ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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閲覧、評価、お気に入り登録、誤字報告、感想記入、ありがとうございます! 不慮の事故でゴブスレTRPGのルールブックがお亡くなりになったので再発注。う、売り上げに貢献したからいいんだ……、リーズナブル価格なルルブだし(みんなも四方世界にエントリーしよう!)。

●前話:
TS圃人斥候「リーダー、何喰ってんの?」
半竜娘「骨」
TS圃人斥候「骨ぇ!?」
森人探検家「ただでさえ定命(モータル)は死ぬまでに食べられるご飯の回数が限られてるのに、わざわざ粗食にするとか、もったいないわねー」
文庫神官「(ほねガジガジするお姉さま、犬みたいでカワイイ……カワイイ……)」

 


24/n 収穫祭に向けて-2(儀式準備)

 はいどーも!

 

 ゴブスレさんは収穫祭の日にとっかえひっかえデート(午前/午後)するみたいですね。

 うちの半竜娘ちゃんも対抗して(?)分身して一党の仲間と二股デートするつもりです。

 やはり【分身(アザーセルフ)】は壊れ呪文……。

 

 んでもって、前回から明けて翌日。本日は収穫祭の一日前です。

 街は屋台の設営だの、見世物のための区画表示の縄張りだのが進んでいます。

 当然、街の外から来る人たちも増えています。

 

 祭りの御馳走のおこぼれ・下げ渡しを目当てに集まる、流民や乞食。

 ある程度の武力を持っていて自衛できる旅人は、観光目的で立ち寄ったりもします。

 祭りの運営側から招かれた、大道芸人やサーカス団、的屋、吟遊詩人、楽団と歌姫、旅芸人の一座、陶器屋、毛皮屋、野鍛冶、金物屋エトセトラ……。

 馬上槍試合(トーナメント)なんかがあれば、それを目当てに自由騎士(フリーランサー)も。

 今回は地母神の宗教行事でもあるので、遍歴の巡回神官(サーキットライダー)の方が多いかもしれません。

 

 もちろん、近隣の村々からも人出があり、観光がてらに冒険者ギルドに依頼を持ってくるような村人たちもいます。

 なので、祭り前日ですが、いえ、それゆえに、冒険者ギルドの作業量はえげつないことになります。

 つまり何が言いたいかっていうと、翌日のゴブスレさんとのデートのために、受付嬢さんはいま大変な量の業務をこなしておられますってことで――。

 

「えーと、半竜の一党にお願いする指名依頼が……って、土木工事がなんでこんなにたくさん……? いえ、食料救援の予約とセットだからオプション扱い……?」

 

 依頼の仕分け中のようですね。半竜娘ちゃん一党向けの依頼だけで一山できてるようです。

 土木工事――内容は堤防の修理、畑の真ん中の大岩の除去、山肌の開墾切り崩し等――については、たぶん村々のネットワークで評判になってるんでしょう。

 村によっては冬の食糧が不足するため、その救援が必要なのですが、今のうちから予約してくるところもあるようで。

 それとセットなら、まあ、半竜娘ちゃんのことですから、快く土木工事も引き受けるでしょうね。

 何ならついでにゴブリン退治だってしてしまうかも。

 

「とはいえ、あんまり安い値段で受けられると、価格破壊になっちゃいますし、その一党が移籍したときとかに後続が受けられなくなって……今後の課題として要検討ですね」

 

 まあ、ダンピングによる市場破壊的な懸念はありますねえ。

 ブラック環境を生むきっかけは、無私の心を持った聖人だったりすることもあるのです。

 ――同じ懸念は、ゴブスレさんのゴブリン退治にも言える訳ですが、たぶんそこは受付嬢さんが調整してるんだと思います。有能!

 さりとて、粒ぞろいの人材になんか育てられないからこその“冒険者”であり、そんな凸凹人材を適材適所で派遣するのが冒険者ギルドの存在意義でもあるわけです。結論:まあなんとかなる ()()()()()()

 

「これは……? 知識神の文庫から、ええーと、魔道具メンテナンスの定期依頼。できれば組み込み型の【幻影】の魔道具の追加納品も希望? それと武術の指導も?」

 

 保守依頼は定期収入になるので美味しい! きちんと依頼として出してくれるのは有り難いですね。

 内容は、知識神の文庫に納めた『樫人形(ウッドゴーレム)』の生成管理装置のメンテナンスですね。*1

 幻影の魔道具は……半竜娘ちゃんも作れないこともないでしょうが……。うーむ、ウッドゴーレムにかわいこちゃんとかイケメンとかの幻影(ガワ)でも被せるつもりでしょうか。まあ、魔道具の習作がてらと考えればおいしい依頼かも知れません。……ユーザがナニに使うかまでは感知しません。

