ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
温泉回!!!!
Q.超スピードの馬車、危なくない?
A.半竜娘「一応、他の馬車の邪魔にならんように、車体をフォーリングコントロールで重量軽減して半ば浮かせてから、道の脇を走るようにしておる。この時代、道でもその脇でも路面状況の悪さは大して変わらんしの。まあ、速度制限自体がまだないのじゃが」
PS 鹿は何度か轢きました(麒麟竜馬のおやつ)。
血塗られた惨劇が再び……被害者は、そして犯人は……? でもこれって推理モノじゃなくて『
夜半に女の悲鳴でたたき起こされた半竜娘一党(分身は寝かせたまま)。
彼女らが見たものとは……!?
「あ、ああ……」
「どうしたんじゃ、夜中に。……誰かと思えば、さっきの、あー、“ワイン商の娘”と呼べばいいかの」
「あ、ひ、人が、血、血まみれ、倒れて……!!」
「んー?」
宿の廊下にへたり込んでいたのは、蜂蜜色の髪の少女、
彼女の指さす先には、開いた個室のドア。
そして濃厚な血の匂い。
「なっ、おい、お主、大丈夫かの!?」
「リーダー、部屋から荷物ごと持ってきたわ! 応急処置道具は中よ」
「ああ、助かるのじゃ!」
個室の中は血まみれです。
血溜まりに倒れているのは、外套を纏った男。*1
その男ひとりだけのようです。
森人探検家から荷物を受け取ると、その男の容態を確認し、処置をしようとしますが……。*2
「ダメじゃな。息もない、脈もない、目に光りもない。というか、首の傷から血を流しすぎとる。奇跡を使っても手遅れじゃて」
「あーあ、森人パイセンが“過去の事件にあやかろう”とか言うからー」
「いやいや、わたしは関係ないでしょ!」
外套の男は既に死んでいました。
部屋の外には、どやどやと他の宿泊客や、宿の従業員が集まってきて、こちらを覗き込んでいます。
いつのまにか、既に部屋の中に踏み込んでいる者もいます。火付けの道具を売っていた行商人と、フードの占い師、天秤剣を持った神官の女の3人です。
「あー、見せ物ではないぞー」
半竜娘はそう言いながら、無念に見開かれた男の瞼を閉じて、寝台の毛布を被せてやると、
願わくば、やがてこの男の魂が地を巡らんことを。
「毛布の弁償はあとでするとして。んで、どうするかの」
「どうするもこうするも、街での人殺しは、衛兵の管轄だろ? なあ、宿の亭主さん! 衛兵に知らせに行ってくれないか!」
「は、はい!」
「これは毛布の弁償代じゃ。付け届けが必要ならそこから出していいから、早く来てもらってくれ~! ほれっ」
「は、はい~!」
半竜娘が投げたコイン入りの小袋を受け取って、宿の亭主が階下に降りていきます。
「おいおいリーダー、大盤振る舞い過ぎやしねーか?」
「冒険者なんて、ゴロツキの親戚程度の扱いなんじゃから、こういうときは下手したらそのまま拘束されてもおかしくないわい。金で片付くなら良かろうさ。護身じゃ、護身」
「リーダーは異種族で異教徒で魔術師だもんねえ。その点わたしは交易神の神官の端くれだし、何かあったら矢面に立つわ」
森人探検家は、令嬢剣士を介抱しています。
令嬢剣士は青い顔で震えています。
「大丈夫?」
「は、はい……あの、皆さん……ありがとうございます」
「気にすることはないわ。災難だったわね」
「いえ、ありがとう…ございます。皆さんは平気なのですか?」
「あれより酷いのは、まあ、よく見るもの。慣れちゃうわよ。ゴブリンの巣穴では特にね。腐ってないだけマシかも」
「そう、なのですね」
辻で処刑される罪人も見たことないような箱入り娘だったのでしょう。
随分とショックを受けています。
——チャリ、と、天秤剣の鎖の音が響きました。
「ん、だれじゃ。その天秤剣は至高神の……?」
「ええ、
しずしずと前に出たのは、神官服をまとって天秤剣を持った女。
