こんなありふれもありえた   作:ラプラスの悪魔

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大変、長らくおまたせしましたっ!!m(_ _)m

さあさあ、もう何も言うまでもないですな!?

今回のお話は…言うまでもなく、caseと副題からわかってしまう通りの
リリアーナ本妻ルートの続きのお話となります。
データ消失前構想と違い書き直しきったものです。

ええ、徹底的に「天之川君」がピエロなので。
…光輝好きな人はブラウザバックを推奨します。

やたらと長いサブタイトル通り、
メルドの視点、神の使徒(ノイント達じゃないですよ?)、ハジメとリリィの視点。
の三本立てでお送りしま~す♪(サザエさん次回予告風)



…では、優しい目で読んであげて下さいね。(しつこい


※風音鈴鹿様、いつも誤字報告ありがとうございます。
何度見直しても、結構抜けてる所があるようです…。(反省中
※※メイン弓様、誤字報告ありがとうございます。


case8-2 「メルドの忠誠、へリーナの怒り/踊る愚者と心離れし剣士と聖女/奈落の底にて誓う愛」

Side メルド

 

 

「姫様、坊主…どこにいるんだ。」そう呟きながらメルドは数日、オルクス大迷宮を探し続けた。

 

しかし、何の手かがりも見つかりはしない。

(※101階層以降に落ちてるからね♪)

肩を落としながらも、リリアーナ姫の最後の命令に従うべく、

入り口のチェックに引っかからない様にオルクス大迷宮を後にした。

 

ホルアドのギルドマスター経由で、ヘリーナと畑山愛子に「至急、ホルアドまで来てほしい。」

と連絡を頼み、自分は人の寄り付かない地域にある空き家へと身を隠した。

 

それから数日後。ヘリーナと畑山愛子と護衛の騎士(教会騎士ではない)がホルアドに到着。

冒険者ギルドのギルドマスターから話を聞き、メルドが居る空き家へと向かった。

 

コンコン

 

「畑山愛子が生徒達に呼ばれている愛称は?」

 

「愛ちゃん先生」

 

「…誰が、愛ちゃん先生ですか。」とブツブツ言ってる人物を気にしてはいけないのだろう。

 

「入ってくれ。騎士達には出来れば周囲を警戒してもらいたい。」

 

「そうしてください。メルドは私達にだけ話したい内容があるようですから。」とヘリーナ。

 

「「「了解しました!」」」と護衛に付いてきていた騎士達は出て行った。

 

「取り敢えず、長くなる。二人共座って、落ち着いて話を聞いてくれ。」

二人が席に座ったのを見て、メルドはオルクス大迷宮であったことを話し始めた。

 

・訓練も最初のうちは順調だった事。(魔石回収時等のやりすぎはあったが。)

・唯一の非戦闘職である南雲ハジメが、独特の発想を持って活躍し騎士達を驚嘆させた事。

・最終階層の予定だった20階層、天之川が大技を発動…なんとか生き埋めにならずに済んだ事。

・その際に大型のグランツ鉱石が出てきて…罠探知前に檜山が暴走し触れてトラップを発動した事。

・強制転移魔法で、人類最高到達階層と言われている65層に飛ばされた事。

・ベヒモスとトラウムソルジャーの群れとの戦いの中、混乱し指揮が及ばなかった事。

・天之川達4人が撤退しないおかげで、自分達も撤退出来ずにいた事。

・園部優花がトラウムソルジャーに殺されかけ、南雲ハジメが"錬成"で助けた事。

・南雲ハジメが天之川に「前ばかり見てないで、後ろも見ろ!」と怒鳴った事。

・それでも退かなかったので、(隠れて)同道していたリリアーナ姫が命令した事。

・南雲ハジメが錬成でベヒモスを抑え、姫が結界で南雲ハジメへの攻撃を守っていた事。

・その間に私達と天之川達4人で、トラウムソルジャーを一掃し退路を確保する事。

 

「ここまでは上手くいっていた。南雲ハジメと姫様の作戦通りに。」俯きながら語るメルド。

 

「ここまではという事と姫様が傍に居ない。それが答えですか。」歯を食いしばるヘリーナ。

 

