ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
気象兵器・半竜娘! 爆誕!
1.
明け方。
春を
「すごかったのじゃ……」
「そっちもか……。こっちもすごかった……」
語彙力が死滅しておる……。
「いやはや、これもまた一つの強さであるのじゃなあ……世の中はまっこと広いものじゃ」
「夢の中だと、その何倍もすげえって話だぜ」
「たしか夢魔は、夢の世界の方が本体で、
百戦錬磨の夢魔の女を相手に、成人して間もない生娘や女体化初日の娘が太刀打ちできるわけもなく。
彼女らは始終、翻弄されるままであった。
とはいえ、森人探検家経由で娼館にお願いされていたのは、技量や知識の向上、女性としての心構えの伝授も含まれる。
睦言ついでに伝えられる口伝で、半竜娘たちの閨房の術に関する知識も深まったことは間違いない。
しかも「どうやればイかせられるか」の全種族対応ハウツー、そしてあらゆる性癖バリエーションにすら対応しているという至れり尽くせりぶりだ。もちろん、一夜ではその触りしか伝授されてはいないが。
そりゃあ経験点も獲得できますわな。
「ふむ! すっきりしたし、また来たくなったら来るとするのじゃ! 何事も経験してみるもんじゃなー」
「オイラは、ちょっとどうしようかな……。昇りつめたまま帰って来れなくなってちょっと怖かったし」
でもどうせまた来るんでしょ?
「んー、そういえばお主……」
「な、なんだ?」
じぃっと半竜娘がTS圃人斥候を見つめる。
整った顔で見つめられると、TS圃人斥候もドキドキしてしまう。
「おお! 化粧しておるのじゃな! よきかなよきかな!」
「……まあ、それもコミで教えてもらうよう手配されてたみたいだからな」
手先が器用だから、TS圃人斥候の化粧の腕はみるみる上達したのだとか。
もちろん“これが……アタシ……?”という定番イベントも消化して抜かりない。
ちょっとした劇場のメイク係くらいはできるだろうという評価ももらったそうだ。
「
「一緒にすんなって。そっちは化粧は教えてもらわなかったのかよ」
「あと4年後なら教えてくれるんじゃと」
「ああ、まだ若いんだっけか」
まじまじと半竜娘の肌を見ると、確かに化粧は要らなさそうだ。
胸元(デコルテ)もきれいなものだし、谷間も深く全体の形も良い。
あんまり見てると、思わず生唾を飲みそうになるので、さっと目を逸らした。
「んー? いま見ておったかや?」
「見てねーし」
「見ておったじゃろ?」
「見てねー」
「けけけ、
圃人の背丈に合わせるように大きくかがむ半竜娘。
深い胸の谷間ができあがる。
覚えた知識を早速活用しているのだろう。
「リーダーはどーせまだ力加減できねーんだろ。鱗に爪に……痛いのヤだぜ、オイラは」
「おんやあ、案外脈ありかのう? 力加減できたら考えると言っとるように聞こえるぞ」
「うっせうっせ、ばーか」
<『1.閨房の戦いを終えて』 了>
○●○●○●○●○
2.馬車を注文しよう!
冒険者ギルドにて、半竜娘、森人探検家、TS圃人斥候の3人は、朝食を食べがてら会議していた。
「で、これからどーすんだよ?」
TS圃人斥候が、小柄な身体に似合わぬ量の朝食を並べて問いかける。
「どーするって、ゴブリンの死体の片付けとか、いろいろあるでしょ」
「特にお主は、最低でも一週間はゴブリン退治漬けじゃよ?」
「マジでか!?」
森人探検家はガッツリ肉を食べながら、半竜娘はチーズを食べながら、それに答えた。
TS圃人斥候はやたらと驚いてるが、彼女がかつてゴブリン退治は楽な依頼とか言ってたのは、半竜娘たちには筒抜けなので、こうなるのは残当だ。
簡単な仕事なんだろ? じゃあやってみろよ、というわけ。
「って、そうじゃなくて、一党の方針だよ!」
一党の方針といっても……。
「依頼を受ける以外に何か決めることある?」
冒険者は依頼を受ける。
そうと相場が決まっている。
ほかに何かあるだろうか。
「長期的な展望ってやつだよ、そーいうのはエルフの方が得意だろ!? あんたたち何のために冒険者になったんだ? 目標とかそーいうのあるだろ!」
はあ、はあ、とTS圃人斥候が肩で息をする。
「
