ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
デートしたよ!
はいどーも!
一党の仲間との仲を深めた半竜娘ちゃんたちは、前日までに造成しておいた西の儀式場にやってきています。
森人探検家たちのチームとも合流し、一党も全員勢ぞろい。装備もお祭りの晴れ着ではなく、いつもの冒険装備です。
街の外では、何があるか分かりませんからね。備えよう。
「準備するのじゃ! まずは楽隊と歌唱隊から揃えようぞ!」
半竜娘ちゃんの分身が、せっせと楽隊にする竜牙兵を作り、歌唱隊代わりの精霊たちを召喚していきます。
「『
◆祖竜術【
基礎値22+2D623=27
『KURRRR!!』
基礎値22+2D651=28
『COKACA!!』
基礎値22+2D645=31
『GRRRRU!!』
基礎値22+2D624=28
『KUAAAA!!』
触媒たる竜の牙がぼこぼこと膨れ上がり、竜骨の戦士となって立ち上がります。
呼び出されたのは、背中に鋭い棘が生えそろった
身の丈は3m弱ほどもあります。
背中の棘をお互いに叩いてボディパーカッションができるので、楽隊の隊員にはうってつけですね。
「続いて……精霊たちよ! その歌声を聞かせてくりゃれ! 『掲げや燃やせ
◆精霊術【
(火)基礎値19+2D622=23
『炎のダンス、そして情熱の歌!』
(水)基礎値19+2D626=27
『
(土)基礎値19+2D621=22
『地の活力が高まっておるな、地母神の収穫祭の近くのせいか。ワシも負けられん』
「疲れてきたのじゃ」
(風)基礎値19+2D656-消耗1=29
『歌と言ったら風精霊の出番よね!』
「ゼヒュッ、ハア、ハァ。頭が割れそうじゃぁ……」
いずれの精霊も、自我を持つ
祖竜に捧げる歌ということで、契約精霊の
◆半竜娘(分身)呪文使用回数 6→2→0→超過祈祷2回
棘ある竜骨の戦士たち4体と、四元素の精霊たちが儀式場を彩ります。
「ぐぬぅ、つ、疲れたのじゃ……」
半竜娘の分身ちゃんが、限界を超えた呪文行使によってへたり込んじゃいました。無理もありません。
毎度のことなのである意味慣れているとはいえ、魂を削り、脳を割り潰すような疲労消耗は辛いものがあります。もはや気絶寸前です。
「慣れておるとはいえ、分身越しの
もちろん本体にも感覚共有でフィードバックがいっていますが、肉体は別なので幾分かはマシです。
少しキツイ程度で済んでるのは修行の賜物です。
半竜娘ちゃんはこのフィードバックを、武道家としての荒行と同様に考えて繰り返し鍛錬し、本体自らも
『※この半竜娘ちゃんは特殊な訓練を受けています』ってやつですね。
「では分身を上書き再作成して――
「!! のじゃああああぁぁぁ…………上書きされて手前が消えていく感覚もなかなか辛いのじゃぁぁぁ…………」
本体の方の半竜娘ちゃんの真言呪文とともに、疲弊してへたり込んでいた分身体の情報が上書きされます。
◆真言呪文【
基礎値22+2D643=29 発動成功!