「…ぇ?へ?…どういう事ですか?」全く理解していない様子の愛子先生。

 

メルドの説明は続く。

 

・我々と生徒達で退路を確保し、南雲ハジメと姫様が逃げるための時間を稼ぐ。

・南雲ハジメの魔力も、クラスメイト達の中で高くはない…だからタイミングを合わせて離脱。

 

「そういう計画だった。姫様が自ら、『撤退時が一番危ない』と南雲ハジメの側に。

ベヒモスを錬成で抑え、我々の方へ走り出したと同時に…ベヒモスに魔法攻撃を集中させた。

上手く行く計画だった。一部を除いたクラスメイト達も我々も無事帰還を喜ぶはずだった…。

 

だが、結果は失敗。原因は檜山の魔法による意図的な妨害だ。

 

「そ、そんな…檜山君だってそ「事実だ。実際に姫様は最後に私にだけ命令を下した。」

 

・この作戦が無事に成功して、全員帰還できれば良し。

・仮に失敗する場合、十中八九ハジメ様をよく思っていない檜山様達の仕業でしょう。

・その場合迷宮内で始末しなさい。連れ帰ってしまえば処分出来ずに貴方のみが処分されます。

・そして、貴方はウルかフューレンの街へと姿をくらましなさい。

 

「そう言い残し…檜山の魔法を鎧越しに受けた姫様と、担ぎながら撤退しようとしていた南雲ハジメは、二人とも橋の崩壊と共に奈落の底へ落ちていった。」

 

「………」ヘリーナは血が滲む程に歯を食いしばりながら話を黙って聞いている。

 

「そ、そんな!南雲君とリリアーナ姫様まで?…そういえば檜山君はどうなったんですか!」

 

「今の話を聞いていたら解っているだろう。私が「この手で」殺した。

そもそも、同胞を貶める人間性も気に食わなかったが、今回の動機だってどうせ嫉妬だろう。所々での休憩の合間に白崎が南雲のことを気にしていたようだしな…。

それと、畑山愛子。王族への暗殺未遂などは死罪だ。どちらにしろ変わらん。

というか、この目で南雲ハジメへ向けて魔法を撃ったのを見た時点で、この手で殺す気だった。」と極めて冷徹にメルドは伝えた。

 

「……うぅうう」愛子先生は改めて、この世界の価値観を理解した様に静かに涙していた。

 

「で、メルド。畑山愛子は分かりました。何故、私までここに呼んだのです?」とヘリーナ。

 

「姫様の最後の言葉通り、フューレンに身を隠そうと思う。その際お前が居たほうが隠れやすい。

あの後、迷宮を探索したが全く痕跡がなかった。という事はもっと深度の層へ行ったのかもしれない。フューレン程の都市なら、身分を隠して冒険者稼業でもしながら情報を集められるだろう。」

 

バシーーィィン!!!

 

「姫様を守りきれなかった事。南雲ハジメ様を守れなかった事。これで済ませてあげますよ。

ただし、姫様や南雲ハジメ様の生存が絶望的になった場合、私が貴方を殺してあげます。

勿論、私も姫様の居ない王城に戻るつもりは無いので付いて行ってあげますよ。」

 

バシン!!!

 

「いつまで被害者面で泣いているつもりですか!畑山愛子!今回の件、南雲ハジメ様と姫様が奈落の底へ落ちる事となった原因の檜山っていうクズでしたか!?

そいつが短絡的な行動を取っていたことも、南雲ハジメ様を軽視していた事も!

『貴方が責任ある大人として、悪いことをしたら罰せられる』そんな常識を教えてこなかったのも原因の一つでしょう!あのバカ勇者に流されるまま、自分の意見を押し殺した、貴方自身の罪です!」

 

「ぅぅう、はぃ!」涙目になりながらも、目を擦り。真剣な目つきへとなっていく愛子先生。

 

「ヘリーナがキツイ事を言った様だが、これがこちらの世界での現実だ。

生徒達や貴女が悪いわけでは無い。が、貴方達が豪勢な食事を食べてる最中…前線等では乾燥食品や命を落とす兵士が居る。で、ヘリーナと私は…フューレンへと姿をくらます。勿論、これは誰にも言わないでくれ。で、畑山愛子。

