹の頭と喉を順番に撫でてやる幼女化半竜娘(分身体)。非常にほほえましい光景だ。
「宝箱の中からひとつと……」 「【
小袋から取り出してコインを数える幼竜娘三姉妹。
他にも
元から集められていたものを合わせれば……。
「「「 9枚! これで全部でありマス! 」」」 どこで覚えたのか、ビシッと敬礼する三姉妹。
「重畳、重畳。であればあとは、最終試験監督官のところへと戻って、証のメダルを示すだけじゃな!」
「うんと褒めてもらおうッ!」 「入賞できると良いんだけど」 「楽しかったね~」
一大スペクタクルな迷宮探検を経て、幼竜娘三姉妹は非常に満足気。
それはもちろん幼女化半竜娘(分身)もまた同じく。
罠に怪物、そして迷路に謎解き。
迷宮探検の粋をギュッと凝縮したような、まさに計算され尽くした人工の迷宮。
基本にして究極とは、このようなものをいうのであろう。
「………大いに参考になったのじゃ。この体験を
辺境の街で冒険者ギルドの受付嬢が企画している『迷宮探検競技』。
半竜娘が受けた依頼は、冬に行うその催しの参考になる情報の収集。要は視察だ。
麒麟竜馬が牽く快速馬車を持ち、フットワークが軽く、そして軍師課程出身の頭目を抱えるがゆえに、十分で詳細な報告ができるほどに事務処理能力が高く、報告するべき勘所を心得ているとなれば、半竜娘の一党は視察に出すにはうってつけであった。
「本体の方も、この迷宮探検競技で使っておった情報系の魔導具について、幾らかの
要所に配置された迷宮試験官同士の相互の通信のための魔導具。
あるいは、催し物として内部の様子を外に中継し、または運営側として事故や事件が起こらないように監視するための遠見の魔導具。
彫像に封じた怪物を複製し、または従える、影絵の魔導具。
迷宮内の窒息を避けるための風送りの魔導具。
他にも様々な魔導具がこの “牙の街” ファングの迷宮探検競技では用いられている。
それらを提供した魔法使い養成施設 “ 牙の塔” と縁を結んだ半竜娘。
夢枕にて古の職人の記憶を追体験して修行を積む半竜娘の、魔導具職人としての腕前は高まっている。だがその彼女であっても流石に複雑な魔導具全てを自らの手で再現できるとまでは行かないだろう。まあ幾つかは類似劣化機能を持つものを再現できるかもしれないが。
あるいはこのたび結んだ縁を頼りに、借り受けたり、ものによっては譲り受けることもできるかもしれない。
視察としては十分な成果であった。
腕組みしてうむうむと頷く幼女化半竜娘のそばで、幼竜娘三姉妹たちは得たメダルを宙に投げ上げたりして遊んでいた。
「よッ」 「ほいさ」 「や~」などと掛け声をかけ合いつつ。
どうにも手持無沙汰だったのと、迷宮探検のその成果を誇示したい気持ちが合わさっての所業のようだ。
「こら、お主ら、戦利品で遊ぶでない!」
「ピャッ!?」 「おわっと~」 「あっあっあっ」
「あ」
急に声を掛けられて手元が狂ったのか、幼竜娘三姉妹がお手玉のように投げ合っていたコインが彼女たちの手からいくつか弾かれてしまった。
そのほとんどは、三姉妹の手足や尻尾でさらに跳ね上げられて無事にまた三姉妹の掌中に── 一枚くらいは口で受け止めたものもあった── 収まった。