確か、部屋の中を独自に検分していたうちの一人です。
至高神のサーキットライダーは、移動裁判所のようなものです。
法を司る至高神の神殿で判事としての修行を積んだ彼らは、人族領域を遍く法の光で照らすべく、実践のため辺境を遍歴するのです。
「ふむ。まあ、ここは専門家に預けるとしようかの」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、
「はいどうぞおやすみ……え?」
「寝るのじゃ。お休み」
そうね、リソース回復させないとね。
半竜娘はアクビしながら大部屋へと戻ります。*3
森人探検家やTS圃人斥候を含め、残された面々は、特に違和感を覚えませんでした。
「あー、リーダー、実は眠かったのか」
「まあ、もう出来ることないでしょうから寝てもいいんじゃない?」
「……何事もなけりゃなー」
「んー、どういうこと?」
「まあ、これはオイラの私見っすけども」
ふふーん、とTS圃人斥候が腰に手を当てて、得意げに語り始めます。
TS圃人斥候は【犯罪知識】技能を持ってるからな。*4
「まず気にすべきは、犯人はこいつを狙ってきたのかどうか。強盗なのか、恨みだかなんだかなのか……要は狙われたのがこいつだけなのか、オイラたちも危険なのかってことだな」
「無差別の可能性もあるってこと?」
「可能性だけならなー。荷物は無事みてーだが、部屋は……あちこちボロボロだな。これは物取りっつーより、暗殺者を迎え撃ったみてーな感じだぜ。しかも複数人、まあ3人に襲われた感じだな」
「そういえば、首筋の傷が死因なんだっけ。それも暗殺者ぽいわね。暗殺者なら、こいつだけが標的かしら」
念のため不寝番でも立てておくか、なんて相談をし始めたところで、事態は動きます。
「ぬあっ、分身がやられて消えとるぞ!??」
「窓も扉も開かないんです! どうしましょう!? 神官様ぁ!!」
大部屋に戻った半竜娘と、衛兵を呼びに行ったはずの宿の亭主の声です。
クローズドサークルで連続殺人……!(死んでない)
うわあ、大変なことになってきちゃったぞぅ……。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲
宿の宿泊客は、一階の食堂に集まっています。用心のため、みんな完全武装です。
ざわざわひそひそ、落ち着きのない浮ついた空気が満ちています。
まあ無理もありません。
「いやマジでリーダーの分身が、たとえ寝込みを襲われたとはいえ、抵抗できなかったのはヤバいっしょ」
「しかも窓やら扉やらが開かないって、【
「ねむい……」
状況からして犯人はこの中に居るはずです。
半竜娘の分身が消えたのは、【施錠】の呪文でこの宿が閉ざされたあとなのですから。
見渡すと、宿屋の亭主夫妻、マッチ売りの行商人、タロットを広げる占い師、至高神の巡回神官の他にも、何組かの客が居ます。
令嬢剣士は、半竜娘たちのテーブルに座っています。
「ていうか、【
「むにゃー、その術者にとっては、この宿屋一個丸ごと、でっかい宝箱みたいな感覚なんじゃろー」
「あ、リーダー起きてた」
「むにゃむにゃ……」
夜明けまでは遠く、夕方に温泉でのぼせたせいもあってか、半竜娘は眠そうです。
ていうか、気になること言ってますね。
「宝箱ってどういうことなん、リーダー?」
「あるいは食糧庫かのう……」
「なに、犯人の正体分かったの?」
「ヴァンパイア……星の精、不可視の怪物……むにゃ」
「あ、これ半分夢見てるわね、寝言だわ」
しかし歳経たヴァンパイア(怪物レベル11)であれば、この宿屋はまさしく一個の大きな食糧庫にすぎないでしょうし、そのように見立てることで扉や窓をひとまとめに全て閉めちゃうくらいは簡単でしょう。
