ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
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●前話:
エルフの……竜騎兵!!
(
1.“令嬢剣士”改め“女商人”さんにご相談
今を時めく軽銀商会の会頭であるハニーブロンドの女商人は、恩人でもある半蜥蜴人の冒険者に会いに、辺境の街の冒険者ギルドを訪れていた。
傍らには秘書を控えさせている。
その姿は、乗馬服のようなともすれば男装のような装いだが、仕立ては上品で、単に現場視察の際にも動きやすいようにと選んだのであろうことが伺える。
冒険者時代にはツインテールにしていた髪の毛は、編み込みのハーフアップにしており、冒険者時代よりも大人びた印象を与えている。
そして腰には、家宝の軽銀剣。胸元には、雷電の精霊が宿る
女商人が冒険者だったころからの仲間たちはそれぞれで冒険者活動を続けており、時折、護衛の依頼をお願いするお得意様として、良好な関係を築いている。
今回も辺境の街を訪れるにあたって、元の仲間たちに護衛してもらっていた。
辺境の街の冒険者である女神官や妖精弓手とも、文通を続けており、この
もちろん、護衛で連れてきた元の冒険者仲間たちも一緒にだ。
雪山で、覚知神を崇める小鬼の軍勢を共に滅ぼしたことは、鮮烈な経験として心に残っている。
たかがゴブリン退治とは言わば言え。余人が何と言おうと、あれを境に引退するにしても、悔いがないほどの大冒険だったのだ。
(とはいえ、先ずは目の前の商談からですが)
会頭である女商人がわざわざここに出向いたのは、それだけ重要な商談があるからだった。
――商会への大口の出資の話が持ち上がっているのだ。
その時、ドアがノックされ、待ち人が入ってきた。
「おー、待たせたかや? そちらも忙しいだろうに、わざわざ出向いてもらって済まなんだな!」
【辺境最大】、【鮮血竜姫】、そして【古竜殺し】の冒険者――半竜娘。
先の雪山の冒険では、作戦の要だった多彩な術士だ。
「こっちがお金出す方なんだから多少はいいのよ。そうよね?」
付き添っているのは、半竜娘の一党の金庫番だという、交易神信仰の森人だ。
彼女らの恰好は、商談に合わせてか、冒険に赴くようなものではなく、フォーマルなものだ。
「お久しぶりです、半竜の術士様、交易神信徒の森人様」
「そうかしこまらんでも良いのじゃ」
「いえ、森人の方が仰いますように、
そして竜殺し――しかも古竜の一族を一人で族滅させたともなれば、その財産はある程度の領地を買ってもお釣りがくるほど。
会頭自らが出向くに値する商談だ。
「まあ、お主なりのケジメじゃというなら別に良いがのう。無理ならいつでも崩して貰って構わんのじゃよ?」
そうは言っても、なかなか難しいだろう。
なにせ、古竜殺しが、その財産の運用を任せようというのだから。
否が応でも緊張せざるを得ない。
「さて、商談というても、そう難しいことではない――」
こいつはタフな交渉になりそうね。
眼光鋭き竜の乙女と、金勘定に抜け目ない百戦錬磨の森人を前に、
商談もまた、身代を懸けた冒険であるのだ。
<『1.財産は運用してナンボじゃからのう』 了>
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2.ええっ、商売敵が混沌勢力に情報流して冒険者支援事業を失敗させようとしているんですか!?
タフな商談を終えた女商人は、友人である女神官(体調不良ということで街に居残っていた)とお茶をしながら気を休めていた。
半竜娘は大雑把だったが、森人探検家の相手が厳しかった。商売仲間にも交易神に仕える信徒は居るが、彼ら彼女らは、全員がああなのだろうか?