甘露甘露とチーズを食べる手を一旦置いて、半竜娘は、奇怪な手つきで合掌した。
「わたしはあの“緑衣の勇者”に憧れて遺跡巡りをしてるわ。そうしてるうちに古代の遺物を見つけること自体が楽しくなってきちゃってるけど。ああ、ゴブリンは見かけたら必ず殺すわ」
むしゃむしゃと骨付き肉を齧る森人探検家。
森人ではあるが、肉食にハマっているのだ。ある遺跡では蛇も蒲焼きにして食べていた。
「ゴブリン、ゴブリンって……ゴブリンスレイヤーかよ」
「あいつら害獣じゃないの、殺さない理由はないわ。あんたも女になったんだからすぐに気持ちがわかるようになるわよ」
「それでお主は? 何を思って冒険者に?」
森人探検家と半竜娘が、逆にTS圃人斥候に問い返した。
「オイラは……アタシは、成り上がって金稼ぐためだよ」
「はあ」
「夢がないわねえ」
「冒険者なんてそんなもんだろうがよ! っていうか、十分な夢だっつの! やがては自分の庄を拓くんだ!」
「あ、それなら夢っぽいわね」
うがーっとTS圃人斥候が吠えて、朝食をむしゃむしゃと口に詰めていく。
「それで、長期展望じゃったかの? まあ先ずは銀等級までのし上がることじゃろ」
「その途中で、いろんな情報を集めて、遺跡とか混沌勢力から魔法の道具だとかを奪ったりしたり」
「強敵の噂があれば突撃したりじゃな」
お金の話題がでないのは、それは二の次だからだ。
もちろん、最低限は必要だが。
それに、財宝については、竜を族滅した半竜娘には潤沢な個人資産があるのだから、いざとなればどうとでもなる。
「そういう依頼が無いあいだは、それぞれ適当にじゃない?」
「じゃな。あとは、手助けが必要なら遠慮なくお互い頼ること、じゃな」
そうでないと一党を組んだ甲斐がないというもの。
言うなれば運命共同体
互いに頼り 互いに庇い合い 互いに助け合う
一人が三人の為に 三人が一人の為に
だからこそ辺境で生きられる
一党は姉妹
一党は家族
嘘じゃないよ?
「これ以上仲間を増やしたりはしないのか?」
「どーかしらね、今の構成はそこそこ良いでしょ。あとは専業の神官入れるとか?」
「そうすると前衛が足りんじゃろ。まあ、専業の前衛は今も足りておらんが。その辺は良い者がおったらでよかろ」
そうそう、出会いは時の運。
宿命と偶然のお導き、というものだ。
「遠征とかはしないのか?」
「するでしょ、遺跡がこのあたりのものばかりとは限らないもの。よその祭りを見に行ったりとかもアリよね」
「魔女殿と一緒に、
確かに半竜娘が乗れるような馬は、どれだけ値が張るのかわからないし、そんな馬が果たしているのかもわからない。
馬は軍需物資でもあるから、良い馬は先ずは軍や貴族に回される。
そもそも良い馬は、何かしらの伝手がないと手には入らない。
それに遺跡まで連れて行った先や、不在時の世話も考えると、専用の厩番を雇う必要すらあるかも知れない。
「使い魔か……それなら世話も楽なのか?」
「まあ
「今度はこないだみたいに三日の命とかにはならないでしょうね?」
「その辺は長生きさせても生体が破綻しないように改良中じゃ」
その関係で必要な素材を取りに行くこともあるだろうとのこと。
「なら、早めに馬車だとかも手配した方が良くないか?」
「確かにそうね。出来上がりまでどのくらいかかるか分からないし。わたしはスピード出しても揺れないのがいいわ」
「強いやつにするのじゃ! 五倍の速さで走らせても壊れないやつ!」
【
そうなれば、遠くにも気軽に行けるようになるだろう。
「あと、装甲があって、それに隠れて矢を撃てたり」
「そのまま敵を轢いたり跳ねたりできる方がいいのう!」
「それはもう
しかし、冒険の
魔神の軍勢のただなかを、竜に追われながら駆け抜けるようなことがないとは言い切れない。
…………。
……。
そんなこんなで半竜娘一党は、馬車屋にやってきて、特注することにしたのだ。
揺れず、頑丈で、スピードが出せるもの……そんなものが……。
あった!
古代の遺跡で発掘された移動機械の構造を参考にした、最新式の『独立懸架式突撃装甲馬車』だ!
シャーシにミスリルを少量使っているとかなんとか。
ホイールには弾力があって強靭な魔獣の革を使うとか。
その分値段は張るが、大丈夫、金ならある!
