ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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●前話:
地上の争乱を辛くも逃れ、半竜娘ちゃんと卵が感動の再会!
そして彼女たちは、黒幕が潜む地下遺跡の奥へと向かう前に、ひと時の休息をとるのだった。

===

Q.TASさん(ティーアース)が力を取り戻すまで、あとどのくらいかかるの?
A.いっぱいたべよう!(目標値を明示するとTASさんが不思議な力を振り絞って(【無】を取得して)因果を捻じ曲げてカンストさせて(エンディングを口寄せして)きかねないので隠匿(マスク)されています。)

 


30/n たまご騒動(エッグ・ライオット)-3/3(VS 堕魂術士(フォールン)

 

 はいどーも!

 前回はクライマックスフェイズ前に休息をとったところまででしたね。

 

 半竜娘ちゃん×2、魔女さん、森人探検家、TS圃人斥候、文庫神官は、軽く食べ物と飲み物をつまんで、ほっと一息。継戦カウンターをリセットします。

 

「……【聖餐】のランチョンマットがあると、いつでも温かい物を食べられていいですよね」

 地母神さまにも感謝です。と、しみじみ呟く文庫神官ちゃん。

 

「まことにのー」 半竜娘も頷きます。

 

 では早速突入――の前に、【竜血】を利用したポーション類を飲んでから行きましょう。

 特に、炎と毒への耐性を得る【竜命(ドラゴンプルーフ)】のポーションと、動体視力強化の【竜眼(ドラゴンアイ)】のポーションは必須ですね。他にも必要に応じて飲んでおきます。

 光学迷彩の【擬態(カモフラージュ)】のポーションは、止めときましょう。視認できなくなると、連携が難しくなりますし、範囲攻撃魔法に巻き込んでしまう可能性が……。

 

「飲みすぎて吐きそうだぜ……」 TS圃人斥候がお腹のあたりをさすっています。

 

 あとは、零落したTASさん(ティーアース)の破片と、蛟龍の水精霊を、【使役(コントロールスピリット)】によって戦闘に耐えられるレベルで実体化させておきます。

 

『CRRRRR……』

 蛟龍の姿をした水の大精霊が現れました。地下下水道で水気が多いため、場との相性が良いようです。【酩酊(ドランク)】の術が使えるので、その出番もあるかもしれません。

 

 念のため、森人探検家ちゃんには、交易神の奇跡【逆転(リバース)】を積んで(ストックして)もらいます。ファンブルが怖いので。

 

「はいはい了解……『巡り巡りて風なる我が神、気の流れをも裏返し、賽子の天地返しに目こぼしを』――【逆転(リバース)】!」

 

 んー、これでまあ、大体いいでしょうか。

 【加速(ヘイスト)】は、死霊術で活性化している半竜娘ちゃんの分身の残影が維持して常駐化させていますし。分身と魔女さんの分は、そこには含まれていないので追加しましたが。

 

「えーと、これで呪的資源(リソース)の残りは……。手前があと8回、分身が4回、弓士が1回、斥候が1回、灯明の娘が5回……」

 

「あの、卵の守りに、【聖壁(プロテクション)】を貼り付けておきたいのですが……」

 

「ああ、必要じゃの。手前も、形代の人形が常駐化して維持させとる【力場(フォースフィールド)】のうちの一つを、そちらに付けさせるとしよう。

 では、灯明の娘は、残り4回、と」

 半竜娘ちゃんが指折り数えますが、めっちゃリソース豊富ですよね、やっぱり。

 バフ用の【竜血】ポーションや、死霊術の応用による呪文の長時間維持、そのほかにも色んな魔道具を使えるようになったので、リソースを節約できるようにもなりましたし。

 