「へえ、あの冒険者訓練所にも出資してらっしゃるんですね!」
それに引き換え、歳の近い友人である女神官との会話は、なんともほっとする、癒されるものだった。
護衛の
え? 半竜娘は友人じゃないのかって? うーん……。純粋な友人として見るには、いろいろと
「ええ、私だけが出資したのではなく、数多の出資者の取りまとめという立場ですけれど」
「そうなんですか?」
「そうなんですの。社交界で新人冒険者の苦境を、そして辺境安寧における冒険者の重要性を吹聴して、金子を引っ張ってまいりましたのよ?」
「わぁ、私には想像もつきません」
以前は嫌っていた貴族、社交界というものも、目的意識を持って臨めば、随分と挑みがいのある“戦場”ではあった。
5年ぶりの魔神王の襲来が、最新の白金等級たる今代の勇者の手によって、大した被害もなく鎮圧されたことは、王国内に明るい機運を生み出している。投資を引き出すには、いいタイミングだった。
もちろん、魔神王残党の跳梁跋扈は頭の痛い問題だが、だからこそ、市井の冒険者の底上げが重要であると分かっている者たちも、案外と貴族には多かった。
女商人は、そんな潜在的な需要を掘り起こし、自らが旗頭になることで、資金の流れを整えたのだ。
「どうもわたくしは、
そっと胸元のトルマリンの首飾りを撫でると、雪山で
「わっ」
「あら、この子も久しぶりにあなたに会えて嬉しそう」
雷電の精霊は、子犬のように女神官の周りをくるくる飛んで、纏わりついた。
「えへへ、可愛いですね」
「そうでしょう? こうやって
女商人が真言を唱えると指先から魔術の稲妻が漏れ、すかさず雷電の精霊がそこに飛びついた。
まるで乳飲み子のように指に吸い付く
「ふふふ。すっかり仲良しですね」
「自慢の子ですのよ? ふふふ」
他愛のない話題を重ねつつも、そこは元冒険者と現役冒険者。
もちろん年頃の乙女らしく、華やかな話題も多いが、たびたび冒険者や怪物の話題が顔を出すのは避けられない。
「あら、そうなんですの、昇級が……」
「……ええ、自力の功績が足りないんじゃないかって」
「そんなことはないと思うんですけれど、まあ、書面だけ見ると、周りの方の実力に隠れてしまうのかもしれませんわね」
周りが銀等級ばかりなせいで、修羅場を潜って功績を挙げているのは確かなれど、女神官自身の力量が確かなのか若干の疑義があるということで、鋼鉄等級への昇級が見送られたとのこと。
女商人は、白磁等級でリタイア――といっても、雪山の小鬼軍の殲滅を鑑みれば、冒険を続けていればすぐに黒曜等級に昇級していたはずだ――したため、昇級の苦労というのは実感しづらいことではある。
「そういえば、そちらの一党の皆さんは、相変わらずゴブリンスレイヤーさんを頭目に、小鬼退治を?」
「ええ、まあ。……あ、聞いてくださいよ! この間なんか、転移門の
「ええっ、相変わらず無茶苦茶なさいますわね?!」
「そうなんですよ!」
そのあと出てくる水の勢いで空中に吹き上げられるわ、魔術で何とか着地しても泥だらけになるわで、大変だったんです! という女神官に、女商人は共感して盛り上がります。
ちょっと海水による塩害が心配――などと思いつつ。
「……やはり、ゴブリンは多いのですか?」
「そうですねえ、多いですけれど、ゴブリンスレイヤーさんが言うには、まあ例年並みということです。春はどうしても増えるのだとか」
「そうですか……」
「何か、気になることでも?」
憂い顔になった女商人に、女神官が尋ねます。
「ええ、この街に来たのは、商談のためでもあるのですが、冒険者訓練場の視察も兼ねて参りましたの。――建設中の訓練場が、ゴブリンに襲われる事例が多いようでして」
「ゴブリンに……!」
女商人によれば、他にも手掛けている冒険者訓練場の建設地で、ゴブリンに襲われる事例がいくつか生じているとのこと。
人足や大工、講師役の引退冒険者、新人冒険者たちにも被害が出ている。
辺境の街の訓練場はまだ大丈夫なようだが、注意をしてもらうに越したことはないだろう。
「これが単なる何の裏もないゴブリンの襲撃ということなら、いつも通りの警戒で良いんでしょうが、どうにも狙い撃ちにされている感が否めません」
