ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
偉大なる先駆者兄貴からの感想に恐懼して初投稿です。
1.UMA
魔女は、釜から這い出てきた、どろどろの粘液体を、研究者の目で冷たく見下ろしている。
釜は一つではない。いくつもの釜から同じように粘液体が這い出していく。
粘液体は、互いに合わさり、ぼこぼこと不規則に変形し、律動し、やがて一つの形をとっていく。
現れたのは、馬と竜のアイノコのような、四つ足の鱗あるもの。
大きさは、大柄な輓馬よりもさらに大きい。
しかし、その体は、輓馬よりもさらに洗練されていた。
ほう、と、悩ましげに艶っぽく、魔女は息を吐き、その豊かな肢体を椅子に預け、すらりとした脚を組んだ。
「ま あ、こんなもの、かしら、ね?」
相棒の槍使いが英雄英傑に憧れていることは知っている。
隠れて乗馬の上達訓練をしていることも(そういうところが、いじましくて、かわいいのだが)。
そう、英雄譚には、強靭な駿馬がつきものだと、相場が決まっている。
彼ら英雄は、戦場を駆けて敵を蹴散らし、美姫の窮地にさっそうと駆けつけるのだ。
とはいえ、日頃から上等な軍馬を維持するのはかなり大変だ。
馬の世話をする人間を雇わないと、冒険中の維持ができない。
冒険に連れて行くにしても、洞窟に潜っている間はどうするというのだ。
そこらに繋いでいては、ゴブリンにでも食われてしまうのがオチだ。
ゆえに、使い魔として馬を用意する。
これなら世話にかかる手間を減らせるし、頭も良く出来るし、何なら直接操ることで、呪文を使った戦闘力も発揮できる。
今回作ったのは、下水道遺跡から回収した粘液体の細胞を培養したものに、軍馬の精液(お金を払って手に入れた)、古竜の肉片、そして半竜娘の髪の毛を調合したものだ。
半竜娘には無断だが、まあ、説明すれば事後承諾してくれるだろうという気はする。
そして、日頃の研鑽のおかげか、狙い通りに馬型の使い魔を作り出すことができたのは良いのだが。
「……なんか、ワルモノ、みたい ね?」
槍使いの相棒は、こう、“王子様”的な路線を志向しているのだが……。
この子は、なんだか、古竜の影響か、真っ黒で、凶悪な面構えで。
目は温厚というより猛り狂いと冷酷の両面を宿しており(こっちは半竜娘の影響だろうか)。
驚くほどに大きな身体をしており、威圧感がすさまじい。
これじゃあ、まるで魔王だの覇王だのの愛馬だ。
「やっぱり、白馬、のほうが、いい わ よね?」
デートにも、白馬に乗って遠乗り、というのは乙女のあこがれであるし。
戦場や冒険に連れていくならこれで良いのだろうが、なんというか、英雄譚っぽくはない。
いや、英雄譚ではあるのだろうが、光と歓声ではなく、血と叫喚にあふれてる方の英雄譚だろう。
「でも、出来はよさそう、なのよ ね」
見た目については改良の余地があるとして。
作ったからには、このスペックについて、どの程度を発揮するのか、試運転は絶対に必要だろう。
ないとは思うが、途中で粘液体に逆戻りした上に、騎手を食ったりなどしてはシャレにならない。
しかし、自分で試運転をやるのは、ちょっと大変そうだ。
エンジニアと、テストパイロットは、別であるのが普通だし。
何より、魔女が乗るには、この竜馬は大きすぎる。
さて、どうしたものか。と考えていた時に、半竜娘が帰ってきた。
「大家殿! ただいまなのじゃ! 早速で悪いが急ぎでのう、
なんてタイミングのいいことだろうか!
このまま試運転を任せてしまおう!
