ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
マンチに三次元戦闘の手段を与えるな。
――どうして?
選択肢が広がりすぎてGMが死ぬからだ。見ろ、ダンジョンギミックは既にお亡くなりになった……。シナリオも虫の息だ……。
1.
白い神官服に身を包んだ女神官は、悲鳴を上げないように必死にこらえていた。
周囲に気を巡らせれば、同じく歯を食いしばっているだろう令嬢剣士一党の圃人女斥候や、知識神の神官の鉱人のくぐもった声が、轟轟と鳴る風の音に交じって耳に入る。出発前に見た冒険者証を思い出せば、彼らはまだ白磁の駆け出しだったはずだ。*1
自分もなかなかに数奇な経験を積み上げていると思うが、駆け出しの時分にこの体験とは、これはこれで同情せざるを得ない。*2
何せ、竜の背に乗って、空から砦に侵入するのだ。
――先の大戦の最前線では竜に乗った魔神の攻撃もあったと聞きますが。
まさか自分がそれをやることになろうとは。
しかも、混沌勢力でもなく、秩序側なのに。
同じく竜の背の上にいるはずの、同期の半蜥蜴人の女を思う。この女傑は、分身の術も使えて、竜の翼で空も飛べて、天気を晴れにも出来るという凄腕だ。今乗っている、六人も載せられるくらいに広い背中を持つ人面飛竜も、彼女の分身体の変化である。しかしまあ……。
――ほんとうに、色々と紙一重というか、度し難いというか、なんというか……。
女神官が慕う銀等級の小鬼殺しもなかなかのものだが、この半竜の巫女も、負けず劣らず
混沌の呪物を利用した儀式で祖竜に供物を捧げたり、地母神を慈母龍と意図的に習合させようとしたり、やることがギリギリ紙一重で混沌めいている。
思えば出会った日――冒険者登録初日――に彼女がやらかした、古竜の族滅も、上手くいったから良かったものの、一歩間違えば辺境の街が竜災で滅んでいた。
周囲への影響を軽んじているという面では、小鬼殺しよりも要注意かもしれない。
しかも、小鬼殺しと半竜の巫女が二人そろうと、さらに相乗効果で加速度的にやらかしが悪化する。
それを今、女神官は、身をもって実感していた。
今回の竜挺降下作戦も、この二人の合作だという。
姿を景色に溶け込ませる祖竜術を使っての、空からの隠密的な砦への潜入。
小鬼たちも、気づくのは難しいだろう。まさに、慮外の一撃となるはずだ。
――私は私の仕事をしましょう。
とはいえ、その作戦を合理的だと思ってしまう自分もいる訳で。慣れてきたなあ、と思わなくもない。
砦の城壁が近づいてきている。
いくら姿を術で誤魔化していても、着陸時の音までは誤魔化せないだろう。
しかし、それならば音も奪えば良い。
「『いと慈悲深き地母神よ、
女神官が小声で請願した、静謐をもたらす奇跡が、光学迷彩状態の
「……」
「……」
お互いに姿も見えず、音も聞こえないが、足裏から伝わる感触を頼りに、半竜娘の分身体である人面飛竜から降りると、積もった雪に符丁を書いて、二手に分かれて散っていく。
腕を竜の翼にした半竜娘の巨大化分身体は、ここで待機だ。いざというときには暴れて陽動として注意を引きつけることも視野に入っているが、基本は脱出の足の確保のため待機となった。巨大化した防寒具(飛竜形態用)を着込んでいるので、この寒空でも平気だろう。
女神官は、蜥蜴僧侶と、半竜娘の一党から臨時で加入した
蜥蜴僧侶は、出かける前に鉱人道士から懐炉の温石を貰っているし、水中呼吸の指輪もつけて、寒さへの対策を積んでいる。*3
