結城友奈は勇者ではない   作:mn_ver2

32 / 41
前回のあらすじ
バーテックス第二陣
敗北濃厚の中、颯爽と現れたのは――


死戦

 牛鬼の主人は結城友奈である。

 そう刷り込まれてこれまで友奈に力を貸していた。しかし今、牛鬼の中で何かが大きく揺らいでいる。

 その正体は牛鬼にもわからない。しかしこれは高嶋を見た瞬間に誕生し、今なお引きずっているものだ。

 核に楔が打ち込まれた感覚。決して先端が尖っているわけではない、むしろ逆にこちらが離すまいと無意識に引き止めている気すらする。その理由がわからない。

 この楔を辿った果てに何があるのか。それが知りたい。

 だから牛鬼は高嶋とともにいることを選択した。高嶋を知り、高嶋という人間性を知るために。

 その中で、魂の共鳴のような現象を幾度も観測した。だから友奈を神の業に至らせることができた。風を天の神の祟りから守ることができた。

 すでに冷たくなった、文字通り血の気の無い高嶋の身体を見下ろしつつ、牛鬼はバリアを展開する。これは主人である友奈に指示されたからだ。しかし、恐らく指示されていなくても牛鬼は自身の判断で高嶋を守ろうと動いていただろう。

『牛鬼』という妖怪には、人を助けるとその身代わりとしてこの世を去るという伝承がある。

 つぶらな瞳はじっと高嶋を見下ろす。

 まだ激しい戦闘は続いているようだ。凄まじい轟音が、だいぶ離れているはずのここにまではっきりと届く。

 精霊として主人のことは心配だ。

 天の神の祟り。

 そして、神の呪縛。

 ふたつの呪いを身に宿しているのだ、戦うなどもってのほか。今すぐ勇者状態を解除させ、一刻も早くちゃんとした機関に診せなければならない。

 ……でも、それが結城友奈の決断ならば。

 ……牛鬼もまた、決断しなければならない。

 静かに高嶋の胸の上にちょこんと乗る。ずっと音叉のように共鳴し続けていた魂の振動。すでに片方は壊れ、二度と鳴らない。

 死んでいるのだからそれは当然。

 だが牛鬼は今、高嶋を救うと決断した。

 手法? そんなものは知らない。でも、どうしてかはわからないが、できると思った。

 なせば大抵なんとかなる。

 ただ、救いたい。そんな純粋な願いだけで十分だ。

 この共鳴も、もうしばらくすれば消え失せてしまうだろう。そうなれば、核に引っかかっていた楔が引き剥がされ、ずっと抱いていた疑問は二度と解決されることはない。

 その疑問とは……なんだろう?

 ここで初めて、牛鬼は人間らしい思考を巡らせた。

 高嶋は過去の人間。牛鬼が知るはずもない人間。だが、どうしても見覚えがある。視界に入れる度に、狂おしいほど懐かしくて、嬉しさですべてが満たされる。これまで、どうしてもわからなかったもの。

 これは……ああ、そうだ。

 カチリと最後のピースがあまりにも綺麗にハマったせいで、これ以上ないカタルシスを感じる。羽を大きく震わせて、答えに到達できたことに歓喜する。

 この感情を言い表すのに最も適切な言葉が、ようやく浮かんだ。

 

 それは、愛だ。

 

 自分への愛。

 鏡写しのように向けられた、愛。

 魂の震えが増幅する。

 すると、骸となったはずの高嶋の身体が淡く発光し始める。牛鬼はその様子をジッと見届ける。

 さらさらとどこからともなく桜色の花弁が周囲を舞い始め、幻想的な光景を生み出す。

 それでも牛鬼はまだ動かない。

 そしてついに自身の魂の臨界点に到達した瞬間、牛鬼を中心として、遥か空に届かん光の柱が高く屹立した。

 樹海に発生する、神の業すら子供の悪戯に思える現象。

 これ即ち、完全なる死者蘇生。

 牛鬼はゆっくりと、自身の身を高嶋の中へと沈み込ませていった。

 

 ◆

 

 決闘を申し出たはいいが、はっきり言って勝機なんてまるで見えない。雲を掴むのといい勝負だ。

 赤嶺は矢を構えながら征矢の返答を待った。

 

「……クク」

 

 醜悪に口の端を上げ、嗤いを零す。

 巨木の軋むような異音で、征矢は抑えきらなかった嗤いを爆発させた。

 

「ク、ハハハハハハッ!! お前が? 私を? ハハッ! 面白いことを言う! 実力差はわかるだろう? 逃げてもいいんだぞ? 結城友奈たちに合流して、混戦に持ち込めばいい。そうすればバーテックス共も私を攻撃する。そうすれば隙が生まれるかもしれないというのに!!」

 

