ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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閲覧、評価&コメント、お気に入り登録、誤字報告、感想記入、ここ好きタップ、ありがとうございます! 新たな完走者も増えて素晴らしいことです。当作品も90話、70万文字と結構なことになっておりますが、引き続きよろしくお願いいたします……!

●前話:
・女魔法使いちゃんたち一党、遍歴の旅へ
金剛石の騎士(貧乏貴族()の三男坊)、悪を斬る
・超勇者の帰還
たまご騒動(エッグ・ライオット)/マスターシーン

===

◆弟くん(少年魔術師)の学歴について(@女子会)

女武闘家「そういえば、杖、弟くんとお揃いなのよね」
女魔法使い「まあねー。あの子、私に追いつくんだって頑張ったみたいで。飛び級して卒業して追いかけてきたのよ。あ、杖の宝玉は、卒業の証しね」
女神官「優秀な弟さんなんですね」
女魔法使い「そうよ、自慢の弟。……流石に、飛び級したせいか、私みたいに成績優秀者とまではいかなかったみたいだけどね。まあ、それでも、こないだ都に帰ったときに、私が教えて鍛えてやった甲斐があるってものよ」

というわけで、原作では中退と思われる弟くんですが、今作では飛び級卒業とします。シスコンパワー……。

===

◆稽古の約束(@勇者一行の道中)

賢者「そういえば、収穫祭の後に、半竜の冒険者に稽古つけるという約束をしていたのでは……?」
剣聖「そうですね、不可抗力とは言え、すっぽかしてしまったのは心残りです……。残念ですが、約束を果たすのは次に会った時、になるでしょうか。その機会があればですが……」
勇者「きっとまた会えるよ! そんな気がする!」
剣聖「貴女が言うなら、そうなのでしょうね。ふふ、楽しみです……」
賢者「こっちもあっちも戦闘狂……」(ぼそっ)

 


30/n たまご騒動(エッグ・ライオット)-1(狙われた初卵)

 

 はいどーも!

 前回は半竜娘ちゃん不在でしたが、今回はがっつりフィーチャーしますよ!

 気分はナショジオ(National Geographic)やBBCのドキュメンタリー番組です。

 

 季節は春から初夏に変わるころ。

 辺境の街に来てから、一年以上が経ちました。

 

「チーズ、チーズを頼むのじゃ! 骨付き肉もじゃ!」

 半竜娘ちゃんがギルドで食事をしています。

 このところ、どうにも無性にチーズや、骨付き肉ばかり食べたくなるのだとか。骨付き肉は、ワイルドに骨ごと丸カジリしてますね。

 また、時折、下腹部を押さえて、少し気持ち悪そうにしています。元気が取り柄の半竜娘ちゃんには珍しいことです。便秘かな?(すっとぼけ)

 

 

 ……さて、半竜娘ちゃんですが、栄養たっぷりな食べ物(チーズ)をもりもり食べたり、受肉した分身体を取込んで融合したりしたことにより、1年前に比べて、体長が1.25倍になるなど、身体が急成長!

 さらに夢魔の娼館を体験したり、一党の仲間と絆を深めあったり(意味深)して、大人の階段も上りました。

 ひとつ歳を重ねて、今は14歳――いい年頃ですねえ。“14歳”という響きには、言霊があります。世界を救ったり滅ぼしたりできそうな年齢じゃないですか?

 

 そして、晩春から初夏といえば、爬虫類系や鳥類系にとっては、概ね、繁殖期に当たります。

 

 

 豊富な栄養と成長、性的刺激、春機発動期(14歳)、繁殖期、カルシウム摂取(チーズや骨の爆食い)、下腹部の違和感……。

 

 

 はい。もうお分かりですね?

 

 只人と違って、蜥蜴人は卵生なので、“月のもの”なんてありませんが、卵生人類種にはそれはそれで苦労があります。

 ペットに蛇や亀や鳥を飼ったことある方は分かるかもしれませんが、彼女ら、わりとよく卵を詰まらせます。

 蜥蜴人の婦人科医(いるとすればですが)は、この時期になると、卵の()()()を診るのに忙しくなるんじゃないでしょうかね。

 

 さて、そして我らが半竜娘ちゃんの状態を鑑みると――まあ、間違いないでしょう。

 

 

 お腹に卵がありますね、これは!