「あ、いや。【狩場(テリトリー)】の術も使っておくかの。不意打ち防止と、敵と距離を取るためには必要じゃ。ついでに、卵の生死も判別しておくかの」

 ということで、半竜娘ちゃん(分身)が、卵と文庫神官に触れながら【狩場(テリトリー)】の術を使いました。

 もちろん、精霊たちや魔女さん、半竜娘本体の支援を受けて、呪文の達成値を20以上底上げしています。

 無事に結界を作る祖竜術は発動し、半径100mの感知結界、その内側に半径30mの進入禁止結界(魔法や矢玉は防げない)が出来上がりました。

 

「……【狩場(テリトリー)】が発動したということは、卵は無精卵ではなくて生きておるということじゃな。分身の残りの呪文回数は、あと3回、と」

 卵の生死も分かりましたし、相手を近づけないための結界も張れましたし(達成値をかなり底上げしているので、魔神将級でも突破は困難です)、これで大体の準備は整いました。

 

「矢避けの結界はどーする?」 聞いてきたのはTS圃人斥候です。

「いや、お主の呪文リソースは残り1じゃろ? もしもの時の【脱出(エスケープ)】のために残しとくのじゃ」

「あいあいー」

 保険は大事ですからね。

 TS圃人斥候は、ここ一年くらいで魔術を覚えたのですが、攻撃魔術はとらずに補助的な呪文ばかり覚えていて、なかなか渋いチョイスをしています。

 

「贅 沢、ね」

 そのやり取りを見ていた魔女さんの言うとおり。

 ゴブスレさんの一党もかなり恵まれた方ですが、それより半竜娘ちゃんの一党は、呪文遣い(スペルキャスター)が多いですからね。

 

「まあ、恵まれておるとは思っとるぞ。して、そちらは残り何回じゃ?」

 

「あなたと 同じくらい、は、使える わ」

 

「じゃあ少なくとも8回、と」

 

 さすが後衛専門の銀等級ですね。さすまじょ! 回数を明言しないので、実際はもっと使えるのかもしれません。

 日頃から、槍使い兄貴と少人数(ペア)で数々の遺跡へ冒険(デート)に行ってらっしゃるので、きっとそこで呪文使用回数を増やすアイテムとかも拾ってたりするでしょうし。

 

 準備と確認を終えて、地下水路の奥を見据えます。

 

「―― では、突入じゃ!」

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 下水道の水路の奥。

 辺境の街の地下は、いくつかの年代の遺構が複合しているようで、そこから先は、水路ではなく、石造りの通路となっていました。

 通路は所々崩れていますが、十分な強度を保っているようです。かつて跋扈(ばっこ)した魔術師たちの時代の高度な文明の名残(なごり)なのでしょうね。

 

 横に3人くらい並べるくらいの幅の通路を、半竜娘たちは、2列縦隊で進んでいきます。

 

「……なんだか、息苦しいわね」

「ガス、じゃ、ねーとは思うけど。でも【竜命】のポーション飲んでるから、たとえ毒ガスでも分かんねーな、これ」

 最前列は、探索技能が高い者をということで、森人探検家とTS圃人斥候。

 周囲の通路は、TS圃人斥候の腰元のランタンで照らされているはずだというのに、闇が深いように思えます。まるで黒色の(もや)が漂っているような。

 

「知識神様、どうか私どもの行く手をお照らし下さいぃ……」

「待て待て、あまりくっつきすぎるんじゃないのじゃ」

 中列は、文庫神官と半竜娘(分身)。タンク組です。戦闘の時は前列に出ます。

 文庫神官は、家を出るときは戦闘になると思っておらず、軽装のまま出てきたせいで、先ほどまでは、いつもの鎧ではなく神官服でした。ただ、いまは魔法の背負い袋(アイテムボックス的なの)に入れていたいつもの鎧に着替えています。

 卵をしっかり守ろうという気は強いようで、それはもう、しっかりと抱えています。

 半竜娘(分身)の方は、文庫神官に寄られつつも(まあ半竜娘ちゃんがでっかいせいで通路が狭いというのもありますが)、油断なく周囲を見回しています。

 

 そして後列。

 