もう一方のチームは、令嬢剣士一党から圃人女斥候と鉱人神官がペアを組み、半竜娘がそれに加わっている。奇しくも、どちらのチームも、斥候・神官・竜司祭の組み合わせだ。
呪的
――こっちのチームのリーダーを任されたのは、正直、荷が重いと思うんですが……。
そう、なぜか、女神官がこっちの
荷は重いが、しかし、
やらねばならないし、やり遂げたい。あの
砦の構造を調べ、出来ればこの機に一斉に捕虜を奪還する。それが今回の竜挺作戦の目標だ。
そのために、静かに、速やかに、行動を始めなければならない。
【沈黙】の範囲を自分たちの周囲のみに絞る。血を介して付与された【擬態】も、まだ維持されている。姿は背景に同化し、音は全て消えた。
よほどのことがなければ見つかったりはしない、はずだ。――油断は禁物だが。
事前に決めた通りに壁に白墨で符丁を書いて指示を出すと、半竜娘一党の圃人斥候が先頭に立ち、素早く砦内へと進み出した。
<『1.第一段階――『潜入偵察』は順調に推移中』 了>
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2.ありえないものの
半竜娘(本体)が率いた方の砦潜入
圃人女斥候は、斥候としての腕前は、女神官の方に付けたTS圃人斥候に劣るものの、半竜娘の【加速】の術による支援を受けて頑張っている。*4
鉱人神官だって鉱人としての知識を生かして石を読み、この
この二人をペアにしたのは正解だった。今も協力して、砦の
「……やるのう。【加速】の術をかけておるとはいえ」
「まあね~」
「ここまでしてもらって、足を引っ張るわけにはいかんのでな」
半竜娘の感心にも、緊張感を保って返事をする圃人女斥候と鉱人神官。こっちのチームは【沈黙】の奇跡は使っていないので、普通に会話している。
少し、罠を見破るのにヒヤッとした場面があったし、調子に乗らず適度な緊張感を保っているのは良い傾向だ。
「ここの罠を小鬼が手入れしておるとは思えんがな……」
やはり、小鬼殺し一党の鉱人道士が出発前に見立てた通り、
使役された死霊が城砦を保守しているせいか、小鬼では使えないような、かなり複雑な機構の罠まで稼働状態にあるようだ。
「しっ」
「……!」 「……!」
その時、向かいから軽い体躯の足音が複数。
おそらくは小鬼だろう。
「跳ぶぞ、
「きゃっ」 「ぬっ」
半竜娘は、圃人女斥候と鉱人神官の居場所を気配だけで捉えると、片手と尻尾でそれぞれを抱えて跳躍し、空いた片手の爪を天井に突き刺し、片腕の力だけで天井に張り付いた。
地を這う生き物は、自分より上にはなかなか目がいかないものだ。
十分やり過ごせるだろう。
『GGOOBB!!』
『GOBR……』 『GOOB……』
ヤモリのようにべったりと天井に張り付いた半竜娘は、【擬態】の術の効果で風景に溶け込みながら、下を通る小鬼たちを観察する。
おそらくは巡回兵。装備が良い真面目な伍長に、サボりたがりの二等兵たち、といったところか。
――真面目な小鬼など、在り得ないものの代名詞じゃろうに。まさかそんなものを見ることになろうとはな。
息を潜め、巡回の小鬼たちをやり過ごす。
ここで巡回の小鬼を殺してしまえば、きっと戻らない仲間を不審に思うだろう――という程度には、この砦の中の小鬼たちは軍秩序を構築しているように思える。
小鬼たちが曲がり角を曲がったところで、半竜娘はそのしなやかな筋骨を生かして、天井から音もなく着地。
