ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
◆前話
旅で得た経験点と成長点をパァーっと使って、一党の皆は大きく成長した!
はいどーも!
前回は半竜娘ちゃんたちが視察遠征から辺境の街に置いている拠点に戻って、挨拶回りやギルドへの報告なんかを済ませて、自己鍛錬を行っている様子をお届けしたところまででしたね。
そこからさらに時は過ぎて、冬も深まり、冬至の催しである辺境の街版の迷宮探検競技の開催日も差し迫ってきた昨今。
迷宮探検競技については、郊外の枯れた遺跡跡を改築して実施されるとのことです。
冒険者ギルドからもそれらの造営のためにクエストが発行され、信用のおける冒険者たちが動員されているとのこと。
例えば真言呪文【
ギルド所属の冒険者たちの能力を把握している受付嬢さんの名采配が光りますね!
そんなお祭りムードの中……。
半竜娘ちゃんたちはといえば、地中を蠢く
配下の
物資を集め、情報を集め、装備を整え、己を鍛える。
半竜娘ちゃんは新たに覚えた祖竜術の奥義【
また、
いまも半竜娘ちゃんは手元でその架空の祖竜の 〝設計図〟 を読み込んでいるところです。
そして肝心なのは……────
「ふむ。あとは太歳星君の居場所だけ、じゃな」
新式祖竜の設計図に目を落としていた半竜娘ちゃんがそう呟きました。
そうです、肝心なのは、敵の居場所です。
それが分からないとカチコミできませんからね。
まあ、情報がないわけではないのです。
例えば、〝不死身の霊肉〟 が収められている棺がある遺跡だとかの情報も実はあったのですが、そちらは既に槍使いさんと魔女さんの 〝辺境最強〟 ペアが別口の依頼を受けて向かっています。
半竜娘ちゃんたちもそちらに向っても良いのですが、後で彼らの話を聞いてからでも遅くはないでしょう。魔女さんたちなら、仮に太歳星君に出遭ってしまっても撤退することくらいはできるでしょうし。
ただもし仮にその遺跡が大当たりで、遭遇戦で太歳星君を辺境最強ペアに倒されてしまったならば、それはもうそういう運命だったのだと諦めるほかありませんが……。まあ、その場合でも魔術の先達である魔女さんには、半竜娘ちゃんの事情も伝えてあるので、半竜娘ちゃんが失った 〝影〟 のいくらかは捕まえてくれるかもしれません。
他にも街の下水道のさらに地下にある、あの懐かしの原形質の巨大粘液体の培養施設が、今思えば太歳星君と似ていましたよね? そう、あの麒麟竜馬のもとになった原形質のあれです。テケリ・リとか鳴きそうな感じの。
アレと太歳星君は、まったく同じルーツではないにしても、施設を作成する際に、太歳星君を研究して参考にしてる可能性は高いと思った半竜娘ちゃんたちは、あのロマの侯爵の占い結果『低いところより出ずべし』という言葉があったこともあり、辺境の街の地下遺跡の探索を行ったりもしました。
最終手段である知識神さまの奇跡【
できる限りの手を尽くして情報を集め、そして最後の一押しでどうしても分からなければ頼る、というくらいがちょうど良い塩梅です。
ま、そこはケースバイケース。メタ的な視点では、ハンドアウトとして与えるべきタイミングが来ればその要件も緩和される、というのはあるのですがね。
ただ、地下の下水道の遺跡については、望む成果は得られなかったようです。
「街の地下の遺跡のマッピングも進めたけど、特に怪しいところは無かったわね」
「まーじで大変だったんだけどなー」
「気になるところが全くなかった訳ではありませんが、確定的とはとても……」
「まあ、あそこで研究されておった原形質粘液体の資料が見つかったのじゃから、それで良しとしよう」
地下遺跡から資料庫の隠し扉を見つけられたのは、死霊術【
まあ、巨体が災いして隠し部屋の中には入れなかったのですが。そこはそれ、森人探検家さんやTS圃人斥候さん、文庫神官ちゃんに任せて事なきを得ました。
遺跡漁りが趣味の森人探検家さんと、斥候としての技能を磨いているTS圃人斥候、そして知識神に仕える神官として資料読解に長けている文庫神官ちゃん。3人に任せておけば問題ありません。
しかーし、こういう時に便利なのが、幽体離脱の死霊術【
分身体を真言呪文【
森人探検家・TS圃人斥候・文庫神官の3人に加えて、霊体化した半竜娘ちゃんが不可視の身体で探索をサポートできるわけです。
物品には触れられませんが、熟練の術士である半竜娘ちゃんの手に掛かれば、物質界を見て、さらに声を伝えることもできる程度には強固な霊体を構成できるので、意志の疎通は可能なのです。ああ、並程度の腕の術士だと、物質界とアストラル界のフェーズがズレているせいで幽体離脱しても物質界の様子が暗中模索の五里霧中でよくわからなかったりするのですよね。その点、半竜娘ちゃんは流石熟練の術師というわけです。
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さて、方々に手を伸ばしてみたものの、これ以上の情報も集まらないし、いよいよ知識神さまの奇跡【
それをもたらしたのは、まるで嵐のような名を持つ少女でした。
白んで痛んだ黒髪に、か細い体躯。
おそらくは今回の
そんな彼女が、街はずれの半竜娘ちゃんたちの拠点の門の前に立ち、健気に声を張り上げます。
「ご、ごめんください……!!」
さて賢明なる視聴者の皆さまにはもうお分かりですね?
