ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
●前話:
歓楽街に悪魔が紛れ込んでたので、寺生まれのTさんばりに「ハァッ!」ってしたった。
※死霊術について
Q.蜥蜴人の信仰的に、死霊術ってオーケーなの?(投稿済みの“12/n レイダース(遺跡探索)”で、魂を
A.魂そのものは輪廻の輪を巡るべきじゃが、その残影に死霊術で助力願うのは別に問題なかろう。そこには既に、元となった魂は無いのじゃからな。
Q.つまり……?
A.状況判断なのじゃっ!!
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AIさん(DALL・E)に出力してもらった挿絵あり
はいどーも!
本当は
市街地だと物理的に巨体が挟まる場面があったりで不利なんですよね……。
まあ遺跡でも挟まることはあるんですけど。縮小の手段の取得が待たれます。
あと市街地は爆破したり踏みつぶしたりするとマズいですし(それが一番の苦手の理由)。
さて前回は、新年の歓楽街に現れた、「怪奇! 大食い女!?」って感じでした。
その大食いの女芸者の内側に巣食っていた餓鬼の悪魔を追い出して、浄滅したところまでやりましたね。
そしたらレッツ尋問ターイム!
生かした女芸者から、どこで“餓鬼”に取り憑かれたのか聞き出しましょう!
「起きるのじゃー」
「う、うぅん……、あれ、私……」
大食い女芸者を起こして、色々と聞いていきます。
Q.悪魔に乗っ取られ掛けてたみたいじゃが、その間の記憶あるかや?
A.悪い夢を、見ていたような……です。助けてくれたみたいで、ありがとうございました、大きなお方。
Q.少しは意識があったのかの。では、あの悪魔に心当たりは?
A.それは、全く……、いや、でも、まさか……。
Q.この仕事は、誰かに勧められて始めたのかや?
A.……はい、この冬に口減らしに村を出て、でも、娼婦にも、冒険者にも、なる勇気がなくて。そんなときに、大食い芸なら、たくさん食べられるって……。村でも、私、食べる量が多くて……。
Q.誰ぞが、仕事を仕込んで斡旋してくれたのかや?
A.それは、はい。旅芸人のロマの侯爵さまが。私、旅芸人の一座に拾われて、独り立ちできるまで面倒をみてもらったんです。
Q.侯爵?
A.ええ、とてもエキゾチックな方で……。どこぞの国の家中の方で、妾腹だから追い出されて流浪の身なんだと、そう仰っていました。みんな、侯爵さまって呼んでるんです。礼儀作法も、少しは侯爵さまから教わって……。
Q.その“侯爵さま”は、どこにおるのじゃ?
A.……侯爵さまをお疑いなんですか?
Q.街の近くに?
A.……。
Q.他に侯爵さまの“指導”を受けた者はどのくらい街に入り込んだのじゃ?
A.…………。言いたくない。恩人は売れない。
Q.お主は混沌の尖兵にされようとしとったのじゃよ? 要は捨て駒じゃ。口を噤むのは、心当たりがあるからじゃ。義理立てするほどでもなかろうに。
A.……
おおっと。
バッドコミュニケーション! 激昂させてしまったようです。これ以上何か情報を漏らすくらいなら舌噛んで死ぬ、くらいの勢いです。
さては【交渉】判定をファンブルしたな?
まあ、半竜娘ちゃんが、渡世における一宿一飯の恩を軽く見てしまったのが敗因でしょう。
ここに渡世人のことにも詳しい森人探検家が居れば良かったんですが、まだ合流できていませんでしたからね。
仕方ないです。
とはいえ、大体のことは受け答えから推測できるので、問題はないでしょう。
“侯爵”を名乗る胡散臭い輩が、この女芸者に色々と芸や礼法を仕込んだりしていたようです。
女芸者の反応からして、おそらく、まだ、その“侯爵”さまとその一座はこの辺境の街か、その壁外に滞在しているっぽいですね。
両腕で膝を抱え込んで、その膝に顔をうずめるようにして塞ぎ込んだ女芸者は、これ以上のことを話してくれそうにありません。
「リーダー、【
TS圃人斥候が念のため、といった風情で尋ねます。
ですが、その顔はいかにも面倒くさそうで、自分が魔術を使わなければいけないのは御免だぞと、口よりも雄弁に語っています。
「いや、不要じゃ。呪文は切らすな、じゃよ。温存じゃ」
半竜娘は、“ストリートの警句”*2の一節を引用しつつ、TS圃人斥候に返事をしました。
既に彼女の興味は、その“侯爵”を名乗るロマ*3の何者かに向いています。
「本当にそんなお貴族様が、流浪の旅芸人一座の取りまとめみたいなのをやっているんでしょうか」
首をかしげる文庫神官の胸元で揺れる聖印が、鎧にぶつかってチリンと音を立てました。
普通に考えれば、そんなことはあまりなさそうなものです。
まあ、王国の場合は、“
「まあ、騙りじゃろ」 「自称ってーだけだな、十中八九は」
半竜娘とTS圃人斥候が言うとおり、この場合はおそらく、単なる自称でしかなく、貴族身分を騙っているのでしょう。
