ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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●前話:
小鬼(ゴブリン)A「あのノロマ(トロル)が起きるかどうか遊ぼうぜ」
小鬼B「ちょっかいかけても起こさなかったやつの勝ちな」
小鬼C「おもしろそうじゃんw」
………………
巨人(トロル)「こらーーー!!」
小鬼C「ひでぶっ」(ぺしゃんこになって永眠)
小鬼A・B「「 ゲラゲラwww 逃げ遅れてやんの、ばっかでーwww 」」

そしてみんな大好きテルミット反応!

(軽銀精錬技術の接収に伴い錬金・化学の知識もそれなりに向上していると思われますが、覚知神由来の知識なため、正常な技術ツリーを形成できていない面もあります。Civ(シヴィラゼーション)で蛮族集落からTier(段階)をすっ飛ばしたぽっと出の技術(テクノロジー)を回収したようなもんなので(伝わらない例え))

 


29/n 冒険者訓練所にて-3/3(逆侵攻)

 

 はいどーも!

 半竜娘ちゃん(主人公)が背景と化した実況、はーじまーるよー!

 どうしてこうなった? まあ、たまにはそういうこともあります。

 

 前回は、エルフの竜騎兵が新人冒険者たちを追い立てたところまでですね。

 ……エルフの竜騎兵に勝てるわけないだろ! いい加減にしろ!

 なお【停滞(スロウ)】を覚えさせた術士を上空に打ち上げて、絶対成功(クリティカル)で呪文抵抗をぶち抜いたら()とせる模様(半竜娘 with TASさん並感)。

 

 そんな感じで、新人たちをカワイがってあげる日々が続く中で、不穏な情報がもたらされます。

 

 なんと、辺境各地で建設が進められている冒険者訓練所の予定地が、次々とゴブリンに襲撃されているというのです。

 各地の訓練所建設に出資しているという女商人からの情報ですから、その確度は高いでしょう。

 

「ゴブリンか」 ガタッ

 

 はいそうです、ゴブリンです。

 

「座りなさい。今回はまだあんたの出番じゃないわ」

 立ち上がったゴブスレさんを、妖精弓手が(たしな)めます。

 ゴブスレさん、ステイ!

 

「そうか?」

 

「そうよ。今回あんたは使われる側。頭目はあの子」

 妖精弓手は、そう言って、テーブルの向かいの女神官の方を指し示します。

 心なしか、ゴブスレさんが、叱られた大型犬みたいにしゅんとしているような……。

 

「ふぇっ!? 私が、ですかぁ!?」

 急なパスに女神官が慌てます。

 

「そーよ! あなたが指揮を執るの! 他の白磁や黒曜等級の子を率いてね! この変なのは、まあ、『特別顧問』ってところね」 

 

「なんじゃ長耳娘よ、難しい言葉を知っとるじゃないか」

 

「ふふーん! まあね~」

 

 妖精弓手が鉱人道士に、その平らかな胸を張ります。

 おおかた、女商人との文通で出てきた言葉を使ってみたくなったとかそんなんでしょう。

 

「実際、ちょうどいいと思うのよね、あなたの実績にするには」妖精弓手が、手元の檸檬水の杯を回しながら言います。「ひっじょーに不本意だけど、まあ、新人たちの中では、きっとあなたが一番ゴブリン退治の場数を踏んでるわけだし。それに、いくら何でも、前の春に牧場が狙われた時ほどではないでしょ」

 

「いや」ゴブスレさんが兜を横に振ります。「そうとも限らん。経験則でしかないが、新人冒険者の一党ひとつにつき、20匹から30匹のゴブリンが想定される。最大で、100や200は覚悟しておくべきだ」

 

「それはロードがいればでしょー。それにそんなにゴブリンを集めてるなら、小鬼退治の依頼は減ってるはずでしょ? どうなの?」

 

「いや。例年並みだ」

 今更ですけど、ゴブリンの数について例年並みって分かるのって、さすがプロって感じですよね。

 