 武術の指導については、ゴーレム使いとしての操作慣熟のためか、あるいは修道女本人たちがゴーレム木人拳的な鍛錬を文庫の中でやって鍛える計画でもしてるのかもしれません。

 

「……期限に余裕があるものが多いですけど、いくら何でも彼女らへの指名依頼が多すぎでは……? いえ、でもこれまでの実績的にはこの量でもいけるのかも……?」

 

 一パーティへの依頼の量が多すぎれば、誰でもやれそうな一部の依頼は指名を外して他の冒険者を斡旋するのもギルドの役目です(もちろん、指名されているパーティや依頼者に確認はしなくてはなりませんが)。

 半竜娘ちゃんの場合は、これまでも精力的に依頼をこなしてくれていますし、上等な馬車(独立懸架式突撃機動馬車)を麒麟竜馬の二頭立てで運用していて、辺境の街でもトップクラスの機動力を誇りますから、案外全部の依頼をこなせてしまうかもしれません。

 空間拡張鞄も持っていますから積載量も十分。

 

「とにかく、収穫祭の後にでも、彼女らには一度相談ですね」

 

 まだまだ書類はたくさんあるので、さっさと処理していきませんとね。

 そう、ゴブリンスレイヤーとのデートのために!

 

 …………。

 ……。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 一方そのころ、半竜娘ちゃんは何をしているかというと、儀式場の整備と清めを行っています。

 場所は街の西の方角。

 街道から外れた広野(ひろの)の一角に陣取っています。

 

 で、この場所を選んだ理由、ですが……。

 まず、西方は日没と夕闇の方角であり、この世ならざる者どもの住処を示す方角でもあります。風水でいう(うしとら)の鬼門の方角みたいなもんでしょうか。

 また、東が朝・夜明け――すなわち“進歩”を現すのであれば、西の夕闇は過去回顧を表す方角でもあります。

 

 つまりまあ概ね、過去に繫栄した祖竜への祈りを届けるためには都合の良い方角というわけですね。

 もちろん、立地的にも迷惑にならず、邪魔もされにくい場所が西側にあったという理由もあります。

 

 さて、儀式場を作るため、半竜娘ちゃんは分身体を巨大化させて草地を踏み(なら)させ、地面を固めさせています。

 さらに、土の精霊を呼び出して、周辺の土を寄せて高め、また踏み均します。

 だんだん、台形円錐の武舞台が整ってきました。

 ……なんか土俵みたいな感じですね。

 

「ふーんふんふん、ふふーん♪」

 

 半竜娘ちゃんは、鼻歌を歌って音頭を取りながらの作業です。

 

 その近くでは、文庫神官が時々その様子のメモを取りながら、天灯(スカイランタン)を組み立てています。

 

「それも故郷の歌ですか? お姉さま」

「ふんふふーん♪ んー、そうじゃよー」

「タイトルとかあるんでしょうか?」

「さて、故郷では“()ね歌”とか言うておったかの。まあ、なんぞ集まってやるときの定番よ、洗濯ものを川に浸して足で捏ねーの、炊事でモロコシの粉を捏ねーのな。飽きんようにバリエーションもあるが、適当じゃ。その場の雰囲気じゃの」

「なるほど……」

 

 異国の習俗を書き留めるのもまた、知識神の教えに沿うことですからね。

 

「お主が組み立てておるのは、天灯じゃろ? 手前も試しに昨日、下宿させてもらっとる魔女殿と作ってみたところじゃ」

「ええ、こちらのお祭りではこれを飛ばすそうですから。……お姉さまにとっては異教の儀式ですが、参加してもよろしいのですか?」

「よいよい。魂は大いなる流れに還って巡るものであるが、死者の魂が還ってくると信じる者を否定はせぬよ。それに祭りは参加せねば損であろ」

 

 辺境の街の収穫祭では、死者の魂を迎え、また還すために、細い木組みに紙袋を被せ、蝋燭を灯した簡易な熱気球である天灯を飛ばすのです。

 輝く天灯が一斉に空へと昇っていく様は、一見の価値があります。

 文庫神官ちゃんは、木組みと糊で、少しずつ試行錯誤しながら作っていきますが……。

 

 ◆文庫神官【手仕事】判定:技量集中3+2D632=8 < 目標値10

 

「ふええぇん。うまくいきません……」

 

 手仕事判定に失敗していますねえ。

 初めての挑戦だったせいか、不格好なものができました。

 紙を張り合わせるときの隙間も大きいし、重心もおかしいし、これじゃまともに浮かばなさそうです。

 