 その作戦は確かに考えた。だがすぐに却下した。

 ただでさえ赤嶺と高嶋の介入のせいでこの戦闘が発生したのだ。バーテックス、征矢、勇者の三つ巴に発展することだけは駄目だ。

 やがて嗤いが収まった征矢は、すらりと血色に光る刀身を見せつけるように構えた。

 

「まあ、いい。何があってもお前を殺せばいいだけのこと。万が一殺されても、私は何度でもお前の前に現れる。長引けば長引くほど辛くなるのは……どっちだろうな?」

 

「…………」

 

 嫌味ったらしい物言いも健在。

 余裕ぶった態度は、圧倒的優位に立っているからとれている。そもそも初戦のときからおかしかった。征矢はあの時、殺されに来たのだ。殺されることでがたのきた古い自分を捨て、新たな自分を手に入れる。本来ならわぞわざ赤嶺の前に現れずに最初から新しい征矢が襲撃すれば良かったのだ。なのに敢えて弱い自分を殺させることで、征矢は弱いと錯覚させた。

 とんでもなく悪趣味だ。

 だからこそ、二戦目の一合で油断していた赤嶺に大打撃を与えることができた。征矢の作戦に、まんまと引っかかった。

 首筋を浮かび上がらせるほど強く顎に力を入れた赤嶺は、地面を高く蹴り上げた。

 矢で貫いたとしても、恐らく昏睡状態にさせたりすることはできないだろう。元々この矢に宿る力は神樹由来のもの。神樹の加護を強く受けている征矢には何の効果も期待できない。だからシンプルに、物理的な攻撃手段として矢を使う。

 朧斬りを放たれたら終わりと思え。

 征矢の生大刀はレプリカだが、スーツの装甲をあっさりと一刀両断するほどの代物だ。一瞬たりとも意識から外すな!

 まだ普通の剣撃ならば、神樹の力を宿しているこの矢でギリギリ受け止められる……はず!

 対して征矢は驚くほど滑らかな動きで太刀を上段に構え、愚かな挑戦者を迎え撃たんと待ち続ける。

 相手がどうしようもない強者であることは百も承知! でも、だからといって負けるわけには……死ぬわけにはいかない!

 初撃の薙ぎ払いは容易く太刀で受け流される。高い音がジャリッ! と滑り、勢いのまま赤嶺は征矢の脇を突き抜ける。続けざまに振り下ろされた死の刃を、紙一重で回避する。

 なんとか、見える!

 極限状態で脳に届けられた視覚情報の処理が、現実での動作にギリギリ追いついている。脳の温度が急激に上昇してオーバーヒート寸前だが、まだ、頑張れる。命がけでキープし続ける。

 征矢とその近辺の地形の情報だけを入力として、それ以外のものはすべて排除。これ以上入力情報を増やせば、瞬く間に脳が瓦解する。

 

「おおおおッ!!」

 

 雄叫びとともにこちらから懐に潜る。

 気合で負けてはならない。あらゆる点で征矢より劣っていることはどう足掻いても覆らない事実。泥水を啜る気概でどうにかして勝利の兆しを見出さなければならない。

 矢の先端部分でしかまともな攻撃できないのは非常に痛いが、今はこれしかない。

 最小限の動きで躱される。そして迫る太刀。

 

「くっ!」

 

 大丈夫、まだ見える。

 限界まで腰を捻らせることで、刃は首を浅く撫でるだけに終えた。しかしたったひと振りで終わるわけがないだろうとばかりに剣撃の嵐が続けざまに赤嶺を襲う。

 一撃もくらうわけにはいかない。すべてを見切り、回避しなければ、死。

 瞬間、赤嶺は洗練された意識下で、迫り来る嵐を見る。

 情報が濁流のように押し寄せ、脳の中で小規模の赤い爆発があちこちで起きる。血がどろりとそこで爆ぜ、一瞬だけ処理が遅れる。

 足りない部分は本能で補う!

 獣じみた不規則な動きで回避し、なお処理を続ける。

 完全に同一時間に放たれたと錯覚するほどの複数の剣撃を既のところで回避。回避先を予測されて放たれても、回避――!

 視界が濁り、脳が灼け切りそうな熱に苦悶するも、なんとかすべてをやり過ごせた。

 嵐は過ぎ去り、太刀を再び構えた征矢は感心深そうに呟いた。

 

「……ほう」

 

 鼻から血を流す赤嶺を見て、言葉を続ける。

 

「思ったよりやるな。しかし顔が必死なのがよくわかるぞ?」

 

 死の緊張からか、逆にテンションが上がってきた赤嶺は獰猛に笑ってみせた。

 

「はッ! そりゃそうだよ。私とあなたじゃ力の差は圧倒的だもん。必死にならないと死んじゃうしね」

 

「そうか。そうか」

 

