ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
※前回の文庫神官ちゃんのステータスで、成長点が本来5点余っていたはずだったので(手元のキャラシだと【信仰心】を
計算間違い失礼しました。
でもこれで、『護衛発動でダメージ肩代わり→自分を回復』という最低限の神官戦士のロールができるぞ!
●前話:
文庫神官「神官戦士になります!」
半竜娘「熱烈歓迎!」
はいどーもー、今回は調べ物というか、実験パートがメインになるはずです。
え? 前回、『迷いの森』に行くって話じゃなかったのかって?
もちろん行きました。
パッと行ってサクッと迷って……というか、迷わずにといいますか、いつの間にか入り口に戻されるのを10回くらい繰り返して、すごすごと文庫神官ちゃんの育った
「ホントに入る度に地形が変わるんだなー……オイラびっくりだぜ」
「森の精霊たちも、全然こっちの話を聞いてくれなかったわ。上古の樹人にずっと義理立てしてるのね、きっと」
TS圃人斥候は、手元のメモに色々と書き込んでいますし、森人探検家は精霊が頑なに協力を拒んだことで当てが外れた様子です。
TS圃人斥候のメモについては、少し前に雑談中に、
「将来、自分の庄を拓いたときに、家族に聞かせるための手記を残してるんだぜ。ほら、『爺さんの日記で冒険を学んで憧れて』みたいなシチュエーションって浪漫だろ? そのお膳立てのためにもよー」
「じいさん?」
「なんだコラ、オイラは男に戻るぞコノヤロウ」
「ちっ せっかくかわいいのに」
「舌打ちしたのは誰だ!? 聞こえてんぞ!?」
みたいなやりとりがあったんですよ。
昔は凄腕の冒険者だった長老の冒険手帳とか、良いですよね。
ロマンある導入です。TS圃人斥候は分かってますね。
あと【生存知識】判定とかに+1される系アイテムっぽくて
「『迷いの森』の仕組みは、精霊術だけじゃないようじゃったがな。魔術と、ひょっとしたら神の奇跡も組み合わせておるのやも」
「あとは、封印されてる呪物の権能も流用しているのかもしれません。『手』の権能であれば、『目を覆って惑わせる』とか『空間を組み替える』だとかにも通じそうですし」
半竜娘と文庫神官も考察していますね。
文庫神官の考察が正しければ、『手』の呪物は『迷いの森』の核でもあるわけで、それが生きているということは、まだそこに呪物が安置されているということになります。
それで迷いの森というのは、どうも、ローグライクRPGっぽい様子。入る度に地形が変わるようですし。*1
「空から行くのはどうじゃ?」
「むり無理ムリですっ! 墜ちちゃいますよぅ!?」
「擁護する訳じゃないけど、対策されてないはずがないでしょ。リーダーが迷いの結界作る側ならどうする?」
「そりゃもちろん、風や重力操作で、飛ぶものは落とす式を組み込むのう……そういうことか。空を飛ぶとか、落としてくれと言うとるようなもんじゃしな」
「そーですよ! やめときましょう!」
対策しないはずがないんだよなあ。
あと、墜落がトラウマな文庫神官ちゃん必死やな……。
「言われてみれば、オイラも迷いの森では鳥が飛んでるのは見かけなかったな……」
TS圃人斥候が補足します。
よく見てますね、流石です。
「ほらやっぱり、何か空からの侵入には対策があるんですよ! 眠りの花粉が充満してるとかかもしれませんし!」
「そうじゃなあ。仕掛けと対策が確認できるまで保留じゃな」
「保留じゃなくて止めにしときませんか? お願いします」
文庫神官ちゃん必死やな(二回目)。
でも半竜娘ちゃんは効率的なら、わりと心情を無視することもあるからね、和マンチ気質だからね。
だからそのうち空飛ばされると思うよ、今回の冒険じゃないにしても。南無南無。
「いっそ焼くのはどうかの?」
これから毎日森を焼こうぜ。
「森人の前でよくそんなこと言ったわね、リーダー。森を焼く前に私の怒りが火を噴くわよ?」
「それに火除けの加護も絶対あるだろーからどのみち無理じゃね?」
「確かに、ここに住んでたときは、雷が落ちても火事になったとは聞いたことないですね……」
火攻めも対策済みな模様。
そりゃそうだ。
真っ先に対策しますよね……。
「“物探しの蝋燭”は役に立たんかったしのう……。あっちこっちに反応が次々切り替わるんじゃもの」
「でも、そのおかげで、周囲の空間や自分の居場所含めていじられてることが確実になったんだからいいのよ!」
「分かったからってどうしようもねーんだよなあ……」
森人探検家ちゃんが必死こいて集めてきた『物探しの蝋燭』*2ですが、それも対策済みでした。
リアルタイムで森が組み変わっているらしく、蠟燭の炎が指し示す向きが安定しないのです。
「うーむ、鬱蒼と森が茂っておって、空も見えんから方角も分からんし」
「方位磁針も役立たずだぜ」
「……でも、きっと方法はあるはずよ。いろいろ試してみましょう」
他にも、『精霊を呼び出しまくって森人探検家に支援を付けて、【解呪】の奇跡がクリティカルするまで毎日試す』とか、『森の周りを計測して中心点のあたりをつけて、そこまで半竜娘が巨大化して【突撃】して道を創る』とかいうアイディアが上がりました。
試してみましょう。
実験です!