「そ ね。この子、使い魔なの、よ。乗って、みる?」
●〇●〇●○●
2.人喰鬼兄弟
「は? 魔神王様が討ち取られた??」
「そうだ、一の兄者、魔神王様が討ち取られたのだ。さらにはその時、城に詰めておった魔神将の方々も粗方一緒に討ち取られておる。兄者に軍を預けたお方もな」
「待て、待て、待て。いや、他ならぬお前が言うのだから事実なのだろうが、にわかには信じられん。いったい何がどうすればそうなる」
「……勇者だ」
「……人族の暗殺者による斬首戦術か。しかしそうは言っても信じがたい。そのうえ、諸将が軍議のために集まったところをやられるとは、諸将の軍も詰めておったのだろうに」
「忌々しいが、運が悪かった、としか。どうも、奴ら、勘働きが異常に良いようだ。
「
「託宣を頻繁に受けているのかも知れん」
「……まあ良い。であればやはり、爺ぃも貴様も、あの半竜娘=サンとの戦いで失うわけにはいかなかった」
「……だが、次は決着をつける」
「ああ、そうしろ。しかし、それは氏族の大事が終わってからだ」
「わきまえているさ! もともとはそのために呼びに来たのだ。いまは、二の兄者が、生き残りをまとめて故郷に向かっておる」
「……うちの氏族も、勇者にやられたのか」
「そうだ、目も眩む
「応報せねばならんな」
「そうだ、応報せねばならん!」
「……だがまずは、戻って氏族を掌握せねばならんか。手筈は?」
「転移の巻物を預かっておる。ジィも一晩寝れば恢復しよう」
「いや、今動く。爺ぃを休めるにしても、氏族領域へ戻ってからだ。消耗していても出来る仕事はあろう」
「そうか、そうだな。今は、立て直しのために、休ませておく余裕もない、か。……自分が不甲斐ない! あのようなところで、
「そう思うなら研鑽を積め。前向きにとらえれば、これからの乱世は経験を積む良い機会となろう。混乱しておる他の氏族を、魔神王様の名によらずに平定していくには、貴様の力も必要だ」
「兄者……! おうとも! 我ら三兄弟が力合わせれば、このような苦難、何ほどのことがあろうかよ!」
「その意気だ。さあ、もう行くぞ。爺ぃも叩き起こせ」
「ああ!」
「そういえば、ここのゴブリンの群れはどうする。貴様の連れてきた小鬼英雄はどこに行ったか」
「知らん。まあ、良かろう。アレの他にも、周りの巣を糾合させるために、何匹か似たような強さのを連れてきておったし。いまは散らせて別行動させておったところだが」
「ふうむ。ならば良いか。まあ、あとは野となれ山となれよ。さっさと転移の巻物で戻るぞ」
●〇●〇●○●
3.ゴブリンチャンピオン
小鬼英雄は、意気揚々と森を進んでいた。
あの森人の雌を捕らえるつもりでいるのだ。
惰弱なオーガは引き下がったが、それは己が諦める理由にはならない。
すでに、あの森人を手に入れるのは、小鬼英雄の中では確定事項となっていた。
だというのに、周りは全く使えぬ輩ばかりだ。
歴戦を潜り抜けた己のような、
「GOBRRR!?」
ほら今も、また一匹やられた。
腹の立つやつらだ!!
殺される弱者も! 弓矢を放つ卑怯者の森人も!!
こちらが近づく前に、矢の雨にさらされている!
木に隠れても、今度は頭上から、矢が落ちてくる!
腹の立つことこの上ない!
そうこうしている内に、獲物が逃げるぞ!!
小鬼英雄が、配下に檄を飛ばそうとしたとき、ふと、足元が揺れた。
何事かと見回せば……。
己よりも、オーガよりも、さらに巨大な人型が、木々の間を抜けて、迫ってきていた。*1*2
一瞬で、そいつが距離を詰めてくる。
「GGGRRRIIN?」
「イイイィィィィヤアアアアアァァァアアアアア!!!」
身を屈めて、地を擦るようなタックル。
自分より手前にいた手下どもが、まさしく鎧袖一触、原形も残さずバラバラに吹き飛んでいく!