抱えていた二人を解放する。
「……行くのじゃ」
「あいよ」 「承知」
既に地下は確認した。捕虜たちは地下牢の遺構を利用して捕らえられていた。
しかし、捕虜が留置されているのはそこだけとは限らない。
途中で見つけた施設の中には、火を入れられた炉と、何かの鉱石が積まれた部屋があった。
そちらの労働力となっている捕虜も居るかもしれない。あるいは、鉱石を採掘する鉱山の方にも。
これから
そう思って、分身と視界を共有すれば、雪の上に足跡がある。どうやら外の捕虜の居場所も見つけられそうだ。
これまで調べた砦の構造と、半竜娘の土木の知識、鉱人神官のドワーフ砦への造詣を合わせて、幾つか、他の捕虜が居そうな場所の目星もつけている。
あとは、そこにいる捕虜の人数や、状態を確認すれば、一旦、女神官のチームの方と合流しに戻っても良いだろう。
「小鬼らしくない……か。不気味じゃが、捕虜を勝手に引っ張っていって遊び道具にしたりしない程度に秩序立っておるのは、助かるのう。妙なイレギュラーでの取りこぼしを心配せなんで済む」
半竜娘の言うことも、一面の真実ではある。小鬼らしい無秩序さを発揮されていれば、捕虜全員の把握には、もっと時間がかかっていただろう。いや、逆に捕虜の生き残り自体がゼロになっていたかもしれない。
「奴らのうち、装備がいい奴は、随分と真面目そうだったね。点呼する小鬼とか、普通なの?」
「いやいや、聞いたこともないぞ」
圃人女斥候と鉱人神官が不思議そうにしている。令嬢剣士一党の彼女・彼らは、小鬼退治は初めてだ。普通の小鬼についても良くは知らないのだ。
「小鬼は阿呆だが、間抜けではない……しかし、真面目なわけもなし、普通ならの。今、目にしておるのは相当に珍しい、いや、この広い四方世界でも、本来は在り得ないもののはずじゃよ」
四方世界にありうべからざるもの、それは、下品な森人、
<『2.→“真面目な小鬼”』 了>
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3.死霊術の基本は
死霊術というのは、死者を
死者は蘇らず、死は不可逆。
死霊術は、残された未練などの残滓、いわば世界に残された傷跡をなぞることで、そこに込められた遺志を奏でているのだ。*5
よほどに大きな《死》あるいは《生》の力によって
「小鬼の
女神官が静かに首を振る。
「ですが、実際に、上古の鉱人の半霊体が働いておりましたぞ。まあ、拙僧も信じがたい思いですがな。おそらく、小鬼のネクロマンサーの力量が高いというよりは、奴が持っていた鉱人の頭骨をあしらった杖に、その秘密があるのだろうと睨んでおりますが」
蜥蜴僧侶も、事実を認めつつも、一方でまた不思議そうにしている。
――ここの小鬼たちは、どうにもおかしい。
「オイラもその辺は同意だけど、余計なことに気を取られてる暇はねーし。こっからは時間との戦いだかんな」
だが、それはそれとして、捕虜を救出しなくてはならない。
半竜娘の一党の一員であるTS圃人斥候の言うとおり、余計な考察は後回しだ。
つい先ほど、一旦、半竜娘の
持ち寄った情報をもとに、小鬼どもに気取られないように、しかし、最高効率で捕虜を解放して回るルートを選定し、今はまた
女神官、蜥蜴僧侶、
決めた段取りのとおりに動くべく、合図を聞き逃さないように耳を澄ませる。
じっとりと緊張が高まっていく。
と、そのとき。
――――砦を揺るがす爆発音!
これが合図の音だ!