 征矢は感心深そうにそう呟くと、すう、とバイザーの光が細めた。それが赤嶺に対する警戒度を上げたサインであると直感的に悟り、ごくりと喉を鳴らした。

 これほどの緊張を感じたことは恐らくない。鏑矢として何度も失敗の許されない御役目をこなしてきたが、それ以上であると断言できる。

 大量の血を失ったというのに、身体が燃えるように熱い。

 友奈や高嶋とは違って、戦闘狂な気質があるとなんとなく思っていたが、どうやらそれは間違いではないようだ。

 いつもならストッパーとなる蓮華と静はいない。

 だから、今は、全力で、戦える。

 ガチッ! とギアを数段上げ、血走った眼で征矢を睨む。

 ここでの勝利条件は、征矢を殺すこと。だが相手が未来の自分自身と知ってしまった以上、どうしても躊躇いが生じてしまうだろう。それだけは間違いない。

 だから、殺さずに征矢の心に訴えかけることこそが、真の勝利条件だ。

 できるか?

 いや、やるのだ。

 電撃にも負けない速度の薙ぎ払い。

 咄嗟に矢を縦に構えて受け止める。

 両者が接触した瞬間、爆発的な火花が飛び散り、ふたりの顔を照らした。チラリと矢の状態を確認するが、僅かに傷が入っただけで、耐久度は問題ない。

 しかし……なんという力!

 思考の一切までもが吹き飛ばされそうな暴力的な一撃。本来ならば両手で添えて受け止めるべきなのだが、左手がない今、非常に不安定な体制で受け止めるしかない。

 太刀が翻り、V字を描きながら今度は右腕を切り落とさんとする。

 もしここで回避、受け止めようとしてもまた反則めいた動きで次の一撃が繰り出されるだけだ。鼻血が口に入り、鉄の味が舌の上に広がるのを感じながら、敢えて一歩前に踏み込んだ。

 

「ふッ!!」

 

 装甲を薄く切り落とされても怖じ気かずに征矢の目と鼻の先へと急接近し、矢を突き出す。

 しかしこれは予想通りと言っていいべきか、右足を半歩下げて身体の向きを変えることで回避される。普段ならここから左の拳で追撃を――といった流れに繋げるが、それはできない。

 同じく赤嶺の攻撃パターンを誰よりも熟知している征矢は口元に薄ら笑みを浮かべる。すでに次の一撃は振るわれている。

 狙いは首。

 このタイミング、この角度。脳がオーバーヒート寸前の赤嶺には追いつけない処理。防御までの時間は、ない。

 ()った。

 そう征矢は確信した。

 しかし。

 

「あああああぁぁッッ!!」

 

 赤嶺は左腕を動かし、完全に想定外な一撃に反応できなかった征矢の手首を、出血の止まりかけていた切断面で強打した。

 

「なに⁉」

 

 ここで初めて征矢が驚愕の声を漏らす。

 最大の武器である拳、その片方を無力化した。だから驚異の半分は削げたと安堵していた。

 それこそが、赤嶺が征矢に迫ることができる、唯一の手段!

 太刀が手元から離れ、高く弾かれる。

 手元の武器を失った征矢の顔が、バイザーに隠されていなくても容易にわかる。肉が大きく抉れてぐちゃぐちゃになった手首の激痛に大きく顔を歪ませながらも、赤嶺は矢を突き出した。

 狙いは心臓。前回あれほど歪に足掻いたのだ。心臓を傷つけられるくらいでは死なないはず。

 だがこれも回避される。赤嶺の遠く及ばない反応速度で躱され、装束を先端が切り裂き、胸に一筋の赤い線を刻むことしかできなかった。

 そして今度こそがら空きになった腹に、征矢の拳が深く沈み込む。

 巨人の一撃を受けたかのようなとても御しきれない衝撃に後方まで飛ばされ、背中から激しく落下する。

 そのすぐ目の前に、弾かれた生大刀が根に突き刺さった。

 

「がふ、ッ……!」

 

 クソ! これだけやっても掠り傷しか負わせられないのか!

 斬られた胸の傷が疼く。乾いて固まりそうだった血糊が、再びどろりとスーツの上を伝い始める。さらに、遅れてついに肺に血が溜まったのか、手を当てて咳払いをすると、赤くなっていた。

 

「……く、そ」

 

 悪態をつきつつも、力の入らない身体に鞭を打って立ち上がらせる。

 

「……少し、見直したぞ。お前の評価を改めねばならないようだ」

 

 そう静かに言った征矢は、手首にこびり付いた赤嶺の肉を丁寧に指に摘んで捨てる。

 

「……そういえば」

 

「ん? なんだ?」

 

 今またすぐに攻撃に出られるのはマズイ。呼吸が安定していないし、集中が薄れたのか、脳の熱が全身を蝕み始めている。冷却が間に合っていない。

 チリチリと意識が断線する。この状態で戦闘を続行することは可能だが、間違いなく動きにキレがなくなる。そうなれば死へ一直線だ。

 だから、今はどうしても全身を休めるための時間が必要だ。

 

「どうして、あなたは結城友奈を……殺さないの? 一応鏑矢の、御役目も引き継いでるんでしょう? なら、神の業に手出しした罰は与えなければいけないと、思うんだけど」

 

 なんとか意味をなす言葉を発するくらいには脳は無事なようだ。発音に問題があるようで、少しどもってしまう。

 

「もちろんお前の言う通り、神の業に至ろうとする者、至った者は殺さなければならない。たとえ勇者であってもな。でも結城友奈は違う。この後のために必要だから、殺す必要はないのだよ」

 

「この後……?」

 

 いったい何のことを言っているのだ?