足りなきゃ稼ぐ!
それが冒険者だ!
「
「いやいや、そうはいかないわよ。交易神の信徒として、これ以上の施しは心苦しいわ」
「そうだぞ、それにこの程度なら十分稼げる範疇だろ」
もう既に金貨何千枚分にも相当する装備を借りているのだ。
それに半竜娘には、あるだけのお金を使い切ってしまう悪癖があるので、こういった機会に修正していきたいところ。
「貸しにして身体で返してくれても良いのじゃが?」
「……うーん、痛くしない?」
「いやいやいや、前向きに考え込むなよ! 冗談でもそーいうのって良くないと思いますぜ!!」
半竜娘、色を知る
まあ実際、金の貸し借りと色恋は、パーティー崩壊の引き鉄になりうるので、余り良くないのだ。
「まあ出来上がりは先だし、適当に依頼をこなしましょう」
「そうじゃなー、昨日のゴブリンの後片付けもあるしのー」
「げー」
不服そうな返事をしたTS圃人斥候がバックレないように、半竜娘が首根っこを掴んで吊り上げてしまう。
「ほれいくのじゃぞー」
「やめれーはなせー」
「終わったらゴブリン退治耐久だからね」
「覚悟するのじゃ」
「やめれー!! はなせー!!」
<『2.馬車を注文しよう!』 了>
○●○●○●○●○
3.魔女さんと
牧場防衛戦から一週間。
夏至もそろそろ近づいてきて、地母神の寺院では、早摘みの葡萄を酒にするための『酒の日』の祭りの準備が進んでいるころ。
半竜娘は、久し振りの休日を、下宿している魔女の家で過ごすことにした。
まあ、休日とはいうものの、今日は研究に費やすつもりなのだが。
ちなみにこの一週間は、TS圃人斥候の督戦のために、同じゴブリン退治の依頼を受けていた。一党の白磁の新入りのフォローのために、鋼鉄等級の頭目がついて行くのは、それほど不自然ではない。
牧場防衛戦の残党は装備も良いし、狼騎兵の知識や、合戦の知識も身につけている可能性がある。
“渡り”にしてしまうと、周辺のゴブリンが強化される恐れが高い。
皆殺しにしてしまうのが一番ということで、最低限の休養だけ取って、日に何件もの依頼を受けてゴブリンを殺しまくってきたのだ。
ゴブリンスレイヤーだってそうする、だから半竜娘もそうした。
「あ ら、おかえり なさ、い ね」
「ただいまなのじゃ~」
夜明け(ゴブリンにとっての夕方)前にゴブリン退治に出かけて、TS圃人斥候と巣を一つ潰して帰ってきたところ。
魔女は既に文献やこれまでの実験のノートを広げて研究を始めていた。
妖艶に香り煙草の煙を吐き出して、魔女は半竜娘の方へ視線を向けた。
「さ あ、はじめま しょ?」
「えーと、何が問題になっとるんじゃったか」
「そ ね。つなぎ、の制御が 必要、ということ、かしら ね?」
魔女の解説によると、地下遺跡で見つけた万能細胞をつなぎにして、異なる動物の特徴を混ぜることはうまく行くが、ある程度長く生かすと、いろいろな不具合が出てくるのだとか。
これは恐らく、万能細胞が強すぎることによるのではないか、とのこと。
長く生きている内に、食べたものの細胞まで取り込んで、悪性の(=予期しない)変異を起こすようなのだ。
「であれば、変異を終わらせた段階で、万能細胞の性質を殺すか、眠らせねばならんのじゃな」
「そ ね。不変や永続化の呪文で、固定化できないか、やってみた けど……」
「すると食べても栄養にならずに飢えて死んだり、擬似石化状態になって死ぬ、と」
万能細胞は便利だが、使い捨てにしないタイプの使い魔を造るには、まだまだ制御が難しいようだ。
「いっそ、キマイラで作った方が いいかしら ね」
「確かにある程度は枯れた技術じゃし、その方が良かろうか……」
「まあ、キマイラの 研究から、突破口が見つかるかも、しれないし、ね?」
そういえば、邪悪な魔術師が研究していたキマイラだかなんだかが解き放たれたから駆除しろとかいう依頼があったような……?
<『3.魔女さんと』 了>
突っ込み役がいると掛け合いが書きやすいなあ。
次はサンプルシナリオ「峠の魔獣」ベースでわちゃわちゃやる感じの予定(しかし予定は未定)。