半竜娘の分身だって、そんな相手では不覚をとればやられてしまっても不思議ではありません。半竜娘の探知技能は並み程度ですからね。【
「ヴァンパイア、というと、あの伝説の?」と令嬢剣士。
彼女も半竜娘たちのテーブルについているのですが、護衛の者は近くの別の宿に投宿していたとかで、いまは一人です。
「そーかも、って話ね。まあ寝言だし、真に受けない方がいいかも」
「ヴァンパイアでも問題っすけど、ヴァンパイアじゃなくても問題っすよー、お嬢さん。どっちにせよリーダーに不意打ちできて、扉や窓を魔法で施錠し続けるくらい強力な術者が、一人か、それかもっと大勢か、居るってことですし……あるいは俺ら以外全員グルとか」
「それって、ここで悠長にしてる暇はないということでは!」
「そーなんすけどねー。窓の一つでも破って出られればいーんすけど、犯人がこの中に居た場合に、それを許してくれるかというとなー」
というわけで、疑心暗鬼の宿泊客たちは、互いを監視するためにも食堂でまんじりともせず(半竜娘を除く)、朝を待っているというわけです。
こういうときに頼りになるのは呪文ですが、リソースはほぼ尽きています。
「えーと、リーダーが使った呪文は、朝のうちに分身への【
「あんたも、呪文の残りはゼロよね? わたしも今日は打ち止めだけど」
「そっちは、【
「みなさん、やっぱりかなり凄腕なんですの? 私も魔術は多少使えますが、7回も使える気はしませんわ」
令嬢剣士が感心してますが、半竜娘が特別なだけだゾ。
種族最高峰の能力値してますからね。
「ていうかさ、ホントにヴァンパイアだとしたら、リーダーが寝てるのはおかしくないかしら? この子、こういうときは嬉々として突っ込むでしょ」
「……確かに、らしくねーな」
はっ、まさか既に敵のスタンド攻撃を受けている!?*5
「そうだ、鼓舞の革鎧の効果使ってみて!」
「りょーかい! 激励をここに! 【
TS圃人斥候の鎧に付与された、精神へのマイナス効果を無効化する呪文が確定発動します!
半径5m以内の対象の、精神への悪影響を解除!
ぺかー!
「むにゃ……はっ、
半竜娘が急に起き上がりますが、ふらりと頭を抱えてよろめきます。
「マジで何かの術を掛けられてたのかよ!」
「【
「術者は? あの外套の男を殺した犯人にやられたの?」
「違うのじゃ」
ではいったい、誰にやられたというのでしょう。
半竜娘の魔術師としての腕は相当です。
その呪文抵抗を抜いて【魅了】の術をかけるとなると、そちらも相当高位の術者です。
「吸血鬼じゃ……」
「おいおい、まだ寝言の続きかよ!」
「外套の男は、死んでおらん! いや、最初から息も脈も眼の光もない、アンデッド……吸血鬼じゃったのじゃ!」
「な、なんだって!?」
最初に死亡確認された被害者、外套の男は死んでおらず、近づいたその時に、【魅了】の呪文を使われたのだとか。
「そのあと吸血鬼は、【
「……幻影には気づかなかったわ。それでそのあとは?」
「傷を負っておったのは確かじゃから、回復のために、分身の血を吸い尽くされ、そのたびに分身を出し直させられて吸われ、最後に
「直接吸われてはいないのね?」
「そのとおりだ」
「!?」
耳心地の良い低音が、食堂に響きました。
声の方を見れば、いつのまにか、外套を纏った、真っ赤な目の男が、食堂の中心に立っています。
いえ、最初からそこにいたのかも知れません。
「任務中に眷属を増やすなんて、不埒な真似はしないとも。ああ、そこの鱗の
「……意外と紳士的な物言いなのね。それにしても、任務?」
「そうとも、
森人探検家の問いに、やはり紳士的に答えます。
TS圃人斥候は、
半竜娘は、両手の爪を開き、しかし令嬢剣士を守れるような立ち位置へと動きます。
「あるじ、とは?」
「《死》を統べる偉大なる
火吹き山の魔術師!
かの高名な魔術師は、このような高位の吸血鬼すら手駒にしているというのでしょうか!
