ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風)   作:舞 麻浦

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『森人婚姻』編もいよいよ佳境です。結婚式に参列できる気配は、今のところ全くないですが……。
前話は突貫工事だったので、誤字祭りでした……。誤字報告ありがとうございました! 毎日投稿してる作者さんは凄い(スゴい)。

●前話:
 小鬼を水に引きずり込んで殺す! ……河童(かっぱ)かな? 河童じゃないよっ♪ 圃人だよっ♪
 そして水の中ではさらにグリズリー級の蜥蜴人が2人も手ぐすね引いて待ち構えているぞ!(参考:水に浸かって佇むカンガルー、あるいは、ゲーム「ダークソウル」の貪食ドラゴン登場シーン)
半竜娘×2「「 ……おいてけ~、おいてけ~、いのち、おいてけ~…… 」」
助けられた冒険者姉弟「「 ひっ、ひぃえええええっ!? 」」

===

まずはゴブスレさんパートからです。彼らも堰の砦に来ています。

===

※AIさん(DALL・E3)に出力してもらった挿絵あり(マス)
 


31/n 地獄の門は闇の奥に(The horror! The horror!)-5(ヤゴパ)☆AI挿絵あり

 

1.ゴブリンか!

 

 

――「「 ひぃええっ!? 」

 

 

「ッ! 人間の悲鳴……ッ!」

 

 妖精弓手が、森人の特徴である長い耳で、下層からの悲鳴を察知した。

 

 

 

 小鬼殺しの一党は、森人の里の近くに巣を作っている小鬼を皆殺しにすべく川を上ってきていた。……牛飼娘・受付嬢・幼竜娘三姉妹の非戦闘員は、森人の里でお留守番だ。

 

 ゴブリンが居るということは、これまでの出来事からも推測できていた。

 

 密林へと川を遡る途中で()ってきた、ゴブリンと狼の死体。

 モケーレ・ムベンベ(巨大な獣)の背に跨っていた小鬼。

 ―― そして、小鬼退治のプロたるゴブリンスレイヤーが感じた、不穏な空気……小鬼に狙われる村特有の不吉な気配。

 

 妖精弓手の“()”の、晴れの舞台を邪魔せんとする小鬼どもを、このゴブリンスレイヤーが、むざむざとのさばらせておくものか。

 

 彼ら一党が小鬼殺しに乗り出すのは、当然の成り行きだった。

 

 さて、念のためにと囮の船まで仕立てて、川を巨獣(モケーレ・ムベンベ)の領域まで遡上させたが、その途中にも、小鬼の襲撃はなかった。

 「小鬼殺し(かみきり丸)も勘が鈍ったか」と鉱人道士が茶化したりもしたが……。

 

―― 「やはりゴブリンか」

 

 遡った先にあった、川を堰き止める“堰の砦”は、小鬼の巣窟になっていた。

 巨大な堰に、砦を合わせたこの要塞は、長い年月で荒れ果てており、しかもトドメに小鬼の略奪に遭って荒廃ここに極まれりという有り様になってしまっていた。

 

 そこに巣食う頭目は恐らく、モケーレ・ムベンベを朦朧とさせたと見られる、小鬼の呪術士(ゴブリンシャーマン)

 ゴブリンが蔓延る要塞を、たったの5人で落とすなど、生半(なまなか)なことではない。

 

 

 だが、何故か巨大な竜牙兵(暴君竜牙兵)たちが勝手に陽動をしてくれていたので、ゴブリンスレイヤーの一党はすんなりと“堰の砦”に入ることができそうだ。

 なにせ、ゴブリンたちは総がかりで城壁の防衛に当たっている。小鬼たちは、槍に、弓に、石材に、―― 時には隣の同胞すら戯れに―― 投げられるものを手当たり次第に投げ落とすが、しかし、暴君竜牙兵はものともしない。