「ほら。ならそこまで数はいないはずよ。例えば、闇人のいる一党が、訓練場近くの陵墓でも小鬼退治したらしいし、冒険者の数が増えてる分、小鬼もたくさん殺してるわよ」

 自信満々に自説を開陳する妖精弓手さんと、「油断は禁物だ」と最悪を想定すべしというゴブスレさん。

 

「ええと、やっぱりゴブリンスレイヤーさんに音頭を取ってもらった方が……」

 

 おずおずと遠慮した女神官ですが、そこに蜥蜴僧侶が待ったをかけます。

 

「いやさ巫女殿。ここはやってみてはいかがかな」

 

「そんな、私では……」

 

「まあまあ、巫女殿が昇級できなかったのは、拙僧らもショックでしてな。ここは是非とも、その実力をギルドにもはっきりと示すべきかと」

 

「そんなぁ」

 

 頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるってやれる!

 気持ちの問題だ頑張れ頑張れ!

 

 

 なお、そのあと女商人(令嬢剣士)に「私じゃ荷が重いですよう」と弱音を吐いた女神官ちゃんですが、女商人から「いえ、貴女ならいけますわ!」と逆に励まされて、さらに軽銀商会からの冒険者ギルドを通じた正式依頼にされた模様。墓穴(ぼけつ)を掘った……!

 

「そんなぁ」

 

 ……ということで、冒険者訓練所の訓練企画の一環として、新人にグループを組ませて、冒険者訓練所建設予定地の防衛をさせることになった模様。

 特別顧問はゴブリンスレイヤー。

 協力協賛は、【人間重機】半竜娘ほか、ベテラン冒険者のみなさま。新人たちのお手並み拝見、と、案外みなさん乗り気な模様。

 また、上手く行ったあかつきには、ここをテストケースに、同様のプランを他の地域の建設現場にも適用するとのこと。

 

 まあ、新人全員が女神官ちゃんの指揮下に入る訳でも無し。

 冒険者は自由意志を(たっと)びますからね。

 今回は、グループディスカッション形式というか、新人冒険者で組を作って、ゴブリン対策の競争をする形になります。

 

 

 

 というわけで黒曜等級の女神官ちゃんの下に集まったのは、4名の冒険者たち。

 

「うおおお! 俺のつぶし丸(マッシャー)が唸るぜ!」

「ちょっと、やたらと振り回さないでよ、危ないでしょ」

 棍棒と片手剣の変則二刀流の新米戦士と、至高神に仕える見習聖女。

 村の幼馴染同士で、下水道の鼠退治の常連であり、女神官ちゃんの同期です。

 

「がんばるけど、あんまり期待しないでね~」

 組んだ一党が、頭目だった貴族三男の御家の事情で解散になったという、圃人の女剣士。

 馬の尾のよう(ポニーテール)に結んだ髪と、圃人らしい裸足に、動きやすいショートパンツとトレンカを合わせた格好*1

 

「下手な指示したら、リーダー交代してもらうからな! 覚悟しとけよ」

 生意気風なのは、赤毛眼鏡の少年術士。中二病(ぼそっ)

 女神官ちゃんの同期の女魔法使いちゃんの弟くんですね。

 なお、前回、巨竜化蜥蜴僧侶さん相手に、【火球】の呪文を先走って撃った(おもらし)したのをこってり絞られたため、きちんと指示を聞いてくれる程度には従順になってます。

 

「えーと、では、先ずは作戦会議ですかね」

 戦士、戦士、神官、神官、魔術師。

 盾役(タンク)と斥候・野伏も欲しいですが、贅沢言ってられません。

 前衛2名に術使いが3名なのでまあまあいい組み合わせじゃないでしょうか。

 

 

 

 

 え? ここまで半竜娘ちゃん出てきてないじゃんって?

 地の文や会話に出てないだけで、半竜娘ちゃんなら【人間重機】として大工に交じって働いてますよ。

 ほら、背景にはちゃんと映ってますから! ほらほら!