使えないやつらめ!! 無能め!!
だが、来ているものが何か分かった、雌だ!
この俺が、雌の攻撃にやられる訳がない!!
受け止めて組み伏して、そして…………
そこまで考えたところで、小鬼英雄の意識は途切れた。
それを考える脳髄ごと、辺りに破片になって散らばったからだ。
●〇●〇●○●
4.竜馬の上にて
夕暮れの黄昏の中、辺境の街を出立した半竜娘と森人探検家は、竜馬に乗って走っていた。
ゴブリンスレイヤーたちに、オーガ出没の情報を伝えに行くという、伝令依頼を受けたのだ。
「速いわねー、この子!」
「なんじゃて!?!?」
「この子!!! 速いわね!!! って!!! 言ったの!!!」
「ああ!! そうであろう!!!」
急ぎということで、街を出る前に、半竜娘は【分身】を作り出し、【加速】と【追風】の補助呪文を、竜馬に掛けさせている。
また、長距離移動に備えて、半竜娘の体力強化と技量強化の指輪を貸し出してある。半竜娘は普段は魂魄強化と知力強化の方を付けているから問題ないし、魔女の家に置いている戦利品在庫にはまだ予備があったはずだ。
なお、分身までは、竜馬には乗れないので、ギルドに置いてきて、久し振りに、羽衣を纏った陽気で可憐な水の自由精霊を呼び出させている。*3
冒険者たちも、久し振りの【命水】の振る舞いに喜んでくれていると良いのだが。
猛スピードで走る竜馬の上では、轟々と鳴る風の音で会話もままならない。
「……Sylph,Please turn off the noise. ……これで聞こえるかしら?」
「ん? おお、風の音が消えたのう! なんじゃこれは、その呪文のおかげか?」
「精霊にお願いしただけよ。っていうか! 貴女は精霊へのお願いの仕方が、雑なのよ!!」
森人探検家は、猛スピードで走る竜馬の上で、半竜娘の背にしがみつきながら会話する。
その言に、半竜娘は頬を掻いた。
「あー、それなあ。
「あー、どおりで」
「まだひと月も経っとらん」
「は? ひと月!?」
半竜娘にとっては、濃厚なひと月だったろうが、森人の感覚からすれば、ひと月など、つい昨日のことのようなものだ。
「はー、訂正するわ、ひと月でそれなら大したもんよ」
「とはいえ、そのままというわけにもいかんじゃろう。お主には、精霊との付き合いについて、是非ともご助言頂きたく」
「ふぅん、才能に驕っててもおかしくないのに、どうも素直ねえ」
意外そうに目を瞬かせる森人探検家に、半竜娘は笑ってみせる。
「かかかっ、驕って上手になれた者などこれまでどこにも存在しないさのう。謙虚で素直なことが、上達の近道じゃと教わっておる」
「へえ、まあその通りよね。うちの
森人探検家は、一時期師事していた、「忍び」「先生」と呼ばれる圃人の事を思い浮かべる。
先生は、果たしてまだ御存命か、存命なら矢弾を十は出会い頭に撃ち込んでやるべきだろうか、いや、された所業を思い返すに、それでも足りぬ……。
不穏な考えが伝わったのか、竜馬が森人探検家に心配そうに視線を向けた。
「ふふっ、この子、可愛いわね」
「そう言われると面映ゆいのう」
森人探検家の憧れた“緑衣の勇者”の傍らには、いつも全てを蹴散らす愛馬がいたのだというからか、森人探検家も自分の相棒としての乗騎というのに憧れがあるのだろう。
森人探検家は、馬を褒められたのを自分のことのように照れる半竜娘に違和感を覚えたが、特に気にせず、続けて提案した。
「これからは私がお世話してあげようか?」
「いや、それは無用じゃ」
「何よ、独り占めー?」
ニヤニヤ笑う森人探検家の笑顔が凍るまで、あと2秒。
