ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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しかも、なんと! 推薦までいただきました! →https://syosetu.org/?mode=recommended_list&iid=5471&nid=224284
ありがとうございます! 素敵な推薦文で、感激しました! セネット様、ご推薦いただき、ありがとうございます! ありがとうございますー! 感激したので更新です。


●前話:
半竜娘「拾ったのじゃ」
知識神の神官「きゅう」(´×ω×`)
(白目をむいた知識神の神官の首根っこを掴んで猫のように吊るしている)


20/n 裏 + 21/n 裏

1.オレの姉ちゃんは超すげー!

 

 王都の魔術学院の図書館にて、赤毛に眼鏡の魔術師姉弟が仲良く調べ物をしています。

 姉の方は、春に学院を卒業し、見聞を広げるべく冒険者になるために、西方辺境へと旅立ったのです。

 よく見れば、その装いも、街中仕事(シティアド)よりは、野外探索(ハック&スラッシュ)に向いた実践的なものです。

 

 弟の方は、年子ですので今年で卒業の予定です。

 学院の制服に身を包み、姉の方と比べると、まだまだ初々しさが抜けない様子です。

 シスコンの()があるのか、ちらちらと姉の方を見ては、凛々しくなった相貌につい、にまにまと頬を緩めてしまっています。

 

「……なあに? にやにやして」

「な、何でもない」

「そう? わからないことあったら聞いてね」

 

 さっきも姉の方は、

 

『出戻りか?』

 

と揶揄してきた輩に、格好よくこう返していたのです。

 

『いえ、外に出たら、ここの蔵書の希少さが身に染みたもので。

 冒険の身空で磨かれるのは、術の腕前程度ですもの。やはり初心に返らなくては。

 私は卒業前の()()()()を唱えられるようになりましたし、()()()()()()()()になりましたが――』

 

 ――()()()()()()()()()()()()

 

 もちろん相手は口ごもって、すごすごと退散していったのです!

 

(ひゅー! 姉ちゃんかっけー!)

 

 内心を表に出さないように気を付けていますが、口角が上がるのは抑えられません。

 ただ単に言い返すだけでなく、どうにも余裕や風格というものが備わってきているような気がします。

 身内のひいき目ではなく、学院に講師として招かれるベテランの魔術師のような、修羅場をくぐった空気を確かに感じるのです。

 学院に居た頃の姉では、そうはいかなかったでしょう。

 

「姉ちゃん、【火球】の真言について教えてくれよ。本を読んでも『カリブンクルス( 火石 )』のイメージがどうにも……」

「そうねえ……蜥蜴人に伝わる、祖竜を滅ぼしたという『天の火石(ほいし)』の話を知っているかしら?」

「……いや、知らない」

 

 恥ずかしげにうつむく弟を、姉は目を細めて見ています。

 ()()()()()()()()()()()()()()()のは、賢人への最初の一歩なのです。

 

「私が旅の途中で見たことがあるのは、大昔に天から火石が落ちたという跡ね――クレーターっていうんだけど、大地が大きく抉れていて、場所によっては湖になることもあるくらい」

「それが、その恐るべき竜を滅ぼしたっていう?」

「いいえまさか。恐ろしい竜を滅ぼしたという火石は、王都よりも大きくて、ぶつかったところは何もかもが吹き飛んだそうよ。たぶん、この国全部が吹き飛ぶわ。そして――」

「そして?」

「この大地の裏側にまで、その衝撃が突き抜けた。もしも世界がサイコロで、一の目が火石のぶつかったところだとすれば、その裏側の六の目は、きっと七になっちゃったでしょうね」

 

 恐るべき竜すら滅ぼしていく、天から落ちる燃える火の石!

 大地すら歪める、巨大な天の槌!

 たかだか一抱えほどの火の玉どころではない――『カリブンクルス( 火石 )』の真言は、それほどに恐ろしい力ある言葉なのです!

 

「はぁーー、そんな伝承があるのか……。よく知ってたな、姉ちゃん」

「いえ、私も最近教えてもらったのよ。打ち倒した竜人から、ね」*1

 

 少し、はにかんで、何かに――いえ、()()()思いを馳せている様子は、まるで、恋をして――。

 

(え? 姉ちゃん……好きな人ができたの、か……?)