貴女は今回の南雲ハジメと姫様、檜山の処罰の件で…戦争や戦いが怖くなった者、そして白崎達…自分の意志で希望した者を連れてウルの街へと赴いてくれ。

あそこの周囲は穀倉地帯だ。北の山には魔物が居るって話もあるが…。」とメルドが提案をする。

 

「はい!分かりました!私の生徒にだけこれ以上、重荷を背負わせるだけにはいきません!」愛子先生が不退転の決意で燃えている。これなら大丈夫だろうとメルドとヘリーナは安堵した。

 

 

そしてヘリーナとメルドは下準備をした後、フューレンへと向かって行った。

愛子先生は軽い事情を護衛騎士に話しつつ、王城へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 神の使徒(ノイント達じゃないです、生徒達です。)

 

 

 

なんとか、アラン達や騎士達の護衛のもとオルクス大迷宮を抜けられた使徒達。

 

アラン達騎士は、メルドの最後の覚悟を知ってか…表情は暗い。

 

迷宮でハジメに助けられた園部優花、白崎香織、八重樫雫、坂上龍太郎達も暗い顔だ。

 

「ホルアドの宿で一晩、疲れを取ったら王城へと戻ります!」とアランが言うと。

 

言葉少なに各々、宿へとぞろぞろと戻っていった。

 

そして翌日、ホルアドを出発し…そして数日。

 

護衛騎士達と使徒達は、王城へと到着し、間もなく全員が王の間へと呼び出された。

 

 

 

そして、騎士アラン達による事情説明。

 

 

南雲ハジメが奈落の底へ落ちた事。リリアーナ姫が同道していて、一緒に落ちた事。

 

その原因を作った下手人である檜山をメルド元団長がその場で処罰した事。

 

ハジメが奈落の底へ落ちたと聞いていた、周囲の貴族達は好き勝手に騒ぎ始めた。

落ちたのが〝無能〟のハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。イシュタルですら同じだった。

強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならない事。

迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと、不安が広がっては困るのだ。

神の使徒たる勇者一行は、無敵でなければならないのだから。

だがイシュタルはまだ分別のある方だっただろう。中には悪し様にハジメを罵る者までいたのだ。

 

「やれ、死んだのが無能でよかった」

「神の使徒でありながら役立たずなど、死んで当然だ」

 

その言葉を聞いた、香織と雫と龍太郎と園部優花は完全にブチ切れた。

 

「勝手に異世界から呼んどいて死んでよかった?ふざけるなっ!」

「じゃあ、アンタ達が私達の代わりに戦って死になさいよっ!」

「あの、南雲の勇気ある行動を馬鹿にするのは許せない!」

「南雲が居なければ、私達は皆死んでたわ!私は特に!」

 

各々が武器を取り出し、口ざまに罵っていた貴族達へと斬り・殴りかかっていった。

 

…はずだった。

 

 

 

「皆、やめるんだ!南雲は死んだ。リリアーナ姫をどう助けるかの話をしないと!」

 

 

イシュタルだけはその天之川の発言に同調するように…したが周りは思ったように動かなかった。

 

 

少しの沈黙の後。

 

 

「騎士アラン。メルドの後を継ぎ、団長の任をどうか頼む。」とエリヒド王。

 

「はっ!若輩者の身ではありますが、謹んで拝命いたします!」と臣下の礼を取るアラン。

 

「護衛騎士達よ、この度はご苦労だった。思わぬ事態が紛れたとは言え、人類最高到達層である階層から帰還せしめたのも良くやってくれた。」

 

「「「はっ!ありがたきお言葉を頂きまして光栄にございます!」」」

 

「ところで、そこの貴族達…。"神の使徒"の一員である南雲ハジメを悪し様に罵り、しまいには「死んでよかった」だと?…では、王命にて命じよう。

「南雲ハジメを侮辱した者らとその一族」の極刑を!

 

「な、なぜ…」

 

「当然だろう!我々の為に戦ってくれる子供達が命を懸けて挑んで、今回は南雲ハジメが他の使徒達を救ってくれたのだ!

