月の少年のプロムナード   作:ゆるポメラ

2 / 8
ゆるポメラです。
楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。



第1話 儚い天使たち

お出かけ当日の週末。

駅前で1人の少女がスマホを確認するように見ていた。

 

「えっと、電車は各駅停車に乗ること、乗る電車の色を間違えないようにすること……」

 

千聖である。

彼女にとっては、初めて乗る電車なので、乗り方を花音と悠里が来るまでの間、確認してるのである。

 

「気をつけないといけないのはこんなところかしら? 快速とか急行とか特急とか……どれが一番速いのかよく分からないし、電車って難しいわね……」

 

電車もそうだが、特に千聖は今日着てくる服装にも悩んでいた。

久しぶりに幼馴染みに会う為、昨夜は珍しく2時間も悩んでしまったのだ……

 

「千聖ちゃーん! ごめんね、待たせちゃった?」

 

悩んでると、ちょうど花音がやって来た。

自分も今来たところだから大丈夫だと千聖は言う。

 

「えへへ、お出かけする洋服をギリギリまで選んでたら遅れちゃって……」

「そうなの? 実は私も昨日……2時間くらい悩んだわ。いつもはあんまりないけど……」

 

花音が遅れた理由を話す。

その理由に千聖も自分も同じ感じだと言う。

ちょうどその時、千聖のスマホが鳴った。画面を見ると、悠里からの電話だった。

 

「もしもし?」

『もしもし千聖ちゃん? 僕なんだけど、そろそろ待ち合わせ場所の駅に着くんだけど……どの辺りにいる? 僕……あんまりこの辺りの駅付近、分かんないからさ……』

 

悠里の言葉に千聖と花音はしまったと思った。

彼に会える事に、あまりにも浮かれすぎて、自分達が今どの辺りにいるという目印みたいな場所を伝え忘れていたからだ……

 

「ご、ごめんなさい、悠里。えっと、今……どの辺りにいるの? 場所を教えてくれれば私と花音もそっちに行くわよ?」

 

慌てた声で伝える千聖に、悠里はこう言った。

 

『…あ。大丈夫っぽい。千聖ちゃんと花音ちゃん見つけたから電話切るねー』

 

そう言うと電話を切ってしまった。

 

「えっと、悠里くん……なんて?」

「私達を見つけたから……って言ってたわね。近くにいるのかしら?」

「…正確には今着いたが正しいけどね?」

「「えっ?」」

 

第3者の声に振り返る千聖と花音。

そこには1人の少年が立っていた。

前髪は長めのミントグリーン色のショートヘア、ややツリ目で瞳は薄い青紫色。首にはチョーカー型のペンダント。

先程まで千聖と花音が話していた人物、水無月悠里であった。

 

「しばらくぶり。なんか遅れちゃってゴメンね?」

「う、ううん! 私と千聖ちゃんも今来たばかりだから……(ふえぇ~……悠里くん、最後に会った時よりカッコよくなってるよぉ……)」

「え、ええ。悠里が無事に来れて良かったわ……(お、落ち着くのよ……あ~もう~、ダメね。今日1日、悠里の前で変な態度とかしなきゃいいけど……)」

 

遅れてゴメンと2人に謝る悠里に花音と千聖はそんな事ないと言う。

というか、最後に会った時よりカッコよくなってる彼を見て、内心2人の心臓は張り裂けそうだった。

 

「…千聖ちゃんと花音ちゃんと久しぶりにお出かけするから、何着てくか悩んじゃって……」

「「…………((わ、私達よりなんかお洒落な気が……))」」

 

ちょっと複雑な千聖と花音。

何せ、悠里の私服姿は、半袖タイプの紺色のコートを着て、中には白のシャツ、黒のアームスリーブを付けていた。

黒色の長ズボンにシンプルなブーツ、腰には、お出かけ用の中くらいのポーチを付けており、いかにも悠里らしさが表現されていた。

 