 子持ち蜥蜴人!(子持ちシシャモ的な)

 

 

 昨年は、おそらく黒鱗の古竜に捕虜にされた時のストレスや、東方戦域から西方辺境まで大回りして離脱した時の栄養不足もあり、お腹に卵はできなかったのでしょう。

 あるいは、単に個人差というだけかもしれませんが。

 只人の女性が遅くとも、概ね成人である15歳までに初経を迎えることを思えば、半竜娘ちゃん(成人年齢+1)の今回の初抱卵は、蜥蜴人基準では少し遅い部類かも知れませんね。

 

「むう……なんか最近体調が悪いんじゃよなあ……」

 

 半竜娘ちゃん自身も、故郷から離れて周りに蜥蜴人の女が居ないためか、あるいは単純に忘れているのか、すっかり産卵期のことなど頭から抜け落ちているのかもしれません。きっと初めての経験だからということもあり、体調不良と結びつけることができていないんでしょうね。

 身体が大きくなったことも影響し、抱卵/懐卵の負荷は軽いようで「ちょっと調子悪いんじゃよなあ」ってくらいにしか思っていないように見えますから、なおさらです。

 ……お腹に卵が出来てることには、どうやらまったく気づいていないようです。外から見ても、腹部がポッコリ膨らんでるわけでもないですしね、腹筋バキバキなおかげで。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 そして数日後。

 ギルドで半竜娘が昼食を摂っていた時のこと。

 

「あ ら? 今日 は、顔色 いい わ ね?」

 魔女さんが、半竜娘の向かいの席に座り、腕でその豊満な胸を支えるようにして、もう片方の手で煙管(キセル)を摘まんでいます。

 魔女さんなりに、最近調子が悪そうだった半竜娘を心配していたようです。

 

「……んむ? おう、そうなのじゃよ! なんか今朝起きたら、()()()()しておってな! なんじゃったんじゃろうな……?」

 半竜娘は、相変わらずチーズや骨付き肉をバクバク食べていますが、前日までよりも調子がよさそうです。

 

「ふぅ ん……? そう いえ、ば、お仲間は?」

 

「ふーむ、それが、朝起きたら、誰も()らんでのう。昨日は灯明の娘(文庫神官)が一緒に寝てくれたはずなんじゃがなあ。出かけるなら起こしてくれても良かろうに……」

 

 あっ(察し)。第一発見者が証拠品を持って逃亡してますね、クォレハ……。

 

「まあ、ウチの一党は、依頼のない日は、わりと好き勝手にやっとるから珍しいことでもないがのう。昨日までの手前の体調を鑑みれば、手前を寝かせたまま、3人で依頼に出てもおかしくはないしの」

 

 がつがつとチーズ尽くしの昼食を食べ終えると、半竜娘ちゃんは立ち上がりました。

 巨体で椅子は使えないので、床に直座りしていましたが、立ち上がると天井に頭がつきそうなほどです。

 蜥蜴人特有の眼だけキロッと動かすやりかたで、魔女の方を見下ろしました。

 

「そちらはこれから依頼かや? それとも冒険帰りかや?」

 

「ふ、ふ。貴女の、調子を、見に来た の よ?」

 

「おお、それは心配かけたのじゃ! でも、もうこの通り平気じゃよ?」

 

「そ 、ね?」

 

 魔女さんは意味深な笑みを向けます。

 ふふふ、と笑う魔女さんは、さて、どこまで見通しているのやら。

 ……少なくとも、半竜娘ちゃんの体調不良が抱卵/懐卵によるものであったことはお見通しっぽいですね。

 

「さあて、まずは肩慣らしに、下水道の方にでも行くかのう。例年より少ないとはいえ、残念ながら未帰還者もおるようじゃし、その弔いも……」

 

「病み上が りなのだ から、まだ、あまり、動かない、ほう が、いい わ よ? その、想いは、わかる けど」

 

 そう言って、魔女さんは、半竜娘ちゃんを誘います。

 

「お茶、でも いか が ?」

 