 

 なお、ゴブスレさん(マンチ担当)と蜥蜴僧侶さん(城の地縄張り担当)が、大工ギルドの人足長のドワーフさんと協力して半竜娘ちゃんに指示を出して、着々と陣地化が進んでいる模様。昨年春に、牧場を野戦陣地化した経験もありますしね。

 ……半竜娘ちゃんの馬力によって実現される超速建築に夢中になっている感は否めませんが。

 1/1スケールジオラマだとでも思ってませんかね、お三方。

 

「思ったよりもやる気じゃのう、小鬼殺し殿」

 

「……ここを、()()、小鬼どもに蹂躙させるわけにはいかんからな」

 

 ゴブスレさんが淡々と真正面から言葉を返します。

 半竜娘ちゃんは全く分かっていないので首をひねっていますが、この訓練場予定地は、ゴブスレさんの故郷の村がかつてあった場所でもありますからね。

 そこをまた、小鬼の餌場にする気はさらさらないということでしょう。

 

「いずれにせよゴブリンは殺すが」

 

 アッハイ。

 

「然り然り」

 

 蜥蜴僧侶さんは察しがいいので、この土地がゴブスレさんに所縁(ゆかり)のある土地なのだろうということには当たりをつけていそうですね。

 まあ、わざわざ指摘するような野暮は、なさいませんが。

 

 

 

 と、歴戦組が陣地化を進める傍ら、女神官ちゃんたちは作戦会議です。

 

「えーと、あらかじめ、他の地域の訓練所予定地が襲われた時の話を聞いてきています」

 女神官ちゃんが、女商人ちゃんから聞き取った内容を思い出しながら情報共有します。

 メモは取らないようにと、他のメンバーに言い聞かせているあたり、ゴブスレさんの薫陶が伺えます。

 ……「ゴブリンに奪われたら()()ですから」と、にっこり言ったのにはドン引きされちゃいましたが。

 

「ふむふむ、時間帯は夕闇のころ。ルートは周囲の林とか、あとは地下から穴を掘って……ね」

 

「帰り道の待ち伏せも……か」

 

「術使いやデカブツがいることもあり。他種族を用心棒にしている例あり、か。

 ここの近くの陵墓でもトロルとゴブリンが一緒に居たんだよな」

 

 見習聖女、新米戦士、少年術士がそれぞれ、聞いた内容を吟味します。

 圃人剣士の少女も真剣に聞いています。

 

「おそらく襲撃があるとしたら、聞いたものと似たような形になると思います」

 訓練場の予定地の地面に、拾った石でガリガリと簡易な地図を書く女神官ちゃん。

 

「奇襲や待ち伏せ。それを防ぐことが大事ですね」

 地面に書いた地図の、街への道と、訓練場周辺に大きな○をつけます。

 

「なあ、先にゴブリンを見つけてたたいた方が良いんじゃないか?」

 少年術士が好戦的なことを言いますが、まあ、それも一計ではあります。

 

「それも考えたんですが……。今回の依頼の趣旨からすると、小鬼を皆殺しにするよりも、まずは人足の方や、行商人の方、それと、あの、えと、娼婦の方たちとかを守るのが先決だと思うんです」

 一瞬言い淀んで頬を赤らめた女神官の視線の先には、煽情的な格好をした女性の姿が。もちろん武器も帯びておらず、とても戦えるようには見えません。

 夜戦は強そう? そうねえ……。

 

「そのためにも先んじて打撃を……ああいや、敵が一塊とは限らねえのか」

 巣を潰しに行ったときに行き違いというのも怖いですしねえ。

 あるいは、巣が一つとも限りませんし。

 

「ええ。……もちろん、守りを固めるだけではダメですし、()()()()()()()()()()()()()()なりませんから、やがては打って出ます」

 とはいえ、優先順位としては、今回は防衛の方が高いということです。

 

「その前提条件として、訓練場とその道中の安全の確保ってことだな。分かった、納得した。……結構しっかり考えてるんだな」

 

「え?」

 

「なんでもない。そしたら先ずは、周辺の確認からか?」 

 最初より少し態度が軟化した少年術士。

 

 そんな彼に目を丸くしつつ、女神官は頷きます。

 

「そうですね。抜け穴が掘られてないか、外縁を中心に見ましょう。

 帰り道では、隠れられる場所はどこか、小鬼が通りそうなところがないか、探して、できれば藪を払ったり、罠を仕掛けたりしたいですね」

 

「罠……って言っても、そんなの仕掛けたことないし、やり方知らないよ?」

 圃人の女剣士が言うとおり、この中に斥候や野伏の技能を持つものは居ません。

 

「ええ、ですので、ここは『特別顧問』を頼りましょう!」

 

 

 ――ゴブリンスレイヤーさーん!