 今回は例外ではあるものの、そもそもバーテックスの侵攻は波が収まっていると聞いている。

 友奈が必要になるのは……勇者としての力?

 

「それは……また、バーテックスの侵攻が、始まるってこと?」

 

「違う」

 

「教えてくれたって……いいんじゃない? 未来の私」

 

 わからない。

 バーテックス以外の驚異があり、それに対抗するためには友奈の力が不可欠……という理解まではできた。しかし、その驚異が何かわからない。

 ああ、頭が割れるように痛い。これ以上の深い思考は冷却中の脳に悪影響だ。

 だいたい十数秒ほど稼げたか。熱は少しだけマシになった。さっきのやりとりでスーツの止血作用は完全に死んだようだ。流れる血は収まりそうにない。

 だがまだ死ぬほどではない。数時間は持つだろうと読みつつ、重たい頭を持ち上げた。

 まるでそれを待っていたかのように佇んでいた征矢の手には、いつの間にか新たな生大刀が握られていた。

 なるほど、別にレプリカはひとつだけではないようだ。

 赤嶺が弾いた一本目は僅か一メートル先。すぐに掴むことはできる。しかしそれを征矢が許してくれるのか。

 

「さて、お待ちかねの朧斬りだ。お前にとって思い出深い剣技で終わりにしてやろう」

 

 緊迫した空気が征矢から放たれる。本当に業風のようなものが吹き付けられる感覚に膝を付きそうになってしまうが、どうにか歯を食いしばって耐える。

 戦意は尽きていない。まだ戦える。

 再び征矢に立ち向かおうと左脚を半歩前に差し出した、その瞬間。

 遠く離れた前方で、巨大な光の柱が空に伸びた。

 確かな質感を持った、神の降臨を思わせる閃光は赤嶺のみならず、征矢の動きまでも止めた。

 樹海でこのような現象が起こるなんて聞いたことがない。若葉たちと戦った時も、決してあのようなものは見なかった。

 何かが起きようとしている。しかし、赤嶺にはそれが悪いことではないと、自分でも理由はわからないが安心することができた。

 対して征矢は、手に血管を浮かび上がらせるほど力が入り、柄の一部を割った。赤嶺とは違って、良い印象は持っていないようだ。

 柱の方向へと身体を向け、狂気じみた叫びを樹海に轟かせた。

 

「牛鬼……お前……そこまでして自分を救いたいか(・・・・・・・・・・・・・・)――――!!」

 

 隙を見た!

 恐らくもう、これ以上の隙を晒すことは二度と無いはずだ!

 今こそ……今こそ、己に打ち克て!

 脊髄反射で赤嶺は地面を蹴る。目の前の生大刀を掴み、引き抜いて肉迫する。

 

「――!!」

 

 征矢が遅れて反応する。

 咄嗟にバックステップをして距離を取ろうとする。

 知っているとも。どうせその態勢からでも太刀を構えて降るまでは一瞬なのだろう。

 瞬きすらしていないはずなのに、すでに朧斬りのモーションに入っている。

 普通なら、もう絶対に回避は間に合わない。すでに間合いの中に飛び込んでいる。だからこそ、赤嶺がするべきことは、回避ではなく、攻撃! それもただの攻撃ではない。

 太刀を腰に携え、鋭く息を吸う。

 何度も。何度も見た。

 老若葉の動きをトレースしろ。蓮華が毎日夜遅くまで修得せんと練習していた様子を眺めていた記憶を掘り起こせ。

 別に完璧じゃなくてもいい。

 だから、少しだけ。少しだけでもいいから、あの領域に足を踏み入れろ――ッ!

 

 無音。

 

 あらゆる動きが粘性を持ったように、ゆったりとした速度に落ちる。

 直後、ふた振りの太刀が消え失せ。

 空間を裂く太刀筋がふたつ、刹那の間に交差した。

 ふたりは背中を向けたまま、姿勢を保つ。

 そして、ぼとりと肉が落ちた。

 落ちたのは赤嶺の左腕だ。肘まで斬られた切断面から真紅の雫を撒き散らす。それだけではない。腰のポーチも切断され、左腕と共に根の下へと落ちていった。

 ついに脳が限界を迎えた赤嶺はその場に膝をつき、前のめりに倒れた。

 しかし、赤嶺は勝ち誇ったような顔をしていた。

 次に、征矢の右脇腹から左脇にかけて巨大な傷が走る。内臓をのきなみ切り裂いた一撃は、征矢の口元から血を流すのには十分すぎた。

 