「……“瘴気”という感じじゃのう……世の理が捻れて軋みを上げておるようじゃ。この先では、果たしてまともに呪文は使えるのかや……?」

「やっぱり、汚染源、が、この先に、いる みたい、ね」

 後列の半竜娘(本体)と魔女は、お互いの霊感で得た悪い予感を補強するようなこの状況に、さらに警戒を強めています。

 ―― 魂を冒涜し、世の(ことわり)を塗り替えんとするものが、きっと、この先に居るはずなのです。

 その気配は、どんどんと強まっています。

 

 って、シリアスぶっていますが、ゆっくりまんじゅう(召喚したティーアース)が頭の上に乗っているので、絵面(えづら)が締まりませんね。蛟龍の水精霊は、後列のあたりでわりと自由に漂っているようです。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 やがて、ひと際に不吉な気配の強い場所へと辿り着きます。

 扉で封じられた先から、瘴気が漏れて流れてきています。

 その扉の大きさからして、おそらく先は広間でしょう。

 

 隊列は入れ替えて、3列縦隊。

 前列は、文庫神官(タンク)半竜娘の分身体(モンク)、そして遊撃のTS圃人斥候(スカウト)

 後列は、森人探検家(アーチャー)半竜娘(ドラゴンプリースト)魔女(ソーサレス)

 

 TS圃人斥候が罠感知をしますが、扉に罠はないようです。

 

 【狩場(テリトリー)】の祖竜術の影響下にある半竜娘(分身)は、そのドアの向こう側に(ひし)めく無数の敵対反応を、すでに感知しています。

 

「行くのじゃ」

 

 半竜娘の言葉に、静かに全員が頷きました。

 

「――ッ!!」

 

 半竜娘の分身体が、無言で気合を込めて、広間と思われる場所へと通じる扉を蹴って開き(キックオープンし)ました。

 続いて瞬時に、6人全員が中へと飛び込みます。

 

 

「……」

 

 油断なく陣形を組んだ半竜娘ちゃんたち6人の冒険者たち。

 逸る気持ちもありますが、それを抑えて、広間の中を手早く確認します。

 

「……瘴気が濃いのう」

 

 広間の中は、闇色の粒子が充満しており、視線を這わせますが、全貌は(よう)として知れません。

 ただ、【竜眼】のポーションの作用により、一党は全員、ドラゴンと同様の眼を得ています。

 ランタンの明かりが瘴気の黒い粒子で遮られても、その奥を見通すことができました。

 

 闇色の粒子は、広間の中央から噴き出しています。

 いえ、正確にいえば、()()()()()()()()()総身(そうみ)から。

 広間中央の、ローブを被ったその男は、結跏趺坐(けっかふざ)して瞑想していたようでした。

 

 ぎりぎりで、【狩場(テリトリー)】の排除結界(半径30m)の範囲からは外れています。

 随分と広い空間のようです。

 

―― 『SHHYYY……、こんなところまで来られるということは、護符を預けた仕掛人(ランナー)か?』 瞑想を中断されたのが不快な様子で、男が立ち上がります。『卵は……確かに持ってきたようだな』

 

 どうやら相手は、こちらのことを、卵泥棒の依頼を受けた仕掛人(ランナー)だと思っているようです。

 ……というか、この口ぶりだと、通路やこの部屋に充満している黒い粒子は、こいつの言う【護符】がないと防げないみたいな感じですね。まあ、ポーションの効果で毒気は防げたおかげで、奥まで来られたんでしょう。

 おそらくは、TASさん(ティーアース)が黒幕の居所(いどころ)を当ててショートカットしたために、必要な情報やフラグを欠いたまま、最終決戦(クライマックスフェイズ)に突入したのだと思います。

 

―― 『ぐぐぐ、その邪魔な結界を解き、卵を早くこちらに寄越すがいい。じきに地獄の門が開き、天からは外宇宙からの悪意が落ちてくる。そしてこの世は、暗黒に包まれるのだ』