 近頃の研究の進捗について情報交換がてら、甘いものやいい香りのものをお供に、お茶をしようというのです。

 それだけではなく、先達のウィッチとして、同類であるネクロマンサーとなった半竜娘に、いろいろと作法を伝授したりといったことも考えているみたいですね。

 もちろん、他愛ないおしゃべりも必須! 女の子は、砂糖とスパイスと、いっぱいの素敵なものでできているのです。*1

 

「おお! なら依頼は受けずに、ご相伴(しょうばん)(あずか)ろうかの! ちょうど、複数人で真言を差し出し合って呪文を組み立てる方法について議論したかったんじゃよ!」

 

「ええ、それ は、よか った わ。よろしく、ね」

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 一方そのころ。

 

 半竜娘ちゃんの一党の仲間である、文庫神官は、馴染みの酒場(TS圃人斥候の用心棒先)で「う~ん」と唸っていました。

 座った彼女の膝の上には、長楕円体の、白い陶器のような塊が置いてあり、さらにその上から膝掛けが載せられていました。

 長楕円体の大きさは、長軸が肘から拳の先までくらい(約45cm)の長さで、幅が手指を思い切り横に広げた(約23cm)くらいある、やや細長い卵型の物体です。

 

「持ってきちゃいましたけど、どうしましょうか、コレ……」

 

 文庫神官は、今朝のことを回想します。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 時間はさかのぼり、今朝のこと。

 

 ――初夏の曙光が乙女の寝室を照らし、文庫神官は目を開けます。

 朝の御勤め(神官的な意味で)の時間です。

 いつもであれば、奉ずる信仰は違えども、神職である半竜娘と(彼女が【分身】を昨晩作っている場合はその分身体も一緒に)、朝の御勤めで祈りを捧げたり、瞑想したりするところです。

 

「まあ、お姉さまは、ここ最近、御加減が悪いみたいですし……。寝かせておいてあげましょう」

 

 半竜娘ちゃんのお手当(応急手当技能+【小癒】)のために、同衾していたのです。

 ……まあ、慕うがゆえのスキンシップを求めてという面も否定しませんが。

 既に彼女ら、新年の歓楽街の餓鬼退治の打ち上げで一線を越えて、()()()()()ですからね。

 

 暖かい日が続くようになってきたので、この日のように、一糸まとわぬ姿で同衾することもあったりします。

 

 半竜娘ちゃんサイズの特大ベッドから出るときに、さっきまで一緒に包まっていたシーツがはだけてしまったので、それを直そうとしたその時。

 

「んんん……??」

 

 ――何か、あるような……? なんでしょう……?

 半竜娘ちゃんは、尻尾が邪魔ということで、大体は、お腹を抱えるように丸くなって寝ているんですが、シーツの隙間から見えた半竜娘ちゃんのお尻のお股のところに、何かいつもと違うものが見えたような。

 

「お姉さま、ちょっと失礼……」

 

 文庫神官ちゃんがシーツに潜り込んでゴソゴソし始めます。

 

「んぁっ」

 

「お姉さま、我慢してくださいまし」

 

「んっ。んんぅっ」

 

「……()らさないと駄目でしょうか……失礼、ちょっと舌で――」

 

「ん、ん、ん……んん~……んっ」

 

「なんだか、濡れたところが膨らんできたような? えい、あと、ちょっと……。回しながら――」

 

あっっっ」

 

 すぽーん!

 

「と、取れました……!」

 

「ふぅ、ふぅ、はぁ。すぅ、すぅ……むにゃ……」

 

 艶やかな喘ぎ声が 医療行為に伴う反射的な声が出てましたが、医療行為なので実際健全です。猥褻(ワイセツ)が一切無い。イイネ?