しかし一枚だけ、運悪く、あらぬ方向に飛んで行ってしまったメダルがあった。
迷宮に開いた深い地下洞窟へと、メダルが跳ねる。
カン、チャン、カン……と
「「「 ああああ~~~~~!!! 」」」
幼子三人の嘆き声。
幼女化半竜娘(分身体)が、ばつが悪そうに己の頭の角を掻いた。
「………ぬぅ、すまぬ。急に声をかけたばかりに」
「………遊んでた私たちも悪かった」 「探しに行かないと!」 「私が行くよ〜。落ちた場所は目で追えてたし〜」
最も蜥蜴人らしい蜥蜴人だと評判の
将来は
そんな彼女の眼は、コインの行く末を見逃さなかったようだ。
「では頼もうかの。足下には気をつけるのじゃよー」
「はいは〜い」
ぴょんぴょんと軽やかに跳ねながら天然洞穴の岩肌を下る
やがて間もなく。「み〜つけたっ」 彼女はコインを見つけ出した。
うまく岩の隙間に挟まって止まっていたようだ。
スッ、とコインが落ちた隙間のすぐ側の、その岩の上に音少なく軽やかに着地する
そして、その音を聞き咎めたモノがいた。
音もなく
「ぴゃぁ~~~~~っ!?!?」
「なんじゃ!? どうした無事かや!?」
洞窟の暗闇の中から小さく聞こえた
子を持つ母として、転げ落ちるような勢いで洞窟へと飛び出し、素早く駆けていく。
「待って、おかあさんッ!」 「わたしたちも着いていく」
その後ろをピョンピョンと跳ねて着いていく
半竜娘が洞窟の闇を飛ぶように降りるが、異状は明らかだった。
「わぁっ、離せ~~~っ! やめろぉ~!! おか、おかぁさ~~ん!!?」
「いま助けるのじゃ! 待っておれ!!」
これだけ降りても
それが幼女化半竜娘(分身体)の危機感を煽る。
(なにモノかに引きずり込まれ、連れ去られつつあるようじゃ………ッ!!)
幼女化半竜娘(分身体)は、背丈が縮んだことで歩幅の狭まった体躯をもどかしく思いながら、呼吸を整え集中する。
【軽功】*2の武技。さらに、大地の威力をいなす【地功拳】*3の武技。
武道家として積んだ経験が、暗闇の洞穴でも超一流の機動を可能とした。
そして暗がりを見通す蜥蜴人の
(今じゃッ!)
そして四肢と尾を最大限に使って躍動する。大跳躍だ。
末の娘の姿は、再び洞穴の岩場の影に隠れてしまった。
だが、叫び続ける
「見ィつけたのじゃあああ!!!」
「あかぁさん! 助けてぇえ~~!!」
ついに
ぴぇぴぇと泣く幼い娘の姿に、半竜娘はカッとなる。
だが、蜥蜴人としての戦術思考が、熱くなった頭脳に、氷のような冷徹さを注入する。
情報収集と、戦力分析。
そして目的達成のための手順。
それを考えるのはもはや習い性であり、それこそがこの場で最も必要なことでもあった。
斥候術と祖竜術を学ぶ
あるいは触手か。象の長い鼻のような、肉質の綱のようなものが、胴に巻き付いている。
肉の綱が彼女を洞穴の闇の奥底へと引きずっていこうとしているのだ。
「いますぐ、助けるのじゃっ!」
引きずられていくのに果敢に抵抗したのか、
鱗もあちこちぶつけたのか剥がれてしまっている。
彼女の尻尾は今も暴れるように自らを引きずる肉綱を叩き、肘で打ち据えているが、何ら痛痒を与えられていないようだ。
──── 何はともあれ、肉の綱の拘束から引き剥がさなければならない!