そうです、メタ視点的には、嵐のような名を持つ彼女もまた主人公。
赤い髪の傭兵、テンペストの娘。*2
ブラック・オニキスを手に収める運命の娘。*3
そして 〝
始原の大渦。*5
「@」。*6
ローグライクの系譜。*7
「ごめん、くださーい……!! どなたか、いらっしゃいませんかぁ────!!」
「ぅう、すまねぇ……」(がくり)
頑張って門の前で声を張り上げた(それでも小さい声ですが)@ちゃんの背には、ぐったりとした女性の姿があります。
………おっと。
@ちゃんに背負われている女性……見覚えがありますね?
具体的には、半竜娘ちゃんと同じ顔つきをしています。
そして垣間見える、悪魔のような羽と尻尾。
はい、独断専行していた
どうやら傷つき消耗した闇竜娘ちゃんを、@ちゃんがどこかで拾って届けてくれたようです。
「はいほい。新聞はお断りだよー、っと? んあ?」
「あ、あのっ! このひとが、ここに送ってくれって……!」
ポリポリとお腹を掻きながら出てきたのは、赤髪の圃人の女性、TS圃人斥候ちゃんです。
そして@ちゃんと、その彼女に背負われている見覚えのある
「うっわ、こりゃまた手ひどくやられてんなー……。おーい!! 誰か手を貸してくれー!!」
すぐに工房屋敷の方に応援を頼んだTS圃人斥候ちゃんが、急いで@ちゃんの方に駆けてくると、「
「ま、まほう?」
目を丸くする@ちゃんに、駆け寄ったTS圃人斥候ちゃんがニヤリと笑ってみせます。
「お嬢ちゃん、真言呪文を見るのは初めてかー?」
「は、はい……」
「ま、手品みてーなもんだ。お嬢ちゃんだって直ぐに使えるようになるさ。………さて、ここまで運んでもらった上にまだ手間かけてわりーが、そいつをこの影の担架に載せてくれねーか」
「はいっ!」
「おーけー、いい返事だ」
TS圃人斥候ちゃんも手伝って、@ちゃんに背負われていた闇竜娘ちゃんを担架の上へとうまく導きます。
そのときちょうど、工房屋敷の中から文庫神官ちゃんもやってきました。
「どうしましたか」
「おっ、タンク後輩、いいところに。リーダーの使い魔だが、ひどくやられてるみてーだ」
「………そのようですね。ひとまず運び込みましょう。………しかし、いったい何にやられたんでしょう?」
闇竜娘ちゃんは魔物Lv9の高位のデーモンです。
上位魔神たるアークデーモンと同等の位階にある闇竜娘ちゃんをこれほどまでに痛めつけるとは、相手も相当やるはずです。
「コイツが追ってた相手を考えると、まー、そいつを見つけて挑んだはいいが返り討ちってところかねぇ。よっと」
「はいっと。やはりその可能性が高いですか……」
会話しながらもTS圃人斥候ちゃんと文庫神官ちゃんは、使い魔神の闇竜娘ちゃんを載せた影の担架を持ち上げて、息の合った様子で工房屋敷の方へと運んでいきます。
二人の会話を聞きながらも手持無沙汰にしていた@ちゃんを残して。
「ああの、えっと、そのぅ、わたしは、どう────」
「ねえ」
「はいぃいぃ!?」
わたわたとしていた@ちゃんの背後から涼やかな声が掛けられ、彼女の肩がビクゥッと大きく跳ねました。
慌てて振り向こうとする@ちゃんの肩を、何者かが柔らかく押さえます。
同時に、まるで瑞々しい林檎を思わせるような、さわやかな森の香りが、@ちゃんの鼻腔を擽ります。
@ちゃんの肩の後ろからずいっと顔を突き出したのは、笹穂のような長耳と星を流したような金髪が美しい女性でした。