晩餐会の時には「家の子供はどうだ」等と、縁故を結ぼうとして。

結果がこうなったら手の平を返す始末。その様な愚者は臣下にはいらんわ!」

 

「騎士達、「こやつらを捕縛せよっ!」、そしてその後親族もな!」

 

「「「はっ!」」」騎士達は迅速に捕縛、連行して行った。

 

「イシュタル殿、何故…「勇者の発言を擁護した?」」エリヒド王は猜疑の目で見ている。

 

「勇者殿の発言が正「嘘をおっしゃらないで!リリアーナが南雲様と同じ所に落ちた。なのに彼は、南雲様は死んでリリアーナは生きている。そう言ったのよ?」ルルアリア王妃は憤怒している。

 

「使徒達の言葉、アラン達の状況説明、メルド元団長の言葉…普通に考えたら両名生存、もしくは死亡。そう考えるのが普通ですよね?」とランデル王子。

(※なんだ、このランデル王子は。カッコよくなりすぎたかっ!!まだ10歳だぞっ!)

 

 

「イシュタル殿と勇者…いや愚者、天之川光輝。虚偽の申告罪で禁固刑に処する。」

 

 

「何でだっ!俺は勇者だ!正しい事を言っているだけなのにっ!」と叫ぶ天之川。

 

 

「その正しさって、貴方の中だけの正しさでしょ?天之川君(・・・・)」と香織が感情を殺した顔で。

 

「勇者ねぇ?無謀に突っ込んでいった貴方と、全員の退路を確保するため動いた南雲君。どこからどう見ても、貴方の行動が勇者として正しいは思えないけど?天之川君(・・・・)。」と雫が冷たい目で見下している。

 

「アンタは、前ばっかりを見てて…私がトラウムソルジャーに殺されかけた事にすら気づいていなかった。そんな私を"無能"と呼ばれていても南雲は救ってくれた。私にとっての"勇者"は南雲だわっ!!!」優花が涙を流しながら訴えている。

 

「俺もよ。あの時メルドさんや雫に止められたにも関わらず、無謀に突っ込んで負けた。が、南雲はアイツを倒せはしなかった…けど、足止めをして皆を救ったじゃねぇか。カッコよすぎるぜ。」龍太郎はホロリと感動しているようだ。

 

「かお「名前で呼ばないで!!」、しず「私を名前で呼ぶなっ!!」。」

 

般若、いや憤怒の表情をした二人が天之川を睨みつける。

 

「「私達は、南雲君もリリアーナ姫様も生きている…そう信じてる。例え絶望的な確率であろうとも。貴方と違って、自分にだけ都合の良い考え方はしないの。

貴方にとっての南雲君は、香織(私)に近づき、雫ちゃん(私)に何故か構われている人。そんなとこでしょ?…相変わらず、気持ち悪いぐらいの自分の女発言と自己正当化ね。」」

 

「私は、南雲君の『強くて優しい所』が好きなの。」と香織。

「私は、香織を通して見た彼の『心の強さ』が好きなの。」と雫。

 

「「貴方の事は唯の幼馴染以上には思えない。赤の他人。」」

 

 

そう二人が言った後、王の間にはある種の異様な空気が漂っていた。

 

「ゴホンっ!その両名も厳重に拘束した上、牢へと連れてゆけ!」とエリヒド王が空気を立て直した。

 

そうこうしているうちに、畑山愛子が地方の巡察から(ホントはホルアド)帰ってきた。

 

その足で、空気が変になっていた王の間において愛子先生からの報告がなされた。

 

・生徒達とアラン達の発言の状況説明の補足。

・メルドが団長を辞すると言っていた事。(既にアランに任命されてるため無効。)

・そして、今回の件で戦闘に恐怖または自分の意志で退きたいという事を許可する事。

(これは、教会・王国に対して原作通り言うこと聞かないと作農師の力貸さないぞ?という事。)

・一番の重大事である。南雲ハジメ・リリアーナ姫の両名に関して、作農師としての力を発揮しつつ、「ウルの街」を最終目的地として捜索活動する事。

 