 この子、技量がないから攻撃も当たんないんですよねえ。

 自己回復型のタンクだから別に良いんですが。

 一党のアタッカーは別に居ますし、加速掛ければマシになりますが。

 

「どれ、貸してみ」

「すみません……」

「よかよか」

 

 ちょうど巨大化の術が切れた半竜娘ちゃん(分身)が文庫神官ちゃんの横に腰かけると、その不格好な天灯に手を加えます。

 

 ◆半竜娘(分身)【手仕事】判定:技量集中7+2D643=14 > 目標値10

 

 爪の先を使って器用に張り合わせた紙を剥がしたり、大胆に木を歪めたりして、格好を整えていきます。

 

「うむ、こんなもんでどうじゃろか」

「わあ、ありがとうございます、お姉さま!」

「あとは乾かしておけばいいじゃろ」

「はい!」

 

 半竜娘ちゃんは整えた天灯を文庫神官ちゃんに渡すと、再び巨大化して武舞台を整える作業に戻ります。

 ドシドシドシと細かな地響きとともに、段々と舞台が盛られ、せり上がっていきます。

 

 

 

 一方、半竜娘ちゃんの本体の方は何をしているかというと、何やら木質の半球型の器に手を突っ込んで練り回しています。

 

「ねりねりー、なーのじゃー、練れば練るほど色が変わって~」

 

 周りを見れば、木槌や擂粉木(すりこぎ)(ふるい)があり、白や赤や黄色の石塊や土塊、真っ黒い炭が転がっています。

 木質の器はいくつも並べられており、中身が飛び散らないように布と重石が置かれた中には、たぶんそれらの石や土や炭を粉にしたものがあるのでしょう。

 そして傍らにはバターみたいにてらてらした表面をした大きな薄黄色の塊。

 

「ふーんふんふん、ふふーん♪」

 

 分身体と同じく“捏ね歌”を歌いながら、半竜娘ちゃん(本体)は、木質の器の中身を手で捏ねていきます。

 

 それを興味深く見守るのは、TS圃人斥候と森人探検家。

 

「その器って何でできてるんだ? リーダー」

「ふんふーん、ぬぁ? これかの? これはの、ヒョウタンを輪切りにしたやつじゃよ」

「へー、リーダーの地元ではよく使われるのか?」

「まあそうじゃのー。その辺に種を投げとけば勝手に生えてくるしの。大きさも割とそろっておるし、軽いし頑丈じゃし、種類が違えば大きさも変わるし、年がら年中採れるしのー」

 

 蜥蜴人の出身である南方では、ジャングルや泥濘もあれば、草原地帯(サバンナ)もあります。

 概ね日照も降雨も良いので、農耕や牧畜をせずとも生きていける土地です。

 狩猟採集で生きていけるし、作物だって農耕というよりは放っておけば勝手に生えてきてるものって認識です。

 蜥蜴僧侶さんがチーズをこちらに来てから初めて食べたというのも仕方なし。

 

「へー、なんか森人(エルフ)の器に似てるかも。わたしたちの使う器も、森の木が用意してくれるのよね。見た目も触感もこんな感じでね。懐かしいなあ」

「ほう、意外なところで共通点があるのじゃの」

「そうね。……いや、でもわたしたち森人は身体に土を塗ったりはしないから」

「であるかー?」

 

 そう、半竜娘ちゃん(本体)が作っているのは、故郷から取り寄せた材料を使った、戦化粧(ボディペインティング)用の絵の具です。

 これを身体に塗り付けて、儀礼のために用いるのです。

 

「故郷から、白亜(チョーク)に、赤土、黄土に木炭。で、それだけではなくての。こっちや火吹き山で学んだ錬金や化学も使って作ったのがこれじゃ」

「え、わっ、すっごい青だ!」

「名付けて“竜血青(りゅうけつせい)”じゃ。竜の血を焼いて炭にして砕き、竜の角の灰と混ぜ合わせて更に高温で焼いたあとに、水で抽出。緑磐(りょくばん)*2と混ぜ合わせて酸を加えて()すと出来るのじゃ!」

 

 おー、これはいわゆるプルシアンブルーというやつですね。

 かなり鮮やかな青色が出ます。

 別に竜の血でなくても牛の血でも出来ますが、祖竜に捧げる儀式に、しかも伝統でもないものをぶっ込むことになるため、どうせなら最高級品をと奮発したんでしょう。

 