もう一度、森に行きます。
まずは解呪……。
半竜娘が呼び出した四属性の大精霊に見守られ*3、森人探検家が祝詞を唱えます。
結界の解呪、または、上古の樹人の魂が残っているなら、その成仏を祈ります。
「四属性による増幅開始――頼んだのじゃ」
「『巡り巡りて風なる我が神、彼らの魂魄を故郷へ還せ』――【
さらに因果点を積んで、クリティカルに変換します(因果点3→4。転変成功!)。
が、反応ありません……。
「だめねえ」
「だめじゃのう」
「だめですか……」
「いけると思ったんだけどなー」
【解呪】を試してみたものの、クリティカルしても抵抗されたので、おそらく『迷いの結界』の作成時に上古の樹人の施術もクリティカルだった上に、しかも相当達成値が高いことがわかりました。
つまり、力業での解呪はほぼ不可能。
おそらくは、複数の大司教級の神官が専用の陣を敷いて、さらに星辰が整った時でないと解呪は難しいでしょう。
次に試したのは、半竜娘の【突撃】です。
【
森がどのくらい深くまで続いているか分かりませんが、周辺の測量により、『デクの大切り株』があると思われる方へ目星をつけ、約3.2キロメートルを、一気に駆け抜けます。
えーと、1ラウンド30秒で3,240m移動するとして、計算すると、平均で約390Km/h!?
始端はもっと遅いので、終端速度はもっと早いはず……。うわあ。
まあ、準備が整ったみたいなので行きます。
奥までたどり着けるでしょうか。
突撃するのは分身の方です。
「行くのじゃ。『俊敏なりし
位置について、よーい……ドン!
「――【
森の木々は、巨大化した半竜娘(分身)の背丈よりも大きいです。
その大きな木々を薙ぎ倒しながら、半竜娘が突撃!
あっという間に森の中に消え……――
――ドドドドドドドドドド
ん?
「やっばいのじゃ! 途中で空間がねじ曲がっておる、こっちに戻ってくるぞ!?」
「げっ」「逃げるわ」「ひゃあっ」
分身との共感覚でいち早く察知した半竜娘ちゃん本体の叫びに、みんな血の気が引きます。
あのフルバフ積んだ【突撃】を終端速度で食らうと、固定値で648のダメージが入ります。
塵も残りませんよ、そんなん。
「あ、あの、戻ってくるとして、どこまで突っ込んでいくことになるんでしょう!?」
文庫神官は鈍足なので、半竜娘に引きずられるようにして逃げています。
しかし心配はもっとも。
どこまで行くかによっては、村の畑などにも被害が出てしまいます。
「心配無用、森からでた時点で無理やり止めるのじゃ――土の精霊よ、【
『GNOOOMMMMM』
呼び出していた土の大精霊が使う【隧道】の精霊術により、地面に大きな穴が開きます。
その時ちょうど、進路をひっくり返された半竜娘(分身。with蛇龍型水精霊)が森から飛び出してきました。
「自前転倒じゃっ!! へぶっ?!」
分身はパートナーの水精霊を宙に放り投げると、地面に空いた【隧道】の穴にわざと足を引っかけ、転倒します。
大質量が高速で地面に突っ込んだため、轟音とともに、盛大に土砂が噴出します!