愛子先生が話した内容で、メルドと話したという事実は王国側にも伝わっている。

が、問い詰めることなど誰も出来はしなかった。

…使徒達もそうだが、愛子先生の覚悟の決まった目を見たから。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

所変わって、王の間ではなく…食堂を兼ねた大広間での出来事。

 

「私は、先程言った通りにウルって街へ向かいながら作農師としての力を使い協力します。皆さんの中で、先程王の間で言った条件に該当する方は遠慮なく言ってください。」

 

そう言った声に反応したのは、

「園部優花・宮崎奈々・菅原妙子・玉井淳史・相川昇・仁村明人・清水幸利・白崎香織・八重樫雫」の9人だった。

 

残りの生徒達は、

「今回の件で天之川や教会には失望したけど、王国を守るためにも、衣食住を保証してくれてる彼らのためにも、帰るためにも訓練や自己防衛の力を持つことは必要。」

という結論の元、愛子先生に同行隊と王国に滞在隊の2つのチームに別れた。

 

(※檜山と天之川離脱。小悪党三人組・永山パーティー・元勇者パーティー・元々戦争したくなかった組が後者です。)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そうして、畑山愛子と同行隊9人+王国騎士数人(何度も言いますが教会騎士ではない)は、ウルの方面へと旅立っていった。

 

 

天之川光輝。エリヒド王に愚者と断じられた彼は未だ…魔力封印具で力を封じられたまま牢獄に居る。出される日は来るのか。

イシュタル=ランゴバルド。彼は教皇という立場を悪用した者として…王国法に乗っ取り処刑された。新しい教皇は未だ決まっては居ない。

銀髪のシスターが、その日を境にハイリヒ王国から姿を消したらしいと風の噂で広まっていた。

(※ノイントです。魅了も発揮しませんし…分散しちゃいましたし戦力。さらに言えば、勇者=愚者と牢獄行き。助けることは出来ます。ただ介在は疑われるので手を出さなかっただけです。)

 

 

 

Side ハジメ+リリアーナ

 

 

 

「痛っ~、ここは…僕は確か…」とハジメが目を覚ました場所は、緑光石でほんのり明るくなっている以外は周囲が良く見えない所だった。

周囲を見渡すことなく、自分の身体が川の縁に乗り上げているが下半身は川の水に浸かっている事は十分に把握できた。

 

「……リリィ!そう言えば、リリィは!」

ベヒモスからの撤退中、橋が崩れここに落ちたが。

自分に問題がないことは確認できたし、リリアーナも一緒に落ちた事を思い出した。

が、一緒に落ちたはずのリリアーナの姿が側にはない。

焦ったハジメは川から急いで上がりつつ、慎重に周囲を探した。

 

そしてリリアーナは、ハジメが漂着していた地点より15m程離れていたところに同じ様に漂着していた。抱き上げるのは恥ずかしいかも…そんな事を一瞬考えてしまったハジメだったがそれどころじゃないと急いで川から上がらせ、

周囲に魔物や敵が居ないのを確認してから、リリアーナを降ろし呼吸を確認した。

 

「…すぅ…すぅ」と穏やかな寝息と呼吸が確認できたので、一安心したハジメは…。

このままでは風邪や低体温症にかかるかもしれないと、適正が無いので苦労しながら"火種"の魔法陣を描き、火を起こした。

 

焚き火代わりに起こした火の直ぐ側で、未だ眠ったままのリリアーナと凍えかけている自分。この状況になって、ようやく事態を落ち着いて考えられるようになった。

 

・ベヒモスを"錬成"で抑え込むまでは、上手く行っていた。

・リリィの忠告通り、撤退時に魔法が「意図的」に自分の方へ向かってきた。

・リリィが魔力切れ寸前だったので、結界を張れず。身を挺して自分を庇ってくれた。

・気絶したリリィを背負って橋を渡って退避している途中に、橋が崩れ二人共巻き込まれた。

 

「…なんなんだよ。僕が活躍する事がそんなに気に食わなかったのか!