「……私も、ゴブリンスレイヤーさんに相談しておきます!」
「ええ、残念ながら王国に入り込んだ邪教徒らをはじめ、混沌の尖兵たちは後を絶たず。また、商売の世界では混沌と結んででも成り上がり、しかし自分だけは奴らを出し抜いて、破滅せずに旨い汁だけ吸えると思い込んでいる愚物も多いようです」
あるいは今回の件は、そういう人族の中での足の引っ張り合いの一環かも知れないと、女商人はため息をつく。
「なので、どうか気を付けてくださいましね?」
<『2.事情を聴いたゴブスレさん:「ゴブリンどもは、皆殺しだ……!」(スイッチオン)』 了>
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3.陵墓のトロル
建設中の冒険者訓練場予定地の近くで、ゴブリンが見つかったという。
小鬼らが巣食っているのは、かつて何かを為した英雄を祀った陵墓だ。何を為した英雄か、それは忘れられて久しい。
陵墓は、石造りの通路と玄室によって構成される、よくある形式のようだ。
そこへ
「小鬼程度だと物足りねえなぁ」
鮫歯を並べた木剣で小鬼を斬り殺したのは、蜥蜴人の隆々たる戦士。
「まあ、そう言うなって! これも大事な仕事さ!」
それをたしなめるのは、
彼女は、健康的に筋肉の付いた四肢・体幹を躍動させて、巨大な戦斧を振り回して小鬼を真っ二つにしたところだ。
「そうですよ、お金を稼ぎませんと! 皆様、糧秣に武具に水薬にと、気前よく使うものですからね」
交易神の聖印――金の車輪のホーリィシンボル――を
彼女は、遍歴の途中で鮫歯木剣の蜥蜴戦士に惚れ込まれて口説かれ、そしてこの辺境の街まで一緒に旅をしてきたのだ。
「必要経費だ。……それで罠はあるか?」
壮年の只人の魔術師の男が、扉の鍵開けに取り掛かった黒づくめの仲間に問いかけた。
怜悧そうな男で、油断無く戦域を見回している。
「あるにはある、が、こんなもの御同輩の悪辣さに比べれば文字通りの児戯だ」
黒づくめの外套に身を包んだ斥候は、優れた手際で警報の罠を解除する。
彼の耳は細く尖り、肌は黒く――つまりは、
混沌の勢力に生まれついたが、しかし秩序に目覚め、
闇人斥候が小鬼が仕掛けた罠を外してその場を退くと、蜥蜴戦士が奥の玄室への扉を
遺跡の探索も初めてではない。
交易侍祭が光源となる松明を投げ入れ、視界を確保。
軍師術士が
隊列は、前衛が蜥蜴戦士と神官戦士。中列に交易侍祭と軍師術士。後列警戒を闇人斥候。
手慣れたものだ。
「……デカブツが居ます! 岩のような灰色肌、巨体――トロル!」
『OOOLLLTTTLLLOOOO!!』
投げ込まれた松明に照らされる中、寝ていた
強靭な外皮に、再生能力、怪力! 愚鈍でのろまだが、強敵!
手にした棍棒は、一党の誰であっても一撃で叩き潰してしまうだろう。
『GOBB』 『GOBR』 『GGOOGO』
さらに周りに、ニタニタ笑う小鬼の一群も立ち上がった。
大方、どこまでやればトロルが起きるか、怒るか、度胸試しのように遊んでいたのだろう。
――なぜここにトロルが!? いや、小鬼の用心棒か? どうする? 後ろの玄室には、まだ開けていない扉も……、しかし、奇襲挟撃の警戒をしている余裕は――
一党の頭脳である軍師術士が苦悩する刹那。
黒づくめの闇人斥候が前に出た。
「後ろを頼む。御誂え向きの道具がある。一発さ」
この闇人との付き合いも長い。
彼は、出来もしないことをやれるとは言わない。
「援護は!?」
「雑魚を近づけさせなければそれでいい」
――盗賊の彼がやれるというなら、任せましょう。
軍師術士が戦域の状況をその頭脳に入力し、戦術を組み立てる。
「承知、任せましたぞ! 前衛は雑魚散らし! 侍祭は牽制、私は警戒! 盗賊は、そのまま突撃!」
「おう!」 「任せなぁ!」
軍師術士の指示に従い、闇人斥候の道を開くべく、蜥蜴戦士と神官戦士が自らの得物を振るった。
『『『 GGYYYOOOAARR!!? 』』』
鮫歯木剣と戦斧の薙ぎ払いが、小鬼たちを吹き飛ばす!
