ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
森人探検家「宝の地図、ゲットだぜ!」
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Q.超勇者ちゃんはカオスフレアに目覚めてるけど、敵の方は?
A.そっちはそっちで多分データ上は、ダスクフレアだったりEvil扱いだったりするんじゃないかと思います(バランスが取れてないと卓上遊戯として遊んでる神々も
まあ、天上の神々が遊んでるシステムが一つだけとは限りませんし? 『カオスフレア』やってる神様もいれば、『シャドウラン』やってる神様もいて、『
――そう、四方世界の<
はいどーも!
前回は半竜娘ちゃんがデートする話で、今回も半竜娘ちゃんがデートする話だ!
今回は文庫神官ちゃんとのデートですね。
時間は午前まで戻ります。
半竜娘(分身)に寄りかかって居眠りしている森人探検家。
森人探検家を挟んで小声でおしゃべりしているTS圃人斥候と半竜娘(分身)。
そんな彼女らに目礼して、最後にやってきた文庫神官ちゃんは、半竜娘ちゃん(本体の方)を連れて離れます。
そして、文庫神官ちゃんの借りている宿屋にやってきたところです。
初手ご休憩……? いえいえ、KENZENな付き合いですから、ご心配なく。
「では、お姉さま! おしゃれしましょう!!」
「おう、良いとも! それで、その服であるか?」
「はい! きっと似合うと思うんです!!」
文庫神官ちゃんのテンション高くて可愛いですね~。
彼女が取り出したのは、
・複雑な紋様で編まれたノースリーブの薄いブラウンのニット
・頑丈そうな布地で作られた、裾が広がった濃い色のズボン……えーと、パンタロンとかベルボトムって言うんですっけ
・その上から羽織る上等なトレンチコート
の3点です。
まあ実際は、ベルトだの小道具もありますが、メインはこの3つ。
下着? 半竜娘ちゃんもつけてますよ。
蜥蜴人は自前の鱗があるし、鱗の代謝は低いから下着がなくても服は汚れないじゃろって?
ああ、むしろ服の内布を鱗のエッジから守るために
蜥蜴人的に正装はマッパですけどね。裸一貫、爪爪牙尾こそ、竜の道。
「これでどうじゃ!」
「素晴らしいです、お姉さま!」
「測らせた覚えもないのに、尻尾穴の位置までぴったりで感心したのじゃ。着心地も良し!」
そして半竜娘が着替える間に、文庫神官も着替えています。
半竜娘とお揃いの編み模様の薄いブラウンのニットで、こっちはワンピースです。
ニットの伸縮性を生かして、身体にフィットするデザインになっています。
そして文庫神官ちゃんの豊かな黒の髪の毛は編み込みのハーフアップに。可愛い!
「そしたら次は、お姉さまの髪の毛も結います!」
「任せた!」
「任されました!!」
張りきった文庫神官は、半竜娘を寝台に座らせ、その尾を寝台の上に流すと、尾を跨ぐようにして寝台の上に乗り、半竜娘の烏の濡れ羽色の髪に櫛を通します。
半竜娘も普段から浴場に通って香油を塗っているためか、櫛の通りはスムーズです。
「できました!」
「ふむ、馬の尻尾のような髪型じゃの」
「うなじを出しつつ、髪の束を後ろに流して、歩くときにコートの裾と髪の先が颯爽と流れるようにイメージしました! 髪留めは角と意匠を合わせて見栄えがするものを!」
ポニテ半竜娘ちゃんになりましたね。カワイイ!