【分身】耐久力:29/2(切り捨て)=14
呪文使用回数:本体8→7、分身0→7(上書きによる)
「――復☆活じゃ!」
上書きされた分身体が、しゃきーんと勢いよく立ち上がります。
「分身も上書きしたし、これで準備良しじゃな!」
本体の方の半竜娘も腕組みして満足げに頷きます。
「では、戦化粧のお時間ですね! お姉さま!」
「私も手伝うわ」
「オイラもー」
先日作ったドーランを手にした文庫神官たちがうきうきと半竜娘ちゃんを脱がせにかかります。
塗るときは一応は、天幕を張ってその内側に入って、外からは見えないようにしています。
蜥蜴人的には、正装は鱗一貫です。天幕の内側で全裸になります。とはいっても、鱗で覆われているので肌色ウフンなことにはなりません。美しい烏羽色の鱗がキラキラと黒曜石や石炭の断面のように光ります。
その上から、ドーランを塗っていきます。
2人に全身くまなく塗って
「塗り残しのないように頼むのじゃ~」
「頼まれたわ」「任せとけー」「頑張ります!」
仁王立ちする半竜娘ちゃんズに、一党の仲間がそれぞれドーランを持って取りつきます。
「図案はこれで良いのね?」 森人探検家の視線の先には、半竜娘がこさえたであろう塗り方の指示図面が、文鎮で押さえられて敷物の上に置かれています。
「先ずは木炭のドーランを全身に。次は白亜のドーランで祖竜の骨を表して……」 図面と手順書を見ながら文庫神官がドーランを塗っています。“お姉さまの体に触れる!”みたいな邪念にまみれているかと思いきや、さすが神官だけあって、儀式と煩悩は完全に切り離されているようで、真剣な表情です。
「赤土、黄土で血潮や生命を象徴、ね……」 一方で、神なるものに疎いTS圃人斥候は、邪念を完全には排しきれず、半竜娘の肌に触るのを少し遠慮しているようです。
天幕の中できゃいきゃいと
聞きなれない奇怪な異国の楽器による音楽です。
太鼓の音。
木琴の音。
鉄片を弾く音。
四体の竜牙兵は、楽し気に身体を揺らし、地面を足で踏み尾で叩き、リズムを合わせます。
探るような控えめなリズムは、すぐに噛み合っていきました。
この音楽には、不思議と、魂の奥底に働きかけるような原始的な力強さがあります。
興が乗って来たのか、棘竜牙兵がお互いの身体の骨や棘を叩く音も交じり始めます。
やがて、精霊たちも、その音楽にノッて歌い始めます。
『La---,de---iiaa『ahhtoyoo,---yaaahtuu,----laaa-----『,ah-----……luuua-----,……『woooow,----yaaaabaarrr-------……』
四属性の精霊が合唱し、それによって微小な精霊が喚起されたのか、あたりに燐光が漂い始めました。
幻想的な光景です。
竜牙兵たちが楽しげに奏でる音楽と、精霊たちの輪唱。
恐らくは、魂と生命の輪環を歌い上げているのであろうそれは、まさしく蜥蜴人の信仰と合致するものです。
そしてこれだけ派手にしてれば、道行く人の目にも留まります。
「おっ、なんだなんだ、こんなとこにも楽団がいるのか」「こりゃ精霊か?」「わぁー、お母さん見て、きれ~」
街に行くのか、村に戻るのかどちらか分かりませんが、幾人かの通行人が足を止めています。
まあ、今ならまだ単に陽気な異国の楽団、って感じですからね。
これからは
…………。
……。
そうして時間が過ぎ、夕暮れ時。
全身に戦化粧を施した2人の蜥蜴人が天幕から姿を現しました。
半竜娘ちゃんと、その分身です。
全身くまなくドーランを塗られた姿は、恐るべき竜の骨格を思わせる模様をベースに、そこに複雑な紋様を色とりどりに重ねたものです。
特に、仕上げに正中線などに塗られた竜血青の鮮やかで美しい青が目を引きます。
いきなりの蛮族のエントリーに、竜骨と精霊の楽隊を見物していた見物人たちはぎょっと驚いています。
飾り羽を頭に差し、服は身につけず、竜骨の紋様に包まれた半竜娘ちゃんズは、示し合わせたかのように、同時に麒麟竜馬に飛び乗ります!
「せぃやっ!」 「いくのじゃ!」
「「 ブフルルルルル!! 」」
何しに行くのか。
決まっています、新鮮な生け贄を探しに行くのですよ!
この生贄は、ただの動物よりも、敵対手であることが望ましく、己の手で仕留めたものであるべきです。
つまり狙いは、近づいてきているであろうゴブリンの一団です。
ゴブリンが来てるって何で分かるのかって?
そりゃ
プロの勘は当たる(確信)。信じろ。
それで、流れとしては、森人探検家とTS圃人斥候に先行させ、ゴブリンを見つけてもらいます。
見つけられたら二人には勢子として、騎馬突撃しやすい場所に小鬼を誘導してもらい、半竜娘ちゃんズが蹴散らし、引き倒します。
文庫神官ちゃんは儀式場でお留守番です。
では、GO!!
◆ゴブリン見つけられた?(観察判定:目標値2D636+怪物Lv1(小鬼)=10)
森人探検家 :知力集中6+野伏Lv8+2D623=19 > 10 発見!
TS圃人斥候:知力集中5+斥候Lv7+観察2+2D623=19 > 10 発見!