流浪の民やらが、自身の箔付けにそんなことを言い出すのは、古今に枚挙の
「あの、その場合、罰則とかは……?」
「国内の貴族を騙れば問題じゃが……」 「外国の貴族だって言い張るのを、国内で裁く法律はないぜ」
まあ、そういうことです。外国の貴族を名乗られても、確認のしようもないですし。
具体的な詐欺による実害がない限りは、特に官憲も動かないでしょう。
まー、流浪の民は色々と白眼視されがちな地域もあると聞くので、街によってはその程度の詐称でも、それを口実に官憲が介入してきて、財産没収からの壁外退去を喰らわせられることもあるのかもしれませんが。辺境の街では少なくともそんなことはありません。
「そしたら手前どもは、そのロマの“侯爵さま”を探してみるかの」 「私はお姉さまについていきます!」
半竜娘ちゃんと文庫神官ちゃんは、悪魔憑き事件の解決のために動くようです。
報酬のあてはありませんが、この聖職者2人は、
「オイラは用心棒の仕事残ってるから、あとで合流するわ。エルフパイセンもここに向かってるだろうから、伝言役も要るしな」
そもそも仕事中だったTS圃人斥候は残るようです。
大食いの女芸者の世話やなんかはあるにしても、残った方が
「それに、“餓鬼”がアレ一匹だけとは限らねーしな。周りの店からヘルプ要請入ったら、このデカ鱗とその彼女連れて駆けつけられるよーにしとかねーと」
TS圃人斥候は、用心棒としての後輩でもある鮫歯木剣の蜥蜴戦士と、その連れの交易侍祭にウィンクします。
「おう、任せな!」 「微力ながら、手を尽くさせていただきます」
まだ白磁等級の彼らは、返事とともに筋肉を脈動させ、あるいは豊満な胸の前で聖印を握って、意気込みます。
なるほど、頼りにしても良さそうです。
「じゃあ、後は頼んだのじゃ」 「吉報をお待ちください!」
そう言って、半竜娘ちゃん(本体&分身)と文庫神官ちゃんは、店を後にしました。
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2人が目指すのは、新年の祭りで稼ごうと方々からやってきた流浪の者たちが集まってキャンプしているような場所です。
新年の屋台を出している者たちや、吟遊詩人たちに聞き込みして、どうやら街の外にそういった者たちの集まりがあることを突き止めます。
その途中で、森人探検家と合流できました。
話を聞くと、途中で何故か、小鬼殺し一党の鉱人道士も一緒になって事件を解決する羽目になったのだとか。
「ドワーフの術士殿とのう。何だか珍しい組み合わせじゃの?」
「まあ、たまたま同じ事件に巻き込まれたのよ。急に狂を発した大道芸人が、通行人に噛みつきだしてね」
「なんと!」
「そこに、斥候が用心棒やってる酒場に向かうわたしと、道路の向こうから来た、娼館帰りだかの道士サマが巻き込まれたってわけ。一緒に制圧したところで、道士サマには悪いけど、その現場の後始末は押しつけてきたわ」
よく聞けば、幸いにも死者はいなかったようですが。
森人探検家が暴れた芸人を、【
通りすがりの割りには、二人とも八面六臂の大活躍で、さすがは熟練冒険者という感じですね。――判断が早い。
「やるもんじゃのぅ」 「流石ですね!」
「まあ、この程度はね。ドワーフに負けるわけにもいかないし。――あ、待って」
そのとき、森人探検家が、長くてよく聞こえるエルフ耳をピクピクと動かしました。
何を聞き取ったのでしょうか。
「あちこちで、似たような騒ぎが起こってるみたいよ、今もね。まるで飢えた
どうやら、街中に入り込んだジプシーたちが、あるいは、その身の内に潜んでいた悪魔たちがと言った方がいいでしょうか、騒動を起こしているようです。
森人探検家に聞こえる範囲では、騒動が起きている場所は、10には届かないくらい、とのこと。
それでも、街中に悪魔が入り込むなど、早々ないことです。
「大食い女の“餓鬼”と同じクチか!」
「お姉さま、どうされますか?」
さて、街中の騒動を片付けるのか、黒幕(推定)の方へと向かうのか。
「……ロマの“侯爵”サマのところに行くのじゃ。街中はまだ致命的なことになってはおらんのじゃろ?」
「ええ、まあ。ドワーフの道士サマとか、休暇中の
森人探検家が、
酔客の混乱も、用心棒たちの手際がいいのか、大事にはなっていない模様。
取り憑いている悪魔の位階が低いのか、あるいは、あくまで未顕現で乞食の肉体を操っているだけの段階だからでしょうか。
いえ、やはり地母神の加護が篤い街だからでしょう。
「ならばやはり、元締めの方に向かうのじゃ。こっちは陽動かもしれんし」
「了解。場所はわかる?」
「もちろんです」
文庫神官が先導して、小走りで移動を始めます。
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果たしてそこは、馬車や天幕が立ち並ぶ、即席の集落になっていました。
