ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
あけましておめでとうございます、2021年も御笑覧いただければ幸いです! よろしくお願いいたします。
●前話:
エントリィィイイイ!!
===
Q.受付さん、受付さん、ギルドを介して依頼出せば巨竜化可能な冒険者を貸し出していただけるんです?
A.ギルドが審査して正当適正な依頼として認めたうえで、当該冒険者が了承すれば可能です。決して私が竜使いというわけではないですし、昨年春のドラゴンストームに私は関与していませんから、噂を真に受けて勘違いなされないようにお願いいたしますね。
Q.
A.銀等級以上は
はいどーも!
新人冒険者たちをカワイガル実況、はーじまーるよー。
前回は、半竜娘ちゃん
「「「 GRRUUUAAAAAHHH――
「「「「 ひぃいぁああああ!!? 」」」」
上空から響く竜の吠え声に、20名近く集まった新人冒険者たちのうちほとんどは、半ば恐慌状態です。
ランダムエンカウント表でドラゴンと遭遇する可能性は常に存在します。
実際、昨年の春に半竜娘ちゃんが冒険者登録初日に、地下水路の未踏遺跡の転移罠に干渉して、
まあ、発端となった半竜娘ちゃんが責任持って八面六臂の大活躍をして
というわけで、ドラゴンとの遭遇は、単なる与太話とするには、最近の出来事すぎます。
ちょうど良い技能*1を持ってる
想定外の事態に、いかに冷静に対応できるか、そして立て直せるかというのが、冒険者の生存能力に大きく関わってきますからね。
「“ドラゴンに追われた経験があれば、まあ、大抵のことでは動じなくなるだろう”……と、辺境最高の一党の頭目さんからもお墨付きもいただいています」
受付嬢が日傘を持ったまま、場違いに朗らかに告げます。
新人冒険者たちの緊張をほぐそうとしてのことなのでしょうが、かえって迫力が出てしまっているのは不幸ですね。――これも全部、半竜娘ってやつが悪いんだ!
「では、講師のお三方ー! よろしくお願いしまーす!」
「く、来るぞぉ!!?」
上空で
ドラゴンズ――
――エントリィイイイイイイ!!!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
▼△▼△▼△▼△▼△▼
ということで、新人冒険者たちを竜の試練が襲います!
半竜娘ちゃん
でかい……!
あ、戦場模式図では巨竜化蜥蜴人トリオの装備は描画を省略してますが、実際は装備も含めて巨大化しています。
つまり、装甲がかなり厚いです。10倍巨大化の時点で、装甲値に+10されるのでさらに厚くなってます。
そして、上空から襲い掛かられた新人冒険者たちの反応は、概ね三つに分かれます。
一つは、腰を抜かしてへたり込む者たち。
「ひぃ、ひぃ……!!」 「なんなんだこれは、どうすればいいんだ!?」 「おかあさぁん……」
次は、武器を構えて、あるいは詠唱して咄嗟に応戦しようとする者たち。
「うおおおおおお!!」 「防壁系の呪文を使えーーー!!」 「矢で迎撃しろーー!!」
最後に、脱兎のごとく一目散に逃げだした者たち。
「逃ぃげるんだよぉぉぉおお!!」 「勝てるわけねーだるォォォォォオオオンン!!?」
どれが正解かというと――
「何もできないのは論外じゃ!」
半竜娘ちゃんの片方が、地響き立ててへたり込んだ新人たちの前に着地し、尻尾や足の甲で掬い投げして優しく(※当者比)ポイポイと飛ばしていきます。
投げ飛ばされた新人冒険者たちは、上手く受け身をとれるように転がされたおかげか、ダメージは軽微です。
……泣きべそかいてますが。
というわけで、何もできないのはダメですね。
「負けねえ!