KABOOM!!!!
――突撃失敗により、半竜娘(分身)に302の反動ダメージ!
――分身は消滅!!
どうやら突撃距離の半分ほど消費していたようですね。
幸いにして(?)突撃したのは分身の方だったので、反動で血肉が撒き散らされる、みたいなことはありませんでした。
でも、ちょっとひどい状況です。隕石でも降ったみたいです。
「ぐえー、ぺっぺっ。ひどい目に
全員、直撃は食らわなかったですが、伏せていた上からうっすら土砂が積もっています。
服の中や口の中に砂が入ってますね、これは。
「これは、正攻法ではダメね……」
「あの、全部、力押しでしかなかったと思うんですけど……」
「
森人探検家が文庫神官ちゃんの指摘に不思議そうな顔をします。
この手に限る(この手しか知りません)。
「何よ、そんな可哀想なものを見る目で見ないでよね……。力押しで片付くならそれでいいのよ」
「でもダメでしたよね」
「だからもっとこれから考えるんじゃないの。搦め手を考えないとは言ってないのよ、後回しにしてるだけなんだから。まずは手軽に試せるところから試すもんでしょ?」
「はあ……」
ホントかなあ、って顔してますね、文庫神官ちゃん。
でも大体、力押しで何とかなってきましたからねえ、このパーティ。
確かに力押しで片付くなら、それが早いですし(一理ある)。RTA的にも助かりますし。
…………。
……。
というわけで、間借りしている知識神の
盛大に土砂を浴びたので、水浴びでもして身体を流したいところですね。
「おん? 文庫の前に誰ぞか立っておるぞ」
「男の子、みたいね?」
「あっ、もしかして……」
「なんだ、神官娘の地元の知り合いかなんかか?」
見てみれば、文庫の前に、少年が立っています。
文庫に用事があったというよりは、誰かを待っていたって感じです。
そしてどうやら、その少年に、文庫神官は見覚えがあるようです。
幼馴染かなにかでしょうか。
「たぶんですけれど、弱ったお母さまの診療をしてくださってた薬師さんのところの子だと思います」*4
面影があります、という文庫神官ちゃんも、あまり自信がない様子。
まあ、おそらく文庫に籠もって本を読んでいた時間の方が長かったのでしょうし。
彼女の叔父が、ゲス領主の目から隠すために修道に出したのなら、外出はあまりさせないようにと文庫の方にも注文を付けていたのでしょうし。
「それにしても顔色が悪いのう。どぉれ、一つ癒しの
竜司祭流に合掌したあと、ぐるりと腕を回す半竜娘。
結構お手軽に癒しの術の施しをするあたりは、間違いなく善なる
「あ、もしかしてここに逗留されているという冒険者さんたちですか!?」
「いかにも! して何用じゃ? 依頼かの?」
「はい、そうなんです、迷いの森に幼馴染たちが入って
その病弱そうな少年が捜していたのは、文庫神官ちゃんではなく、腕利きの冒険者だったようです。
しかし、不思議な話です。
『迷いの森』は、奥に進むことができない森ですが、出る分には迷わないという、捉え方によっては『迷わずの森』とも言える場所です。
そこから帰ってこないとはいったい……?