 小鬼呪術師(ゴブリンシャーマン)も防衛に加わっているが、精神属性無効の竜牙兵相手には、得意の【眠雲(スリープクラウド)】も効果を発揮せず、攻めあぐねている。

 

 

―― 「何だか知らんが好都合だ」

―― 「これもまた祖竜の加護、というものでしょうや」

―― 「いえ、あの、というか、絶対、慈母龍の巫女さんが関わってますよね、コレ」

―― 「ねえねえ、あっちの樹の枝から乗り込めそうよ」

―― 「登るのは、ちくと骨が折れそうじゃの」

―― 「そりゃ、樽だものねー」 「なんじゃと、この金床!」 「なにおーー!?」

―― 「……行くぞ」

―― 「あ、ゴブリンスレイヤーさん! こちら、鉤縄です」

―― 「ああ、助かる」

 

 ゴブリンスレイヤーの一党は、竜牙兵たちの攻め手とは別の方向にある、長い年月で堰の砦の城壁の上までも伸びた木の幹と枝を見つけ、それを登って伝い、侵入を果たした。

 

 彼らは枝を伝って城壁に乗り、そこから下りて、中庭を渡り、最も高い尖塔に侵入し、そしてまずはその最下層へと向かっていた。

 その砦の尖塔の下り螺旋階段の途上にて、妖精弓手は、塔の下層から吹き抜けを貫いて響く悲鳴を聞いたのだ。

 

 できれば助けたいが、それで気が(はや)って全滅してはどうしようもない。

 無理せず、側道からの小鬼の襲撃を警戒しつつ、しかしながら可能な限り急いで降りていく。

 

「……声は、まだ聞こえますか?」

「いいえ。さっき聞こえたきり……」

「そんな……」

 

 女神官の問いかけに、沈痛な顔で首を振る妖精弓手。

 

 ゴブリンスレイヤーは、黙ったまま何も言わない。

 何か考え込んでいるようだ。*1

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 そして最下層に着いた彼らが見た光景とは――!!

 

 

<『1.巨大ヤゴ(ジャイアント・ニンフ)の脚を炙って旨そうに食べる冒険者たち(半竜娘一党+救助された姉弟)の姿であった――!』 了>

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「あああああっ! なんか美味しそうなの食べてるーー!!」

 

「うむ? ゴブリンスレイヤーの一党の上の森人(ハイエルフ)じゃないかや。なんでこんなところに居るんじゃ?」

 

「あっ、姫様! おひとついかがですか? これなんか食べごろですよー!」

 

 はいどーも!

 敵地のど真ん中の闇の底で、蟹パーティならぬヤゴパーティをする実況、はーじまーるよー。

 

 前回は、暗闇の排水路を逆走して小鬼の巣窟になった堤防要塞に潜入して、小鬼に捕まって殺されかけていた冒険者の姉弟を助けたところまででしたね。

 

 今は、助けた冒険者姉弟と一緒に、排水路からの潜入途中で捕ったジャイアント・ニンフ(巨大ヤゴ)の脚を、火の精霊(サラマンダー)に焼いてもらっているところです。

 火にあたって身体を外から温めがてら、中からも食事によって温めるというわけです。

 何せ、『水中呼吸の指輪』の効果があったとはいえ、長時間、急流をかき分けてきたのですから、身体は冷えきってしまっています。

 カロリー補給も必要ですしね。

 

 隠密のため、【狩場(テリトリー)】の術の範囲はある程度絞っています。

 半径100メートルの感知結界を最大範囲で展開して突入すると、敵の配置は分かりますが、逆に敵にも気づかれちゃいますのでね。

 制圧するときはそれでも良いんですが。

 

「食べる食べるぅー! って、この辺の森にこんな大きなヤゴいたっけ」

 ぴょんぴょんと軽やかに火の精霊(サラマンダー)の火の方へとやってきたのは、小鬼殺し一党の妖精弓手さんです。

 早速、炙られていたヤゴの脚を、森人探検家ちゃんから受け取ると、慣れた手つきで剥いてほじって中の肉を食べていきます。

 ああ、いつものごとくゴブリン汁まみれでしたので、取りあえず手だけは拭いてもらいましたよ。

 