 

 ていうか、半竜娘ちゃん、良く眠ってますね。

 連日の体調不良の影響もあるでしょうが、ここは樫人形(ウッドゴーレム)で守らせた自らの拠点ですし、それだけ仲間の文庫神官ちゃんを信頼しているという証左でもあるのでしょう。

 

 いや、それはともかく、出てきたものの方ですね。

 

「これは、やっぱり、卵、でしょうか」

 

 文庫神官の手には、てらてらとした粘液に包まれた、温かく、すこし柔らかい、白い陶磁のような見た目の、パイプのような細長い長楕円体。

 朝日に透かして見ると、全体にみっちりと中身が詰まっているのが分かります。

 粘液が乾くのと同時に、卵の大きさが膨らんでいきます。どうやら、表面から水分を吸収して大きくなっているようです。

 

「えっ、なんか、吸い取る勢い的にもっと水分が必要なのでは? こう、産湯(うぶゆ)みたいな?」

 

 文庫神官ちゃんは、慌てて、手近にあった冒険用の荷物から『聖餐(エウカリスト)』のランチョンマットを取り出して、中身を捨てた水差しを置き、祝福された水をその中に生み出し、シーツに包んだ卵へと、その祝福された水を注ぎ始めました。

 

「煮沸はしていませんが、祝福された水ですから、毒になることはないはず……。って、まだ吸い込みます? これ、水差し一つ分で足りますかね……」

 

 結局、なんとか足りたみたいです。

 水差し一杯の水を吸い取って、パイプのようだった卵は膨れ上がり、もっと卵らしい形になりました。

 また、表面も、徐々に硬くなってきました。

 

「ははあ、なるほど。産まれるときは卵白のところを極力少なくして、生まれた後に水を吸い込んで嵩増しするのですね。柔らかな殻は、膨れるときに対応するため。そして、十分に水を吸ったら、固くなる、と。産まれたては、中身がほぼ卵黄だけだったというわけですね。できるだけ大きな卵黄を殻に封じ込め濃縮状態にしておき、母体の骨盤にかかる負荷を減らすために細長いパイプ型で産み、そのあと水分を吸収するという流れ……興味深いですね……」

 

 文庫神官ちゃんってば、未知のことに遭遇すると眼を爛々と輝かせて早口になるよね。

 水を吸って巨大化し、ひと抱えもあるサイズになった卵を、落とさないように慎重にベッドサイドへと置きます。

 

「って、考察はあとで良いとして、ええと、うーん、あー。ど、どうしましょう!?」

 

 文庫神官ちゃんは、かつて暮らしていた知識神の文庫(ふみくら)で鶏を飼って世話をしていたので、まあ、この状況から、最近の半竜娘の体調不良が、この“卵詰まり”によるものだというのは、すぐに見当が付きました。

 

 でも、この問題って、とっても、そう、とっても――センシティブ!!

 

 いくら()()()()()に既になっているとはいえ、種族特有のしきたりもあるかもしれません。

 

――蜥蜴人の文化としては、そもそも、いったいどうするべきものなんでしょう……!?

――わ、分からない……!! というか、さっきの処置も本当に正しかったんでしょうか??

――蜥蜴人のことを書いた風土記でも、さすがにそこまで詳しく書いてるのは見たことないです……!!

 

「うーん、うーん。もし、もし、ですよ? “初卵は食べるのが流儀じゃ”とか言われたら……」

 

 サァっと文庫神官ちゃんの顔が青くなりました。

 本来は、半竜娘ちゃんが起きてきたときに聞くのが一番なんでしょうけど。

 でも、自分で取り上げたこともあってか、文庫神官は、既に不思議な愛着を、この卵に感じてしまっています。もし、「食べるのじゃ!」とか言われたら、ちょっとしばらく立ち直れないかもしれません。

 

「お姉さまが何処かで(タネ)を貰ってきてるとは考えづらいですし、無精卵なんでしょうけど……」

 

 はい、ここで【博識】判定です。

 知識神の神官なので、その職業レベルも上乗せして判定できることにします。*2

 目標値は“やや難しい”程度とされる「18」とします。職業レベルを乗せられるので、まあ、何とかなるでしょう。

 

 ■文庫神官の【博識】判定:

  知力集中5+神官(知識神)Lv6+博識1+2D656=達成値23 > 目標値18 ○判定成功!