「ぐ、ぅ……」

 

 太刀を地面に突き立てながら征矢は口に溜まった血を吐き出した。

 だがそれでも、戦闘不能にまで持っていくことはできなかった。傷口に触れ、べっとりと深紅に染まった手を無言で見下ろした。

 そして、ずるずると力なく太刀を引き摺りながら征矢は赤嶺の横に立った。

 

「なる、ほど……。威力を抑えて、代わりに速度を上げたのか……。我ながら、よくやるものだ……」

 

 言葉を発する度に口から溢れる血を征矢は手で拭う。

 

「は、はは、は……」

 

「だが、そこまでのようだな。出血量も……決して無視できない」

 

「まあ、ね」

 

 太刀の切っ先を赤嶺の首にあてがう。

 赤嶺はもう、指先ひとつ動かせない。全身の感覚がない。こうして思考力を保っていることすらいっそ不思議なほどだ。

 確かに征矢を倒すことはできなかった。あと数秒後に高嶋と同じように殺されてしまうだろう。

 でも、もうそれでもいいや、と思えるほど満足感に満たされていた。なぜなら、誰にも成し得なかった朧斬りを、不完全ではあるものの再現することができたのだから。圧倒的強者に、一泡吹かせることができたのだから。

 

 どう! レンち! 私はレンちにできないことをやってみせたんだよ……!

 

 悔しそうな蓮華の顔を想像するだけで面白い。

 実際に見ることは叶わなさそうだが、赤嶺友奈という人間がこの剣技を修得することが可能とわかったのだ。これほど嬉しいことがあるだろうか! それにその完成型がすぐ目の前にいる。

 もう、悔いることは何もない。

 薄っすらと目を開け、こちらを見下ろす征矢を見上げる。

 まだ生大刀は振り下ろされない。

 それどころか、なぜか切っ先を首から離した。

 

「……?」

 

「…………よく、私に打ち克った」

 

 向けられた言葉は、これまでの深海の底を思わせる冷たさとは真逆で、暖かさに満ち溢れていた。

 

「…………ぇ?」

 

 唐突な態度の豹変ぶりに、思わず呆けた声が出る。

 そんなことはない。一撃は与えられたが、確実に負けた。現に今、首を刎ねようとあてがっていたではないか。

 征矢はこちらに背を向ける。

 そしてそれ以上何も言わず、根から降りて姿を消してしまった。

 いったい何だったんだ……。

 意識が薄れる。助かったという安堵が急速に広がる。極度の緊張状態から解き放たれた赤嶺は、そのまま泥のように眠った。

 

 ◆

 

 征矢に穿たれた穴を、光の波が洗い流す。

 とうに止まった心臓に、誰かが動き出せと呼びかける。

 どくんと血流が再開する。

 血の気が失せていた高嶋の顔が、徐々に赤みを増す。次に、誰の補助も受けずに自発的に胸を上下させはじめる。

 そして、極めてゆっくりと瞼が上げられた。

 

「…………ぁ、れ?」

 

 高嶋が目覚めると、そこには知らない天井があるわけではなく、夜が広がっていた。

 知っている、植物特有の緑色の香り。

 

「どうして生きて……私、殺されたはず、じゃ……」

 

 ぎこちない動きで上半身を起こす。

 周りを見回し、ここが樹海であることを悟る。

 そうだ、高嶋は樹海化警報がなった後、知らない少女に殺されたはずだ。

 なのに、どうして。

 ここは死後の世界……?

 

「……高嶋友奈」

 

 ふと名前を呼ばれ、高嶋は反射的に後ろを振り向いた。

 そこには忘れるはずもない人物が立っていた。他でもない、高嶋を殺した少女だ。

 

「ひ」

 

 無意識に喉から恐怖の音が漏れ、脚を使うことすら忘れて腕を必死に動かしながら距離を取ろうとする。

 しかしよく見ると少女の身体は血に濡れている。斜めに大きく突き抜けた赤い傷は、どう考えても重症だ。

 

「お前を殺すことは保留にする。牛鬼に感謝するんだな。それと……お前たち人間の力を……生き様を、私に見せてくれ。私はそれで判断する」

 

「え……?」

 

「見ろ」

 

 そう言うと、征矢は壁側の方を指差した。

 少し見にくいが、バーテックスたちと勇者たちが戦っているのを視認できる。

 

「助けに行ってやれ。来たくて来たわけではないのは知っている。でも、お前の責任なのは確かだ」

 

 そうだ。少女は高嶋に『赤嶺と高嶋が来たからこの襲撃が起こった』と言っていた。確かにバーテックスの襲来は終わっていると聞かされていたし、ならば言っていることは事実なのだろう。

 でも――。

 

「赤嶺ちゃんは? あと、私手甲持ってないから、戦えない……」

 