 ボリュームのあるプリプリの身が、折った甲殻からどぅるんっと飛び出し、ほかほかと湯気を出しています。香辛料と塩をひとつまみ振りかけてかぶりつくと、柔らかく歯の通りの良い身から、じゅわりと広がる旨味の暴力! 何より、なんとも不思議な甘さがあり、非常に美味です。

 

「おいひー!」

「まだまだありますよー、姫様」

「気が利くわねー、ありがと」 

 エルフは、獣の肉は食べませんが、虫の肉は食べます。

 虫は獣に比べれば増えるのが速いので食べても生態系を壊す心配がなくて良い、という理屈だそうです。

 ヤゴとはいえ、只人の子供くらいの全長があれば、エビやカニと同じ扱いでいいでしょう。食いでがあります。

 

「……ゴブリンは居ないのか?」

 階段の方へと繋がる暗がりから現れたのは、ゴブスレさんです。

 その後ろには、残りのメンバーも付いてきています。

 

「んむ。ここに()ったのは殺したぞー」

 半竜娘ちゃんがゴブスレさんに応対します。

 あ、ちなみにここには、元は()()()()()()()()が積み重なっていましたが、それは既にお掃除・弔いを終えています。

 さすがに腐りかけの肉が付いた骸骨に囲まれて食事する趣味はありませんし、衛生的にもアレですしね。

 

 特に、数多の人族の血を吸ったネジ式圧搾機(スクリュープレス)は、この川の汚染と呪いの根源でもあったので、叩き壊して浄化してあります。

 これで、羽衣の水精霊からのクエストは、概ねクリアしたと言っていいでしょう。

 あとは、再発防止のために小鬼の根絶と、そいつらに鎧兜を与えたと思われる滅びの獄(DOOM/ドゥーム)の尖兵を撃ち滅ぼし、王都から来るだろう封印担当の者が来るまで現場を堅持すれば良いわけですね。

 

 ……やることが多い!!

 ですが、そのうちの小鬼根絶については、ゴブスレさんたちに任せておけばいいでしょう。

 プロですからね、なんと言っても。

 

 

「それでじゃ、ゴブリンスレイヤー殿よ、お主は辺境の街に居ったんじゃないのかや」

 

「ゴブリンが出たからな」

 

「いや、確かに、ゴブリンが居るところにゴブリンスレイヤーが居るのは、ある意味当然じゃが」

 

 聞きたいのはそういうことじゃないんだよなあ。

 

 えーと、ではちょっとダイスロールします。

 ここで失敗すると、いよいよ本格的に妖精弓手の姉である“花冠の森姫”の結婚式に参加するフラグが立ちませんし。

 え? 参加したからって何かイイことあるのかって?

 今すぐ使い道がなくても、お偉いさんとか、高レベルキャラとの人脈(コネクション)をとりあえず取得するのは、冒険者の嗜みですから。

 

 半竜娘の第六感判定:目標値21

 ・半竜娘本体:知力反射9+加速5+精霊使いLv5+2D611 × ファンブル!!!

 

 

 あのさあ……。

 

 今のは出目で3以上……つまり、ファンブル以外を出せてれば成功だったでしょ?

 蜥蜴僧侶(叔父貴殿)に、預けておいた幼竜娘三姉妹の今の居場所を聞くとかすれば、すごい自然に知れたはずでしょう? 

 なんでそこでピンゾロ出すんですかねえ……。

 

 ……ま、まあ、そこまで実害ないから良いでしょう。

 まだこれからも結婚式のことを知る機会はあるでしょうし……。

 

 え? ファンブル(絶対失敗)だから、もうゴブスレさん一党からは、花冠の森姫の結婚式の情報は得られない?