2人分の自前の手鏡を組み合わせて服装チェック。
どうやら満足いく出来上がりのようです。
「良い仕上がりじゃ。では行くかの!」
「はい! 行きましょう、お姉さま!」
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ニットワンピの文庫神官ちゃんがハンドバッグ片手に、ポニテにトレンチコートの半竜娘ちゃんを先導して歩きます。
「して、どこに行くのかの?」
「えーと、お姉さまは潔斎中で食事を控えてらっしゃるので、食べ歩きではないプランを考えています!」
「ほう……」
最初にやってきたのは、水路の船着き場。
遊覧ボートに乗ろうという魂胆です。
「おー、水路を走ったり、沼竜の牙を拾ったりしておったのが懐かしいのう」*1
「あら、お姉さまにも溝浚いをやられてた時期があったのですね」
これは水を抜いた水路を走ったり、かいぼりしたりしたんだと思ってますね、文庫神官ちゃんは。溝掃除は白磁の冒険者が皆、通る道です。
まあ普通は生身で水面走りできるとは思いませんわな。
「?? いや、普通に水面を走ったのじゃが」
「??? あ、【
「? 術ナシじゃが? ほれ、このように」
そう言って、半竜娘ちゃんはごく自然に水面に足を踏み出し、すったんたん、と何でもないかのように向こう岸に渡っていきました。
「は? え? えぇ……?」
「まあ、そのときにコツをつかんでの。久しぶりにやってみたが、ふむ、ざっとこんなもんじゃて」
文庫神官の困惑を軽く流すと、半竜娘ちゃんはまた水面を、たんぱっぱっ、と渡って戻ってきました。
「……。…………。さすがお姉さまです!!」
さすおね!! って、思考放棄したな!? ……気持ちは分かります。
ほら、水路の方を見ていた通行人たちも、二度見して目をこすったりしてますよ。
水路を何事もなく歩いた半竜娘ちゃんを、白昼夢だと思ったんじゃないですかね。
「まあ、それはともかく、遊覧ボートに乗るのじゃ」
「そうですね! そうしましょう!!」
小舟に乗って水路を遊覧すると、いつもとは違った視点から街を見ることになり新鮮です。
水路の壁と水面で音が反射し、まるで異界に迷い込んだようにも感じられます。
「皆さん色とりどりの服でオシャレしてて、小舟から見るだけでも楽しいですねー!」
「そうじゃの~。お、あの青い晴れ着の御令嬢と、鎧兜の戦士は、牧場の娘とゴブリンスレイヤーじゃな」
「ほんとですねー。って、あれ、ゴブリンスレイヤーって、ギルドの受付さんがデートの約束してませんでしたっけ」
一昨日にギルド併設の酒場で、受付嬢が勇気をもって一歩踏み出したのは、記憶に新しいです。
「午前と午後で別の者とデートするのではないかの?
「はー、案外モテるんですねえ。でも話を聞くに恋愛とかよりゴブリンを殺すのに血道をあげているっぽいですから、好きになっても苦労しそう……いえ、まあ、趣味は人それぞれですし」
「じゃな」
趣味云々言い出したら、文庫神官ちゃんには盛大にブーメランになりかねませんからね。「非生産的!」とか言われちゃいます。*2
水路を小舟で下る途中で、文庫神官ちゃんのかつての仲間が堤の上から話しかけてきたりもしました。
どうやら、王都から辺境の街に向かう行商人の護衛がてら、文庫神官ちゃんの様子を見に来たらしいです。
まあ、それだけでなく、ろくに別れの挨拶も出来ず、また、ガーゴイルに吊るされて振り回されてたとはいえ、矢を当てたり魔法を掠めさせたりしたことをきちんと謝罪したかったとのこと。
「助けようとしてくれてたのは理解してますし、最善行動ではあったと思います。恨みっこなしでいきましょう!」
「そう言ってくれるのは助かるが……」
「冒険者なんですから、どこでまた一緒に依頼を受けるかもわかりませんし、その時に備えて
「……ああ、ありがとう。そっちも上手くやってるみたいで良かったよ。元気でな」
「はい、新しい神官の子にもよろしくお伝えください! では、よき収穫祭を!」
「ああ、よき収穫祭を!」
冒険稼業は出会いと別れ。
生きて別れが言えるだけ、上等ってもんでしょう。
実際、半竜娘ちゃんが助けに間に合わなければ、死に別れな上に、文庫神官ちゃんは野晒しの最期を迎えていたでしょうしね。
「というわけで、お姉さま! 今後ともよろしくお願いいたします! さしあたりはデートの続きを!」
「こちらこそ!、なのじゃ」
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水路を下って小舟から降りて、人だかりの方へと向かいます。
「こっちは何があるのじゃったか?」
「ふふ、それはですね――」
そのとき、ドンッという衝突音、「ヒヒーン」という馬の
そして上がる歓声。
音がしたのは、歓声を上げる人だかりの中心からです。
「――野良
馬上槍試合とは!
騎士たちが日ごろの鍛錬の成果を披露する、武のぶつかり合いだ!
手始めに
利害や相手憎しで戦うのではなく、己が鍛えた腕前と戦に臨む勇気を披露するという高潔な競技である!