「どちらも問題ない。私よりも重症だが、赤嶺友奈は私に勝った。まだ誰も死んでいない。手甲は、お前の呼びかけに応えるだろう」

 

「なんで、そんなに優しいの?」

 

「…………」

 

 高嶋の問いに、少女は口を閉ざした。

 すぐに返答は返ってこなかった。それどころか、誤魔化すように踵を返す。

 何か言い残すのかと思いきや、それすらなくどこかへ消えてしまう。

 命拾いした……と考えて良いのだろうか。

 少なくとも殺意と呼べるものは感じられなかった。まるで別人のようだった少女を訝しみながらも高嶋は言われた通り、友奈たちの加勢に行く。

 赤嶺の状態の確認は優先事項だが、バーテックスを倒すことのほうが最優先事項だ。

 ポケットからスマホを取り出し、勇者アプリを起動させる。

 高嶋の手に手甲はない。

 西暦の時代に置いてきてしまった。若葉は常に生大刀を持ち歩いていた。心掛けは見上げたものではあるものの、高嶋はそれを真似しようとは思わなかった。

 若葉の抱く考えを否定するつもりはない。そういう価値観を否定するのはこっちの価値観を押し付けるだけになってしまう。

 高嶋は、日常と非日常をきちんと区別したい。

 だからせめて、普通の女子中学生としてあれる時は、精一杯満喫する。

 それが導いた今の状況を後悔はしない。

 赤嶺に、すでに私達の御役目は終わったと言ってしまった。でも、赤嶺は鏑矢として少女と戦い、勝った。

 ああ、そうだ。

 今だけは、大昔に終えた御役目を呼び起こそう。

 初代勇者の力、ここに見せよう。

 

「私は――勇者になる!!」

 

 ◆

 

 大赦本部、その地下深くに眠る歴代勇者の武器たち。

 八つのモノリスが鎮座し、それらの膝下で長年の眠りにつく武器たち。

 そのうちの一つ、赤い手甲が己が主の呼び声に応えんと振動を始める。たとえ大昔に死んだ英雄であろうと、武器は声の主をきちんと理解し、力を貸すべく深い眠りから覚め、そして桜色の花弁となって消えた。

 

 ◆

 

 両の拳が熱くなるのを感じた。

 ――三百年の時を経て、初代勇者がここに覇権を示す。

 勇者装束を纏った高嶋は、自身の腕に懐かしい手甲がガッチリと装備されていることを確認した。

 この手甲は、確かに自分のものだ。しかし違和感を覚えるのは、恐ろしいほど新品同様であることだ。自分で手入れは欠かさなかったが、どうしても微小な擦り傷などは残ってしまっていた。

 なのにこの美しさは、長い間、誰かが高嶋たちが戦った歴史を維持しようと頑張ってくれていた賜物だろう。

 ……高嶋の戦意が跳ね上がる。

 地面を蹴る。

 高く飛翔した高嶋は、初めて見る奇怪な化け物に目を剥く。

 

「なにあれ……?」

 

 白いブヨブヨしたバーテックスは多数確認できるが、それらよりも遥かに巨大なバーテックスが十二体、悠然と浮遊している。

 強い。

 直感的に悟った。

 恐らく、通常状態ではまず太刀打ちできない。切り札を利用してようやく土俵に上がることを許されるレベル。

 そして見る。

 ふたつの口腔を持ったバーテックスの前に、友奈の姿がある。何が起こったのかはわからないが、身動きが取れない。そこにトドメを刺そうと今にも矢を放とうとしている。

 

「させないッ!」

 

 鮮やかに友奈の前に着地した高嶋は、拳に力を入れながらすぐさまジャンプする。

 そして、叫んだ。

 

「――来い、一目連!」

 

 神樹の概念記録にアクセス。

 該当精霊、ヒット。

 現在、一目連は凍結中。

 よって憑依不可。

 牛鬼による絶対権限の行使。

 凍結解除。

 さらに牛鬼によるフィルタリングにより、憑依時に発生する魂の穢れを浄化。

 憑依、実行。

 

 凄まじい風が吹き荒れ、高嶋の身を包む。装束も暴風を想起させるデザインへと変化し、風を纏った拳が射手座の横顎に炸裂した。

 ズパン! という衝撃音が轟き、放たれた矢の軌道が逸れた。それは友奈の頬を掠め、根を穿ちながら遠方へと飛んでいった。

 確かな感触が伝わるが、高嶋は歯噛みした。ダメージというダメージを与えられているような感覚がしない。

 一筋縄ではいかないなと考えながら高嶋は友奈の前に舞い戻った。

 

「大丈夫、結城ちゃん!」

 

「高嶋、ちゃん……?」

 

 掠れ声で友奈は名前を呼んだ。

 まるで生き別れた家族を見るような目で高嶋を見上げる。

 

「え、なんで……死んだはずじゃ……?」

 