 

「――いえ、確か、鱗あるものは、雌だけでも繁殖できると読んだことが……。んん、無精卵とも、限らない、のでしょうか……」

 判定に成功したので、文庫神官ちゃんは、爬虫類などの単為生殖の生態について思い出すことが出来ました。

 蜥蜴人にもそれが適用できるか、までは分かりませんでしたが、この卵も、既に命が息づいている可能性があります。

 

「ど、どうしましょう……!? ひょっとしたら、私とお姉さまの子供という可能性も……??」

 

 いや、そうはならんぞ。確かに、只人は、どの種族とも混血できるという特性があるから、一党の中で一番可能性あるのは君だけど、性転換プレイはしたことないでしょ。……って、おーい?

 

「は、はわわわわ!?」

 

 うーん、ダメみたいですね。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 場面は再び、歓楽街の酒場(TS圃人斥候の用心棒先)に戻ります。

 

「それで、なーんでこっちに持ってきちゃうかねー」

 ため息をついたのは、TS圃人斥候です。

 昨日は用心棒の仕事で歓楽街(こっち)に泊まっていたのですが、仕事上がりに文庫神官が訪ねてきて、卵の件に巻き込まれたのです。まさに寝耳に水でした。

 

「す、すみません。つい、なんというか、混乱して……。あと、寝込みを襲ったみたいで後ろめたくて……」

 (くだん)の卵を股の間に挟んで抱え込み、冷やさないようにしている文庫神官ちゃん。

 まあ、人間、焦った(テンパった)ら妙な行動をとるものです。

 

「直ぐ本人に知らせるのが一番だったろーに」

 

「それは、分かってるんですけど……」

 

「後になればなるほど面倒だぞ、こーゆーの」

 

「そうなんですけど……」

 

 煮え切らない文庫神官の態度に、TS圃人斥候は、ハァと溜め息一つ。

 

「まあ、逃げてくる先にうちを選んだのは、マシな判断だろうな。蜥蜴人の嬢はいねーが、鳥人(ハルピュイア)は居たはずだし、なんか話を聞けるかもしれねー」

 

「すみません……」

 

 鳥人と蜥蜴人は、近縁らしい、という話は聞きますからね。

 蜥蜴人の益荒男(トカゲ顔)は、鳥人たちにも人気だそうで。

 

「あと、用心棒仲間に、蜥蜴人の男(鮫歯木剣の蜥蜴戦士)もいるが……こっちは望み薄だろうな。むしろ事細かに知ってたら、そっちの方が怖え。一応、声かけてみるか?」

 

「いえ、流石にそれは……」

 

「だよなー。……いやでも、卵なら、父親だろうが母親だろうが誰が温めても変わらんだろうから、蜥蜴人は男も卵を温めたりするかも知れねーぞ? ワンチャン詳しい可能性も……?」

 

 実際、例えばコウテイペンギンは、雌と雄が交代で卵を温めますし、恐竜の偸蛋龍(オビラプトル)も雄が卵を温めていたのではないかという説がありますから、的外れな考察というわけでもないでしょう。

 

「うっ、確かに否定できません……、いやでも……」

 

「まあ、先に鳥人の嬢の方から聞いてみよーぜ」

 

 そういうことになりました。

 レッツ インタビュー!

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 インタービュー終了!

 

「結局、蜥蜴人の卵の扱いは分からない、ということでしたね」

 

「温め方とかは教えてくれたけどなー。まあ、文化としての初卵の扱いは、下手したら蜥蜴人でも部族ごとに違うって話だしな」

 

 やっぱり本人に聞く方が早いってー。などと言いつつ、文庫神官とTS圃人斥候は、別の店に向かっています。

 鳥人の嬢から「それなら夢魔(サキュバス)に聞いてみたら? 彼女ら、エロいことは大体知ってるし、一回パスつなげた相手から知識吸いだしたりしてて無駄に博識だし」と言われて気づいたのです。

 そういえば、半竜娘ちゃんも、夢魔に手解きしてもらってるから、知ってる可能性あるな、と。*3

 

「まあ、サキュバスにも聞くだけ聞いてみて、ダメだったらリーダー本人に聞こーぜ」

 

「はい、その時は、私も覚悟を決めます……!」

 

「何の覚悟だよ」

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 しばらく歓楽街を歩いて進んでいたところ、文庫神官とTS圃人斥候の行く手を遮る者たちが。