「……それじゃあ、この宿に私たちを閉じ込めたのも、任務のため?」
「まあ、結果的にそうなるな」
「内容を伺っても? わたしたちを皆殺しにするようなことじゃないと良いんだけど」
森人探検家の問いかけに、吸血鬼は、くつくつと笑って答えます。
「構わないとも、若い森人のお嬢さん。
私の任務はね、手癖の悪い人狼の一味を捕殺して、あるべきものを、あるべき場所に戻すことだよ」
「あなた程の吸血鬼が、深い傷を負うほどなの、その一味は?」
「ああいや、心配は要らないとも。優れているのは奴らではなく、奴らが盗み出した、わが主の
「その道具、というのは?」
「魔法の力が込められた、大アルカナのタロットカードだ。——そう、ちょうどあのような銀の縁どりの」
つい、と吸血鬼の屍蝋のような真白い指が、食堂にいた占い師の方を差しました。
「『汝は人狼なりや?』」
その吸血鬼の言葉を皮きりに、令嬢剣士・半竜娘たち・そして宿の亭主夫妻を除いた、他の宿泊客たちが、次々と己の身体を人狼へと転化させながら、牙を剥き出しにして立ち上がります!
「ばらされちゃあ仕方ねえ!」
「死体が灰にならなかったと思えば、やはり死んでいませんでしたか。そのワイン商の娘が来なければ死んだか確認して、トドメを刺せていたでしょうに」
「ひひひ、さっきの戦いで何枚か使ったが、残弾はまだあるぞい! このタロットさえあれば、吸血鬼も恐れるに足りぬのよな!」
——じんろうの むれに かこまれた!
「「「「「グルルルルルルル!!」」」」」
「おや、他の客を噛んで仲間を増やしていたか。転化の進行スピードが早いが、転変を司る『運命の輪』のアルカナでも使い、さらに統率のために『皇帝』のアルカナも使ったかな? ふふふ、さあ、闘争の時間だぞ、諸君!!」
「勝手に巻き込まないでくれるかしら!?」
「ねむい……血が足りんのじゃ……」
戦闘開始です!
・被害者が死んだふりで生きてた(吸血鬼)
・探偵役が共犯(魅了されて協力)
・モブ全員が共犯(元々人狼だった3人以外にも宿泊客ほぼ全員が人狼に転化)
・超人が出てくる(協力NPC:吸血鬼)
・超理論のアイテム(魔法のタロット)
・殺人事件ですらない(タイトル詐欺)
などなど、推理モノのタブーを大体やってみた感じですね! でもこれ冒険だから!(免罪符)
以下QA内容は、次回の本文中で自然に入れられるようにしたいですが、無理かもしれないので置いときます。
Q.最後に人狼たちが奇襲しなかったのはなぜ?
A.絶対先制の『戦車』のアルカナを、吸血鬼との1回目(宿泊室)の戦いで消費しているので、2回目(食堂)の戦いでは吸血鬼との達成値の比べあいに勝利できず、奇襲不成立。吸血鬼側はそもそも奇襲する気がなかった(強種族ゆえのプロレススタイル)。
Q.令嬢剣士が吸血鬼の部屋を訪ねたのはなぜ?
A.隣の部屋から睡眠妨害な大きな音がしたので。(『太陽』の光線炸裂、倒れた吸血鬼の音。『隠者』のアルカナは攻撃によって解除されていた)
Q.令嬢剣士が、倒れた吸血鬼の発見時に、吸血鬼との戦闘を終えた人狼たちに襲われなかったのはなぜ?
A.人狼たちは、その時点では、ことを荒立てる気がなかったので。『星』のアルカナで追跡者の居場所の目星をつけ、追跡者(吸血鬼)に『隠者』でスニークし、『戦車』で不意打ち先制し、『太陽』で弱点攻撃し、『死神』により召喚した即死鎌でトドメを刺せたと思っていたため、それ以上の騒動を嫌ったのかと。特に貴族っぽい娘を死なすとか、これからさらに逃亡しなきゃならないのに厄ネタでしかないので。
なお、吸血鬼はアンデッドなので『死神』の即死効果が反転作用し、逆に復活(?)していました(首は切り裂かれたままでしたが)。
盗んだばかりなので、人狼たちはタロットの仕様を完全には理解できていません。
Q.非公式シナリオ『水晶の森亭の殺人』のデフォルトNPC(犬耳少女や鴉の鳥人娘)は人狼3人によって人狼にさせられたモブに含まれている?
A.巻き添えで人狼化させられたモブの情報は特に設定していませんが、たぶん含まれてないです。(本音:あれだけ沢山の登場人物を動かすとか無理!なのでオミットしました)
Q.このタロットカードは、火吹き山の魔術師の力の源だったりする?
A.別物です。単なるコレクションの一つに過ぎません。