街の外の開けた場所、そこに、ロマの一団が
「ここがあの侯爵のハウスじゃな」
半竜娘は適当に銀貨を握らせたロマの一員から聞き出した“侯爵”の居場所の前に立っています。
後ろには、彼女の分身体と、鎧姿の文庫神官、狩人衣の森人探検家。
小走りでやってきた彼女たちの口から白い息が漏れて流れていきます。
「……てっきり、夜逃げの準備でもしてるのかと思ったのだけれど」
森人探検家の言うとおりです。
もし、ロマの“侯爵”が黒幕なら、騒ぎを起こした時点でそれを陽動に逃げ出すはず。
ですが、そうなってはいません。
「ここまでの案内にしても、特に居場所に
文庫神官の疑問もごもっとも。
あまりに不用心、というか、普通な感じです。
普通に、新年の祭りのおこぼれに
「実は手前も少し自信がなくなって来たのじゃ」
それでも会えば分かることもあろう、と、半竜娘は“侯爵”が居るという天幕に入るべく、そこに繋がる入り口に垂れ下がった布をめくり、誰何の声を上げました。
「たのもう!! 急な来訪失礼つかまつる! 侯爵殿は御在所か?」
入り口から中を見ると、幾つかの馬車を両隣に置いて部屋として使えるように組み合わせ、その間に布の天井を張って廊下のようにしています。
外から見た感じですと、この奥に一番大きな天幕があるはずです。
「そう大きな声を上げなくても聞こえているよ」
半竜娘の誰何に対して、大きな洞穴に残響するような、引き込まれるような静かな声が返ってきました。
これが“侯爵”の声でしょうか。
(女……?)
そう、返ってきた声は、女のものでした。
「どうした? 入って来たまえよ。客人に
意外なことに、侯爵と思しき女の声は、半竜娘たちを拒みませんでした。
半竜娘たちは顔を見合わせると、促されるままに中に入りました。
念のため、分身体は外に待機させておきます。
「分身は残して、他は中に。警戒は怠らずに、じゃ」
退路の確保は重要ですからね。
「ええ、分かったわ」 「はい、気を付けます」
天幕をくぐり、中へと入ります。
「【
半竜娘が進みながら、森人探検家に問いかけます。
「使えるわ。使っておく?」
「頼むのじゃ」
「分かった。『巡り巡りて風なる我が神、気の流れをも裏返し、賽子の天地返しに目こぼしを』……【
出目はファンブルではなかったので発動成功です。(森人探検家呪文使用回数2→1)
これから1日の間、1回だけ出目を反転させることが出来ます。
「手前は、加速呪を励起させるかの。
半竜娘は、背を屈めて、天幕からぶら下がる幾重もの布を押し上げて進みつつ、腰からぶら下げた自身をデフォルメした人形たちに触れます。
分身体の残影を留める依り代にしている人形たちです。
スリープ状態で最小限の呪文を維持・継続していた、分身体の残影が励起され、森人探検家と文庫神官に、過去に掛けられていた【
さらに、【竜血】の各種のポーションをはじめとして、装備をもう一度確認しつつ、進んでいきます。
「私が前に出ます。お姉さまは後ろに」
とはいえ、天井が低く、狭いので、あまりここで戦闘はしたくありませんが……。
馬車と布で作られた回廊の一番奥に辿り着きました。
いよいよロマの侯爵とご対面です。
最後の布をめくると、焚きしめられた香と、暖房による熱気が半竜娘たちの頬を撫でます。
「ようこそ。君たちは――探索者かい? ああ、このあたりだと冒険者というんだったかな?」
胸のあたりだけを覆い、お腹を
メリハリの付いた肢体。
褐色の肌。
アーモンドのような形のクリっとした眼。
結われた黒髪。
落ち着き払った冷静な態度。
洞穴の奥へと吸い込まれるような不思議な残響を感じさせる声。
「私に何か用かな?」
どうやら、エキゾチックなこの年齢不詳な美女が、ロマの“侯爵”のようです。
そして振り返って半竜娘たちを出迎えた“侯爵”の背後には、妙に視線を引き付けて離さない奇妙な像があります。
不思議と愛嬌のあるように見える像は、何に似ているとも言い表しづらいのですが、強いて言うなら、ヒキガエルを思わせる造形です。
どういった素材でできているのか分かりませんが、黒々として光沢があり、高級そうにも見えますし、日ごろからよく磨き込まれて大事にされているのが見て取れます。
しかし、霊視の術を持つ半竜娘ちゃんには、それがただならぬ妖気を放つ逸品であることが分かりました。
きっと、真っ当な品ではありません。
そのヒキガエルのような像は、一体何なのか、今回の歓楽街の混乱とどのように関係するのか――。
というところで今回はここまで!
では
元ネタはサイバーパンクファンタジーTRPG「シャドウラン」の同様の警句。
「もっと食べたい」:クトゥルフ神話TRPGサプリ「クトゥルフ2010」掲載の同名のシナリオを元ネタにしています。
このエピソードは、次回で決着……にするつもりです。もう少々よろしくお願いいたします!
そしたら次は原作小説6巻の内容です!