ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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◆前話
幼女化半竜娘ちゃん(分身体)、未帰還(かえらず) 

====
 
※AIさん(DALL・E3)に出力してもらった挿絵あり(マス)
 


44/n 〈影〉 を取り戻せ! -2(考えることは同じ。なぜなら同一人物なので)☆AI挿絵あり

 

『“影” を無くしたァ? ふははははッ、間抜けめ!! つまり早い者勝ち、見つけた者勝ちということだなッ!! これはチャンスだ!!』

 

「ぬ、待たんか、貴様!!」

 

『ふん、何も問題はないさ。主の探し物を探しに行くだけなんだからな!! 契約違反は何もない! (オレ)を止めることはできねえってわけだ! はっはっはっ!!』

 

 半竜娘の影(ぶんしんたい)が帰らなかったことを知った闇竜娘(ダークドラコ)は、封具である竜牙のネックレスから抜け出して、窓を潜り、『影は(オレ)のものだぁああーー!!』と哄笑しながら、夜空へ飛び去っていく。

 

 ここは迷宮探検競技を催していた建物の医務室。

 競技監督によって救助された幼竜娘三姉妹が、寝台に寝かされていた。

 牙の塔から戻った半竜娘(本体)をはじめ、自分たちの競技を終えた森人探検家、TS圃人斥候、文庫神官(+白梟使徒)もこの部屋に(つど)っていた。

 

 

「………リーダー。追わなくていいのか、使い魔が逃げてくぞ?」

 TS圃人斥候がジト目で闇竜娘の飛び去る軌跡を追う。

 視線の先。魔神の膜翼で飛ぶ闇竜娘は、目にも止まらぬ速さで稲妻のように宵闇の彼方へ消えていく。

 

「はあ。放っておけ、実際のところ機動力のある彼奴(きゃつ)が探索に出るのは理にかなっておる。同じ手前の “影” としての由来を持つことじゃし、共鳴や共振して勘が働くこともあろうし適任じゃ。………それにいまは娘らのケアが先じゃからな」

 溜息をついてどっかりと床に座った半竜娘が見る先には、混乱して泣き疲れて、今は眠ってしまった幼竜娘三姉妹の姿があった。

 

「そうですね、お姉様。この子たちが目覚めたときにお姉様のお姿がなければ、きっと取り乱すでしょうから」

「そういうことじゃの」

 不甲斐なさ。無力感。焦燥。三姉妹の感じたであろう感情を思う。三姉妹の母として、心の傷を心配する。

 しかし一方で、これは力を渇望する良い動機づけになるだろうという、蜥蜴人としての価値観も頭を覗かせる。「自分たちがもっと強ければ」、というその思い。三姉妹は年齢的にはまだ少し早いが、身体の成長的には、そろそろ蜥蜴人の集落ならば親元から離されて集団教育に放り込まれてもおかしくないくらいだ。渇望を持つ戦士は強いと、半竜娘は知っている。ここで味わった無力感をバネに、竜たる力への渇望へと水を向けさせ、その起源(オリジン)を練り上げさせられれば、きっと娘たちは()い戦士になる。

 

 つまり、半竜娘の言うケアとは、もちろん蜥蜴人としての、という意味である。

 蜥蜴人の教育の全ては、竜たる力への志向に注がれるべきもの。

 傷ついた心は補強しなくてはならない。それには同意する。そして、ならば、それがゆえに、傷を力に変える竜としての在り方を植え付けなければならない。

 教育とはある種の洗脳であると、半竜娘は熟知しており、そして熟知した上でそうする必要があると知っていた。仮にそうしなかったとして、竜たるを目指さぬ蜥蜴人が出来上がったとして、それは幸せになれるはずもないのだから。あるいは結局のところ回り道をするだけで、そのような蜥蜴人であってもやがては力を求めると知っているがゆえに。ならば初めから、迷い惑う無駄な時間は削ってやるのが、先達としての心遣いですらあるのだ。

 

「それで、貴女のその薄くなった “影” は、どうするつもり?」

 森人探検家が問う。医務室の照明に照らされて揺らめく、半竜娘のその影に目を落として。己のそれと見比べて。

 

 

 半竜娘の大きな影は、しかし森人探検家の細く可憐なそれよりも、もっと薄く儚くなっていた。

 

 

「無論、取り返す」

 半竜娘は決然と述べる。

 言うまでもないことであった。言われるまでもないことであった。

 

 取られたものは、取り返す。

 それは天然自然の理である。

 竜を目指す身であればなおさらに。

 

 だが、半竜娘の “影” は、一体どこへ行ったのか。

 迷宮探検競技の最中(さなか)に、太歳星君と相対し、洞窟の崩落に巻き込まれて消えた幼き姿の分身体は、いったい何処へ?