 

 ――呼んだか。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ゴブスレさんに方針を話してみたところ、特に修正意見はありませんでした。

 ……女神官ちゃんら新人たちの成長のために、指摘したいのをグッとこらえているのかもしれませんが。

 

 

 そしていざ、訓練所を見回ってみると、整地で出た土を積んだ山の陰だとかの分かりづらいところに、実際にどこかに繋がりそうな穴が掘ってあるのが見つかりました。

 中に入ってみると、結構な高さがあり、只人(ヒューム)でも屈まずに移動できるほどです。

 

 

「……ほんとに穴があったわね……」

 

「訓練中にゴブリンに襲われるとか、ぞっとしねえぞ」

 

 見習聖女と新米戦士は、ここから小鬼が湧いて出るのを想像して顔を青くしています。去年の牧場防衛戦を経験した彼女たちは、小鬼の群れの恐ろしさを既に知っています。

 

 この即席の地下通路は枝分かれして訓練場のあちこちに繋がっていました。実際に四方八方から夜闇に乗じて襲われては、大変なことになっていたでしょう。

 行き止まりも多いのは、半竜娘が基礎固めに地面を踏み均したときに崩落したのかもしれません。

 また、トンネルの大元も、どうやら一本だけではないようです。

 

 

「ゴブリンが掘ったにしては広いねー」

 

「きっと巨人(トロル)に掘らせたんだろ。いくらなんでもゴブリンだけじゃ無理な大きさだ」

 

 圃人の少女剣士と、赤毛眼鏡の少年術士が、暗がりを見つめますが、暗視ができない圃人と只人なので、先は見通せません。

 松明の炎が、影を揺らめかせ、まるで何かが潜んでいるような錯覚を呼び起こさせます。

 

 

「この穴は、お前ならどうする?」

 

「……埋めます。半竜の術士さんや大工の皆さんに頼んで。罠を仕掛けてもいいですけど、やはり潜入ルートは潰さないと」

 

「……そうか」

 

 ゴブスレさんと女神官ちゃんが、穴をどうするか算段を立てていますね。

 多分ですけれど、ゴブスレさんなら、抜け穴の大元の方に罠を仕掛けるのと、一本だけ残して他は潰して、そこに誘い込むとかするんじゃないでしょうか。

 まあそれはゴブリン退治のプロだから見極められる案配(あんばい)があってこそなので、素人が真似するのは危険な気がします。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 ということで、抜け穴の処理は、半竜娘ちゃんと人足に任せて、冒険者組は他に行きます。

 そりゃまあ施設の下に穴ぼこ広がってたら、基礎打ち的な意味でえらいこっちゃですし、それを直すのは、土木の方の専門仕事ですからね。

 冒険者の専門は調査とか怪物退治ですので、役割分担、適材適所です。

 

 あ、ちなみにですが、新人冒険者の別グループが、即席地下通路の大元を辿るんだと言って突撃していきました。

 そっちのグループの後見は、魔女さんと槍使い兄貴。

 なんだかんだで面倒見のいい【辺境最強】ペアですから、実際安心です。

 

 他のグループもそれに続き、抜け穴を方々に突撃していきました。

 槍ニキたち監督のグループとは別方面のルートに行った新人冒険者グループにも、重戦士兄貴や女騎士さん、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶、半竜娘ちゃん(分身)その他ベテランが、それぞれくっついていってますから、滅多なことにはならないでしょう。

 

 

「うーん、俺たちは突入しなくて良かったのか……? トンネル見つけたのは俺たちだし、突っ込んでったあいつら、適当に回りぶらぶらしてただけじゃんか」

 若干未練がましい、少年術士。

 

「まだ、街までの道の見回りが終わっていませんから。それに、あの数があって、ベテランの方たちも一緒ですから、心配はいらないかと」

 女神官ちゃんが苦笑していますね。

 それは、一歩引いて歩くゴブスレさんも突入したそうにしているからかもしれません。ゴブスレさん、ステイ!