「あー。いや、それはちょっと私にも……あはは」

 

「良かった……生きていてくれて、良かった……! それと、助けてくれてありがとう……!」

 

 射手座の追撃の矢が飛んでくる。

 動けない友奈の手を取った高嶋は急いでその場から離脱し、風と樹の側に着地する。

 ふたりに目を丸くされるが、今はそれに反応する時間は取れない。

 

「高嶋あんた……!」

 

 風が感極まった面持ちで高嶋を迎える。

 

「ただいま。風さん、樹ちゃん」

 

 力なく倒れこんだ友奈を優しく介抱しつつ、言葉を続ける。

 

「色々言いたいことはあると思うけど、それはあとにお願いします」

 

 どう考えても只事ではない何かが起こっているのは高嶋にも容易にわかった。あれだけのバーテックスが一斉に攻めてきているのだから。

 有無を言わさない物言いに、風と樹は頭を縦に振る。

 

「少し休んでて、結城ちゃん」

 

「でも私が休んだら……」

 

「いいから。いっぱい頑張ったんでしょ? だから今は休んで、落ち着いたら加勢に来て」

 

 友奈の長い睫毛が上下に震え、ゆっくりと頷いた。

 

「うん……わかった」

 

 樹に友奈の介抱を任せた高嶋は、先に戦いに行った東郷と夏凛、園子に加勢すべく移動を始める。

 

「風さん、状況は?」

 

「最悪ね。バーテックスの第二陣があれなんだけど、第一陣で満開してしまったからもうあいつらを倒す力はあんまり残ってない。それにパッと見だけど、第二陣のほうが強い。こんなの言いたくないけど、このままだったら負けるわ」

 

「もう一回満開したらいいんじゃないですか?」

 

 風は頭を振った。

 

「ううん、できないの。前なら連続使用はできたんだけど、アプデが入ったから満開は一回しかできない。数体なら満開なしでもたぶん倒せるけど、数が数だからね。一度にすべてを相手にできないから、もし一体でも神樹様に到達されたら……」

 

 その先は言わなかった。

 しかし言わなくてもわかるわよね? と目で訴えかけてくる。

 見れば、夏凛と園子、後方の東郷の奮闘でなんとか防衛ラインの突破は防げているが、次の瞬間に呆気なく突破されてもおかしくない。

 それほどひっ迫した状況だ。しかしジリジリとラインが下がっているし、三人とも十二体のバーテックスに牽制をして侵攻を遅らせるので手一杯だ。

 さらに雑魚敵の対処も重なって、怒涛の防衛戦になっている。とても攻勢には出られない。

 圧倒的に数で負けている。しばらくすると樹と友奈も戦線に復帰できるだろうが、だからといってとても逆転できるとは思えない。

 神世紀の勇者は、これほど壮絶な戦闘を繰り広げていたのか……!

 西暦とはまるで比べ物にならない。恐らくあの巨躯を誇るバーテックスたちは、初戦で見た雑魚敵の集合体、そこからさらに進化した最終バージョンなのだろう。

 たぶん今の高嶋では勝てない。一目連では火力不足だ。まだ一度も宿したことはないが、三大悪妖怪のひとつ、酒呑童子の力でならなんとか勝てるかもしれない。

 それほどにも実力差は開いている。

 しかし神世紀の勇者たちは、通常状態で最終進化型とやり合っている。

 自分がこの襲来の原因の一端を担っているというのに、なんて無力なのだ。

 どうすればいい。愚直に戦場に飛び込めば、間違いなく高嶋は足手まといにしかならない。

 嘆く時間があるのなら、戦う方法を探すんだ。

 懸命に高嶋は考え始める。

 一目連の力で暴風を起こす?

 これは駄目だ。規模が小さいから一体しか動きを封じられない。それだけではなく、下手をすると味方の邪魔をしてしまいかねない。

 ならば酒呑童子だ。酒呑童子なら、火力の根本的な上昇が見込める。個の力は風たちと同レベルになるだろう。

 だがそれでも足りない。

 数の差は覆らない――。

 瞬間。

 電撃の如き思考が爆ぜ、回路を伝い、頭の中でひとつの最適解が導き出された。

 

 ――ある。

 風たちにはできなくて、高嶋にしかできないことが、ある。

 

 高嶋にバーテックスを倒すことは難しい。でも、風たちがそれをやってくれる。

 だから、その助けとなればいいのだ。

 高嶋は真剣な口調で尋ねた。

 

「数を抜きにして、風さんたちはあの敵を倒すことはできるんですか?」

 

 質問の意図がわからなかったが、高嶋の顔を見て、すぐに風は表情を改めた。

 

「たぶんできるわ。間違いなく私達の知ってるネームドより強いけど、できる。……いや。絶対に倒してみせる」

 

「わかりました。行ってください、風さん。すぐに合流します」

 

 有効打になる何かを保っているのだと悟った風は、ただ頷き、高嶋を信じて戦場へ飛び込む。

 そこから少し離れた所に着地すると、一目連の憑依を解除した。

 そしてすぐさま別の精霊への呼びかけを始める。

 今必要なのは、単純な戦力ではない。

 数だ。

 あれだけのバーテックスを食い止められる、数の力が必要だ。

 それを発揮できる精霊を、高嶋はひとつだけ知っている。

 

 神樹の概念記録にアクセス。

 該当精霊、ヒット。

 現在、該当精霊は凍結中。

 よって憑依不可。

 牛鬼による絶対権限の行使。

 凍結解除。

 該当精霊と高嶋友奈の内包する心象が異なるため、憑依不可。

 

「ッ……!」

 

 駄目か……!