 

 

太歳星君(ジュピターゴースト)は、伝承によれば【分身】たる影の集合。失われた手前の【分身】も、また影。そして、平面に投影された影が交差しても区別がつかぬように、分身たる影同士もまた、重なりうるものじゃ」

 

「………おねえさま、つまりそれは」

 息を吞む文庫神官。

 

「面倒なことじゃ。きっと手前らが見つけ出して追い付くころには、すっかり “()()()()” しまっておるじゃろうな」

 半竜娘はその美しい(かんばせ)を憂鬱げに曇らせた。

 

 

 

 牙の街ファングにおける迷宮探検競技において発生したアクシデント。

 迷宮の影法師(インスタンスダンジョン)と交差した、太古の魔術師の “(ぶんしん)” が膨れ上がってできた化け物。太歳星君。ジュピターゴースト。影でできたその化け物は、その成り立ちゆえに、投影されたダンジョンへと侵入できたのだ。

 

 常に自らを複製し膨れ上がるその肉塊、不死身の霊肉は、既に理性を失って久しい。

 あちらへふらふら。こちらへごそごそ。辺境領域の地底を蠢く、禍津星(マガツボシ)

 それを追うのは並大抵のことではない。

 

 そもそも迷宮の影法師(インスタンスダンジョン)に侵入した経路すら定かではないのだ。

 本体が何処にあるのかすら不明。

 あるいは影ある所に形アリとばかりに、転移じみて居どころを定めないのかもしれない。

 

「………即座の解決は難しいじゃろう。寓話となって語り継がれるほどの化け物であれば、まさしく大敵(アーチエネミー)と呼ぶにふさわしい。その捕捉と討滅には、周到な準備が必要じゃ」

 

「あー、いい加減に旅の空で物資をやりくりするのも限界だよなあ、確かに」

 

「もう半年近くは戻れていないものね、我が家(ホーム)に」

 

「屋敷の維持は人に依頼していますし、柵やなんかは樫人形(ウッドゴーレム)の擬態ですから自分たちである程度は相互に修繕保守してるとは思いますが、流石に長く空けすぎですね」

 

 ここらで一つ、じっくりと腰を据えて準備することが必要だと、彼女たちは頷き合う。

 狙うべき敵はそれ程のものである、と。

 

 

「それに各地の視察経験を、冒険者ギルドへ還元(フィードバック)せねばならん。どのみち辺境の街には戻る必要があるのじゃ」

 

「そうだったわね。報告書(レポート)は送っているけれど、やはり細かいところは漏れているものだし、直接話した方が良いわね」

 

 ついでに成功報酬やギルドからの評価(けいけんてん)も受け取っておきたいところ。

 

 

「でもよー、そんな悠長にしてて良いのか? リーダーの影が失われるかもしれねーんだろ?」

 

 TS圃人斥候が、床に胡坐をかく半竜娘の膝の上にするりと入り込んで、見上げながら問う。

 ………なお半竜娘の豊かな双丘に遮られてTS圃人斥候視点では半竜娘の顔は見えなかったが。

 

「ふン、縮んでおろうと手前の “影” には変わりないのじゃ。そうそう簡単にくたばるものか」

 

「………そー言われれば、そーとしか思えねーな、確かに」

 

「いえ寧ろ私は、おねえさまの影だからこそ、時間を置き過ぎると、力をつけすぎて本体に戻るのを拒否するのではないかと心配なのですが」

 闇竜娘の実例があるため── 闇竜娘は荒い分身使いに耐えかねて反逆したところを、魔神召喚の贄にされて、さらにその魔神の魂を食い尽くして乗っ取って受肉した経緯を持つ── また同じようなことにならないかと心配する文庫神官。

 

「その時はその時じゃな。反逆するのであれば、それもまた良し。その心の臓を喰らい、糧にし、竜になるための礎としてくれようとも」

 

「うーん、この………究極の同族喰らいで強くなっていくのは、なんて言ったらいいのかしら………」

 

「カカカ! よく言うであろう、『最大の敵は己自身だ』だの、『克己心を持つのが成長の秘訣』だのと!」

 

「リーダーの場合はその後に “(物理)(かっこぶつり)” が付くじゃねーかよ」

 

