ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
ゴブスレさん「ゴブリンをキメラにして強化するとか害悪以外の何物でもない。設備ごと埋まれ」
半竜娘「安全確認ーー!!」
はいどーも! 命からがら崖崩れから逃げることができました。
さすがゴブスレさん! 容赦ねーぜ!
そこに痺れる憧れるゥ!!
なお、崖崩れ・土砂崩れに気付くのが遅れたとしても、因果点を3点積めば確定脱出が可能でしたので、半竜娘ちゃんたちは一応は死なないようにはなっていました。
峠を脅かしていたキマイラは討伐しましたし、キマイラ製作者の魔術師の持つ資料や機材も重要なものから順に回収できました。家主のガイドがあると略奪が捗りますね。
依頼も達成し、ついでに個人的に必要なものも手に入ったので、十分な成果です!
「……村に帰るのじゃ」
「そうね、疲れたわ」
「もう真っ暗だぜ。今から背負子を2つでっち上げるから、リーダーと分身で村娘を背負ってやってくれるか?」
「心得たのじゃ」
TS圃人斥候がパパっと【手仕事】技能で作った背負子に、助けた村娘と略奪した研究成果を載せて、村へと戻ります。
森は完全に闇の世界です(半竜娘と森人探検家は暗視できますが)。
幸いにも、帰り道で迷ったりすることもなく、狼に襲われたりもしませんでした。
村に戻ると、帰りを待っていた村人たちの歓声に迎えられます。
半竜娘ちゃんたち一党はみな器量良しですから、そのまま村に嫁に来ないかと誘われ……たりはしませんでした。このときはまだ。
やはり強い女は、強い男に比べると敬遠されがちなんでしょうかね。誘われても困りますが。異種族だからというのもあるでしょう。
ささやかながら、つい数時間まえに行商人が運んできた物資も使って宴を開こうということになりました。
物流問題は、畑が開墾途中で収量が安定しない開拓村では生死に直結します。大きな問題が片付いたため、村人の顔は明るいものです。
羊飼いと薬師の娘も無事に戻ってきましたし、この宴はその分の報酬代わりでもあるのかもしれませんね。
…………。
……。
宴が始まって暫くすると、山の方から、揺れる松明の炎が。
「あー! ゴブリンスレイヤーだぞ!」
「なにっ、帰ってきたのかや!」
「これはちょっとケジメに酒の一杯でも酌してもらわないとよねえ……」
なにせ知らなかったとはいえ、生き埋めにされかけましたからね。
「どうせ酌してくれるなら地母神の巫女どのが良いのじゃ!」
「おいリーダー! もう村の羊飼いさんと薬師さんがお酌してくれてるだろ!」
「それはそれ! これはこれ! じゃ!」
「欲張りねえ」
実際、半竜娘は両手に花状態です。
助けた村娘たちがお酌をしてくれていますからね。
でも多分、目の離せない妹くらいにしか思われてないぞ。今も苦笑してるし。
「あれ、半竜の……。みなさんもいらしてたんですね」
「ゴブリンか?」
お疲れ気味の女神官ちゃんが、フラフラとやってきました。
そら、(払暁から宵の口まで山の中でゴブリン退治に連れ回されてたら、15歳の後衛の女の子は)そう(なる)よ。
もちろんゴブスレさんも居ます。この「ゴブリンか?」は、「(お前たち一党も)ゴブリン(退治に来たの)か?」の「ゴブリンか?」ですね。
「キマイラ退治をしてきたところじゃよ! そのキマイラを作った魔術師の工房に押し入ったら、ゴブリンのキメラもおってな」
「そしたらいきなり崖が崩れてきてねえ~(怒)」
「いやあ、びっくりですよね! ところで、心当たりがありませんかぁ?(棒)」
ちょっと皮肉っぽく応対するくらいは許されるでしょう。
「あわわわわわ、す、すみません! すみません!」
「む。崖下にいたのか。巻き込んだなら、すまん」
「あー、やっぱりお主らか。そう素直に謝られると責める気も失せるわいの」
「そうか」
相変わらずの様子の小鬼殺しに苦笑が漏れます。
「ま、幸いにして、見てのとおりピンシャンしておる。詫びる気があるなら、一杯つきあってくれんかのう?」
「どーせ、依頼達成のサインだけ貰ってさっさと帰るつもりだったんでしょう?」
「いや、まだ戻る気はなかった。それに酒は止めておこう……」
「「「ゴブリンが出るかも知れないからな」」……む」