 そんなー。

 

「そんなことよりゴブリンだ。そちらが知っている情報を教えろ。城壁の外のデカブツはお前たちが?」

 

「ああ、あれらを見たのじゃな。ここまでくる途中の川べりで殺されて晒されておった冒険者の無念の霊を憑依させた特別製でな――」

 

 あーあ。普通に実務的な話を始めちゃいましたよ。

 そりゃ悠長に世間話する時間もないですし、ゴブスレさんも半竜娘ちゃんも、あんまり余計な言葉をしゃべらないタイプですからね。

 二千歳児は、ヤゴパしてて食事に夢中だし。……蟹喰ってると口数が減るアレですね。

 

 

 …………。

 ……。

 

 

「なるほど、水攻めは使えないか……」

 

「この砦に地獄門の封印装置があるというなら、迂闊に砦を壊しかねんやり方するのは怖いと思うのじゃ」

 

「ふむ、しかしどうするか」

 

「堰の上の神獣に話をつければ良いのではないかの?」

 

「可能なのか?」

 

「生きておる捕虜はそこの姉弟2人で全部のようじゃし、手前が竜牙刀を授けてやれば、その2人も戦力になるじゃろ。翠玉等級の姉と、青玉等級の弟じゃから、足手まといということもなかろう」

 

姉弟(きょうだい)……」

 

「そして全員が塔の上からでも脱出するときに、叔父貴殿の【念話(コミュニケート)】で、堰の上で待機しておる三ツ首のモケーレ・ムベンベを呼び、塔の中に瘴毒のブレスを吹き込んでもらえば、駆除完了というわけじゃ。もともと、この砦の維持管理も、神獣らと(いにしえ)魔術師(カード使い)の契約のうちのようじゃし」

 

「なるほど、毒か。それは良い手だ」

 

「地獄門から小鬼どもに物資提供しておった奴らがおるはずじゃから、手前らはまだそいつを探して内部を探索するが、【竜命(ドラゴンプルーフ)】を込めたポーションが人数分あるから、こっちは気にせずに毒を送り込んでもらっていいのじゃ」

 

「そうか」

 

 というわけで作戦決定です。

 バルサンしましょうね~。

 

 頭目が話をしている間、他の面子は静かなものでしたが、どうやら皆で揃って炙ったヤゴの脚から身をほじくり出して食べていたせいなようです。

 ファンブルしたせいか、他の面々もヤゴパに夢中で、世間話は全然発生しなかったみたいですね……。

 

 

  ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

  ▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 その後、ヤゴの脚も全部なくなったので解散し、それぞれの攻略に戻りました。

 冒険中にお腹に物を入れることにゴブスレさんは良い顔をしませんでしたが、炙ったヤゴの脚が旨かったから仕方ないネ。

 

 半竜娘ちゃんは、祖竜術で【竜牙刀】を創造すると、救助した冒険者の姉弟に持たせてあげて、ゴブスレさんと一緒に送り出しました。

 

「おお、魔力の牙刀!」 「振り心地もいい感じ。これなら戦えるわ、ありがとうね!」

「お主らに祖竜の導きのあらんことを、じゃ」

 

 彼ら姉弟も冒険者ですから、ゴブスレさん側の戦力になってくれるでしょう。

 救出された姉弟は、ある程度はこの砦の探索もしていたらしく、途中の昇降機(エレベータ)の動かし方や、その他の設備についても、情報を持っているようです。

 ゴブスレさん一党+2は、塔の上へと昇り、そこから脱出するつもりのようです。

 

 そして、彼らを見送って、塔の最下層に残った半竜娘ちゃんたちは、みんなで【竜命(ドラゴンプルーフ)】を込めたポーションを飲んで、炎熱と毒への耐性を獲得します。

 これで、バルサン(毒ブレス注入)されても大丈夫になりました。

 

 

「というわけで、川の呪いと汚染の原因の排除のためには、ゴブリンを支援していた奴ら―― おそらくDOOM(ドゥーム)とかいうところの奴らじゃろう、そいつらもどうにかしておかねばならんわけじゃ」