鍛冶区画の炉の燃料に細工して火薬を仕込み、時限式に爆発するようにしていたのが、いま作動したのだ。
『GGGOOOBB!? GOOBBB!!』
『GOBR』 『GOBGOB』
真面目な方の小鬼が、不真面目な――つまり普通の――小鬼に指示を出し、自分は爆発音の方へと駆けだした。
【擬態】で息を潜めている女神官たちの横を、真面目な小鬼――小鬼精兵が通り過ぎた。
気づかれることはなかった。
『GOBBBB?』 『GOOOBB!!!』
おそらく、“行ったか?” “行ったぞ”みたいな会話をしたと思しき、雑兵の小鬼たちが、その黄色い瞳をにんまりと細める。
小うるさい上官が居なくなったので、捕虜をいたぶるつもりだ。
組み敷いて、殴りつけ、衣服を剝いで、ぶち込んで――
「はい、おしまいな」
もちろん、その妄想は現実になることなどなかった。
小鬼たちの目がめちゃくちゃに動き、痙攣し――そしてその身体が崩れ落ちた。
「おっと、音を立てられちゃ困るんだった」
崩れ落ちる小鬼の身体を支え、ゆっくりと座り込ませるようにする。
傷から血が漏れないように、後頭部に刺した火箸は、抜かずに刺したままに。
「御見事」
蜥蜴僧侶がその手際を褒めた。
「まーな。今から鍵開けちまうから、そしたら捕まってる
言ってる間にも、圃人斥候は【手仕事】で鍵を開けていく。……ところで、見張りの小鬼精兵は、鍵を持って行ってしまっていたようで、殺した雑兵小鬼は鍵を持っていなかった。どうやって牢の中の捕虜を虐げるつもりだったのやら……。
「あの、本当に何の説明もせずに
女神官がか細い声をかける間にも、【擬態】で不可視化した蜥蜴僧侶は、無事な捕虜たちを、空間拡張鞄にぽいぽいと、悲鳴をあげそうな素振りを見せた者から順に放り込んでいく。あらかじめ風精を先に閉じ込めているので、窒息の心配もない。
その拉致姿は堂に入ったもので、蜥蜴人もまた奴隷をよしとする略奪種族であることを思い出させるものだった。
「そうは言っても、いちいち説明してる時間もねーし、騒がれても困るし。“静かに”くらいは言ってもいいけどな。それより、そっちも、消耗している捕虜にポーション飲ませてやってくれよな。回るのはあと一か所あんだから。手際よく、な」
「うぅ……はい。ああ、すみません、みなさん。これもみなさんのためなんです……」
躊躇したのは一瞬だけで、女神官は意を決すると、ポーションを片手に瀕死の捕虜たちに応急手当を施し始めた。
<『3.生の苦しみは生者の証』 了>
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4.すべては雪が覆い隠す
砦内を火付けや爆発で混乱させている間に、砦内の捕虜は全て空間拡張鞄に放り込むことができた。
そして砦の城壁の上で休んでいた半竜娘(分身:人面飛竜形態)の元まで、女神官チームも、半竜娘(本体)チームも無事に撤退してきたところだ。
それぞれが積もった雪に符丁を刻んで、点呼代わりにすれば、全員揃ったと知れた。
「首尾は上々といったところじゃな。二回ほど、真面目ぶっておる方の小鬼に見つかってしもうたが、死体は回収したから、暫くはバレるまいて」
半竜娘は、捕虜を入れるのとは別の、比較的小さな空間拡張鞄を掲げて言った。
それは、最近買った、文庫神官の空間拡張鞄のようだった。容量的にも、小鬼2体の死体と装備でいっぱいになってしまうくらいだ。
「げ、死体を回収したって、まさか直に入れてないだろうな? それ洗えるのか? 怒られても知らねーぞ」
「ちゃんと血が出ないように
半竜娘とTS圃人斥候がそんなやり取りをするうちに、侵入組は全員が、人面飛竜の分身体の方に乗ったようだ。
「姪御殿、これで全員のようですぞ」
「あい分かった! 離陸じゃ!」
半竜娘(本体)の言葉とともに、分身体は城壁を蹴って勢いをつけて滑空した。
そして揚力を得て、羽ばたき、上昇。
黒煙が所々から上がる砦を眼下に納めて、上空をゆるりと一周。
「……ここまで無事に済んで良かったです」
女神官がほっと一息。
「はー、何とかなったぜ……集中が保ってよかった……」
令嬢剣士の一党の圃人女斥候は、罠を解くのに疲労困憊といった様子。白磁にしては頑張った方だろう。
「……やはり、使役されておったご先祖様方が気になるがのう……。なんで小鬼なんぞに……」 令嬢剣士一党の鉱人神官は、死霊術で操られていた