「独り占めも何も、これは今日までの寿命じゃから、このあと捌いて食おうと思うのじゃ」
●〇●〇●○●
5.ゴブリンスレイヤー一党と合流
「なんでそんなひどいことするのよー! 鬼! 魔神! 冷血!! こんなに可愛いのに!」
「鬼でも魔神でもないし、
「そうだけどー! そうだけどー!!」
野営をするゴブリンスレイヤー、女神官、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶らの一党のところにやってきたのは、喚く森人を後ろに乗せた蜥蜴人ハーフが駆る鱗ある馬だった。
「何これ、どういう状況?」とあきれ気味の妖精弓手。
「さあ……」困り顔は女神官だ。
時間を少し巻き戻す。
猛スピードでやってきたそれに最初に気づいたのは、妖精弓手だった。
一党の中で最も耳の良い彼女は、これは新手のモンスターの襲撃ではないかと思った。
その蹄の音からするに、脚の良い軍馬の三倍は速い。
それに、やがて闇の中から見えてきたのは、凶悪な面構えの、巨大な馬型のモンスターだったからだ。
乗っているのも、これまた大きな女だった。蜥蜴人の女だ。これも判断に迷う。蜥蜴人は、混沌側にもいるからだ。
ただまだ、単に早馬で急ぎの伝令か何かでも持っていっている善良な冒険者、という線もある。
妖精弓手は、念のため一党に注意喚起した。
「なんかでっかい馬型のが来るわ」
「ゴブリンか?」ゴブリンスレイヤーはゴブリンにしか興味がない。
「ちがうわよオルクボルグ、乗ってるのは蜥蜴人のハーフ女」妖精弓手がそう言うと、
「ゴブリンではないのか」ゴブリンスレイヤーは興味を失ったようだ。
「鱗の 心当たりあるかのう?」鉱人道士が蜥蜴僧侶に水を向けるが、
「いや、拙僧には特には……。しかし、はて、蜥蜴人のハーフ……いやまさか」蜥蜴僧侶は目をぐるりと回すだけだった。
「あと、あー、後ろに森人も乗ってるみたい。でも私も知らない子よ」近づいてきたから、妖精弓手は同乗者にも気づいたようだ。
蜥蜴人ハーフの女と聞いて、女神官は目を瞬かせた。
「ひょっとすると……」
「なぁに、知り合い?」
「ええ、多分ですけど。後ろの森人の方は分かりませんが、蜥蜴人ハーフの方は、半竜の術士で、私の同期の冒険者じゃないかと」
女神官のその言葉に、一党の緊張が多少解けた。
「ほう、巫女殿の同期というと、白磁等級でしょうかや」蜥蜴僧侶が聞けば、
「いえ、確かついこの間、黒曜に上がったとか」女神官が最近話題の同期についての情報を答えた。
「ほう! そりゃまた優秀じゃの!」鉱人道士が感嘆した声を上げた。
女神官の同期ならば、登録してひと月程度か。
それなのに黒曜等級ということは、出世頭ということになるだろう。
「ああ、確かに腕が良い。ゴブリンもよく殺す」ゴブリンスレイヤーが補足すれば、
「オルクボルグは
「あはは……」女神官は、色々と云いたいことがあろうに、苦笑にとどめた。
そうしている間に、暫定:半竜娘が駆る馬型の何かは、彼ら一党のところまでやってきていた。
てっきりそのまま通り過ぎるかと思ったが、あに
「じゃからな、この竜馬は、そもそも物を食う機能がないのじゃよ。腹の中の栄養を使い果たしたら終いじゃし、もう既に栄養はあと1日分も無いんじゃて。飢えて死なせるより、ここで馳走に饗すべきじゃて」蜥蜴人ハーフが諭すように言うが、
「いずれ死ぬにしても、殺すことはないでしょうって言ってるの!」後ろに乗っていた森人は聞く耳持っていないようだ。
というか、この二人が同じ一党なら、これは一党の分裂の危機なのでは?