「…時間もあれだから、そろそろ行こっか。2駅先だし大丈夫だよ。……2人にとっては遠く感じるかもしれないけど……」

「確かに……私と花音にとっては遠く感じるわね……でも、大丈夫よ。この日のために準備したもの。電車の乗り方も調べたし、お店の場所もしっかり覚えたわ」

「わ、私も何度も地図を確認したから、きっと今日は迷わないと思うよ……!」

「…それは頼もしいなぁ……(見ててほのぼのするなぁ……)」

 

意気込む千聖と花音を見て、僕も手伝えるように微力ながら頑張ろうと思う悠里。

 

「うん、私、頑張るね。改札はこっちだよ!」

「……あの、花音ちゃん?」

「ふぇ? どうかした?」

「改札はそっちじゃなくて……逆だよ?」

 

いざ改札に行かんと思った矢先、早速、花音が真逆の方に行く事を指摘した悠里。

 

「ふえぇぇ、ホントだ! ご、ごめんね、間違えちゃった……!」

「大丈夫だよ。僕や千聖ちゃんもいるし、ね? 千聖ちゃん?」

「そ、そうね。落ち着いて行きましょう」

 

私も不安だけど、悠里がいてくれてほんとに助かったわ……と思う千聖。

じゃあ改めて改札に行こうとした時……

 

「…あ。言い忘れたけど、千聖ちゃんと花音ちゃんの私服、似合ってるね? 可愛いよ」

「「あ、ありが……とう……((か、可愛いって言われちゃった……))」」

 

千聖と花音の着てる服について感想を微笑みながら述べる悠里。

それを言われた2人は、突然の事に顔を赤くしながら、俯くのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

駅の構内に着いた3人。

休日だという事もあってか、たくさんの人が構内にいた。

 

「わぁ、凄い人だね……! みんなこれからどこかへ遊びに行くのかな?」

「休日でもこんなに人が多いのね……」

「でも今日はまだ少ない方だね。まぁ、夏コミに比べればの話だけど……」

「そ、そうなの? はぐれないように気をつけないと……」

 

花音の言葉に悠里が苦々しげに話す。休日でも今日はまだ少ない方だと。それを聞いた千聖は、これでもまだ少ないのねと思ったそうな……

 

「! 前から人が来るわ。巻き込まれないように気をつけて」

「…うわ。人がゴmi……じゃなかった。これは真面目に気をつけないと……」

 

前から流れてくる人の列に気づいた千聖。

悠里はそれを見てどこかの大佐が言いそうな台詞を言いそうになったが。

 

「え、ええと、右に避けて……わ、こっちも人がいっぱい! じゃ、じゃあ左に……こ、こっちもいっぱい人が来る……! ま、待って千聖ちゃん、悠里くん……! 千聖ちゃ……悠里く……ふ、ふえぇ~!」

「花音!? ど、どこに行くの!?」

「花音ちゃーん!? 戻って来てー!?」

 

なんとか人混みに流されないように気をつける花音だったが、それも虚しく千聖と悠里がいる方向とは反対方向に流されてしまう。

 

「い、今そっちに……うう、前から人が来て進めないよ~! ふぇ、ふえぇ~! うう、千聖ちゃ~ん! 悠里く~ん!」

 

流石にこのままだと迷子どころじゃ済まなくなると判断した悠里は……

 

「…ちょっと失礼?」

「えっ? ちょ……ちょっと悠里!? な、なにして……」

 

千聖をお姫様抱っこをした。

突然の事にどう反応していいか分からなくなる千聖。

 

「…今から花音ちゃんを拾いに行くから、しっかり掴まってて? 僕も落とさないように気をつけるから……」

 

そう言いながら悠里は、チョーカー型のペンダントに搭載されているスイッチに手を触れ、カチッと音が鳴った瞬間……

 

「ゆ、悠里? お、落ち着きましょ……? べ、別にこの態勢じゃなくても……ね?」

「みぃー。()()()()()? 少し大人しくするのをオススメするのですよ☆ にぱー☆」

「…うぅ。うん……(急に昔の渾名で呼ぶなんてズルいわよ……しかもそんな表情(カオ)で……)」

 