 

 

<『1.オレの姉ちゃんは超すげー! どこの馬の骨だ、ゆ゛る゛さ゛ん゛!』 了>

 

 

 

  ○●○●○●○●○

  ●○●○●○●○●

 

 

 

2.ちょっと通りますよ

 

 

 ここは盤の外。

 神々が冒険の場を整え、四方世界の駒たちを見守る場所にて。

 

「ああ、毎度すみませんね。ちょっと通りますよ」

 

 “火吹き山の魔術師(火吹き山P)”が、神々がセッションをしているところをスイスイと通り抜けていきます。

 

「ああ、《死》の神よ。これは今回の上がりです。どうかお納めを。はい、いえ、こちらこそ。ええ、はい。では、今回も良しなに……」

 

 火吹き山Pは、《死》の神の前に立ち、自分が集めた《死》の力の一端を献上しています。

 どうやら、通行料、のようなものでしょうか?

 火吹き山Pは、《死》の神に敬意をもって接しているようです。

 

 力の格は――まあ、どっちが上かは、よくわかりません。

 太平洋と大西洋の水の量を比べようとて、水槽に生きる魚には意味がないように。

 少なくとも、《死》の神の方が古株ではあるようですが。

 

 

 

 ――かつて、四方世界では、神々が単純な骰子遊びの丁半で勝負をしていた『創造の時代』がありました。

 ――次に、神々が直接駒を創り、配置し、指揮した戦争遊戯……『戦乱の時代』がありました。

 ――やがて、最初の勇者が現れ、駒たちの自由意志が織りなす()()に魅せられた神々は、直接の介入を控えるように取り決めました。

 ――その直後に、神々が約定により手出しできない隙に勃興したのが、強大な力を持った駒……魔術師(デュエリスト)たちによる『魔法の時代』です。

 ――世界を割らんばかりの高次元デュエルに神々がハラハラしだしたころに、魔術師たちは、ひとりまたひとりと、盤の外へとその舞台を移すようになりました。

 ――やがて全ての魔術師たちが盤の外に去って(世界が割られずに済んで)、いよいよ『冒険の時代』がやってきたのです。

 

 

 

 ……彼らは去ったはずなんですけどねえ。

 

 まあ、息抜きに戻ってくる者もいるということで。

 いや、そもそも四方世界の出身なんですかね? この魔術師は。

 それすらも定かではないのですが。

 

 彼はいつの間にか盤の中と外を行き来しながら、《死》の神と仲良くして、四方世界でバカンスを楽しんでいたのです。

 彼は、ひょっとしたら、生首だけになったパワーストーン義眼の男かもしれませんし、悲しみを背負った銀のゴーレムなのかもしれませんし、あるいは、彼らと同じくらい古くから活躍し彼らの物語をよく知るプレインズウォーカー(プレイヤーのあなた)なのかも知れません。

 それとも全く別の次元の骸骨魔王上皇かもしれませんし、スライムから成り上がった何かなのかもしれませんし、あるいは銀の鍵の門を開いた夢の国の旅人なのかも……とにかく正体不明なのです。

 

「ああ、《死》の神よ。これは闘技場の傑作選です、どうか神々でお楽しみを。迷場面集はこっちです。ええ、ええ。箱庭で暴れたりはしませんよ。自分の闘技場のことを『マジシャンズ・ソリティア(魔術師の一人遊び)』だとまでは卑下しませんが、しばらくは、自分で決闘をするのはコリゴリですから」

 

 何やら記憶媒体のようなものを《死》の神に渡す火吹き山P。

 彼は盤外世界における娯楽提供者でもあるようです。

 こういった細かい付け届けが、円滑なバカンスライフを続けるためのコツなのでしょう。

 

「ええ、はい、もちろんご用命とあらば、役を賜ることもやぶさかではなく。ほう! キャンペーンの計画が! 《死》と《生》のご両柱で? なるほど……」

 

 そして、いわゆるサブマスターのような役目としても便利使いされているようです。

 ……まあ火吹き山P本人も楽しんでいるようですから良いのでしょう。

 なんだか気安い先輩後輩みたいな感じですね。

 

「では、その時はぜひお声がけを……いいキャンペーンにしましょう」

 

 

<『2.ちょっと通りますよ』 了>

 

 

 

 

  ○●○●○●○●○

  ●○●○●○●○●

 

 

 

3.辺境最強の名に懸けて

 

 

 西方辺境の街のギルドの喧騒はいつものことですが、何やら今日は少し様子が違います。

 なんというか、(うわ)ついた感じです。

 少し耳を傾けてみましょうか。

 