「作れた量は少なめじゃから、アクセント用じゃな」

「はー、これ、こんだけ綺麗な青なら、売り物になるんじゃねーの?」

「その辺の事業展開は魔女殿に任せておる、そういう投資だのも最近やっておるそうじゃから。ただ、一応故郷にもレシピは送ったがのぅ、作るときに結構なニオイがするからのう……」

 

 生体由来材料を使うので、量産化にはアンモニアなどの悪臭問題がつきまといます……。

 

「ま、今回使う分はもう作ったから良いのじゃ! あとは明日のためにこれらの絵の具を練って寝かせておくのじゃ」

「そのための油かー、これ、そこの塊にも濁りないし、めっちゃいいやつなんじゃねーの?」

「おうとも、これも故郷から送ってもらったものでな、油椰子から絞って精製した最高級品じゃ」

 

 油椰子の油(パーム油)は大体人肌くらいの温度で溶けるので、この秋口の外気温では固まっています。

 半竜娘はそれをナイフで削り、瓢箪の器に顔料と一緒に混ぜ合わせて、色とりどりのドーランを作っていきます。

 

「斯様に手前らは恒温動物であるからして、油椰子の油も手捏ねするうちにきちんと溶けるのじゃなー」

 

 蜥蜴人は変温動物ではないのです、恒温動物です。

 

「竜脂じゃねーんだな。そんなんあるか知らねーが、てっきり竜関係のものを使うと思ってたぜ」

「おお、そこに気づくとは……。実は少しだけ精製したのを持ってきておるのじゃよ」

「あら、すごいわね。それにこっちの方が白……というか透明ね」

 

 半竜娘が空間拡張鞄から取り出したのは、真っ白な脂の塊。

 族滅した竜たちの脂肪を精製して固めたものです。

 しかし、その量はあまり多くありません。

 精製が間に合わなかったのです。

 

「混ぜ合わせるのには油椰子の油の方が、融点の関係でちょうど良いというのもあるのぅ。竜脂は練るには少し固いのじゃ」

「へー」

「戦化粧の仕上げ用の絵の具には、少しは使うつもりじゃ」

 

 十分に顔料と油を練り上げては、契約精霊である水蜥蜴の水霊(ミズチ)に手先を洗い流して乾かしてもらって、また練ってと、次々とドーラン入りの器を増やしていきます。

 

 離れたところでは、半竜娘ちゃんの分身体が、篝火用の柱を、武舞台の周りに立てていっています。

 儀式は、地母神の奉納の儀と合わせて、収穫祭当日の夜に行うつもりなのです。

 蜥蜴人は暗視ができるので明かりがなくても見えますが、明るい方が良いのは間違いありませんし。

 

 順調に今日中に準備も終わりそうです。

 

 というところで今回は……

 

 ぶぉん

 

「とうちゃーく!」 太陽のようなきらめきにあふれた少女の声。

「やはり転移門は早いですね。水の街からここまで一瞬とは」 鍛えた刃のような怜悧で凛とした女性の声。

「……早く大司教様の手紙をギルドに預けて、寺院に挨拶に行く。宿を探すなら早くしないと空きがなくなる」 月のように落ち着いた少女の声。

 

 空間が裂ける音とともに現れたのは、3人の少女でした。

 …………。

 

 アイエエエエエ!? 超勇者ちゃん一行!?

 超勇者ちゃん一行ナンデ!?

 

「む。おいお前たち、こんなところで何をしている? 屋台や見世物の準備にしては街から離れすぎているが……怪しいな

 

 刃のように怜悧な声が、半竜娘ちゃんたちを誰何(すいか)します。

 めっちゃあやしまれとるー!?

 

 というところで今回はここまで!

 ではまた次回!

 

*1
辺境の街の近くの知識神の文庫:原作小説7巻(エルフ婚礼編)の冒頭にてゴブリンに襲撃された文庫。防塁の小さな崩れを放置し、たまたま宿坊を借りていた旅人も少なかったことから大変なことになった。凌辱蹂躙の果てに修道女は半数死亡、死体は食料にされた。また、貴重な書籍も多数失われた。

*2
緑磐:硫酸鉄のこと。




次回は剣聖ちゃん(斬れば分かる系)を言いくるめできるかどうかから。

(ちなみに当初プロットでは、
 ・半竜娘ちゃん単独遭遇
 ・時刻は夜、明かりなし
 ・ボディペインティング試し塗り済み
 ・儀式場に生け贄の血を撒いてサークル作ってるところを見られた
 という役満状態だったので(どうみても邪教徒です本当にありがとうごさいました)、剣聖ちゃんに誰何されることすらもなく“スルリと片付”けられてしまいました。
 今回の状況はそれよりましだぞ!)
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