「まあ、それは後で聞こう。お主、なんかの持病があるのかや? 【
「いえ、そんなそうしてもらうわけには……」
「
半竜娘は、強引に病弱少年の背を押して、文庫へと入ろうとします。
と、そのとき、別方向からは、血相を変えた老人が駆けてくるのが目に入ります。
「お、お嬢様ぁっ!!」
「あら? 従士の……」
「えっ、あっ、本当だ、お嬢様だ、すみません、気が付かなくて!」
猛スピードで走って声をかけてきた老人に、文庫神官ちゃんは見覚えがあったようです。
どうやら、騎士であった父の従者をしていた者のようです。
聞けば、戦場から形見の鎧と盾を持ち帰ってきてくれたのも、この従士の老人だとか(もちろん当時はもっと若かったのですが)。*5
そして、その従士の老人の声につられて、ようやく病弱少年も、文庫神官ちゃんに気づき、あわてて頭を下げます。
文庫神官ちゃんは、「もう“お嬢様”だなんて身分じゃないですよぅ」と言っていますが、老従士と病弱少年は態度を改められないようです。
でもこのままじゃ埒があきません。
TS圃人斥候が、仕切り直します。
「そんなお互いペコペコやってねーで、何か用があったんじゃねーのかよ、じーさん」
「おう、そうじゃった! それが今のご当主さまが、あのクソ領主に連れられて『迷いの森』へと……!」
どうやら、領主が軍を率いて迷いの森へと侵入しようとしており、その中に、文庫神官ちゃんの叔父でもある騎士も含められているようです。
「あのクソ領主さまが森に何の用なのでしょう。しかも兵まで率いて?」
「分かりませぬ。しかし、お嬢様が去られてからも、あの領主は悪政を敷いて税を搾り取り、飢え死ぬ者が出ようともお構いなし。むしろ悪化しております……。様々な名目で若い女を館に集め……。しかも館に呼ばれた若い娘は、一人も帰ってこないのです! 流石に寺院神殿には手を出していないようですが……。ご当主様のおっしゃることには、特に昨今、怪しい風体の人物を侍らせているそうで、混沌に魅入られておるのではないかとも……」
だから老従士は、村の噂で文庫神官が領地に戻ってきているのを知って、いてもたってもいられず、「悪いことになる前にどうかお逃げください」と伝えに来たのだ、と言います。
そしてそれを聞いてさらに血相を変えたのは、病弱少年です。
彼の話を聞けば、迷いの森に入っていった病弱少年の幼馴染は、少年の難病を治すために冒険者になり、頼りになる仲間を得て、治癒のための秘宝や秘薬を探し、この故郷の『迷いの森』の奥にある遺物がそれを成すものだと知って、森の奥に進むための鍵になるものを得て戻ってきたのだと言います。
そして、幼馴染とその一党は、年頃の乙女たちなのだとか。
そんなところに領主の軍も入っていったとなれば、きっと幼馴染たちは、途中でゲス領主に捕まってしまうに違いありません。*6
「火吹き山のチャンピオンが率いる一党の皆様なら、と思って、お願いしに来たんです……」
“でも、皆様も御綺麗な方々ですから、領主軍と鉢合わせするのはよろしくないですよね……”そう言って、病弱少年は諦めようとします。
――しかし、このような話を……混沌と繋がったような領主の悪だくみ、村の健気な少年の願い……そういったものを聞いて、「じゃあ危ないので止めます」と言って引くのが、果たして冒険者でしょうか?
いいえ、いいえ、いいえ!
危難に挑むからこその冒険者!
ここで退いてなんとします!
「
「その幼馴染とやらも無事に見つけるし、ここの領主が混沌の手勢に
「幼馴染の子って、私も知ってるあの子ですよね? あの子とあなたのことは、私も応援していたんですよ。それが悲恋に終わるのは、許せませんから。叔父様のことも、半竜のお姉さまと一緒なら、きっと何とかできます、いえ、します!」
「森の奥の呪物を探しにここまで来てるのよ、このまま引き下がるなんて、冒険者としてもあり得ないわ! ――それに、捜索依頼ってことは、万一の時のために、森へ入る方法をその幼馴染から聞いているんでしょう? 是非教えなさいな」
半竜娘、TS圃人斥候、文庫神官、森人探検家が、それぞれ依頼受諾の返事を返します。
「あ、ありがとうございます!」
「お嬢様、皆様……。ありがとうございます」
病弱少年はそれに感謝します。
老従士も、内心ではこの領地の現状に思うところがあったのでしょうし、また長年の付き合いで騎士家の今の当主のことも案じていたのでしょう。安堵した雰囲気があります。
「それで、迷いの森で迷わない方法っていうのは?」
「ええとですね、特定の旋律を魔力のこもった楽器で奏でることで……」
病弱少年の話によると、特定の音楽が要となるそうです。
ちょうどいいことに、半竜娘ちゃんは魔力のこもった『【舞踏】のフルート』を持っています。
旋律は、病弱少年が聞いて覚えていました。
森を思わせるその旋律が、きっと『デクの大切り株』までの道を開くのでしょう。*7
というところで今回はここまで!
ではまた次回!
冒険が三つ同時進行してます。
1.『手』の呪物を回収せよ
2.病弱少年の幼馴染の少女の一党に助力せよ
3.悪徳領主の企みを阻止せよ