「度胸は認めまするが! 迎撃するには、少々
新人のうち、術士の一人――赤毛の眼鏡少年ということは女
赤毛の少年の横では、彼の姉である女魔法使いちゃんが「あちゃー」って顔してますね。呪文を切るタイミングでないのに、弟くんが先走ったようです。鉢巻の青年剣士くんと、竜爪の女武闘家ちゃんは、油断せずに構えていますね。彼らは火吹き山闘技場とか、修羅場潜って経験積んでるはずですが、新加入した弟君の付き添いでこの訓練に参加したようです。
「その意気やよし、しかし、相手が悪い」
「うそだろ、火球を喰ってノーダメージかよ……」
「竜たるもの、炎も毒気も効かぬものと心得ませい!!」
蜥蜴僧侶さん、口の端から火球の余韻を吐き出しながらノリノリで喋りますねえ。
これは、【
「あとは
「これならどうだ! フォースフィールド!」 「巡り巡りて風なる我が神――プロテクション!」
それに応えてか、他の新人たちで術を使える者たちが、【
「フハハ! 判断やよし! しかし、残念ながら脆いですなあ!」
術で作られた壁が、蜥蜴僧侶さんに踏み砕かれて消えていきます。
しかし少しは時間稼ぎが出来ました。
炎はダメということで弓兵組が、目や口の中を狙って矢を射掛けてきますが――
「軽い軽い、
「風で……!?」
蜥蜴僧侶さんの翼腕の一振りで起こされた風によって、全て軌道が曲がってしまい、外れてしまいました。
まあ、当たってもいささかの
それはそうと、蜥蜴僧侶さんは、一番生きの良い新人たちのグループを担当出来て、とても楽しそうですね。
「さあ、次々、来ませい!! その武器は飾りですかな!?」
「うおおおおお!!」 「こうなりゃヤケよおおおお!!」
「おお、愉快愉快! 白亜の園を歩みし父祖よ! 御照覧あれ!」
足元に纏わりついてきた前衛組を、まさに鎧袖一触という感じで尻尾で薙ぎ払って転がしながら、蜥蜴僧侶さんが呵々大笑しています。
……蜥蜴僧侶さんが嬉しそうで何よりです。
まあ、竜に立ち向かうのは、ちょっと白磁・黒曜等級だと無謀ですよね。
あ、でも女魔法使いちゃん、青年剣士くん、女武闘家ちゃんは、静観してますね。
なんか勝算ありげな感じです。
さて、もっとも正解に近い行動をしたのは、逃げ出した者たちです。
「ここまでやるかよォ!?」 「喋ってないで走りなさいーー!!」
おお、下水鼠退治常連の棍棒剣士くんと見習聖女ちゃんは逃げてますねー。
「ひーん!」 「やばいって!」
他には、重戦士さん一党の若手である少女巫術士と少年斥候たちもですね。
さすが多少なりとも修羅場を潜った者たちは判断力が違います。経験点が足りてます。
……半竜娘ちゃんと蜥蜴僧侶さんの恐ろしさを知っているからということもあるでしょうが。
「逃げるのは良いぞ! ただし方向を考えよ!」
その上を、もう一体の半竜娘ちゃんが滑空して飛び越えていきます。
「遮蔽がなくば空からじきに追いつかれるのじゃ!」
そして行く手の眼前に着地!
ドォン! と地響き立てて、行く手を塞ぎます。
「げげっ!」
「さあて、追いつかれたらどうするのじゃ?」
ということで、逃げるにしても、まあ追いつかれる公算の方が大きいのです。
動けなかったり、勝算なく立ち向かったりするよりは、正解に近いですが、あと一歩というところ。
では、この場はどのように切り抜けるべきでしょうか。
ちょっと蜥蜴僧侶さんの方を見てみましょう。
赤毛眼鏡の女魔法使いちゃんと、鉢巻の青年剣士くん、竜爪の女武闘家ちゃんが、なんか腹案がありそうでしたからね。
「むっ! 拙僧の尾を受け止めるとは、やりますなあ!」
「そりゃ、どーも! っと!」
鉢巻の青年剣士くんが、【護衛】技能で蜥蜴僧侶さんの尻尾の薙ぎ払いを受け止めます。
さすがに重量が違いすぎるので吹き飛ばされますが、【受け身】技能でダメージ軽減して転がり、そこを控えていた女武闘家に引っ張られてすぐに立ち上がります。
「さぁて、それでは少し力を込めてもよさそうですな――」
「待って! 交渉がしたいの!」
赤毛眼鏡の女魔法使いちゃんが、声を張り上げて蜥蜴僧侶さんに呼びかけます。
「――ほう?」
……そう、今回の竜は、話が通じるのです。
「――チーズたっぷり奢るから! 見逃して! できればあっちの竜もやっつけて!」
しかも、相手の好みも分かっていますからね!