「あいつらアレで隠れてるつもりかしら」
「ゴブリンってばかだよな~」
森人探検家とTS圃人斥候は、あっさりと街道から離れた茂みに潜むゴブリンを見つけ出しました。
夕暮れが迫ってきたとはいえ、まだ日のある時間……小鬼にとっての
「じゃあ追い立て――いや、囮になって誘導した方が早いかしら」
「あー、確かに、ゴブリンだしなあ。それにオイラたちが殺したら儀式に使えないとか言ってたし、リーダーがとどめを刺すなら下手に攻撃せずにおいた方がいいかー」
ということで、森人探検家とTS圃人斥候は、わざとゴブリンの前に姿を現します。
『GOOBB!!』
『GRROO!!』
2人の姿を認めるや、小鬼たちはニヤニヤと舌なめずりします。
まあどうせ、「バカな獲物がやって来たぜ」「戦いの前に楽しむのも許されるだろう」くらいのことを考えているのでしょう。
自分たちがやられるなど露とも考えないのが小鬼です。
「はいはい、さっさと追ってきなさい」
「オニさんこちら、ってな」
森人探検家とTS圃人斥候は、付かず離れず、ゴブリンたちを誘導します。
◆誘導は成功?(軽業判定:目標値12(小鬼の攻撃値引用))
森人探検家 :技量集中10+野伏Lv8+体術1+2D666+CRT5=36 > 12 誘導成功!
TS圃人斥候:技量集中9+斥候Lv7+体術1+2D651=23 > 12 誘導成功!
誘導した先は、木々の少ない少し開けた場所です。
「小鬼めらが来おったな!」 「全部で、まあ15匹くらいかの」
戦化粧して麒麟竜馬に騎乗した半竜娘ちゃんズが、そこからさらに離れて騎馬突撃の助走距離を確保できるように待機しています。
その手には鉤縄が何本も握られています。片手に5本ずつ、合計10本、2人で20本の鉤縄を持っています。
「ゴブリン釣りじゃ!」 「曳き回しの刑であるぞ!」
突撃し、すれ違いざまに鉤縄を引っかけて、儀式場まで引っ張っていくつもりです。
鉤縄は、『拘束』属性付きの棍杖(命中修正-5、基本威力1D3-1)として扱います。
『GOOOBBBB!!』
「行くのじゃ!!」
◆騎馬突撃+鉤縄による拘束(命中判定:目標値12(小鬼回避値))
計算式:技量集中7+武道家Lv3(騎乗制限により低下)-命中ペナ5+2D6 ⇒ 5+2D6
「AAAALaLaLaLaLaie!!」
『GOORROBB!?』
◆突撃1回目(継戦カウンター+1)
半竜娘(本体):右手側5本
5+2D631= 9 ×拘束失敗!
5+2D621= 8 ×拘束失敗!
5+2D625= 12 ○拘束成功!
5+2D653= 13 ○拘束成功!
5+2D611= 7 ×拘束失敗! ファンブルのため鉤縄破損!
半竜娘(分身):左手側5本
5+2D653= 13 ○拘束成功!
5+2D611= 7 ×拘束失敗! ファンブルのため鉤縄破損!
5+2D612= 8 ×拘束失敗!
5+2D663= 14 ○拘束成功!
5+2D634= 12 ○拘束成功!
麒麟竜馬がゴブリンの集団の中を駆け抜けます。
半竜娘ちゃんの本体右手側で2匹、分身左手側で3匹のゴブリンの肩や腕に鉤縄を食い込ませ、曳き回すことに成功しました。
1回目の突撃の戦果は、合計5匹ですね。
難を逃れた小鬼たちは、捕まったやつらを嘲笑っています。まあ、小鬼ですからね、仲間意識なんかありません。
麒麟竜馬たちの機動力はすさまじく、突撃後はすぐに離脱して、小鬼の追いすがれる範囲から離れます。
「2匹と3匹。まずまずじゃの」 「ではターンして第2弾じゃ!」
小鬼程度を2、3匹曳き回したくらいでは、麒麟竜馬の脚に陰りはありません。
使い終わった鉤縄を鞍に結びつけると、ターンして逆側面の鉤縄を使えるように進路を調整します。
曳き回されている小鬼が醜い叫びを上げますが、それを気にする者などいません。
◆突撃2回目(継戦カウンター+1)
半竜娘(本体):左手側5本
5+2D655= 15 ○拘束成功!
5+2D663= 14 ○拘束成功!
5+2D656= 16 ○拘束成功!
5+2D641= 10 ×拘束失敗!
5+2D613= 9 ×拘束失敗!
半竜娘(分身):右手側5本
5+2D615= 11 ×拘束失敗!
5+2D641= 10 ×拘束失敗!
5+2D626= 13 ○拘束成功!
5+2D635= 13 ○拘束成功!
5+2D661= 12 ○拘束成功!
さらに追加で3匹ずつ曳き回すことに成功しました。
1回目の突撃と2回目の突撃で、合計11匹を拘束!