「え、
「ええ、そうよ。ま、それはそれとして。貴女も疲れてるだろうから、お礼も兼ねてお茶をいかがかしら?」
音もなくエルフ忍び足でバックアタックした見かけによらずおちゃめなところのある森人探検家さんが、ちらりと後ろを見て、@ちゃんを屋敷へと誘います。
見れば、背負ってきた闇竜娘ちゃんのつま先を引きずったであろう跡が、屋敷への小道に長く刻まれています。
それだけ一生懸命に、おそらく道端かどこかでボロボロの状態で倒れていたクッソ怪しい人型魔神をここまで連れてきてくれたということです。
それに闇竜娘ちゃんを拾った経緯を聞いたり、彼女をここまで連れてきてくれたお礼もしなくてはなりません。
むしろ茶の一杯も勧めずにいれば、銀等級冒険者である半竜娘ちゃん一党の名が廃るというものです。
「さ、どうぞ中に。ほらほら」
「えっ、えっ、えっ、あの」
「はいはい、進んでー」
「えぇーー?!」
ぐいぐいと森人探検家さんに押されて、@ちゃんもまた、工房屋敷へと足を踏み入れました。
直後に、まるで巨大なモンスターに遭ったかのごとき、魂消るような「ひいえぇぇえ!?」という少女の悲鳴。
あー、出会い頭に半竜娘ちゃんの巨体(現在3m超え)はインパクトありますもんねえ。
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「つまりお主は、太歳星君にやられた、と」
「ちっ、そうだよ。不甲斐ねえことにな」
そして【治癒】と【賦活】の術のおかげで意識を取り戻した闇竜娘ちゃんから半竜娘ちゃんが話を聞いたところ。
やはり彼女は
「だがタダでやられる
「ほう。それは重畳」
闇竜娘ちゃんの使い魔としての素体となったのは、恐らくは疫病の魔神であると目されています。
まあ、半竜娘ちゃんの分身体の自我で上書きされてしまった今は、正確なところは分からないのですがね。
ですが、その素体となった魔神が持っていた素質と、そして扱う死霊術の力によって、闇竜娘ちゃんが病毒のエキスパートであるのはまぎれのない事実。
そんな彼女の渾身の一撃を打ち込まれた太歳星君も、きっとただでは済んでいないはず。
「それで場所はどこじゃ?」
「どっかの洞窟」
「おい貴様……」
「しかたねーだろ?! 別のもっと遠いとこの遺跡の地下から移動跡の大穴を追ってって、追いついて戦った後は、適当に飛んで地上に出たんだから。その後はダメージで意識朦朧としてたしな……」
「はあ……」
「ため息つくなよ……。だがまあ、あっちのガキが
「それなら今、聴き取りを他の者に任せておるのじゃ。………
「ぷっ」
「笑うでない」
まあ、@ちゃんの方にもいま別室で森人探検家さんが聴取中なので、闇竜娘ちゃんが倒れていた場所については、そちらに任せれば良いでしょう。
エルフはツラが良いので、交渉に補正が入ったりしそうですし適任でしょう。
勿論その後、@ちゃんには、救出と情報提供の謝礼金を幾ばくか包んで、迷宮探検競技の方へを送り出してあげるつもりです。
先達として助言や導きの一つでも授けてやるのもいいでしょう。
「まあ何にせよ、いよいよというわけじゃな」
ともあれ、これで最後のピースが揃いました。
というところで、今回はここまで。
次はいよいよ太歳星君へのカチコミ(の予定)です。
それではまた次回!!