ゴブリンスレイヤーと半竜娘と森人探検家の声が揃いました。
小鬼殺しの言いそうなことはお見通しです。
「飲めないんなら、酌でもせーい」
「兜はそのままでいーわよ、ゴブリンが出るかも知れないものね?」
「え、ゴブリンスレイヤーさんに注いでもらえるんですか! 感激です!」(本音:あとで酒場でネタにしてやろーっと)
むむむ、と唸ったゴブリンスレイヤーは、諦めがついたのか、ズカズカ歩いて近づいてくると、半竜娘らの卓のそばに置かれた酒樽に突っ込まれた柄杓を持ちました。
「ジョッキを出せ」
「お、注いでくれるのかや?」
「言ったのはそっちだ」
「かかか! 良きかな!」
嬉々として半竜娘はジョッキをゴブリンスレイヤーの前に出しま……いや、引っ込めました。
「? どうした」
「いや、せめて籠手だけでも綺麗にしてやろうと思うての。それゴブリンの血やら何やらついとるじゃろ?」
「そうか、そうだな」
「そうじゃよ。『
契約精霊の気安さで、酒を触媒に水蜥蜴の精霊を呼び出すと、ゴブリンスレイヤーの籠手を洗わせます。
精霊の御業ですから、錆びたり黴びたりとは無縁の仕事ぶりです。
「ついでに【
疲労を癒やす精霊印の水が、ふわふわとゴブリンスレイヤーと女神官の口元へと飛んでいきました。
女神官はといえば、森人探検家とTS圃人斥候に捕まっているようです。アルハラ。
すまんが我慢して付き合ってやってくれ、代わりに【命水】で疲れを癒やしてあげるから。
「助かる」
「おうおう、感謝せーい。じゃあ一杯いただけるかの?」
「ああ」
冒険者は持ちつ持たれつ。
やらかしたりやらかされたり。
でもまあ、その後に酒を酌み交わして流してしまえれば、それで良しというものでしょう。
開拓村の夜はふけていきます。
…………。
……。
翌朝、半竜娘たち一党は、
あ、朝にまた【命水】を振る舞ったので、女神官ちゃんも結構疲労が癒えて、山狩りに付き合えるくらいには元気になってますよ。
半竜娘が巨大化して村への道を広げたり、崩れかけの堤を直したり、畑の中の大岩や切り株を引っこ抜いたり。
そうかと思えば森人探検家は、エルフ特有の技能で植物と意志疎通し、象のキマイラが荒らした森を整えたり。
TS圃人斥候は、街で覚えた料理を村の女衆に教えて喝采を浴びたり(圃人は1日に5回も食べるので、自然と料理上手になるのです)。途中から斥候要員としてゴブスレさんの手伝いに行かされたり。
というのも、護衛してきた行商人が、出発するのが翌日だというので、それを待っているわけです。
彼女らの働きぶりを見た村長から、
「村に嫁に来て……いや、嫁を付けるから村に残ってくれないか!」
などと頼まれる場面もありました。
そうね、半竜娘ちゃんたちの場合、嫁を付ける方が、まだ可能性ありそうよね。
まあ、残念ながら、冒険者稼業を続けるためにお断りしますが。
そんなこんなもありつつ、さらにその翌日。
いよいよ半竜娘たち一党は、行商人の馬車に乗って、辺境の街へと帰ります。
ゴブリンスレイヤーと女神官も同じ馬車です。疲れて眠ってる女神官ちゃんもかわいいなあ。
あとは、辺境の街に帰って、冒険者ギルドに報告するだけですね!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲
冒険者ギルドに依頼達成報告!
半竜娘・森人探検家・TS圃人斥候は、それぞれ経験点1000点、成長点3点を獲得!
鋼鉄等級の依頼としての報酬の他に、魔術師が貯め込んでいた財産を売却し、合計で一人当たり銀貨100枚を獲得!
『キマイラ作成の研究書』及び必要機材を獲得!
造られた生命を、破綻なく一個の生命体として定着させるコツを学んだ。
使い魔の作成技術が上がった!
さっそく魔女さんと一緒に2頭の竜馬を作成することにした。
竜馬たちが生まれるまで、あと10日……。
TS圃人斥候と半竜娘は、それぞれソロで10日連続でゴブリン退治をこなした。
TS圃人斥候は、経験点1500点、成長点3点を獲得!
半竜娘は、経験点250点、成長点1点獲得(ルーチン化により経験点減少)。
森人探検家は、遺跡の情報を集めつつ、あくせく働く
TS圃人斥候の冒険者レベルが5→6に上昇した!
TS圃人斥候は、追加の成長点を25点獲得した!