 

「そーだよー、最初の作戦会議のとおりに()ずはやろうよー。っていうか、他のグループはみんな、あのトンネルを奥に行っちゃったから、こっちの見回りやるの、私たちしかいないじゃん」

 圃人の少女剣士が、その大剣で藪や茂みを切り払っています。

 隠れる場所を減らして、見通しをよくするためです。

 

 

「うへえ、冒険者になってまで草刈りかよー」

 

「文句言わなーい」

 新米戦士と見習聖女は、村に居た頃に草刈りを手伝ったことがあるというので、大きな草刈り鎌(サイス)を渡されています。

 流石に経験者だけあって、安定した感じで刈っていきます。

 

 

「止まれ」

 

 ゴブスレさんが、草刈りをしていた一党を引き止めます。

 

「どうかしましたか?」

 

「上を見ろ」

 

 その言葉に釣られて上を見ると、枝葉が道の上を覆っています。

 

「葉っぱ?」

 

「細い枝だが、小鬼の体重を支えるくらいはできる。()るべきだ」

 頭上からのアンブッシュはジッサイこわい。

 

「そういえば、姉ちゃんが言ってたな。森で大蜘蛛や毒芋虫に、上から襲い掛かられたことがあるって……。頭上注意……確かにな」

 赤毛眼鏡の少年術士から呟きが漏れました。

 鉢巻の青年剣士君の一党は、森の探検でもしたことがあるみたいですね。……そして酷い目にあったようです……顔でも掴まれかけた(フェイスハガーされかけた)のかな?

 

「そうか。……姉の言ったことは、よく覚えておけ」

 

「……? ああ、言われなくても」

 

 ゴブスレさんがなんで、ゴブリンの巣穴を他の冒険者に任せて新人研修に付き合ってくれてるのか疑問でしたが、“姉弟”ってのが琴線に触れてるんでしょうねえ。

 常々受付嬢さんから“銀等級らしく振舞ってください”って言われているのを受けて、後進を育てる気になったというのもあるのでしょうけれど。

 いや、後進(ゴブリンスレイヤー)ではなくて、()()()を育てたいんですよね、きっと。

 

 

 …………。

 ……。

 

 あっという間に日が暮れていきます。

 街道の草刈りは、危険そうなポイントを重点的にやったため、かなり見通しが良くなりました。

 ……まあ、春なのであっという間に草がまた伸びるでしょうけど。でも、しばらくは奇襲を受けづらくなったはずです。

 ゴブリンが通りそうなところに、ゴブスレさんがレクチャーしながら簡単な罠を仕掛けたり、実際に新人たちに仕掛けさせてみたりもしましたので、新人たちにとっても実り多い時間となったようです。

 

 草を刈りながら街まで戻ってきたので、今日はこのまま解散でしょうか。

 

「大元の巣穴を叩きに行った方たちは、無事でしょうか……」

 

「さてな。勝算はあろうが、それは勝利ではない」

 

「もうっ! そういう時は、きっと無事だ、とか言ってください!」

 

「そうか?」

 

「そうです!」

 

 どこかズレたやり取りをする女神官ちゃんとゴブスレさんに、残りのメンバーは肩をすくめます。

 

 

「さーて、帰ろうぜ。ギルドで日当もらわねーと。大鎌(サイス)もギルドで明日まで預かってくれるらしいし」

 棍棒と片手剣の新米戦士は、草刈り鎌(サイス)を預かると、ギルドへ向けて歩き出しました。

 ちなみに、日当については、解毒(キュア)強壮(スタミナ)のポーションが要らなかった分、鼠退治より実入りが良いみたいです。

 経験も積めて、金も稼げて、危険も少なくて、最高じゃん! と思っている模様。

 

「お風呂入りたーい、青臭いー」

 草刈りで草の汁の匂いが染みついたのを気にしてか、見習聖女は法衣を嗅いで顔を(しか)めています。

 まあ、下水や血糊の匂いよりはマシです。

 

 

「ねえねえ、お宿はどこに泊ってるの?」

 

「ん? あっちだよ」

 

「わ、同じ方向! 圃人(レーア)が亭主してるとこだよね! 一緒に行こう! もうお腹空いちゃってさー!」

 

「おっと、引っ張んなよ!?」

 圃人の少女剣士と、赤毛眼鏡の少年術士は、どうやらたまたま同じ宿に泊まっているらしく、ついでなのでと連れ立って歩いていきます。

 ふむ、新人冒険者が一つの冒険を経て(よしみ)を通じるのも、また様式美という奴ですね!