 陶酔するように語る、卵泥棒の依頼主。

―― 『そのとき、あらゆる暗黒の勢力を併呑し、天地を統べるは、堕ちた魂(フォールンソウル)を宿す我ら、新たなるヒトよ。そのために、力強き竜人の、(けが)れなき卵が必要なのだ。我らの王を降臨させるための器にするために、だ』

 

 あ、情報収集してないからフラグが足りない分、敵さん(GMさん)がある程度は吟遊して(うたって)くれるみたいですね。やさしみ。

 

―― 『星辰(せいしん)が揃い、大破壊の周期がやがて来たる。フォールンソウルは竜と強く適合する……しかし、人の因子がなくば、新たな世界は、真に人の世の後継にはならぬ。そして、フォールンソウルが染め上げるのは無垢なる器でなければならぬ』

 自らの占いで得たという予知を語る男。

―― 『ゆえに、王の器は、その卵でなくばならないのだ』

 

 語り終わって満足したのか、死人占い師のようなローブの男――堕魂術士(フォールン)としましょうか――は、再度要求を告げます。

 

―― 『さあ、それを渡せ。でなくば報酬は渡さぬぞ。優秀なる仕掛人(ランナー)

 

 それを受けて、代表して森人探検家が応えます。

 

「ふん。幾つか訂正があるわ」

 

―― 『ほう?』

 

「まず1つ。優秀な仕掛人(ランナー)は、あんたみたいな胡散臭い前科持ちの依頼人の仕掛(ラン)は受けない」

 指折り数えていきます。

 

「次に、得意満面に裏事情を話したってことは、生かして帰す気ないのが丸わかり。不意打ちする知能もないの?」

 冥途の土産に、というやつですよね、明らかに。

 

「そして、私たちはそもそも仕掛人(ランナー)じゃない。―― 冒険者よ!!

 

 

 その言葉を聞いて、いよいよ堕魂術士(フォールン)が激昂します。

 

―― 『冒険者! 冒険者か!! ならば、貴様らを殺してから卵を奪うまでのこと!! 我が領域に踏み入ったその不明を恥じて死ね! さすれば死せるその魂は、我が同胞として堕として()でてくれようぞ!! 黒き寵愛を受けることだ!!』

 

 メリメリとローブが盛り上がり、堕魂術士(フォールン)の背から2(つい)4枚のコウモリのような……いえ、竜のような翼がせり出します。

 さらに、そのフードで覆われた顔があらわになり、3(つい)6つの眼玉がぎょろりと半竜娘ら一党を睨みつけました。

 

―― 『死して竜となりし屍よ、我らの敵を根絶やしとせよ!!』

 

 そして、堕魂術士(フォールン)の掛け声とともに、黒色の瘴気の粒子で覆われていた壁の上から、無数の敵意に満ちた赤い瞳の輝きが現れました。

 

 異界の理に侵された下水道のモンスターたちです。

 

 

 大鼠は、竜のような鱗に覆われて、まるでセンザンコウのような姿になり、背中から翼が生えています。

 

 大黒蟲は、甲殻や脚が鋭く伸び、そして硬くなり、(クビ)が伸びて変異したのか、蟲のような(アギト)を備えた小型の竜のシルエットに。

 

 これが『黒き寵愛』という名の瘴気の侵食の結果であれば、はた迷惑な愛もあったものです。『キサマの愛は侵略行為』と喝破してやらねばなりますまい。

 

『『『『 GRRROOOO!!! 』』』』

 

 百以上は居るであろうそれらの小型竜たちが、【狩場(テリトリー)】の結界が及んでいない部分の壁面と天井を、びっしりと埋め尽くしています。

 この堕魂術士(フォールン)の発する瘴気によって死に、瘴気に侵食されて新たな生命として蘇った怪物たちです。

 そして、堕魂術士(フォールン)はそれらを全て従えているのです。

 