リリィとは短い期間だけど、たっぷりと話をして…「白崎さんばりの強情さ」は見に染みてわかっていたはずだ、僕は。魔力切れ寸前までリリィを追い込んだのも。「意図的」な魔法攻撃に巻き込まれたのも。

果てはリリィに庇われて気絶までさせてしまったのも、僕のせいじゃないか!

そして落ちる前にリリィだけでもと思ったのに、力尽きて二人共こうなったのは僕n

 

「違います!私がハジメ様と共に居たかったからですっ!!!」

そう声を荒げ、ハジメの言葉を遮ったのはリリアーナ。

(…まぁ、それ以外「人」は居ないので当然なのですが。)

 

「リ、リリィ?目を覚ましたの?!ケガは?調子悪いとか?!大丈夫!?」パニくってるハジメ。

 

「大丈夫ですから。落ち着いてください、ハジメ様。で、ですね?目を覚ましたらハジメ様が自分を責めていらっしゃる声が聞こえたので、思わず大声を出してしまいました。あの作戦に問題は一切ありませんでした。というか、問題があったのはクラスの方達側なのです。」

 

「え?どういう事?」と疑問顔で問うハジメ。男がやっても可愛くないって(笑

 

「ハジメ様も、檜山…様はつけるのは止めましょう。彼らが意図的にハジメ様を貶していたのはご存知だと思います。私は今回同道する中、ハジメ様の側にいました。

20階層ですね。天之川様が暴走した後、グランツ鉱石が見つかり。香織がそれを見て「ハジメ様」に視線を送っていたのは、私も気付きました。その直後です。

檜山がトラップ確認していないグランツ鉱石に触れ、転移させられたのは。

その後の崩落直前まではハジメ様も把握していると思います。なので、私はメルドに「最後の命令」を出しました。」

 

「…最後!?うぅん、どういう事?」否定したい。でも、まだだと堪えたハジメ。

 

「作戦が成功すれば良し。失敗する場合、ハジメ様をよく思っていない檜山達の仕業でしょう。その場合、迷宮内で始末しなさい。王国へ連れ帰ってしまえば処分出来ずに貴方のみが処分されます。で、貴方はウルかフューレンの街へと姿をくらましなさい。」という命令です。

 

「やっぱり…檜山だったんだ。白崎さんとオルクス大迷宮に入った直後からの不快な雰囲気で何となくはわかってたんだけど。

むしろ、メルドさんに最後の処断を任せちゃった事が申し訳ないかな…。

あとリリィ。絶対に「最後の命令」になんてさせないし、一緒に生きて地上へ帰るんだからね!」

 

「…ハジメ様っ!やっぱり(わたくし)、貴方が大好きですっ!!!」と抱きつきながら言うリリアーナ。

 

「へっ?うん、いや…僕…」

 

パシン!(頬を両手で叩いた音)ハジメの頬は赤くなっている。

 

「リリアーナ・S・B・ハイリヒさん。王族とか異世界人とかそんなもの関係なく、僕も貴女が好きです。僕の願いは元の星に帰ること。でもその時リリィをお嫁さんとして両親に紹介したい。

そう言っているハジメの顔はこれでもかと言う程…真っ赤っかだった。

 

「嬉しいです!本当に。初恋は叶わないと伝承もありましたし。やはり、異世界という壁もありましたから…受け入れてもらえるとは思ってませんでした。」と答えるリリアーナも真っ赤っか。

 

そうして、どちらからともなく…焚き火の明かりと緑光石の明かりに照らされる中。

二人の影は重なった。

 

(※超、重大事項発生のため。愛ちゃん同行隊の香織の背中のアレ(般若さん)が非実体ですが顕現しました。周囲のクラスメイト達や騎士達に大変恐怖を与えているようです。リリアーナとのでコレだったら…あと50階層降りた後の「アレーティア」が参入したらどうなる。その後、合流までには最低でもシア。

リリアーナが王女って事も踏まえて、こちらのルートでもアルテナは候補に入るかも?そして、フューレン。でやっとウル。

その頃には、既に香織の背中のアレは…邪神か魔神か…寧ろ破壊神ぐらいになってそう(笑

 

「と、取り敢えずさ。僕の事、様ってつけないで呼んでよ?僕だってリリィって呼んでるし。」

 