もちろん小鬼たちは脱出を試みますが、脱出判定の値は「攻撃基礎値12-拘束ペナ2=10」としますので、半竜娘ちゃんズの拘束攻撃の値を上回ることはできず、脱出はできません。
鉤縄は、小鬼たちの肉体に深く食い込み、曳き回されるうちにさらに小鬼同士で絡まり、抜け出すことは困難になります。
「まあ十分じゃろ」 「戻るかの。あとの始末は任せたのじゃ!」
半竜娘ちゃんズは小鬼を引きずったまま、儀式場の方へと引き返しました。
小鬼の悲鳴とともに土煙とともに去っていきます。
拘束されなかった小鬼は残り4匹。
「ま、今更小鬼程度どうにでもなるわね」
「半々でいいかい、エルフパイセン?」
「矢の方が早いわよ、一匹も仕留められなかったら奢りなさいよ?」
「げっ、そりゃねーぜ!!」
まあ、森人探検家とTS圃人斥候にかかれば、小鬼程度はどうということもありません。
森人探検家とTS圃人斥候の継戦カウンターを+2して、小鬼を殲滅!
…………。
……。
盛り土した土俵のような儀式場まで、小鬼を11匹引きずりながら戻ってきた半竜娘ちゃんズ。
小鬼の悲鳴で異常を察知していた見物客たちは、既に逃げ出しており、その姿は見えません。
「おかえりなさいませ、お姉さま方!」
「留守役ご苦労!」 「では生贄の血を撒くのじゃ」
「私はお色直しのお手伝いをいたします」
引きずられるうちに団子になった小鬼たちが逃げないように見張りつつ、鉤縄を纏めて引きずり、儀式場の土俵の上へ。
棘竜牙兵に小鬼を押さえさせ、半竜娘ちゃんは自慢の爪でその小鬼の首を飛ばしていきます。
演奏と歌唱も続いており、まさしく異教の儀式じみてきました。
その間に文庫神官は、手の空いている一方の半竜娘ちゃんの戦化粧を直していきます。
途中で、半竜娘ちゃんの分身と本体は、お色直しと血を撒くのを交代します。
お色直し中も、首を失った小鬼の身体を持った棘竜牙兵が、小鬼の死体を逆さにして歩き回り、儀式場にまんべんなく血を撒いていきます。
もはや武舞台の上で血に染まっていないところはありませんし、武舞台の四隅には小鬼の死骸が積み重ねられていきます。
流れた大量の血の匂いが儀式場を満たしました。
「うむうむ、闘争の功というにはささやかじゃが、小鬼の血でもまっさらよりはマシじゃな」
「ではさらにこれを撒くのじゃ」
戦化粧を直された半竜娘ちゃんが、空間収納鞄から
甕の中から出てきたのは、“泥”です。
「お姉さま、それは……?」
「故郷より取り寄せた、密林の泥濘じゃ」
「やはりコレがなくば、我らが戦場とは言えぬからのう」
血濡れの武舞台に、密林の泥濘が撒き散らされます。*2
敵の血と泥濘。
これこそが、蜥蜴人にとっての
「これぞ儀式に相応しい領域じゃて」
「きっと祖竜に供物が届くじゃろう」
周囲に目をやれば、森人探検家とTS圃人斥候も既に戻って来ています。
麒麟竜馬たちも、棘竜牙兵と自由精霊のもたらすリズムに合わせて、蹄を踏み鳴らしています。
日はついに沈み、天灯を飛ばす時間です。
「せっかくじゃから」 「天灯を飛ばすのじゃ」
「ええ、そうしましょう、お姉さま」
それぞれが荷物の中から天灯を取り出すと、宙を泳ぐ火の精霊が火を付けてくれます。
それと時を同じくして、街の方からも多くの天灯が浮かび上がりました。
「……綺麗ですね、お姉さま」
「ああ」 「そうじゃの」
半竜娘ちゃんたちが上げた天灯も、すぅっと浮かび上がり、天へと昇っていきます。
「…………。さて、ではやるかの」 「おうとも、やろうぞ」
儀式場の周囲の篝火は、既に火の自由精霊が火をつけています。
この幽境の時間、街の方でも地母神への奉納演舞が始まるはずです。
半竜娘ちゃんズも、いよいよ
「いと慈悲深き慈母龍よ!」 「末裔からの捧げものを受け取り給え!」
――ドンッ、という太鼓の音を皮切りに、棘竜牙兵と自由精霊、麒麟竜馬たちが、楽器で、己の身体で、歌声で、蹄で、音楽を奏で始めます。
武舞台の上で向かい合うのは、半竜娘ちゃんと、その分身体。
肩を怒らせ、腰を落とし、威嚇するように声を出します。
「ハイヤッ ハッ!」 「ヤッ セイッ!」
