ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
覚知神託・雷精捕獲・上鉱人霊・軽銀武具・小鬼聖軍
はいどーも!
雪景色、湯煙、美少女
……前もこんなことあったな?
さて、前回は新しく郊外にお家を建て始めて、山間の村々への食糧救援依頼に出発したところまででしたね。
半竜娘ちゃんたちは、順調に依頼をこなして回っています。
麒麟竜馬が曳く馬車に加え、空間拡張鞄でちょっとした隊商並みの物資を運べますし、いざ不足が出ても、腕を【
十分な冬山対策の装備を揃えたこともそうですが、一番大きい勝因は、やはり、地母神の【
「次の村は無事だといーけどな」
雪中にもかかわらず相当の速度で走る馬車を御者席で操りながら、周囲を警戒するTS圃人斥候。
もこもこの白い防寒具――
周囲の寒気は、半竜娘ちゃんが馬車に付与した【
「進むにつれて、略奪にあって全滅した村が、結構多くなってるものね。なんか良くないことが起こってるわよねぇ」
森人探検家が馬車の小窓から外を見ながら返事をします。
視点を馬車の中に移せば、森人探検家の手元には、この周辺の精細な地図が。
どうやら半竜娘ちゃんが空から見た地形を、優れた頭脳で記憶し、書き起こしたもののようです。
その手製の航空地図には、壊滅した村を示すのであろう
壊滅していた村の数はそれなりにあり、地図上のある一点に向かうにつれて、その密度を増しているようにも思えます。
「不幸中の幸い、アンデッドになる前に、それぞれの村で亡くなられた方の弔いは済ませられました……。運よく隠れていた生き残りの方たちは、お姉さまがその都度、麓まで飛んで届けになりましたし……」
文庫神官は、弔った村人たちを思い返し、馬車の中で痛ましげな表情です。
「……」 「……」
半竜娘ちゃんの本体と分身体は、馬車の中で【
ザッザッザッと、サスカッチの毛皮で作られた防寒着を纏った麒麟竜馬が雪山を進む音だけが、雪に染み込みます。
【
とはいえ、そろそろ本当に山深くなってきたこともあり、残りの配達先はあと2か所です。
「……よし、切り替えましょ。次の村は、確か温泉が湧いてるのよね!」
森人探検家が、さっと話題を切り替えます。
火山地帯なのか、温泉が湧いているということです。
熱心な浴槽神の巡回僧が、温泉を掘り当てて湯殿を作っていったのだとか。
「温泉か、楽しみだな!」
TS圃人斥候も、御者席から話題に乗ってきます。
「旅の垢を落としたいですね。身体を拭くだけじゃなくて、足を伸ばして湯に肩まで浸かって……」
温泉の効能に思いを馳せて、文庫神官が相好を崩して、ほぅっとため息をつきます。
半竜娘ちゃん
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「ちょうどいいところに来たな。ゴブリンだ」
目的の村についた半竜娘ちゃんたちを出迎えたのは、ゴブスレさんでした。
アイエエエ……、ゴブリンだよう……いやだよう……、ゆっくり休ませてよう……。
「おっ、半竜の娘っ子! 食糧を持って来たんか? 酒はあるか?」
鉱人道士が酒を催促してきます。
そりゃ積んでありますよう、新年のお祝いにお酒は必要でしょう?
配達先の村はまだ1つ残ってましたが、情報を照合した結果、ゴブリンに壊滅させられているっぽいので、この村で残りの物資は全部下ろしますよ。
ぐっとガッツポーズする鉱人道士は置いといて、先に荷物を運び込んじゃいましょう。
半竜娘(分身)ちゃんたちは、ぽいぽいと空間拡張鞄から物資を取り出し、村の倉庫に積み上げていきます。
これだけ物資があれば、村人たちも安心でしょう。村長らしき人がホッと安堵しているのも見えました。あ、予定より多いのは在庫処分だし、冒険者たちの滞在分ということでサービスしときますよ(無料とは言ってない)。……今度は村長の顔が青くなりましたね。
その間に、一党の頭目たちで会議です。つまり、ゴブスレさんと、半竜娘ちゃん(本体)と、令嬢剣士ちゃんの三人ですね。
かくかくしかじか、まるまるうまうま。
お互いの持っている情報や手札を交換し、整理します。
…………。
……。
「なるほど、覚知神に仕える小鬼の軍勢、
半竜娘ちゃん(本体)が、話し合いの場にした集会所の床に座って噛みしめるように言います。
数が多い小鬼が賢くなったとなれば、まあ、面倒な話です。
「周囲の村から攫われた人々の数も、相当に上るはずです。そちらも見捨てる訳にはいきません」
令嬢剣士の言うとおり。
冒険者たるもの、捕虜の救出にも力を注がねばなりません。
吟遊詩人の唄でも、囚われの娘を助け出すのが冒険者の役どころですからね。
「ああ、それじゃが、女だけじゃないかもしれんぞ。これまで見てきた村には、男の死体も少なかったし、男も含めて引っ立てられておるのを見たと生き残りからも聞いとる。その砦で文字通り食い物にされとるじゃろうが、運が良ければ生き残りがいるかもしれんし」