「カッカッカッ!! 上手いこと言うのう!」

 

「はぁー……。まー、長期戦の構えだっつーんならいーけど。そんじゃ、ホームに帰ろうぜ」

 

「ええ、そうしましょう。流石に沙漠からずっと働きづめ過ぎますよ、私たち」

 

「ホントよね………。森人(エルフ)にあるまじき忙しさだったわ」

 

 

 幼竜娘三姉妹が起きたならば、辺境の街に戻ろう。

 半竜娘の一党は、そのように決めた。

 

 しかし果たして、それが結果的には、太歳星君(ジュピターゴースト)を追う最短ルートになるのだが………今の彼女たちにはそれは分からぬことであった。

 

 

 もしそんな未来のことが分かるとすればそれは、盤外の神の使徒である白梟使徒か……。*1

 

 あるいは、精霊にまで零落したとはいえ、最短距離で進むように運命を窃視し、干渉し得る権能を持っていた『ティーアース(T A S さ ん)の破片』くらいのものだろう。*2

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

何処とも知れぬ影の中

▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 それは目覚めた。

 

 いや、生み出された、という方が近いのだろうか。

 

 あまりにも巨大な肉塊の中から、ズルリと産み落とされたそれは………美しく整った只人の顔を持った蜥蜴人の幼げな少女であった。

 

 だが、可愛らしいのは顔と鴉の濡れ羽色の髪の毛だけ。

 

 その肉体は幼いながらに(しな)やかにして(したた)かな筋肉がついており、その筋肉の上に張る鱗は細かくも頑強なもの。

 特に爪の鋭さは眼を(みは)るものがあった。そんじょそこらの名剣よりも恐ろしい切れ味を宿しているようにすら見える。*3

 長く伸びた大蛇の如き尾は、きっと大人の只人以上の腕力を発揮できるだろう。

 

 まさしく戦士の肉体であり、さらに極上のそれへと成長する片鱗を感じさせる可能性の塊のような肢体であった。

 

 

「ぬぅ………ここは………?」

 

 

 生まれたてで一糸まとわぬ彼女の肢体は、血を薄めたような漿液でしとどに濡れていた。

 少女は呻きながら頭を振り、巨大な肉塊から分離した際に纏わりついていた漿液を振り払う。

 

 

 暗い周囲を見渡すために、縦長の瞳孔を大きく散大させた蜥蜴人と只人の合いの子の少女。

 

 

 

 

 

 そんな彼女に忍び寄り、飛びかかる影が一つ。

 

 

『GGOBB!! GOB! GOB! GOB!!』

 

 小鬼(ゴブリン)

 最下級の怪物。

 

 だが、最下級とはいえ、怪物は怪物。

 十分に人を殺しうるだけの力を備えている。

 戦いを生業としない、普通の農民や旅人、市民には、油断のならない相手だ。

 

 

(ふん)ッ!!」

 

『GOOGYYAAA!!??』

 

 まあしかし、相当の実力を持つ戦士たる少女にとってみれば、意識を取り戻したばかりで前後不覚の状況でしかも暗闇で奇襲されたとしても、鎧袖一触の手合いでしかないのだが。

 

 少女は尾の一振りで、背後から下卑た欲望を露わに飛びかかってきた小鬼を迎撃。

 叩きつけて弾き飛ばすと、即座に追撃して、その自慢の竜の如き爪で小鬼を真っ二つに割断した。サジタル面切断!

 

「………ふむん? 存外に(やわ)いな……」

 

 少女の感想は、頭頂から股間まで真っ二つにされたゴブリンに対してのものでもあり、自分の爪に対してのものでもあった。

 

「なんといえば良いのじゃろうな、脱皮したてというか、生まれたてというか………」

 

 ゴブリンと言えば、その耐えがたい不潔さと悪臭でも有名だ。

 だがこのゴブリンにはそれがない。

 

 まるで生まれたてで、汚穢に塗れる前のゴブリンが居たとすれば、このような存在になるのだろうか。

 

「腹の中にも何もない。………そういえば手前も腹が減っておるな」

 

 正中線から切断されて零れたゴブリンの消化管の中身は空っぽだった。

 とりあえずは祖竜信仰の流儀として、小鬼の心臓を一口。*4

 

「まあ、喰えなくはない」

 

 多少腹を満たしたところで、はて、と周囲を見渡す。

 もちろん暗闇で見えるものは限られているが………。

 

「まさに臓物や肉で作られた洞窟じゃの」

 

 周囲は湿って弾力のある肉の感触。

 あるいはそれ以外は岩。

 

 蠢く肉の壁が、洞窟の奥から押し寄せ、()()()()と詰まってゐるようなありさまだった。

 

 

 

 次に、この半竜の少女は己の内面に思索を向けた。

 

 小鬼が襲ってきたから取り合えず撃退したが、さてはて、己はどこの誰であったのだろうか?