これは【交渉】判定にボーナスが乗りますよ!
「まずは、今の手持ちを前払い! はいどーぞ!!」
女武闘家ちゃんが、武闘家の投擲技能で、背嚢から取り出したチーズの塊を巨竜化した蜥蜴僧侶さんの口を目掛けて投げます!
「――おお甘露よ! んむ、よぉございましょう!」
投げられたチーズの塊をパクリと食べた蜥蜴僧侶さんは、ぐるりと眼を回すように動かすと、半竜娘ちゃん(へたり込んでた新人たちをポイポイしてた方)へと向き直ります。
契約成立です!
――ちょろすぎ!?
「――うわっ、ちょ、叔父貴殿!?」
慌てる半竜娘ちゃんに構わず、蜥蜴僧侶さんがその巨体をドラゴンパワーで持ち上げます!
「ふはははは! どっせーーーい!!」
そして投げたーーー!!
もちろん投げた先は、もう一方の、逃げた新人を追いかけていた方の半竜娘ちゃんだーー!!
「ぬわーー!?」 「って、なんじゃーー!?」
どんがらがっしゃーん!
二体の人面飛竜は、絡み合って倒れてしまいました。
「はい、そこまで! みなさん、お疲れ様でした、状況終了です!」
受付嬢さんの声によって、訓練は一区切りです。
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「とまあ、今回は、皆さんに竜との遭遇を疑似体験していただくのと、戦って勝てない相手には、そもそも戦う以外の解決方法も選択肢としてあるのだということを知っていただくための訓練でしたー」
「えーと、つまり……」
「最後のチーズのくだりは、仕込みです♪」
どうやら蜥蜴僧侶を懐柔するのは、シナリオ通りだったらしいです。
青年剣士たちも、半竜娘らと同じく、ギルドから事前に依頼を受けていたんでしょうね。
さすが、そこは抜かりありません。
「はー、まじですかー……」
「実際の冒険では、頭柔らかくして、別の解決方法を探してくださいね? チーズが好きなドラゴンばかりだとは限りませんから」
くすくすと笑う受付嬢に対して、新人冒険者たちは緊張から解放されてへたり込んでいます。
「それよりあちらをご覧ください。現役の高位冒険者さんたちによる、模範演武です」
受付嬢の指し示す方を見ます。
すると少し離れたそこでは、重戦士・女騎士・槍使い・魔女の4人が、巨竜化した半竜娘(分身体の方)と相対していました。
「
「
半竜娘(巨竜分身体)が吐き出した毒の【
「鬼火の精霊よ、吹雪を溶かす焦熱をここに! 炸裂するのじゃ!」
しかし、半竜娘は、自分が【竜命】のポーションの効果で炎のダメージを受けないことをいいことに、呼び出した
熱波と吹雪が相殺して蒸気の煙が発生。一瞬視界を奪います。
半竜娘は視界が効かなくなったところで、前衛組が仕掛けてくることを予見していました。
大きく尾を振りかぶり、攻撃をあらかじめ置いておきます。
「
魔法の装甲を纏った尾の振り回しが、霧に覆われた地面を舐めますが、それはガギン、という金属音とともに防がれました。
「なかなかに重い! 翠玉等級の一撃ではないな! まあ、私の守りは崩せんがな!!」
女騎士さんが、その騎士盾を構えて防いだのです。
「竜をやるときは、尾を切り落とすことからってのは、セオリーだよな!」
さらに、動きが止まったその尾に、重戦士の“
「むうっ!?」
半竜娘(分身体)の尾を、半ば以上輪切りに切り裂きます。
もう、尾の一撃は使えないでしょう。
「
半竜娘は、翼に変わった腕をたたんで、爪の部分でさらに攻撃を仕掛けようとします。
その爪は、【竜爪】の術によって研ぎ澄まされ、盾や鎧を引き裂く鋭さを得ています。
「その攻撃を待ってたぜえ!! 」
しかし、槍使いがその爪撃を槍でいなし、その回転の勢いのまま、くるくると半竜娘の腕を切り裂きながら、彼女の頭の方へと迫ります。
「竜を相手にゃ、急所への一撃だ!」
そしてそのまま、魔法の槍を、半竜娘の眼玉に突き刺します!