TS圃人斥候は、魔術師レベルを1→3に伸ばした。
TS圃人斥候は、冒険者技能【機先】(達人)、【速射】(初歩)、【鎧:軽鎧】(初歩)、一般技能【交渉:誘惑】(初歩)を習得。
TS圃人斥候は、黒曜等級に昇格した!
10日経ち、使い魔の竜馬が2頭でき上がった!
普段の世話は牧場に任せることにした(維持費+)。
牛飼娘「わ~、顔は怖いけど、この子たちお利口さんだね~」
『独立懸架式突撃装甲馬車』も納品された!
移動力120まで耐えられる優れものだ!
馬と馬車が揃い、自由に遠出できるようになった!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲
街はすっかり夏めいてきました。
冒険者ギルドの酒場で、半竜娘たちが久しぶりに全員集まって方針会議をしています。
「というわけで、あの名高い火吹き山の闘技場で腕試ししようと思うのじゃ! みんなで参加しようぞ!」
「というわけでじゃないが。オイラはパス! 見るだけだから良いんだぜ、そういうのは」
「私もパスー。ていうか、あの闘技場って、まだあったのね。もうここ何十年かずっとやってるんじゃない?」
これはとても自然な導入ですね(断言)。
ちなみに、全員【博識】判定に成功しているのと、目の前に闘技場の案内&闘士募集のチラシがあるので、この火吹き山の闘技場のことはみんなだいたい分かってます。
「やる気がないのぅ。まあ良いのじゃ! 闘技場で
「じゃあオイラはリーダーの勝ちに賭けることにするぜ! 儲けさせてくれよな~」
「まあ、せっかく馬車も用立てたんだし、遠征がてら旅行に行くのは賛成よ。途中で祭りやってるところとかも寄りましょうよ、どうせなら老舗の旅館に泊まったりしたいわ」
というわけで、半竜娘ちゃんたちは、おろしたての馬車で、火吹き山の闘技場へと向かうことにしました。
火吹き山の闘技場のことはご存知ではない?
そ ん な み な さ ま の た め に ~
軽く概要を解説します。
イメージ的には、ダンジョン経営もので、人間と半分共生しながらダンジョンポイントを集めてるようなそんな感じの施設だと思ってもらえれば。
あからさまに混沌めいた施設ですが、当の魔術師は集めた『死』の魔力で国家転覆を謀るでもなく大人しくしてますし、長年闘技場を運営して娯楽を提供するのみならず、賭けの胴元として築いた莫大な財産を背景に、各国の上層部や経済界との繋がりも強い有り様です。
さらに、火吹き山の闘技場の剣闘奴隷からの成り上がりは、冒険者よりもハイリスクハイリターンな出世ルートとして、荒くれ者に人気ですし、軍や騎士の中にも、そういった剣闘奴隷上がりは少なくありません。中には将軍にまでなった者も居るのだとか。
国も、そういった荒くれ者たちが勝手に吸い寄せられては、珠玉だけ残して擦り潰されていくこの闘技場を黙認する程度には、重宝しているのかもしれません。
非合法な方法で集められた奴隷であっても剣闘士として買い取るので、人狩りの横行を助長しているという評価もあります。当の闘技場運営は、『善意の第三者』*3だと言って
義憤に駆られた至高神の神官戦士の一部が摘発に踏み込むも、見せ物にされた上に返り討ちに遭うというのは、ある種の風物詩ですらあります(女の神官戦士ならなお盛り上がるとか)。
この闘技場のオーナーたる魔術師は、長年集めた魔力を収めたアイテムを持っていると噂されています。
それは、黒い蓮の描かれたカードだとも、いかにも強欲そうな顔が描かれた壺だとも言われていますが、真実は当の魔術師しか知りません。
そしてこれが重要なことですが、火吹き山の闘技場のチャンピオンには、栄誉とともに、オーナーの魔術師から褒賞が与えられるのです!
「いざ出発じゃー!」
「「おー!」」
半竜娘ちゃんが闘技場のチャンピオンになれると信じて……!
ではまた次回!
というわけで、『峠の魔獣』改変バージョンでした。小説のテンポ的にはこれでも良いのですが、セッションとしてやるなら、もう少し雑魚戦闘とかでリソース減らさせたりとか、何か消耗イベント入れた方が良いと思います……。
結局、煙玉で石化の魔眼の視界を遮るアイデアの出番は作れなかったのが心残り……。
次は「火吹き山の闘技場」……と見せかけて、その前に「水晶の森亭の殺人」を挟むかもです(経験点と成長点的に火吹き山までに後ひとつ冒険を挟みたいので)。