 

 

 ………………。

 ………。

 …。

 

 少し記憶を探れば、案外簡単に答えは得られて拍子抜けする。

 

「あ~~、そういうことかや。これはどうも、手前は喰われたようじゃな。

 ──── あの太歳星君(ジュピターゴースト)に」

 

 

 喰われた、というのも正確な表現かどうか。

 

 

「手前は本体の影、【分身(アザーセルフ)】の派生呪文で造られた影であった。

 そして娘らを庇って、この肉塊に立ち向かい、しかし火力過剰で洞穴が崩落し、そのまま肉の濁流に吞まれた。

 太歳星君とは、余りに重なり過ぎた分身の影の集積を起源とする怪物。

 であれば、同じ影である手前を()()()()()()()()()のも頷けるのじゃ」

 

 太古の魔術師の時代から存在するであろう太歳星君。

 その魔術的存在としての濃さは、金縁の鏡から引き抜かれ、本体より分かれて生み出されたばかりであったこの半竜の少女の、“魔術師の影” たる存在の強さを優に上回る。

 

 同じ属性・起源をもつ、しかしながら遥かに過重な存在。

 この半竜の少女は、一度この太歳星君に、完全に溶かし込まれてしまったのだろう。

 

 だが、溶けるということは、完全に混ざってしまうまでにはムラがあるということでもある。

 

「おそらくは、たまたま、この太歳星君の肉体の端で、溶けていた手前の情報が、ムラとなって偏り、そして分裂増殖のタイミングと重なったのじゃろうな」

 

 そして彼女は生まれ落ちたのだ。

 

 ………しかし、その存在の重さ(影の濃さ)を、大幅に希釈された状態で。

 

 

「生命力ではない、魔力でもない………純粋に存在の力、魂魄の力とでも言うべきものが、希釈されてしまっておる」

 

 

 できれば本体に戻って、再び融合し、本体が失った存在力とでもいうべきものを補填しなくてはならない。

 だが、いまのこの状態で戻っても、何の足しになるだろうか。

 あの牙の街ファングの迷宮探検競技で、太歳星君に喰われたときの千分の一にも満たない程度の、“影” の濃さしかないこの状態で。

 

「手前の “影” の大部分は、太歳星君の中に溶けたままのようじゃな」

 

 で、あれば。

 

「まずは取り戻すしかあるまい。実際に目の前にあるのじゃからな」

 

 半竜の少女は、蠢きそして増殖する肉塊へと向き直る。

 

「思えば先ほどの小鬼も、太歳星君(こ れ)が取り込んで、溶かし込んだものが、終端でたまたま結実したのじゃろうな」

 

 そういえば、と半竜の少女は記憶をたどる。

 

 孤電の術師(アークメイジ)が盤外へと飛び出す最後の試練で、小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)とともに、小鬼に満ちた影の塔を攻略したという話を聞いた覚えがあった。

 つい最近、東の国境の砦で、黒き油の抹殺者を相手取ったときに邂逅した次元渡り(プレインズウォーカー)のあの女、孤電の術師とそのような雑談をしたものだ。

 

 であれば、この太歳星君は、同じようにこの四方世界に何らかの原因で投影される “影の塔” の中の怪物なりなんなりも、喰らい、吸収して、溶かし込んできてしまっているのだろう。

 この半竜の少女や、さきほどの小鬼のように。

 

 だが、それもやがては完全に混ざって、希釈され、均一化されてしまうのだろう。大海に落とされた一滴のワインのように。

 半竜の少女や小鬼がポコリと生まれ落ちたのは、きっと比較的最近に取り込まれたから、まだ混ざり切っていないというだけの理由に過ぎないのだ。

 そして、そのような状態が長く続くとはどうしても思えない。

 

「放っておけば、きっと直ぐにでも、手前の影は混ざりきってしまうのじゃろうな」

 

 そして一度混ざってしまえば、そこから分離させるのは困難を極めるだろう。

 

 

 

 では、半竜の少女がすべきことは何か。

 