―― 『小癪な結界を張っておるようじゃが、雷鳴の息吹は防げまい! そして卵には雷を防ぐ術をこちらがかければ、死ぬのは貴様らだけということだ!』

 

 堕魂術士(フォールン)は、雷への耐性を与える呪文を詠唱すると、それを文庫神官が持つ卵へと飛ばして付与します。まあ、卵に呪文への抵抗の意思はないので、当然、それは通ります。【聖壁】の守りも、卵を直接、対象とされてしまっては意味がありません。ただ、これで、雷のブレスが当たっても卵は守られるでしょう。

 

 雷のブレスは、直線状に60mほどの射程があるため、【狩場(テリトリー)】の結界の外から撃っても届きます。

 もとが鼠や蟲とは言え、百以上にも及ぶ、雷電(サンダーボルト)に同時に襲われては、相乗効果もあって威力が高まるでしょうし、守りの術を張っていても、ひとたまりもないでしょう。

 

―― 『瘴気によって、術はまともに使えんはずだ。雷鳴の中、踊るように焼け焦げて死ね!!』

 

 堕魂術士(フォールン)の言葉を合図に、大鼠や大黒蟲を素体にした小型竜たちが口を開き、雷電の吐息を噴き出します!!

 

 

 

 しかし、堕魂術士(フォールン)の長口上を聞いて、また森人探検家がわざわざ返答していたのは、狙いがあってのこと。

 すなわち、時間稼ぎのためです。

 口上の間に、半竜娘たちのうち術士組は、術の準備をしていました。

 

「……【浄化(ピュアリファイ)】から、合わせ て、3手。いける わ ね?」

 

「もちろんじゃ!」 「承知したのじゃ!!」

 

「いい子 ね。マナの流れは、こっち、で つくる わ ね」

 

 森人探検家が堕魂術士(フォールン)とやりとりしている間に、魔女と半竜娘×2が、集中し、大技の準備に入ります。

 分割詠唱による相乗により、上級の呪文を使おうというのです。

 リードするのは、熟達の魔術師である魔女さんです。

 

 三人の集中に伴って、瘴気溢れる中でも、確かにマナが高まっていきます。

 しかし、瘴気がやはり邪魔をしているようです。

 それを祓うは、文庫神官の役目です。

 

「では、私は、周囲の瘴気の浄化の準備を。――『蝋燭の番人よ、汚濁を取り除く我が手に、どうぞ一筋の灯火を』……」

 

 そしていよいよ、森人探検家の返答に痺れを切らした堕魂術士(フォールン)が、率いる配下に雷電の吐息を(けしか)けさせました!

 

 

「―― 知識神様、御力を……【浄化(ピュアリファイ)】!!」

 

 堕魂術士(フォールン)や瘴気、それに侵された小型竜は、アンデッドに連なるものではありませんので、【解呪】は効きません。あれらは、()()()()()の、新たな生命なのです。

 ですが、異物を清める【浄化】の呪文であれば、瘴気を()()()()()()にできます。

 マナの流れを阻害する瘴気が、文庫神官の祈りによって、きれいさっぱり消えていきます……!

 

 しかし、瘴気の影響を逃れたマナを掌握するのに、あとほんの一瞬だけ足りません。

 

「雷か! それならちょーど良いぜ! チャクラム4つの空中回路でぐるぐる回ってな!」

 

 しかしそこに、TS圃人斥候が、下水道で拾った戦輪(チャクラム)を纏めて持って投擲!

 散らばった4枚のチャクラムが、迫る雷電の吐息を中間地点で惹き集めます。

 空中に並んだ4枚のチャクラムの間を、雷が駆け巡り、ほんの一瞬だけ、その進行を遅らせました!

 

 

 そして、その一瞬で十分でした。

 

 三人の術士が、清浄になったマナを瞬時に掌握!

 

ウェントス(疾き風よ)!! ……あっ

 半竜娘の分身体が、力ある言葉を唱えます!