 そもそもこの試みが的外れであることは重々承知している。

 勇者システム、その奥の手である切り札についての説明で、自身と合致しない精霊は何をしようと憑依させることはできないと聞いている。

 しかし今はどうしてもこの精霊の力が必要なのだ。

 だから――諦めない!

 なぜ生き返った!

 知らない!

 誰に生き返らせてもらった!

 それも知らない!

 でも、高嶋友奈がここに生きているということは、誰かに生きろ(・・・・・・)と背中を押された、何よりの証拠!!

 なら、できることは精一杯やるべきだ!

 再び高嶋は強く、強く念じながらアクセスを重ねた。

 

 神樹の概念記録にアクセス。

 該当精霊、ヒット。

 該当精霊と高嶋友奈の内包する心象が異なるため、憑依不可。

 

 どうしても、駄目なのか……?

 どれだけ足掻いてもできないことがあるくらい、高嶋にもわかっている。

 努力は必ず報われるなんて言葉が幻想であることも知っている。西暦の時代では誰もが必死に生き抜こうとしていた。でも、それらは呆気なくバーテックスたちに蹂躙され、壊され、殺された。空を見ることに恐怖を抱くようになった人々を見て、力になれない己の無力をどれだけ嘆いたことか。

 だから、せめて手の届く範囲では絶対に誰にも傷ついてほしくないと願った。そんなささやかな願いすら叶えてもらえないのか……?

 諦めに傾き始めた高嶋の思考が、時間を一瞬、停止させた。

 色も音も消え失せた世界で、あることが起きた。

 まず、身体の、あるいは心の奥底から発生した小さな灯火が、凍り始めようとしていた意識に焔を伸ばそうとする様を自覚した。

 胸の中央から、両肩、両脚を通り、それぞれの指先へと。強張った身体を、燃えるような熱さが包んだ。

 そして気づく。これは自分が発したものではない。我が身に宿る誰か(・・)が発した熱だ。

 そして再び、時間が動き出した。

 いつの間にか、どこからか発生した光の奔流が高嶋の周囲へと流れ込んできていた。よく見れば、右脇に光の粒子が集結し、何かの形を成そうとしていた。

 徐々に光のシルエットは色を獲得し、黒光りする長い柄となり、地面から上へと伸びていく。

 それに右手を伸ばして触れた瞬間、これ以上ない熱が宿った。

 高嶋に触れられたことにより、さらに形成する速度が上がった。

 不意に、懐かしさと嬉しさが胸の中で爆発する。

 この『武器』の主人を、一瞬で理解した。

 不意に、後ろから誰かに抱きしめられる温かい感触が広がった。顔を横に振ったが、誰もいない。

 でも、確実に誰かに抱きしめられている。

 不思議と嫌な気持ちにはならなかった。寧ろ心地よくて、どうしてかは自分でもわからないままあの人の名前を呼びそうになった。

 高嶋の耳元で、誰かが囁きかけた。

 それを聞いた高嶋は強張った頬を綻ばせ、「ありがとう」と呟いた。

 そして、必ず成功するという確信とともに、もう一度だけ神樹にアクセスした。

 

 未登録英霊記録、起動。

 英霊記録名、TKG。

 TKGの干渉により、高嶋友奈に適した心象への該当精霊の一時的な変換、完了。

 憑依、可能。

 さらに牛鬼によるフィルタリングにより、憑依時に発生する魂の穢れを浄化。

 憑依、実行。

 

「力を貸して――」

 

 これは、あの人の専属精霊。

 本来ならば、絶対に不可能な憑依。

 西暦に帰っても二度と同じことはできないだろう。

 感謝を。たくさんの、感謝を。

 力強く柄を握りしめる。

 ひとりじゃない。高嶋を優しく抱きしめてくれているあの人がいるから、絶対に大丈夫。

 そして今にも溢れんばかりの想いを込め、高嶋はこの身に降ろす精霊の名を高々と吼えた。

 

「――七人御先!!」

 

【挿絵表示】

 




――高嶋さんのためなら、喜んで力を貸すわ

【Infomation】※Danger!
▼牛鬼の消滅により、大満開の可能性、絶望的
▼征矢に謀反の可能性あり

それではまた次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。