小鬼程度は、やはり相手にならない。
「風なる我が神、礫を導き給え――えいっ!」
その隙を縫って、交易侍祭が
『OOOLLLLTTT??』
後衛職の手慰みの攻撃では、当然いささかの痛痒にもならない。
しかし、トロルの気を引くことには成功した。この怪物には、弱弱しいこの女の柔肉を貪ることしか頭になくなった。
もはや、あの愚鈍な巨人の眼には、闇に溶け込み死角へと駆けた闇人は映っておらず、完全に意識から消えた。それは明確な隙であった。
「トロルの再生力には、熱か酸……というが、この灼熱の前には再生力など関係ないな」
死角からの回避不能の一撃!
壁を駆け上がり、天井を蹴った闇人斥候の手から、火を噴く金属の筒が投擲され、トロルの顔面に叩きつけられた!!
『OOOLRRRRR!!?!?!!』
「ふん。触れ込み通りなら、鉄をも熔かす灼熱だ。水を掛けても消えない金気の炎。そのまま
――確か、『てるみっと』だか、『さーめーと』だかと呼んでいたか。
闇人斥候の言葉など、もはやトロルには届いていない。
白く灼けた熔解金属が、投げつけられた金属筒から溢れ出し、トロルの眼や口を煮立たすより先に熔かしながら落ち流れていく。
「うわっ、あっちい! 離れてるのにこんなに熱いって何事だよ、盗賊!?」
「そんな鎧を着ているからだ。マントか何かで遮蔽しろ。あと他の奴らも直視するなよ、眼が焼ける」
「先に言え!!」
部位鎧から出た神官戦士の肌を、輻射熱が容赦なく炙る。
蜥蜴戦士は咄嗟に交易侍祭を後ろに庇った。
闇人斥候は、いつの間にか色眼鏡を掛けて、暴れてのた打つトロルを冷酷に見下して残心。
軍師術士は、後方の警戒のため、灼熱の光からは身体を背けていた。
暴れるトロルにゴブリンが巻き込まれ、戦場は混乱。
しかし、肉に食い込んだ熔解金属は、さらに反応して白熱しながらトロルの肉体に沈み込み、離れない。
そして、闇人斥候が「一発さ」と宣言した通り、トロルはすぐに動かなくなった。
「ひゅう、やるじゃねーか! どこで手に入れたんだ、こんな道具?」
「命あってのことではありますが、これ、結構お高い魔法の道具だったのでは?」
蜥蜴戦士の興味の声に、金勘定を心配する交易侍祭の声。
「問題ない、試供品だからな。……お前たちも知っている【辺境最大】の一党から融通してもらったものだ」
――ああ、あの。
一党の皆の表情に納得の色が浮かぶ。
「切り札として常備することも視野に入れましょう、値は張るかも知れませんが。
――――おっと、後ろからもゴブリンです! 気を抜かないで!」
「おう!」 「任せなぁ!」
軍師術士の注意に答え、一党は陣形を組み直す。
残るは小鬼だけとはいえ、新手も後方から来て挟撃されている状況。
油断は禁物だ。
盤を見下ろすのが《真実》神なら、きっと、こう呟いただろう。
――“ちぇっ、今回はパーティの一つくらい全滅させるつもりだったんだけどなあ。”
そう、彼らは見事、生き残ったのだ。*1
<『3.だから、彼らを生還させるために、トロルを一撃で倒せるテルミット弾を開発するのに必要な、軽銀精錬技術を雪山で小鬼から接収しておく必要が、あったんですね(メガトン構文)』 了>
原作小説6巻は、女魔法使いの弟くんの件でゴブスレさんのメンタルがぐっちゃぐちゃになってなければ、普通に訓練所周辺に罠を張り巡らせて防いでいた気もしなくもないんですよね(逆に女魔法使いちゃんが健在の当SSでは、ゴブスレさんがいつも通りのフルスペックを発揮するはずですし、“誰かの姉を助けられたこと”が
そして超勇者ちゃん不在の(ヘカトンケイル退治後にアストラル界から別次元に吹っ飛ばされてそっちでも勇者してた)巻なので、背景に何か陰謀があったのか、あるいは特に陰謀がなかったのかは分からないという……。そんなわけで、当SSでは女商人ちゃんの商売敵/政敵が混沌勢力をそそのかしたため、という
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次回は圃人の女戦士ちゃん(原作において赤毛眼鏡の弟くんとペアを組む子)を出したいですけど、この