「じゃあ、
「む、確かにその通りじゃな。分身を通じて聞かせてみよう」半竜娘も一理を認め、辺境の街に残してきた分身経由で、竜馬の処遇を確認することに。
「…………ふむ。大家殿は連れて帰って来いと」分身から情報を吸い上げた半竜娘が答えると、
「ほらほら! 殺しちゃだめなんじゃない! きっと寿命を延ばす方法があるのよ!!」勝ち誇ったかのような森人探検家。
「いや、貴重なサンプルじゃから解剖するそうじゃ」しかしそれも半竜娘がこのような無慈悲な補足をするまでであった。
「ぴえええん! これだから魔術師連中は!」森人探検家は泣いて竜馬に縋り付く。
「まあそういう訳じゃから。それにまた作ってもらえばよかろうよ」半竜娘は実利的観点からそう言うが、
「これだから魔術師連中は!!」そういう問題ではないと森人探検家が吠えた。
「あの~」おずおずと女神官が、言い争う半竜娘と森人探検家に話し掛ける。「何か私たちに御用があったのでは?」
…………。
……。
「
「ふうむ、ただのゴブリン退治ではなかったか。まあ、水の街からの途上でも魔神が襲って来おったものな」鉱人道士は髭をなでながら思案げだ。
「恐らく、奴らの口振りからするにもう撤退しとるじゃろうがな。それでもゴブリンはわんさかと残っておろうし、万一にでも将軍級のオーガ2体と
「うーっ、竜馬の中身が貴女なんだったら、先に言いなさいよね! 滑稽をさらしちゃったわ」ぐちぐち言ってるのは、森人探検家で、縋り付いて助命嘆願していた当の竜馬に意識を宿らせていたのが、実は半竜娘だったと知って、羞恥に悶えているのだ。可哀想だと同情した“かわいいおうまさん”は、そもそも居なかったのだ。
既に竜馬は、この場に再作成された半竜娘の【分身】が【加速】をかけ直して連れて帰っていった。もちろん、ゴブリンスレイヤー一党から、伝令完了の印を貰って。
「そのオーなんとかいうのはゴブリンか?」そう聞いてくるのはゴブリンスレイヤーだ。彼は本当に、ゴブリン以外に興味がない。
「ゴブリンではなく巨人の類じゃ。まあ、行く先の
「そうか、ならばいい。ゴブリンは皆殺しだ」ゴブリンスレイヤーは淡々と、しかしやる気を衰えさせずに言った。
「それで相談なんじゃが、この依頼というか遺跡探索に、
「私はもともとあの遺跡の探検をするために辺境にやってきたのよ。爆破されたり燃やされたりする前に、探検しておきたいわ」補足する森人探検家。「地図も持ってるから、あとで見せるわ」
「オーガとの因縁は、こちらが先じゃしのう。あれらがどこに行ったかも気になる」さらに付け加える半竜娘。
「よぉございましょうよ」蜥蜴僧侶は若人を目を細めて見た。「因業には自らが決着をつけるべきものでしょう」
「儂も異存ないわい」鉱人道士も同意し、
「手が増えるのは悪くないわね」妖精弓手も同じく、
「あの、私たちが中にいるときに遺跡を壊したりは、しないでくださいよ?」女神官は、破壊魔な半竜娘を知っているから、そこだけ心配そうだ。
「好きにしろ」ゴブリンスレイヤーは無愛想に総括した。「ゴブリンを逃がさないならそれでいい」
「ならば決まりじゃ、よろしく頼む」そういうことで、半竜娘たちも冒険に同道することになった。「遺跡では別行動すると思うがの」あくまで探索優先としたいようだ。「もちろん、ゴブリンは見つけ次第殺すのじゃ」
「ならばそれで良い」
そういうことになり、もう遅いからこの日はこのまま野営することとなった。
休む際には、半竜娘を中心に【狩場】の呪文を唱えておくのも忘れない。また、騒がせた詫びに、水蜥蜴の精霊ミズチを呼び出し、疲労を癒やす【命水】を振る舞いもした。