どこぞのオヤシロ様の台詞と幼い頃に呼んでた渾名で言われた千聖は頷くしかなかったのであった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……今、人の波に流されていったの花音さんだよね? あ、水無月先輩が助けに行ってる。しかも壁を走ってるし……白鷺先輩はなんで水無月先輩にお姫様抱っこされてるんだろ?」

 

偶々その光景を見ていた美咲。

悠里が千聖をお姫様抱っこしながら、壁を走ってるのだ。見てて凄いシュール。しかも周りの人達は何故か気づいていない……

 

「水無月先輩と一緒なら平気かと思ったけど大丈夫かな……?」

「おや、そこにいるのは美咲じゃないか」

「あ、(かおる)さん」

 

美咲が不安そうに見てると、同じバンドメンバーで羽丘女子学園(はねおかじょしがくえん)では貴公子とか王子様とか言われてる、瀬田薫(せたかおる)が声をかけてきた。

 

「こんなところで会うなんて、運命の導きかな。これからどこかに出かけるところかい?」

「あーうん、ハンドメイド雑貨のイベントに行こうかと思って……薫さんは?」

「私は風の向くまま散策に出かけようと思ってね。こんなに素敵な天気の日は、遠出をしたら何か儚い事に出会えそうな気がするんだ」

 

それを聞いた美咲は薫さんらしい休日の過ごし方だねと付け足す。

 

「ところで、さっき花音がなんとかと言っていたけど……ん? あそこにいるのは花音? それに千聖も? それに……悠里?」

「水無月先輩、よく花音さんと白鷺先輩を器用に運べるんだなぁ……見ててシュールだけど……」

 

薫と美咲が見たのは、右手で千聖を、左手で花音をお姫様抱っこしながら壁を走ってるという、これまたシュールな光景だった。千聖と花音は遠くで視えないが、頭から蒸気が噴き出ていた……

多分、恥ずかしさで顔が真っ赤なのだろう。

ちなみに悠里は澄まし顔だが。

 

「あーそれでですね、花音さん達、今日はカフェに行く約束をしてて……」

 

経緯を薫に説明する美咲。

 

「なるほど、2人が苦手な遠出に挑戦して、悠里が2人のフォローか。それはとても儚い心意気だね」

「でも、人混みに流されてた花音さんを見たら、ちょっとね。やっぱり、あたしも一緒についてこうかな。水無月先輩と白鷺先輩じゃ大変そうだし……」

 

悠里と千聖が一緒とはいえ、自分もついて行こうかなと思った美咲だが、薫が自分達が行ったら水を差してしまうと言う。

 

「いやいや、このまま知らない街で迷子になるのが大変なんじゃ……」

「花音は糸の切れた風船のような子だからね……じゃあ、こういうのはどうかな? 3人に気づかれないようにこっそりついていく、というのは? それなら3人の邪魔をすることなく、何かあった時は力になってあげられるだろう?」

「確かにそれならいいのかも……」

 

薫の妙案に頷く美咲。

 

「ああ、でも美咲は予定があるんだったね?」

「あーいや、イベントはもういいよ。花音さん達のほうが気になるし……」

「フフ、美咲は友達思いの素敵な子だね……そうと決まれば、3人を見失わないうちに行こうか。今日の私達は頑張り屋の3人を見守る儚い天使さ」

 

今ここに薫命名『3人を見守る天使作戦?』が始動された。

 

……余談だが。

 

「…ここまでなら人もそんなに集まらないし大丈夫かな。ごめんね? 雑に運んじゃって……」

「ううん……私は、その……嬉しかったかな……(ふえぇ!? 悠里くんにお姫様抱っこされちゃったよぉ~!?)」

「そ、その……重かったでしょ……?(違うのっ!? 悠里にお礼を言いたかったのに、何変な事を言ってるのよ!! 私は!?)」

「…いや全然。花音ちゃんと千聖ちゃん……凄く軽かったし」

 

人混みの中を潜り抜け、悠里にお姫様抱っこで運んでもらった花音と千聖は、ホームに着くまでの間、悠里の顔をまともに見れなかったそうな。




読んでいただきありがとうございます。
かおちゃんの口調、難しい………(ぐ、ぐぬぬ……)
次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。