半竜娘ちゃんが、これまでに見てきた他の村の様子から補足します。
通常、小鬼は人族の男を捕虜に取りませんが、今回の群れは違うようです。
自分の足で歩ける非常食兼鉱山労働力くらいの扱いをしているのでしょう。
「……そこの小鬼が精錬の術を学んだならば、一匹たりとも逃がすわけにはいかん。渡りになってその知識を広げられてはコトだ」
今回、一番の懸念はソレです。
かつての混沌との大戦で、小鬼が騎乗技術を得て広めたように、軽銀の製法を広めさせるわけにはいきません。
全て、文字通り、根絶やしにする必要があります。
「できれば、製法については接収したいですわ」
とはいえ、令嬢剣士としては、その軽銀の精錬技術も目標の一つに入ってきます。
「小鬼を殺すのが先決だ」
「もちろんですわ」
まあ、流石に優先目標を誤ることまではしませんが。
「ふーむ。まとめると、じゃな。こっちが目指すべきは大きく二つ」
半竜娘ちゃんが指折り数えます。
「一つは、捕虜の奪還。
で、もう一つは、ゴブリンの殲滅で、しかも、絶対に一匹たりとも逃がさないこと。
ついでに、軽銀装備の製造方法の接収ができればさらに良い、というところかや」
絶対の目標2つに、あわよくばという副目標が1つですね。
「そのためには、入念な計画が必要ですわ。砦の見取り図や、小鬼の数、捕虜が捕らえられている場所、抜け穴の有無……」
令嬢剣士はその困難さに顔をしかめています。
「あまり時間はかけられんぞ。小鬼どもが打って出てきたら、村を守りきれん」
小鬼殺しがさらに時間的制約についての条件を加えます。
「捕虜たちも日を置けばそれだけ助けられる数が減るじゃろうしな。……小鬼殺し殿は、なんぞ秘策でもあるかの?」
半竜娘ちゃんの問いに、小鬼殺しはいつものように兜の奥の瞳を赤く光らせて――
「手はある」
――と答えました。
「聞くのじゃ」 「お聞きします」
半竜娘と令嬢剣士が、銀等級の【辺境最優】の言葉を聞くべく居住まいを正しました。
…………。
……。
ゴブスレさんが開陳した作戦を聞いて、半竜娘ちゃんはさらにそれを自分たち一党の能力を加味して微修正していきます。
令嬢剣士は、ベテラン冒険者たちのやり取りを聞いて、時々質問したりして、興味深そうに学んでいます。*1
「砦に潜入するなら、変装ではなく――」
「そうか、空から不可視化して――」
「【
「血を固まらせない方法……。確か、昔、姉が檸檬と重曹を混ぜると――」
「檸檬と重曹なら、持ってきた物資にあったはずじゃ。使える工房は――」
「村の薬師の娘に協力を――」
「空間拡張鞄の容量は――」
「生き物も死体も入れられるはずじゃから――」
「抜け道は潰して――」
「雪で固めて――」
「呪文で吹雪を呼べば――」
「いや発破で雪崩を――」
…………。
……。
小一時間ほど話をして、粗方の算段が付いたので、この計画をもとにそれぞれの一党のメンバーに、各リーダーが指示を伝えることにしました。
ゴブスレさんの方針で、メモの類は残さないことになってますから、それぞれの頭に作戦を記憶します。
「まあ、これなら何とかなるじゃろう」
「ああ。来てくれて助かった」
「なんのなんの。ま、手前が居らんでも、小鬼殺し殿なら何とでもしたじゃろうて」
実際、ゴブスレさんならたぶん何とでもできたでしょう。
半竜娘ちゃんがいた方が飛躍的に手札と、安全性が増すことは確かですが。
では、行動開始です!
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◆作戦第一段階:『潜入偵察』 及び 『捕虜の救出』
半竜娘ちゃんの分身体は、巨大化した背に、冒険者たちを乗せて【竜翼】の祖竜術によりもたらされた翼を駆って飛んでいました。
空から目的の砦を見下ろせるとこまでやってきたところです。
背に乗せられた冒険者たちは、各チームから偵察要員として斥候職の者を、そして捕虜への手当を行う者として神官・竜司祭の者を選抜しています。背に乗っている選抜者は以下のとおり。
・ゴブスレチーム:蜥蜴僧侶、女神官
・令嬢剣士チーム:鉱人神官、圃人女斥候
・半竜娘チーム :TS圃人斥候、半竜娘(本体)
野伏のエルフ(妖精弓手、森人探検家)は、討ち漏らしが出ないように砦の周辺に伏せさせます。遠距離攻撃大事。
ゴブスレさんも斥候技能持ちですが、村の防衛指揮が必要なので残ってもらっています。
文庫神官ちゃんは……ほら、お空がトラウマなので……。空挺作戦とか無理で……。まだ強制的に乗せなきゃならないほど切羽詰まってもないので、お留守番です。まあ、留守居組に神官が居ないのも問題ですしね。
さらに、空挺潜入組の蜥蜴僧侶さんと半竜娘ちゃんは、自前の【
それ以外の人員も、半竜娘ちゃんが【
全員、匂い消しを使用しているので、匂いで見つかることもないでしょう。
つまり、光学迷彩状態の飛行ユニットを用いた空挺作戦で侵入するわけですね!
