月の少年のプロムナード   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の予告通り、オリジナル回になります。
ちょっと暗めな内容も入ります。
今回は千聖ちゃん視点になります。

それではどうぞ。


第6話 千聖と花音の願い

お出かけ当日の週末。

私は花音と一緒に、彼女が行くという水族館に向かっていた。

 

「けっこう……大きい水族館なのね……」

「うん♪」

 

正確には今着いた……という表現が正しいのかしら?

私は、連れてこられた水族館の建物の大きさに驚いていた。

 

「千聖ちゃん、受付はこっちだよ?」

「え、ええ」

 

花音の案内で、私達は受付を済ませて館内に入る。

入ってみて先ず思った事は、天井がプラネタリウムという普通の水族館とは違うところだった……

 

「おや、花音ちゃんじゃないか。いらっしゃい」

「あ♪ 館長さん♪ こんにちは」

 

すると温厚そうな人が花音に気づき、クルクルと回りながらこちらに寄って来た。

目を回したりしないのかしら……?

 

「おや? そちらはお友達かな? どうも、この水族館の館長です」

「ご丁寧にありがとうございます、花音の友達の白鷺千聖です……」

「白鷺? なるほど、なるほど♪」

 

館長さんに挨拶をされたので、挨拶を返すと、私が芸能人だという事を知っているのか

深く追及してはこなかった。

プライベートなんだから気にしないで欲しいと目が物語っていた……

私としては凄く助かります。

 

「あの…館長さん、悠里くんは今日……来てますか?」

 

花音が館長さんに尋ねた。

 

「彼なら来てるよ……だが……」

「「?」」

 

花音が話してた通り、悠里はやっぱり来ていた。

けど、館長さんの表情は少し言いにくそうな暗い表情だった

周りに私達しかいない事を確認すると口を開いた……

 

「…実はね、本当だったらここはもう閉館してもおかしくなかったんだ。とある厄介な客が来てね。ここの魚を買い取りたいと……」

 

ここに来る前に花音が、この水族館はマイナーな魚や珍しい熱帯魚もいるって教えてくれたわね……

厄介な客というのは……あんまり想像したくないけど……お金持ちかしら?

 

「私は断ったよ。そしたら"いつか潰してやる"と言われてね……次の日に出勤したら、一部の魚達が亡くなっていてね……」

「ひ、酷い……」

「あの……被害届は出さなかったんですか?」

「もちろん出したさ。だが……圧力をかけられて拒否されたよ」

 

私はそれを聞いてあり得ないと思った。

すると私の思ってる事が解ったのか……

 

「その事を悠里くんに話したら……彼も思うところがあったんだろうね。私も彼の家系はよく知っている。で……暫くした後、被害も無くなって、今のように無事に運営している訳だ。代償は大きいが……ね……」

 

溜息を吐きながら話した。

 

「…ただでさえ彼は、生きるのが辛い筈なのに、何故世間はこうも理不尽極まりない扱いを彼に強いるのかね……まだ中学2年生だというのに。以前ね彼はこうも言ってたよ……『人間関係や男女差別なほど厄介なものはないんじゃないか』……とね」

 

それを聞いた私達は、ほんとにそれは悠里なのかという疑念が浮かぶ。

少なくとも私が知ってる悠里は明るくて優しいのが印象的だった……

 

「彼なら深海魚のコーナーの近くにあるカフェにいると思うよ。あそこはある意味、彼しか行かない場所だからね。はぁ……私にもう少し経営手腕があればね……」

 

それだけ言い残すと館長さんは、私と花音にごゆっくりと言って去っていった。

さっきと同じくクルクルと回りながら……

 

「悠里くん……どうしちゃったんだろう?」

「そうよね、少なくとも私が知ってる悠里は……」

 

そういう人間関係が云々とかはハッキリと言わない。

行けば解るんじゃないかと思った私達は彼がいると思われる深海魚コーナーに向かった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

深海魚コーナーに着いた私と花音。

そこには普段見ない深海魚や学校の授業でも見かけない生き物が水槽にいた。

近くには小さいくもなければ大きくもない位のカフェが併設されていた。

 

「あんまり人がいないのね……」

「えっとね? 今日はたまたまいないんじゃないかな。なんていうか……いる時といない時があるコーナーだから」

 

あっ……そうなのね。

てっきり人気がないから人がいないのかと思っちゃったわ……

そう思ってると、カフェのところで誰かが座っていた。

花音もそれに気がつく。

 

「(悠……里……?)」

 

特徴的なミントグリーン色の髪……

もしかしてと思い近寄って見ると、意気消沈よりも酷い表情をしている悠里がいた。

 

「…………」

 

彼は飲み物が入ったコップを空虚な表情で見つめてた。

 

「……悠里くん?」

「……………………え? 花音ちゃん……? それに千聖ちゃん……?」

 

花音の呼び声で気づいた悠里。

隣にいた私の事も覚えてくれて少しだけ安心感があった。

これで覚えてないって言われたら……ショックね。立ち直れなさそう……

 

「……なんか珍しい組み合わせ」

「私と千聖ちゃん、同じクラスなんだ」

「…納得。千聖ちゃんも良かったね? 普通に話せる友達ができて」

「え、ええ……」

 

なんか悠里と話すのは久しぶりだから、ドキドキするわね……

そ、その……なんていうか、悠里は悠里でカッコよくなってるし……

 

「顔色が悪いけど……悠里くん大丈夫……?」

「…正直に言って……精神面が大丈夫じゃないかも……」

 

花音の言葉に悠里は大丈夫じゃないと言う。

私も芸能界とかで色んな人の表情とかを見てきたけど、悠里のは特に酷かった。小さい頃の明るさは消え、逆に暗さが増えたのが窺えた。

なんとか私と花音の前では、笑おうとしているが見てて凄く痛々しかった……

 

「…あれ……なんで……」

 

安心してなのか、悠里の目から一筋の涙が流れてた。

突然の事に戸惑ったのか、何度も拭ってたけど一向に収まる気配はなかった。

そして気づけば私と花音は悠里を抱きしめていた。

 

「悠里くん……辛かったんだよね? 泣いてもいいんだよ……?」

「そうよ、今は私と花音しかいないから……」

「…………うん」

 

そしてこの時……

私と花音は顔を見合わせて同じ事を思ったと思う。

それは……

 

『悠里(くん)には笑顔でいてほしい。辛かった事があったら相談に乗ろう。私の大事な友達で……私の好きな人だから……』

 

そう思わずにはいられなかった。

 




読んでいただきありがとうございます。
なんか久しぶりに、暗めな話を書いた気がする……(苦笑)
今回の話の時系列は、お察しの方もいるんじゃないかな?……と個人的に思ってます。

次回で最終回になります。
頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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