「さて、あと一仕事、最後まで気を抜かずに行きましょうや」
蜥蜴僧侶の言葉に、皆が気を引き締め直した。
とはいえ残りは、離れた場所の採掘場に留置された捕虜を救出するだけ。
砦から離れているため、討ち漏らしにだけ注意すれば、そこまで手間取ることもないはず。
最後だし砦からも離れているので、派手にやっても良いわけで。
「あとは、砦内の混乱が収まったときに、小鬼らが出陣を
半竜娘の意思が、真言を通じて吹雪を呼び、一帯を白く、白く、覆っていった。
<『4.小鬼聖騎士の最悪な一日(一日で済むとは言ってない)』 了>
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5.まじないの基本は“血”
「『我が身に連なる一雫、彼の命に波紋を起こし、螺旋となりて力を呼ばん』――【
半竜娘(分身)が、自らの血に術を込めて、瓶の中へと滴らせた。
瓶の中には、血を固まらせないように薬剤を入れた液が入っている。
これにより、光学迷彩のポーションを作っているのだ。
「うむ、良しじゃ」
天井で頭を打たないように身をかがめて、滴る血の具合を見ていた本体の方の半竜娘が、睡眠学習で得た魔道具職人としての錬金術の知識を駆使して、仕上げの処理をして、瓶に封をした。
同じ要領で、本来は本人にしか効果のない祖竜術をポーションに込めれば、遠くを見渡す【竜眼】のポーションや、火と毒への耐性を与える【竜命】のポーション、あるいは、手を翼とする【竜翼】のポーションすらも作れるはずだ。
ここは村の薬師の娘の家の、調合作業場だ。狭い。
「はあ、都会の術士さんは凄いですねー……」
工房を貸してくれた村の薬師の娘が感嘆した。
今見ていただけでも、一瓶のポーションを作るのに2回も術を使っている。
しかもまだまだたくさん作るため、これからさらに何度も術を使う予定だというのだ。贅沢すぎる!
「修行の賜物じゃて!」
「はー、修行ですか」
「うむ! もちろん、手前は
「しかも、私より年下ですよねー……蜥蜴人基準で成人してるとはいえ……」
蜥蜴人の成人は13歳。
半竜娘は、薬師の娘はもちろん、村に滞在する他の冒険者の誰よりも若い。
しかしながら、祖竜の寵愛が
戦闘力だけなら、銀等級相当だろう。
「なんのなんの、まだまだこれからじゃてな。偉大なる祖竜の列に加わるには、まだまだ」
「はー」
村の薬師の娘は、感嘆するしかない。
祖竜になるということは、つまり、只人的な価値観で言えば、戦乙女様のように、定命の者から神に昇るということだ。
「すごいですね……」
自分は、村で一生を終えるのだと思っている。
でも、妹はどうだろうか。
竜を目指す蜥蜴人、貴族令嬢の魔法剣士、森から出てきたエルフの御姫様、地母神に仕える可愛らしい神官……。
そう、まるで御伽話みたいな冒険者たち。
それをキラキラした目で見る妹は、あるいは、冒険者に憧れて村から出ていくのかもしれない。
周囲の村が小鬼に滅ぼされてしまった中で、砦から助け出した捕虜たちの行く当て、身の振りも考えなくてはならない。
全てを村で受け入れるには、この雪山の村では農地が足りないだろう。
そう思うと、妹が村を出ていく状況について、いやな現実味が出てきてしまった。
(……妹が、冒険者になるにせよ、他の村に嫁ぐにせよ、薬師の技術は持ってて損はないはず)
妹のためにも、自分の持つ技術は伝授しよう。
そして、この目の前の半竜の女術士からも、精一杯学び取ろう。これはチャンスだ。
決意新たに、薬師の娘は、半竜娘の一挙一動を見逃さないよう、手伝いに集中した。
<『5.まじないを祓うのは“知”』 了>
蓄音機に刻まれた溝を撫でて音を奏でたとて、それは録音したときの生音そのものが蘇るわけではないように、世界に残された死者の想念を震わせたとて、それは生前のものそのものが蘇るわけではないのだ。
【擬態】に【沈黙】を重ねると、冒険者同士の連携もままならないことに途中で気づくというね(書き直し案件)。光学迷彩状態だとハンドサインも使えないので、雪や白墨を介して意思疎通するように修正。
ちなみに、隠密特化の蜥蜴人は、プレデターになりえます。蜥蜴人は、ゴジラにもプレデターにもなれるポテンシャルがあるのだ……!
次回は、雪山で小鬼たちと決戦です。