 

「あっ! 見つけたぞ! あいつらが持ってるみてえだ!」

 

 暗くもないのに、火のついた短い()()を手に持った男と、その取り巻き。

 どうにも堅気のようには見えません。

 仕掛人(ランナー)でしょうか? いえ、ランナーなら、初手奇襲安定でしょうから、声をかけてきた時点で違うでしょう。こいつらは一山いくらの破落戸(ごろつき)でしょうね。あるいは、交渉しようという気があるのであれば、ぎりぎり祈りの言葉持たぬ者(ノンプレイヤー)には堕ちていない、最低限“文化的なチンピラ”なのかも。

 

「え、何でしょう。斥候さん、お知合いですか?」

 

「悪そうなやつらを全員オイラの知り合いにすんじゃねえ。知らねー奴らだよ」

 

 顔を見合わせる二人。ですが、どうも良くない雰囲気です。

 文庫神官は、戦闘になると思っていなかったので、最低限の武装しかしていません。

 TS圃人斥候は、用心棒の仕事上がりなので武装はそろっていますが、徹夜が響く可能性があります。

 

「お、おい」

 道を遮った男たちのうちの一人が話しかけます。

 

「も、持ってるんだろ? だ、出せよ!」

 TS圃人斥候の腕前は、このあたりでも有名なので、相手のゴロツキは腰が引けています。

 

「ハァ? 何のことだよ?」

 ギロリとTS圃人斥候が睨み返すと、男たちはたじろぎますが、それでも退散はしません。

 

「だ、だから、アレだ!」

 

「アレって何だよ? 要領を得ねー奴だな……」

 

 威圧しつつ、TS圃人斥候は腰のマジックポーチに手を伸ばし、必要なものを手に取ります。

 そして、文庫神官に小声で話しかけます。

 

「1、2の3で合図したら、逃げるぞ」 「……了解です」 「じゃあ、カウント――いち、にぃ、の――」

 

 常日頃から冒険で連携を取っているため、こういった事態に陥ったときの対策も万全です。

 ゴロツキの男たちは、TS圃人斥候らの空気が変わったことに、まだ気づいていません。

 

「だからよ、持ってんだろ、アレだよアレ、たま――」

 

さん()!」

 

「!? なんだ!?? 煙――」

 

 3のカウントとともにTS圃人斥候が投げた煙玉が、細い路地を覆います。

 

「いまだ、逃げるぞっ!!」 「はいっ!」

 

「あっ、待てっ、ぅゲホッ、ゲホッ!」

 

 せき込むゴロツキたちを尻目に、二人は逃走しました。

 半竜娘の死霊術で維持された【分身】の残影によって、【加速】の呪文が恒常的に維持されているため、その逃げ足はとても速いものです。

 そこらのゴロツキで追いつけるものではありません。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 そしてゴロツキたちを撒いたところで、TS圃人斥候と文庫神官は一息つきました。

 

「……さっきの男たちの一人が持っていたのは、マジックアイテムの“物探しの蝋燭”ですよね、短くなってましたけど。失せ物探し(ダウジング)に使うという」

 

「だろーな。……何だってんだ、あいつらが言いかけてた言葉は、“たまご”だろ? リーダーが産んだ卵のことか? マジックアイテム使ってまで探すようなもんかよ」

 

 文庫神官が、胸元に子負い紐で抱えた卵を、誰にも渡さないように、ぎゅっと抱きしめます。

 TS圃人斥候は、周囲から奇襲を受けないように、あちこちに視線を向けています。

 

「それがそうなのよねー」

 

「ッ!?」 「誰だ!?」

 

 急に掛けられた言葉で、文庫神官とTS圃人斥候の二人に緊張が走ります。

 

「私よ、私。そう緊張しないで」

 物陰から現れたのは、エルフの野伏――同じ一党の森人探検家でした。

 

「エルフパイセンかよ、脅かすなって」

 

「ごめんごめん。で、まあ事情を教えてあげると、ローグギルド経由で懸賞がかかってるのよ。――“【辺境最大】が産んだ初卵、銀貨5万枚”ってね。しかも、“物探しの蝋燭”を支給品としてばらまいてまで」