 このまませめて千分の一の存在力でも、と、この場を抜け出し、本体に合流することであろうか。

 

「否。竜たるものが、奪われてそのままにするなどあり得ぬことよ!」

 

 そう、竜たらんとする己の志にかけて、このままでは居られない。

 やられっぱなしでは居られない。

 

 応報しなければならない。

 奪われた以上に、勝ち取らねばならない。

 

 

「さぁて、では、大食い比べといこうではないかのぅ!!」

 

 

 半竜の少女が(かそ)けき魂魄の力を燃やし、己の血に眠る二重螺旋から、祖竜の──── いや、その彼らが屈した滅びすらも乗り越えんとする猛き力を呼び覚ます。

 

 

〈大いなる父祖よ御照覧あれ! これなるは悪魔の尻尾(チクシュルブ)、天の火石にも負けぬ我が命!〉 〈無限の霊肉の何するものぞ!〉 〈不死身の大影の何するものぞ!〉 〈全身全霊、我が肉と魂の一片までもが、これすなわち捕食者である!〉

 

 【竜胞(ドラゴンセル)】 超過祈祷・四重奏(クアドラプル・オーバーキャスト)!!

 

 血の螺旋に秘められた竜の力を呼び覚まし、全身を竜の細胞とする祖竜術の奥義。

 それが【竜胞(ドラゴンセル)】の術である。

 

 それによって解放される効果は、氷と分解を除く、あらゆる魔術を、そして奇跡すらも吸収して己の力に変えるというもの。

 あらゆる超常を喰らい己の糧とする(※ただし氷河期は勘弁な!)、竜という究極生物の概念をその身に降ろし体現する、祖竜術の奥義である。

 

 

 

 半竜の少女は、己の身体が崩れるのも厭わずに、その力を発揮した。

 なにせ彼女の身体は、太歳星君の分身の術の系譜としての分裂増殖によって生まれたばかりで、まだ世界に完全に定着していない………つまり、半分近くは、太歳星君の魔術によって形作られたようなもの。

 

 限界を超えて精神力を注がれて多重に強化された【竜胞(ドラゴンセル)】の呪文が、彼女自身の身体にすら牙を剥いたのだ。

 

 半竜の少女は、崩れる身体を厭わずに、目の前に大きく広がり視界を埋め尽くす太歳星君(ジュピターゴースト)の肉壁へと近づく。

 

「身体が崩れる………だがこれでいい。いや、これが良い! さあ、さあさあさあ! 太歳星君! 貴様の魔術と、祖竜の力! どちらが優るか、勝負じゃ!! 喰らい尽くしてくれようぞ!! 細胞の一片になってもじゃ! 貴様の全てを喰らい尽くせば、そうすれば──── 失った影もすべて手前のものじゃからなあ!!」

 

 その挑発に答えたわけではなく、単なる反射に過ぎないのだろうが、太歳星君の肉壁が蠢き、崩れかけの半竜の少女をその肉の波濤で呑み込んだ。

 

 それが己の破滅だとは気づきもせずに。

 

*1
◆知識神の御遣いは未来を知っている?:白梟使徒『………いえ、盤上に遣わされた時点で、未来のことまでは読めなくされているのですよ? 覚知の神ではあるまいし、知識神さまはネタバレは厳禁派なのです』

*2
◆ティーアースの破片は何か知っている?:ゆっくりまんじゅう『ゆ? ゆや~ん?』(※『心理学』判定に失敗。ティーアースの破片の内心は読み取れない)

*3
◆爪:彼女のもととなった者は、蜥蜴人の血脈に宿る『竜の末裔』(蜥蜴人専用一般技能)を、限界を超えて鍛え上げており、派生した『竜の爪』技能により名刀のような鋭い爪を得ていた。

*4
※生まれて初の食事で心臓を喰う。経験点+1000。




 

◆【竜胞(ドラゴンセル)】の祖竜術
おそらくモチーフのひとつは、ゴジラ細胞。

◆再び生み出された半竜の少女(元 幼女化分身体)
この四方世界における太歳星君(ジュピターゴースト)の伝承のとおり、生み出された分身は同じ思考を辿ります。そして、産み落とされた半竜の少女は、彼女が初めの一体ではありません。つまり、全身を、全てを喰らう竜の細胞と化して、太歳星君の肉塊へと潜り込んだのも、彼女が初めの一体ではありませんし、最後の一体というわけでもありません。産み落とされるたびに、彼女たちは同じ選択をするでしょう。
 
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