「〈竜に至りし
己の体術を極めて竜へと至ったという祖霊の伝承に
術の助けによって一時的に達人の武技を己の身体で再現した半竜娘は、順逆自在の恐るべき武技を発動する。
「武技、【阿吽覆滅】ッ!」
決して広いとは言えない洞穴内を立体的に跳ねまわる幼女化半竜娘(分身体)の爪が、その洞穴の暗闇に閃く。
蜥蜴人として至上の才を持つ半竜娘が覚醒させた二重螺旋は、その爪に、蜥蜴人の限界を超えて竜の階梯に踏み込んだ、名剣のごとき切れ味を与えている。*5
洞穴の天井を蹴り、
そして当然かくあるべしとでも言うように、肉の綱を、その名剣のごとき鋭い爪で切断。
引き絞られた肉綱が切り裂かれ、弓弦が切れるかのごとくバツンと音を立てて弾けた。
急に肉綱の力が緩んだことでバランスを崩す
即座に再び四肢のバネを生かして跳躍。
末の娘の方へと飛び出す。
そしてすれ違いざま、己の尾を動かして
「ぴぃっ!?」 絡め取られた末の娘に、ぐん、と大きく荷重がかかる。
「気をしかと持つのじゃよッ! それっ!」 そして半竜娘は、己の運動エネルギーを
「ぴゃぁ~~~!!?」
その先には、着いてきていた
「そちらは頼んだのじゃ!!」
己の位置と入れ替えるかのように
これこそが、順逆自在の恐るべき武技である【阿吽覆滅・甲】である。*6
「うゅ!?」 「捕まえたッ! 受け止めたよッ!」 「おかあさんも早く戻ってきて!」
魔術に傾倒し知識神への祈りも欠かさない
「いや、手前はまだ行けん!!」 幼女化半竜娘(分身体)は、娘たちの方へと視線も向けず、洞窟の暗闇を睨みつけ続けていた。
「
彼女のその脳裏には、牙の塔にて事態に気づいた本体からの霊的な接触により、あの人攫い肉綱の持主の情報が流れ込んできていた。*7
かつての【分身】使いの魔法使いの成れの果て。
理性を失った不老不死の霊肉。
全てを喰らい、四方世界を埋め尽くすまで増え続けるであろう、災厄の星。
名付けられて曰く、太歳星君。ジュピターゴースト。
看破し喝破した幼女化半竜娘(分身体)の声に観念した、というわけではないだろうが、洞穴の暗闇の奥底から、巨大な肉の塊のような化け物がのっそりと現れていた。
化け物は赤黒い色をしており、筋肉質な体を蠢かせている。表面には剥き出しの血管や神経が走って奇妙な紋様のようになっており、複数の目や触手が見える。
まるで巨大な
その巨大な肉塊から、いくつも肉の綱のような触手が伸びている。
必ずしも動きが素早いわけではないようだが、幼竜娘三姉妹がこれより戻る先は上り坂。
不整地を駆けるとなれば、さらには傷ついた
「お主らだけでも逃げよッ! どうやら奴は、反射のみで生きる理性なき原形質の肉塊のようじゃ。なあに、放射火炎で焼いて怯ませ、その燻る肉の燃えさしを触媒に火の精霊を呼び出せばこちらのもんじゃよ」 幼女化半竜娘(分身体)はニヤリと不敵に笑った。自らを鼓舞し、娘らを安堵させるために。
実際、【
祖竜術【
「でも───ッ!」 「呼び出した精霊だって、直ぐには術は使えないはず」 「はぁ、はぁ。
「いいから逃げよッ!! 早く行け!!」 半竜娘が激しい声を上げた。囮を務める意味もあったのか、同時に敵の
「「「 ────ッ!! 」」」
幼竜娘三姉妹も状況を理解したのか、意を決して三姉妹で息を合わせて協力しながら上層へと向かって跳ねていく。
「そうじゃ、それでよい。上ではきっと異状を察知した最終試験官殿が迎えに来ておるはずじゃ」
鞭のように迫る太歳星君の触手を己の爪で斬り落とし、半竜娘の幼き日を模した分身体は、大きく息を吸った。
「さあて、とくと見よ、地底の禍津星めが! 〈我が身が目指すは黒き鱗の
そして加えて【顕現】せよ、火精霊! 〈怒れる滅びの蒼き火炎を糧となし、敵を滅ぼし血族
蒼翠の炎と、地獄のような灼熱が、洞窟を満たした!
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恐ろしいほどの炎熱と、爆音。
果たして、逃げる幼竜娘三姉妹が、後ろから過ぎ去る熱風に思わず振り返ったその先で見たものは。
あまりに膨大な熱量に耐えかねて崩落する洞窟の天井だったもの。
つまりは岩崩れ。
洞窟への道は、閉ざされたのだった。
「「「 え、ええええええぇぇぇぇ────ッ!!?? お、おかあさ~~~ん!!?? 」」」
◆幼女化半竜娘(分身体)、
※敗因:迷宮の耐久力を見誤った。
半竜娘ちゃん(本体)「やりすぎたのじゃ!? しかもパスも途切れおった! 分身に与えた影も回収しておらんというのに!!?」