 

 ――銀貨5万枚!? と、文庫神官とTS圃人斥候が驚きます。

 一つの依頼で動かすような金額ではありません。それに、物探しの蝋燭も、幾らか短く切り詰めたとしても、決して安い魔道具ではありません。

 魔道具持ち逃げのリスクを飲み込んでまで高額な懸賞をかける、その依頼者の本気度が(うかが)えます。

 

「ま、まさか、エルフパイセンも、それを受けたんじゃねーだろーな……?!」 「そ、そんなことありませんよね――!?」

 森人探検家の銭ゲバ具合を知っている二人が顔色を悪くしていますが……。

 

「ああ、それはないわ。そういう怪しい依頼を真に受けるのは、バカだけよ。“裏取りはエチケット”ってね」

 ――気前の良すぎる依頼には、ご用心……。と、森人探検家は口元に指を立ててウィンクします。

「それで、裏取りした結果、どうも、依頼人は5万枚も支払う能力はなさそうだし、なぁんかその卵も良くない目的に使われそうだしってんで、あなたたちを探してたのよ。その卵とやらがあるかどうか知らないけど、襲撃は受けそうだしね――で、どうも実際、“【辺境最大】が産んだ初卵”ってのは、実在するみたいね」

 森人探検家は、文庫神官の胸元に抱えられた卵を確認すると、ため息をつきました。

 ローグギルドから近い順に合流しようと、TS圃人斥候の用心棒先の店に行ったら、文庫神官と一緒に夢魔の店に行ったと聞いて、二人を探していたそうです。

 

「その様子を見ると、手放す気はないんでしょう? なら、大元を断ちに行かないとね」

 ――卵詰まりが体調不良の原因だったんなら、リーダーも今は復活してるのかしら、そっちにも合流しなきゃね。そう言って、森人探検家は算段を立て始めます。

 

「……大元っつーと、問題の依頼人の居場所は分かるのかよ?」

 TS圃人斥候が肝心のところを問いただします。

 

「いいえ? そこまでは、まだたどり着けていないわ。……でも、()()()()()()()()()を持った連中がここら辺をうろついてたじゃない? おあつらえ向きに、ね」

 

 そう言って、森人探検家は、袋いっぱいに詰め込まれた、幾つもの短い蝋燭を見せました。

 

 

 というところで、今回はここまで!

 ではまた次回!

 

 

*1
砂糖とスパイスと素敵なもの全部:マザーグース(英国童謡集)の『What Are Little Boys Made of?』の歌詞より。ちなみに男の子は、カエルにカタツムリに子犬の尻尾でできているそうだ。魔女と半竜娘を見て、「……女の()?」と疑義を呈してはいけないゾ。

*2
【博識】判定の裁定:本来は【博識】判定に上乗せできるのは魔術師Lvだけですが、知識神の神官が博識ではないのも変な気がするので、この場面では上乗せすることにします。恒常的な裁定ではなく、ケースバイケースとしますが。

*3
夢魔の手解き:過去話「17/n 裏」参照。




 
現地調達は冒険者の必須技能!

蜥蜴人の産卵ビジュアルについて興味ある方は、感想でも言及あったアニメ「異種族レビュアーズ」第7話が参考(?)になる可能性が、ががが? シャルロットちゃんはかわいかったね(蜥蜴人基準)。いやまあひどいアニメ(褒め言葉)なので、うん、まあ。異種族多様性の解釈や考察的には面白いんですよ、はい。なんなら四方世界に彼ら彼女らみたいなのが居てもおかしくないしな……。

そして異種族多様性を強力にサポートするらしいというゴブスレTRPGサプリの限定版は予約受付中! 最新14巻通常版の予約も始まってます!(ダイレクトマーケティング!)

あと、今回の話の蜥蜴人の卵の仕様については、爬虫類・恐竜系のごった煮独自設定です。

ご評価&コメも、みなさまありがとうございます! 年末年始にかけて、評価いただいた方の数が以前までより約10%増して、大変ありがたい限り……! 嬉しいです!

あと1、2話+裏話で、たまご騒動は決着つけて、原作7巻『森姫婚姻編』の予定です。
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