 

 

 

 その直後、空高くを、流星のように何かが横切りました。

 

「あれは――?」

 

 女神官の疑問が宙に溶ける間もなく、訓練所の方向から現れて空を駆けた流星のような何かは、弧を描いて街の上をぐるりと一周すると、訓練所の方向へ戻り、その先へ飛び……そして地に()ち――大きな地響きを響かせました……!

 

「ひゃっ!?」

 

「……ふむ、大規模な巣穴の後始末でもしたのだろう」

 

 ――ドラゴンダイヴ。とだけ呟いたゴブスレさんの一言で、女神官ちゃんが悟ったようなフラットな表情になりました。

 

「ああ、まったく、本当に……ほんっとうに、“()(がた)い”ひと……」

 

 

*1
トレンカ:トレンカー。トレンカレギンス。スティラップパンツ。形状としては、タイツの踵とつま先を落として土踏まず部分にひもを残したようなやつ。




 
半竜娘(分身)「捕虜は救出したな? では巣穴は再利用不可能なように潰すのじゃ!! 見ておれ、新人ども! 【辺境最大】たる手前(てまえ)の威力を――!! 【加速】【巨大】【竜翼】――そして【突撃】じゃ! イィヤァアアアアアアッ!!
どっかーーん!!

=====

2周目モードなので、新人たちがトンネルを辿っていった先では、小鬼の数が原作より増えてたり、トロルの用心棒がおかわりされてたりしましたが、まあ、保護者付きの冒険者たちが同時多発的に踏み込んだら、そりゃ楽勝よ。ゴブリンたちが本来やりたかったであろう戦術を、逆に冒険者側がやった形ですね。

というわけで、『訓練所襲撃編』は、無事、『訓練所襲撃()()編』になりました。
これにて原作小説6巻編、概ね終了!

※没ネタ供養
TS圃人斥候「何でオイラがゴブリンの格好して新人を脅かさなきゃならねーんだよ。帰り道で襲撃されたときにも冷静に対応できるように、予行演習(リハーサル)させたいってのは分かるけどよー」
森人探検家「そりゃもう、あなたが、元“ゴブリン並みのゲス”だからよ」
TS圃人斥候「おい! 改心したって言ってるだろ! いい加減にしろ!」
半竜娘「いやまあ、それは冗談として、真面目な話をすると、幻影魔法でゴブリンの群れを偽装できるからじゃな」
TS圃人斥候「まともな理由があるじゃねーか! それを先に言えっつーの!」
※没理由 尺の都合で。結果として「カワイガリ」の一言に集約。

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文字数も嵩んでいてなかなかご新規さんはとっつきづらいなか、追いついてきてくださる方がいらっしゃるというのは、とてもありがたいですし、創作の励みになります。ありがとうございます!
もちろん、初期から応援して支えていただいている皆様にも感謝を。更新できてるのは読んでくださる皆さまのおかげです!
そして当然原作にもリスペクトを! 原作小説最新14巻(ドラマCDつき特装版アリ(マス)は3月発売!

感想評価をいただきまして、いつもありがとうございます! 大変励みになっております、そして小躍りして喜びました、みなさん優しい……好き……(トゥンク) 一層精進します。

===

次回からは、原作小説7巻の『森姫婚姻編』……じゃなくて、それに行く前に、一つ閑話的なオリジナルイベントを挟みます。

春……それは産卵の季節……。
爬虫類系(または鳥類系)人外娘なら、無精卵イベントは必須だよなあああ!!??
というわけで、次回は、今回の後始末と『卵騒動(エッグ・ライオット)(仮称)』編の導入となる予定です。

 

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