手を身体に打ち付け、大きな音を出して自らの身体と鱗を誇示します。
「おお、恐るべき竜よ! 猛き竜よ!」
「愛深き慈母龍よ! 我らの歩みを御照覧あれ!」
半竜娘ちゃんの本体と分身は、武舞台の中央で喊声を上げ、歌いながらぶつかり合います。
「
獰猛に笑いながら、本体が分身体へ殴りかかります。
「
同じく獰猛に笑いながら、分身体がその手を弾きます。
「
本体がさらに讃美歌を歌い重ねながら、身体ごとぶつかり――
「
――分身体はそれを受け止め弾き返します。
棘竜牙兵の演奏も盛り上がり――
『『『『
――精霊たちのコーラスが、さらに入り混じります。
「「
『『『『
激しくなる攻防。精霊のコーラスも高まり、燐光があたりを照らしています。
「「
『『『『『
周りで見ていた森人探検家も、精霊の言葉でいつの間にかコーラスに加わっています。
「「
『『『『『
無限の進化を歌う、蜥蜴人の讃美歌。TS圃人斥候は、近くの棘竜牙兵の背の棘を骨琴としてリズムに加わっています。
「「
『『『『『
文庫神官は、ただただその壮烈な光景に見入っています。少しも見逃さないように、全てを記録するという知識神に仕えるものとしての性が、瞬きすらも忘れさせたようです。
「「
讃美歌の一つの区切り。
それに合わせて前哨戦もお終いとなります。
本体と分身体が、武舞台の上で距離を取り、息を整えます。
そのとき、武舞台の外から、麒麟竜馬が半竜娘の空間収納鞄を口で銜えて首を振って、投げ入れました。
半竜娘の本体がそれを受け取ると、中から禍々しい『手』の呪像を引きずり出しました。
その呪物を片手に、分身体と対峙します。
「のう、分身体よ。手前は不思議に思ったのじゃ、仲間が本体と分身を見分けられたことを」
「……」
確かに森人探検家は、収穫祭の朝に、分身の方に狙って肉串を食べさせたようでした。
分身体は本体と同じものであるはずなので、なぜ見分けられたのか、不思議と言えば、不思議です。
「前に魔女殿も言っておった、【
「……」
「……貴様、独立自我が芽生えつつあるのではないかの?」
「……」
ドッペルゲンガーの呪い、なり替わり……【分身】の呪文の副作用。
「であれば、今がチャンスじゃぞ? 何しろこれから、手前は貴様を受肉させようというのじゃから」
「……」
「『手』の呪像を埋め込み、分身を侵食させ実体化させる。手前はそれを打倒し、貴様の心の臓を食らい、祖竜に捧げる」
「……」
「四方世界広しと言えど、己の心臓を食らい捧げた者は多くあるまい。そして、手前の考えうる最上級の供物でもある。きっと、祈りは天上にまで届くであろう、必ずや、な」
「……」
無言を貫く分身体へと、半竜娘は『手』の呪像を振りかぶり、投げました。
「弱肉強食! 適者生存! 我が糧としてくれる!」
「……」
投げられた『手』の呪像が、分身体に突き刺さり、ズブズブと沈み同化していきます。
固唾を呑んで周囲が見守る中で、分身体は震えながら身をかがめ――その背を突き破り、三本目の腕が現れました!
『く、くかかか。いまここに、
「それはこちらのセリフよ!!」
半身すら捧げようとする半竜娘ちゃんと、日ごろ便利に使い潰されている鬱憤を以て逆に食らいつくそうとする分身体によるガチンコバトルの開幕です!
激戦の予感に、棘竜牙兵と自由精霊の奏でる戦いのリズムもボルテージを上げていきます!!
というところで今回はここまで!
ではまた次回!
女神官ちゃんが、しゃんらしゃんらと可憐に奉納演舞をしている同じ時間に、マオリ族のハカとか相撲神事みたいに筋骨をバチンバチンさせて奉納演武する半竜娘ちゃん。このギャップよ……。
次は「VSダーク半竜娘ちゃん」(ゼルダの伝説の「ダークリンク」的なイメージ)。
やりたかったネタの一つなので書けて嬉しい。
最後の方の讃美歌の歌詞は、アフリカのズールー語の讃美歌「シヤハンバ Siyahamba」から。ルビの和訳は劇中に合わせて超意訳。元の歌詞は「神の威光の下 我らは行進する」って感じです。著作権は切れてるようですが、一応JASRAC管理番号掲載。