●〇●〇●○●
6.野営の楽しみ
半竜娘と森人探検家を加えて、ゴブリンスレイヤー一党は、焚き火を囲んでいる。
彼女らが合流してから、さらに1日は経った、遠出2日目のことだった。
一行は、遺跡まで後一歩というところまで来ている。
どうも、森人探検家が【工作】ででっち上げた
「あの、歩かないのはなんだか申し訳なく……」女神官は恐縮していたが、問題はない。
「ほっほう、こりゃあラクチンだわいの!」そして一夜明けて再作成された半竜娘の【分身】の方の背負子に乗せられているのは、鉱人道士だ。
スタミナに難のある女神官と、そもそも鈍足の鉱人道士を背負子に乗せて【追風】をかける。
これが一番速いと思います。
追い風に吹かれて、一党の歩みは常の1.5倍となった。
旅程は順調だった。
そして、遺跡突入前の最後の野営となったので、持ち寄った嗜好品を出し合う流れになったのだ。
この時間は、冒険の最中の楽しみでもある。
昔は迷宮の中では、一回の冒険、一度の休憩でガラッと関係性が変わることもザラだったとか。*4
「そういえば、今更ですが、そちらのお嬢さんはどちらの部族の出で?」蜥蜴僧侶が半竜娘に問いかける。
「
「なんと! 同郷であったか!」蜥蜴僧侶は尾で地面をタシンと一振り。
「……そういえば母者から、
「
「
「
「
「なんか感動の再会っぽいけどさ、
「いやあ、これはお恥ずかしいところを」蜥蜴僧侶が頭を掻いた。
「えっと、半竜娘さんと僧侶さんは、ご親戚か何かなんですか?」女神官がおずおずと聞いた。
「どうも
「へー、こんな偶然あるものなのねえー」森人探検家は、半竜娘が呼び出した水精霊のミズチと戯れながら感心している。面相がかなり異なるのに親戚というのも面白く感じているようだ。「それを言うなら、私もまさか
「ま、積もる話は後でもできましょうや。今はそれより食事でありましょう」蜥蜴僧侶の言うことに、もっともだと皆で頷き、めいめいに持ち寄ったものを披露しあう。
半竜娘はそういうとっておきは持ってきていなかったので、水精霊のミズチから【命水】を振る舞ってもらい、替わりとした。この小さな水蜥蜴の精霊も、
蜥蜴僧侶が密林の沼の獣の干し肉を、鉱人道士が火の酒を、妖精弓手が秘伝の焼き菓子を、女神官は調理の手際で温かいスープを、森人探検家は近くの森で捕まえてきた丸々した芋虫を。
そしてゴブリンスレイヤーは、世話になっている下宿の牧場から貰ったチーズを。
「これは……?」半竜娘が不思議そうに黄色い塊を見る。ちなみに分身は消してある。
「街で暮らしてるのに食べたことないのー?」森人探検家が半竜娘に絡む。火の酒で酔っているようだ。
「いろいろ忙しかったんじゃよ」言い訳をする半竜娘。まあ、これまで、上手く巡り会う目が出なかったということだろう。そういうこともある。
女神官が串を出し、鉱人道士が上手い火加減で焼いていく。
とろりと溶けたチーズ。
蜥蜴僧侶と半竜娘は、血のつながりを感じさせる似通った動作で口に入れた。
そして目を見開き、同時に快哉を叫んだ。
「「甘露!!」」
タシーン! と尾が地面を打つ音も重なった。
旅の夜は穏やかに更けていく。
半竜娘ちゃんの邂逅:家族を生かしつつ、「甘露!」と叫ばせたかっただけの話。
オーガの故郷の状況は、三国志とか信長の野望みたいな戦略ゲームを勝手にイメージ。
蜥蜴人が鎌倉武士とか薩摩隼人なら、当SSのオーガは少し時代が下って室町~戦国の武士っぽいイメージ。