 

「まーなあ、ゴブリンなんて代わりがいくらでも湧いて出るし。ここのゴブリンも、何ならその地獄門から出てきたやつらかもしれねーもんな」

 

「背後で支援してるやつをどうにかしないとね。だって、またゴブリンが住み着いたりするようじゃあ、根本的解決にはならないもの。ここに小鬼しかいないってことは、悪魔が出てこられるほどにはなってなくて、まだ封印が残っているってわけよね? 来てても雑魚悪魔でしょ」

 

「助けた方たちから聞いた情報で、小鬼たちが武器防具を運び出している部屋の見当もつきましたし。きっとあと少しですね!! プロテクションかフォースフィールドで門に蓋をして、再封印の人員を待ちましょう」

 

 ではいざ、滅びの獄(DOOM/ドゥーム)とやらに繋がるという扉を見に行きましょう!

 

 

 …………。

 ……。

 

 

 乱雑に積まれた鎧兜に鉄の剣。

 先ほどの尖塔の最下層から、別の通路に入り、さらにずっとずっと下ったところにあった、この“堰の砦”の本当の最下層にある大広間は、真新しい鉄の匂いに満ちていました。

 もともとは水で満たされていた巨大水槽だったであろうこの巨大な空間は、今は恐ろしい瘴気に満ちています。

 

 そして、その中央には、黒く渦巻く闇の流れがありました。

 おそらくは、これが滅びの獄(DOOM/ドゥーム)に通じるという“門”なのでしょう。

 

 本来であれば、その闇の流れをかき乱すように、複雑に組まれた水流がこの部屋に流れ込んでいたのでしょうが、その機構は、長い年月による劣化か、あるいは小鬼たちの稚気に満ちた破壊によるものか、今は機能していないようで、水は流れ込んでいません。

 星辰の周期が封印が緩んだ決定的な原因であるとすれば、この部屋の機構による闇の流れの阻害は、所詮は補助的なものだったのでしょうが、だからといって無くていいものではないはずです。

 機能を停止しているのはこの部屋の機構だけとも限りません。

 あの闇色の流砂のような“扉”の再封印が終われば、この砦の様々な機構の再建も必要でしょう。

 

「……かーなーり、瘴気が濃いなー」

 毒耐性をポーションで得ていますが、それでも気分が良いものではありません。

 TS圃人斥候が鼻を覆いながら、部屋の入り口から偵察しています。

 

「見たところ、特に何も居ないようですが……」

 文庫神官が盾を構えながら前に出ようとします。

 

「いや、出て来るわ!! 何か、大きい……っ!?」

 森人の鋭敏な感覚で、闇の流砂の穴が鼓動したのを感知した森人探検家が、大弓を構えながら注意喚起。

 

『CYYBBEEEEERRRR……!!!!』

 果たして、その闇色の流砂の穴から姿を現したのは、牡牛のような、あるいは羊のような2本の角を持った、巨大な悪魔の頭。憤怒と戦意に染まった恐ろしい表情を貼り付けています。

 地獄の門へと向かって下の地獄から跳躍してきたのか、続いてすぐにその全身も飛び出してきました。

 露わになったのは、隆々とした筋骨に覆われた肉体! 半竜娘の背丈よりも倍以上は高い身長です! この巨大水槽だった大広間の天井に2本角が(こす)るか(こす)らないかくらいの大きさです。

 しかし、大きさよりも目を引くのは、肉に食い込むように設置―― あるいは肉体と置換された―― 機械の部位。

 銀色のパーツが、肉体の多くの部分を置き換えており、血のような色のチューブがあちこちから飛び出し、あるいは皮膚の下を這っているのが垣間見えます。

 何より特異なのは、左腕を丸々置き換えた、巨大な砲口!

 足は馬や羊のような蹄を備えており、片足は完全に機械化されています。踏みつけ攻撃や蹴りも強力そうです!