 ……あ、こっそりファンブルしてたみたいですが、森人探検家ちゃんの【逆転】で事なきを得ましたね……。

 風の真言なので、交易神の助力との相性もばっちりです。「交易神さまに感謝なさいよ!」と森人探検家なら言うでしょうね。

 

ルーメン(光とともに)!!」

 半竜娘の本体が、それに続きます。

 彼女たちがいま想像しているのは、かつて全てを薙ぎ払ったという、偉大なる祖竜の輝く息吹です。

 

リベロ(解放されよ)――――!!」

 最後に合わせて三人分のマナを、(つや)やかさすら感じる声でまとめ上げたのは、魔女さんです。

 練習ナシのぶっつけ本番ですが、熟練のウィッチは(あやま)ちません。

 

「「「 【核 撃(フュージョンブラスト)】ッッッ!!! 」」」

 

 全てを破壊する光が、激しい爆風とともに解放され、迫っていた雷電など歯牙にもかけず、すべてを呑み込んでいきます……!!

 

 

 

―― 『……ぐ、ぐぐ、ぐ』

 

 そして破壊の嵐が去った後、小型竜は全て一掃され、(スス)として焼き付いて残るのみ。

 生きている敵は堕魂術士(フォールン)だけとなっていました。

 それでいて広間の壁は壊れず、半竜娘たちも健在。あの魔法によってもたらされるエネルギーは、破壊すべきものとそうでないものを選り分けることが可能なようです。

 その生き残った堕魂術士(フォールン)も、4枚の翼は全て焼け落ち、装備も燃えて熔けてしまっています。

 体中の至る所が泡立ち、爛れてしまっていて、やがて死ぬのは、誰の目にも明らかです。

 

―― 『まさか、ここで、このような、試練が、ある、とは』

 

 むしろ、これで殺しきれていないのが異常な状況です。

 熟練の術者3人の術を束ねた【核撃(フュージョンブラスト)】は、それほどに強力な魔法でした。

 

―― 『だが、たとえ、死すとも、異界の、(ことわり)を、この世に、導く、核たる魂は、この身から、別の者に、移るのみ……、やがて来たる、星辰を、畏れよ――』

 

「                     
 ゆっゆくゆーー!」

 

 いただきまーす! 

 なにか呪詛めいたことを言っていた堕魂術士(フォールン)を襲ったのは、森人探検家の放った矢に括りつけられて飛んできた、TASさん(ティーアース)でした。

 

―― 『な、なんだ、こいつ……ぬわーーーーー!!??』

 

 バリバリ グシャグシャ バキバキ ゴクン。

 

 

 はい、後顧(こうこ)(うれ)いもキレイさっぱり無くなったところで、今回はここまで。

 

 ではまた次回!!

 




 
卵から何が生まれるかとかその辺含めて、後始末のことは、次回、『30/n たまご騒動・裏』編で。
ちなみに、蜥蜴人の場合、族長の家系の一粒種(=王卵)は一個だけみたいですが、そうじゃない一般蜥蜴人の場合は、複数個産むんじゃないかと思われます。また、爬虫類や鳥では、数日おきに産卵するのは普通です。つまり、半竜娘ちゃんの産卵期は、まだ終わっていない……。

>半竜娘「うっ、またなんか、腹の中に違和感がきたのじゃ……ッ」

あれ、ということは、半竜娘ちゃんにも、同時期の同腹の卵から生まれた兄弟がいる可能性が……?

感想評価&コメが誠に、まことに、ま こ と に、励みになっております! 感謝感激雨霰(あめあられ)ってやつです! ありがとうございます!

 ◆◆◆ダイマ重点◆◆◆
原作最新14巻は、北の山の向こうの北海の話になるそうなので、ひょっとしたら鋼を奉じる民(キンメリア人)関係とか掘り下げられるかもしれませんね。楽しみですね!
 ◆◆◆ダイマ重点◆◆◆

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