ふはははは! 防ぎようがなかろう!!
侵入後は、光学迷彩状態のまま、斥候職の者を中心に捕虜の場所を探り、敵の戦力・配置や砦の構造を調べます。
全ての捕虜の場所が分かれば、救出に移ります。
先ずは危篤状態の捕虜に、
そして、空間拡張鞄に捕虜を全員詰められるだけ詰めて、脱出です。
1回で足りなければ、2回3回と行う必要があります。
少々厄介なことに、反乱防止のためか、単に人数が多いためか、砦内部の捕虜の収容所は分散しており、さらに鉱山労働用の捕虜の場所は砦から離れているようです。
大容量の空間拡張鞄3つで馬車3台分の容量ですから、これを上手く使って救出する必要があります。
まあ、最終的に、何とかして捕虜を全員助け出しました。
途中で、真面目に巡回していた小鬼に見つかってしまったのですが、サクッと殺して死体は空間拡張鞄に収納して隠します。
悪い小鬼はしまっちゃおうね~。完全犯罪成立です。
で、このままだと、捕虜を失ったことに気づいた小鬼聖戦軍が村に押し寄せてくるので、小鬼どもを砦に封じ込めないといけません。
そのために、作戦は第二段階へ移行します。
◆作戦第二段階:『氷棺封印』
半竜娘ちゃん
使う呪文は、天候操作の真言呪文――【
砦の傍で、天候操作により、過冷却状態の小雨と、超寒波による吹雪をひたすらに繰り返すだけです。
さらに、魔術師組により、砦周辺の山に術を打ち込み、雪崩を誘発させます。
これで、砦を雪に埋め、氷でさらに分厚く覆っていきます。
砦の一部の部屋は、煌々と火を焚いているせいか凍りませんが、それはそれで構いません。
数日、そうやって小雨と寒波を繰り返す間も、【擬態】を込めた【竜血】で不可視化した斥候・戦士が、空挺で侵入し、暗殺により
このとき、【竜血】は、抗凝固剤で固まらないようにして瓶に保存したものを使います。*2
半竜娘ちゃんの分身の血も、【竜血】をかけると消えなくなるようで、助かりました。あるいは、半竜娘ちゃんの【職人:魔道具】の技能のおかげかも知れません。さすがに永続ストックはできませんが、数日なら効力を保つことが、『【鑑定】の手袋』のおかげで判明しています。
このまま漸減させていくことが出来ればそれでよかったのですが、敵もさるもの。
そう簡単にはコトは進みませんでした。
◆作戦第三段階:『流星鉄槌』
連日の潜入暗殺の際に、敵に反抗の兆しを感じたため、先制攻撃します。
砦の周囲は、すでに氷河のような分厚い氷に覆われています。
抜け穴があったとしても、それは氷の重さで押し潰されていることでしょう。
そこにダメ押し。
半竜娘ちゃんの分身による、【加速】【巨大】【竜翼】【突撃】の航空突撃コンボにより砦直上から急降下特攻。
圧し潰します。
しかし、それを察知した小鬼聖戦軍は、
1度目は防がれ、小鬼たちの勝どきが響きました。
数分置いた2度目の突撃も防がれましたが、勝どきは小さくなっています。動揺が手に取るように分かります。
3度目はついに防ぐことが出来ず、直撃しました。おそらく小鬼精兵たちは超過詠唱の反動で倒れ伏したのでしょう。
4度目、5度目で、砦内部を完全に崩壊させました。
さらに、これまでに引き続き、小雨と超寒波を【
ここに至っては、砦上部も氷に覆われたため、不可視化による侵入暗殺も不可能になります。
◆作戦第四段階:『決戦/迎撃』
本当に皆殺しにできたのか確認しなくてはなりませんが、それは祖竜術の【
その確認のため、念のため冒険者たち全員で氷の棺に封じられた砦に近づいたとき、それは起こりました。
『GGGRRRRROOOOOOO!!!!!』
暴走して白熱した雷電の精霊が氷の壁に穴を空け、半霊体である
というところで今回はここまで!
それではまた次回!
相変わらず酷使される分身体……(反逆カウンター累積中)。
半竜娘ちゃんばっかり働いてるように見えますが、その間、他の人も救助した捕虜の世話だの、外回りに出ていた小鬼の別動隊が居ないか狩り回ったりだのして働いています。
まあ、確かに、半竜娘ちゃんありきの作戦ではありますが、本人に不満はない模様。
小鬼殺し「……やはり便利……」
半竜娘「能力を存分に発揮するの、たぁーのしぃーい!! ひゃっはー!!」