「
その一撃で許容ダメージを超えたのか、半竜娘の分身体(巨竜バージョン)は、倒れ伏しながら、その存在を薄れさせていきます。
「受付さーん! 見てくれましたかー!!」
槍使い兄貴が、受付嬢と新人冒険者たちの方を振り向き、ニカっと笑ってアピールします。
「……とまあ、あんな感じです。みなさん、参考になりましたか?」
「は、ハハハ……、俺たちも、あんな風になれるんですかね……?」
「ええ、生き残って経験を積めば、きっと」
えー、ホントにござるかー? と、新人冒険者たちは半信半疑です。
とはいえ、先輩冒険者への畏敬の念も新たに、自分たちもああなるんだ! と意気込みを増したのも確かです。
「というわけで、先ずは逃げ足を鍛えましょう。依頼を失敗しても、生き残ってさえいれば、何とかなります。むしろ、生き残って情報を持ち帰ることを含めて、冒険者の仕事です!」
その意気が萎えないうちに、とギルド主催の訓練は第二段階に移行します。
「では、模範演武の間に息も整ったでしょうし、これから、皆さんには走ってもらいます。……手を抜いた方には、エルフの弓矢をもれなくプレゼントです!」
グルルルという竜の声に釣られて上を見れば、空には半竜娘と蜥蜴僧侶、2体の巨竜の姿が。
さらに、そのそれぞれの背には、角に手綱をかけて、
半竜娘の方には、森人探検家が。
蜥蜴僧侶の方には、妖精弓手が、それぞれ乗っています。
エルフの……竜騎兵……!!
「ほーら、走って走って!」
呆けていた新人冒険者たちの足元に、ひゅひゅひゅん、と妖精弓手が巨竜となった蜥蜴僧侶の背から放った矢が突き刺さります。
「ちょ、まじで――うわっ、ひぃえっ!?」
「どんどんいくわよー! 走って走ってー!!」
「ま、待って、うわぁっ!?」
「冒険で敵は待ってくれないわよー? それそれそれー!」
妖精弓手たちが
がんばれ新人冒険者たち! 負けるな、新人冒険者たち!
この経験はきっと必ず君たちの糧になる!!
というところで今回はここまで。
ではまた次回!
蜥蜴僧侶「功徳を積み重ねて、いつか自力で巨竜にいたるのに、よき予行演習となり申した」
妖精弓手「竜に乗って上から撃ち下ろすの良いわね! ねえ、またやりましょうよ!」
蜥蜴僧侶「ははは、であれば【巨大】化の術を姪御殿に頼まねばなりませぬなあ」
エルフの竜騎兵とか、魔法の射程外から弓矢が降ってくるから、魔法で墜落もさせられないし、遮蔽は取れないしで、普通に死ねるんだよなあ……。
次回は、冒険者訓練所周辺の陵墓に巣食ったゴブリン+トロルを、鮫歯木剣の蜥蜴戦士、交易侍祭、戦女神の神官戦士、黒づくめの闇人斥候、只人の術士軍師の5人の一党が攻略する話と、その他別視点を挟む感じですね。