「はい!ハジメ!…さん。ちょっといきなりは難しいかもしれませんけれど…。」

 

何このバカップル。迷宮の中よ?奈落の底よ?イチャついてるだけとか…。(筆者の怒り

 

 

「グルゥウウアァア!」「キュウ!」

 

そんな声?と言うか咆哮が遠くから聞こえてきた。

 

「リリィ、魔力は回復してる?僕は一応最低限。でも、このままじゃいられないよね。」

 

「聖絶クラスなら1回、天絶クラスなら2・3回というところでしょうか、ハジメ…さん。」

 

「食料も水も、何も無い無いだらけだけど…リリィだけは何があっても死なせない!」

 

「私だって、一人だけ生き残るつもりはありません!ハジメ…さんの両親に紹介してもらい私の両親にもちゃんと紹介するまでは!」

 

「「何があっても、最後まで二人で生き残ろう!!!」」




如何でしたでしょうか。

・メルドsideでは、へリーナと(畑山)愛子先生に早急に連絡を取り。
ヘリーナには、自分と共ににリリアーナ姫の命令通り王国からの離反。
愛子先生には、心折れた者達(原作組)と希望するもの(名目上護衛として)を連れて、王国から生徒達を離すようにというのが根幹です。
最初はウルで愛子達とメルド達と合流させるべきか、迷いましたが…。
普通に農村だとは言え、元王国騎士団長と王女専従侍女は目立ちますよね?
特に前者は…ウルもハイリヒ王国領ですし。
なので、人口が多いフューレンでということになりました。


・神の使徒side、これはもう全てサブタイトル通りです。
本文に書いた内容以上に書き記す要素は…ほぼ無いです。

※原作通りには行かせないため、天之川投獄。更にはイシュタル処刑。
…エヒトが関わっているとは言え、教皇のほうが国王より立場が上だとしたら。
それは既に王国じゃなく、法国または神国ですよね?
だって神の声聞こえるってだけで重要職に付けるわけで。
本人が聞こえたって言えば、それっぽい事なら他の誰にも聞こえてないわけで。
ま、一種の宗教国家と考えても…王国なら国王に権限ありとみなし処刑しました。


・ハジメとリリィside。これが今回の本筋です。
前話において…ハジメの在り方(優しさや芯の強さ)が好ましいとしていたリリィ。
でもやはり、このルートにおいてもハジメの魔王化は回避できません。
リリィも政治に携わっていてる分、黒さを知ってはいても14歳の少女です。
そんな二人が、奈落の底でどう変わるか。そんなお話です。

という所まで書こうとしたのですが、10,000字近くなってしまったため。
最後の決意のセリフまでがこの本筋ルートの最後となりました。
(※魔王化と言う絶望ルートがほぼコピペ化しそうだったのもあります。)
ちょっと、物足りないぞ?と言うクレームについては受け付けます。
本筋ルートが一番短い。という謎の形の三本立てになってしまいましたので。

で、この続きを書いていくとするならば…のお話。

ユエに出会うとしてもだいぶ先の事となりますが…。
この話の続きとして書くなら、名前は捨てません「アレーティア」のままです。
(但し、ディーンリードの真意は完全には理解しません。)
という感じになるでしょうか。

あえてもう一度、言います。前話の後書き通り、
どうあがいてもウル以降は完全オリジナル化するので書きません。

…え?だって、オルクス大迷宮に行きませんよハジメ達。
というか、ギルド幹部用の長距離連絡用アーティファクトがあるって…。
イルワ言ってますし。(原作で)わざわざ、ホルアドに寄る理由が無いです。
(王女いるし、香織と雫というハジメが助けようとするだろう人は既にウル。)
となると、神の使徒全滅(死亡か寝返りかもしくは離脱)は確定しますので…。
…というか、光輝が居ないなら安全圏で撤退して魔人族と遭遇しない可能性も大。
カトレアじゃ…どうあがいてもオルクス大迷宮の深奥まで行けないので。

どちらにしても、続きとして書いていけるかは私の脳力(誤字にあらず)次第です。
この構想を形にするのも、1ヶ月以上はかかりましたし…ね?

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