「まあ、収穫祭のメインは地母神への奉納演舞ですから、おそらくは祭りの運営が呼んだのではなく、勝手に
「なるほど……」
「
これでも騎士家の娘ですから! と、張り切って文庫神官が解説しています。
実際、戦バカの種族である蜥蜴人相手に、馬上槍試合をデートコースとして選択するのは正解だと思います。
現に、蜥蜴人としての血が滾るのか、半竜娘ちゃんの目が輝いて、鱗の尻尾もそわそわしています。
「さっきの音と歓声は、試合が決着したものだったみたいですね」
人だかりに近づくと、勝者と思しき騎馬が、突撃用のレーンをターンして、次の試合の突撃に備えて向きを変えるのが見えました。
オッズを張り出して賭け札を売っているのは、この場を整えた胴元でしょう。
胴間声の胴元の近くで必死にオッズを計算しているいかにも文官風な男は、あるいは交易神や知識神から、計算を速くする加護でも拝領しているのかもしれません。
「――
「う、うーん。でも、折角の御召し物が破れてしまいますよ……?」
「当たらなければどうということはない! 何なら脱いでおけばよい。な、一回だけ! 一回だけじゃ!」
駄々をこねる半竜娘に、文庫神官は、しょうがないと溜め息一つ。
「……じゃあ、飛び入りですね。胴元に話をしてきます」
「おお! 頼んだのじゃ! さて、カモン、
「「 ケーン!! 」」
ぴゅーい、と指笛を吹けば、普通の馬よりも二回り以上も大きな二頭の麒麟竜馬が、観衆の頭上を越えて跳んできました。
……何気に指笛は、蜥蜴人の裂けた口では吹けないので、蜥蜴人的には特殊技能です。只人とのハーフである半竜娘ちゃんならではですね。
あと、指笛吹いてからやってくるまでが早すぎたので、たぶん、文庫神官に切り出す前から、使い魔としての繋がりをたどって呼び寄せていたのでしょう。
それなら、指笛吹かなくても良かったんじゃ、って? でも指笛で出てくるのってかっこいいでしょう?
急に降ってきた大きな馬体に、観客も度肝を抜かれています。
「ふふん! どうじゃ、すごかろう、うちの馬は!!」
「……お姉さま」
「お、どうじゃった!? 飛び入りできそうかの!?」
「相手になる騎馬がおりませんわ。試合不成立です」
「な、なん……じゃと……」
残当。そらそうよ。
明らかにこんな野良試合に出るような馬体じゃないですもん。
相手してくれるような騎士も居ませんて。
愕然とする半竜娘ちゃんを尻目に、文庫神官ちゃんは安堵しています。
(流石に練習もせずに飛び入りは、どっちにとっても危ないですしね……)
「まあまあ、お姉さま。先ずは見るだけにしときましょう。見るだけでもきっと面白いですよ!」
「うーむ、そうじゃのう。デートじゃものな、手前だけ楽しんでも仕方ないか」
「そうです、デートですから!」
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野良ジョストを観戦し、トーナメントの勝敗に賭けたり、「いけー、ぶっ殺すのじゃーー!!」「そこです! 頑張れー!」とか野次や声援を投げて楽しむうちに、日は中天を過ぎて少しずつ傾き始めました。
「もうこんな時間か。そろそろ手前も儀式の準備をせねばな」
「……せっかくですし、荷物を取ってきたあとは
「そうするかの」
「時間も、荷物を取りに行って向かうくらいでちょうど良いかと」
半竜娘ちゃんと文庫神官ちゃんは、宿の部屋で着替えたときに置いてきた荷物を取りに、また、魔女さんの下宿に置いてるものを取りに戻ることにしたようです。
「竜牙兵に取りに行かせても良かったが、術は温存したいからの」
「骨の姿だと、衛兵に捕まっちゃうかもしれませんし」
「祭の客を驚かせるのも本意ではないしの」
「儀式場に行ったら、ボディペイントを手伝ってくれるかや?」
「もちろんです、お姉さま! お任せください!」
というところで今回はここまで。
また次回!
ジョストに飛び入りして、お互いに対決する半竜娘ちゃんと文庫神官ちゃん、というプロットもありましたが、ダイスロールのルールの定めだとかが難しかったので断念。そもそも描写解説することが多すぎるし、調べることも多すぎる……いつか騎乗戦闘を書くのはリベンジしたいですね。
次回は「奉納演
――「分身体よ、お主、独立自我に目覚めつつあるのではないかの?」
アイデンティティクライシス(物理)