 

 ―― こいつはまさに、“羊の足を持つミサイルランチャー付き超高層ビルとでも表現するしかない”!!*2

 

 闇の流砂の穴の遥か下方から跳躍してきただろうと思われるこの悪魔―― 機械化大悪魔(サイバーデーモン)―― は、扉から覗き込む冒険者たちを見つけると、その左腕の砲口を向けてきました!

 

『DEEEEEMMMOONNNN!!!!』

 

 途端に発射される、強力な【火球(ファイアーボール)】の3連射!

 

「想定と違うわ!? こんな強力な悪魔が出てくるほど、封印が緩んでいるなんて!?」

 森人探検家が咄嗟に大弓を2連射して、火球を途中で迎撃します。

 矢に射抜かれた火球は、それをきっかけ(トリガー)に爆発!

 残りの1つも誘爆しました。森人の弓の絶技です。

 

「いや、アレは、悪魔……つまり“霊的な生命体”としては下の下じゃ。精髄(エッセンス)を削りすぎておる!」

 半竜娘ちゃんが、そのからくりを看破しました。

 

 強大な悪魔が出てこられないのは、封印が、霊的に強い悪魔を通さないようにしているからです。

 

 ですが、滅びの獄(DOOM/ドゥーム)においては、この数千年のうちに技術革新が進み、霊的な力と引き換えに、機械化手術(サイバネティクス)により強力な力を得ることができるようになっていたのです!

 どうやらあの左腕は、一度に3つの【火球(ファイアーボール)】に相当する攻撃を放ってくる科学機構を内蔵しているようです!

 詠唱が要らないためか、連射や、瞬時の反撃も可能そうです。弾数に限りがあるのかどうかも分かりません……。

 半竜娘ちゃんたちは【竜命】のポーションで炎熱への耐性を得ていますが、爆発による衝撃波のダメージは通る可能性があります。

 攻撃は受けない方が良いでしょう。

 

「悪魔としての霊格は、そこらのインプと同じ程度まで削られておる……しかし、それをこやつは、肉体置換して得た機械の装備で補っておるのじゃ!」

 

 この機械化大悪魔(サイバーデーモン)は、自らの霊的存在としての精髄(エッセンス)を削るのと引き換えに、機械の躰と化すことによって力を得た悪魔、というわけです。*3

 精髄(エッセンス)を削ったことにより“悪魔としては”下級だと判断されたため、封印の網目を潜り抜けることが可能になり、こちらの世界にやって来たということなのでしょう。

 

 そして、これからいざ封印の堰を完膚なきまでに破壊しよう、としたところで、半竜娘ちゃんたちとバッタリ、ということでしょうか。

 

「来るぞ! 構えるのじゃ!」

 

『CYYBBEEEEERRRR!! DEEEMMMOONNNN!!』

 

 

 巨大悪魔のサイボーグが、火球を乱射しながら突撃してきます!!

 

 

 というところで、今回はここまで。

 ではまた次回!!

 

*1
考え込むゴブスレさん:小鬼が、侵入した冒険者をおびき寄せるために捕虜を虐待し始めたにしては、悲鳴に切迫感がないなー、と思っている。

*2
羊の足を持つミサイルランチャー付き~:Windows95版Doom2ユーザーズマニュアルにおける、サイバーデーモンに関する記載。

*3
精髄(エッセンス)を削る:参考→TRPG「シャドウラン」。第六世界(シャドウラン世界)の魔法使いは、機械化により魔法を操る適正が下がる。




 
原作小説7巻でも超勇者ちゃんが地獄に行ったときは、敵の親玉にDOOMのラスボスのスパイダー(Spider)マスターマインド(Mastermind)(蜘蛛みたいな多脚戦車の上に脳みそが乗ってるような悪魔)っぽいのが描写されてるし、それならサイバーデーモンも出さなきゃだよね! と思ったので、サイバーデーモンさん登場です。

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