「火吹き山のチャンピオン……」

「つってもまだ新人王だろ? チャンピオンと言えば、やっぱりグランドチャンピオンじゃねーと」

「いや、新人王でも十分すげえよ! 帰ってきたらサイン貰おうぜ!」

 

 どうやら半竜娘のことを噂しているようです。

 火吹き山Pは、辺境でも広報活動に余念がありませんからね。

 ましてや、話題の闘士の地元ともなればなおさらです。

 

「むーん」

 

 その広報用の新聞を前に難しい顔をしているのは、【辺境最強】と名高い槍使いの戦士です。

 

「あ ら、 嫉妬 かしら?」

「いや! そんなことはない! かわいい後輩の活躍だ、祝ってやらねーと名が(すた)るってもんよ」

「ふふ、なら いいの だけど、ね?」

 

 くすくすと手を口に当てて妖艶に笑うのは、彼のペアである魔女です。

 机に置かれた広報新聞の、半竜娘の精巧な写し絵に、白魚のような指先をまるで愛撫するように滑らせます。

 ちょうど、巨大化した半竜娘が、巨大な何か(おそらく粘液体。見る者の正気に配慮してぼかして描いてある)を吹き飛ばした瞬間をとらえた絵です。

 

「大活躍、みたい ね」

「ああ、炎の魔神や巨大粘液とかに“勝った”のはすげえよ。俺だって勝てるがな」

「そう、ね。で も、冒険者の しごと は、闘技場には、ないもの、ね」

 

 魔女の言葉に、槍使いは、我が意を得たりとばかりに頷きます。

 

「ああ、そうだぜ。ルールのある闘技場で“勝った”からって、村を襲う怪物や、街道を塞ぐ賊がいなくなるわけじゃねえ。未知を明かし、困難を解決してこその冒険者だ」

「そ、ね」

「名声や箔付けになるから無駄ってわけじゃあねえが、あくまでそりゃサブクエストだろ」

 

 一理あります。

 ……やっぱり対抗心も混ざっているかもしれませんが。

 

「ま、西方辺境(こっち)に戻ってきて、冒険者を続けるってんだから、半竜のもその辺は分かってるんだろうさ」

「じゃ あ、お祝い、しないと、ね?」

「ん。…………そうだな!」

 

 自分の中で整理がついたのでしょう。

 

 槍使いの顔はずいぶんとマシなものになりました。

 ……女性尊重の信条を持つ槍使いですので、半竜娘を捕まえて「どっちが強いか勝負だ!」とはならなかったでしょうが、余計な対抗心を持ったまま、危険な依頼を受ける方向に傾いても困りますからね。

 魔女さんの操縦手腕が光ります。

 

 

 と、そこで冒険者ギルドの扉が勢いよく開けられました。

 

 

「皆の衆! 宣言通り、“火吹き山のチャンピオン”になって帰ってきたのじゃよ!!」

 

「おう、よくやった! そしたら祝勝会だ! 今日は存分に祝ってやるぜ、【辺境最強】の名に懸けてな!」

 

<『3.辺境最強の名に懸けて』 了>

 

*1
祖竜を滅ぼした天の火石について:出所は火吹き山の闘技場での処女同衾後の半竜娘とのピロートークだったり。お互い好奇心旺盛かつ魔術師同士で話題も合ったし、とりあえず友達にはなった。




知識神の神官「拠点の王都にギルド経由で連絡とってもらったらぁ、死んだと思われてて、もう一党は新しい神官を見つけて゛る゛っ゛て゛え゛。“ゴメン、せめて荷物は送るから”って言われても~、ううぅ」(ぐすぐす)
半竜娘「あー。王都は人も多いしのう、神官もすぐ見つかったんじゃな。お主は行くあてはあるかの?」
知識神の神官「実家に帰るか、知識神様の文庫(ふみくら)に身を寄せるか、()()()()()()()()()()()()()()……とりあえずは実家の方に顔を出そうかなと」
半竜娘「ふむ、場所は? …………ああ、そこの領地なら、次に探索予定の遺跡の近くじゃの。何かの縁じゃし、臨時の一党ということで途中まで一緒に行くのはどうかの?」
知識神の神官「お世話になりますぅ……()()()ぁ……」
半竜娘「ん?」

(なお、知識神の奇跡により、半竜娘たちの行き先と実家が同じ方向なのは予め確認していた模様。計画通り……)

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