もてもてドクター   作:雅裕

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がおーすき。くっつけ。


スワイヤー

近頃、やたらとスワイヤーを見かける

 

食堂で一人カウンターで昼食を取っていれば、どこに座っても隣を見たら彼女が座ってるし、

誰かと会話すれば視線を感じ、あたりをつけて呼んでみたら本当に廊下の角からおそるおそる出てきたりするし、

毎朝、いつも執務室を出る時間になると、その扉の前で左へ右へスワイヤーがそわそわうろついていて、ドアスコープの存在に気づいていないのか、自分が部屋を出ると、目の前を横切るように歩き出し、声をかけると"偶然ね"とでも言いたげな表情で返してくる

 

スワイヤーは暇なのかな、なぜしきりに自分に話しかけるんだろう、恨みを買った覚えはないんだけどな

もっともこの身が五体満足で、あの同僚と同じ目に合っていないということが、それがただの杞憂という証明だけど

 

「探したわよ、こんなところにいたのね」

「あ、あー...スワイヤーか」

「冷たいわね、アタシの前ではもっと楽しそうな顔をしてちょうだい?」

「どこかで聞いたことあるセリフだな」

 

廊下の光が差し込んで、スワイヤーは部屋の電気をつけると、積まれた段ボールを避けていつものように隣に座ってきた

 

「ところで、なんで物置部屋にいるのかしら?」

「...執務室は見た?あの大量に積まれた書類を0時までに読了して論文を出せだって」

「あれは確かに頭が痛くなるけど、逃げてもしょうがないでしょう?」

「つらい。あんなの人間がやる物じゃないって」

「もう...それ、私以外の人には絶対に言わないでよね。そうね、アタシも手伝うから、一緒に終わらせて、そのあとは...ふ、ふたりでディナーでもいかがかしら?」

「いいけど...それまでに終わるかなぁ」

 

あのまま姉とでも名乗る勢いで、マセた顔で頭を撫でられた。指先でそっとさすられるから、少しくすぐったい

正直、背中を押されたからってよしやるか、と着手できるようなものでもないが、時間は有限よと言って引っ張るスワイヤーが思ったより強かった。伊達にあの鉄球振り回してない

 

 

 

「つぎはぎだらけだったけどあれでよかったのかな」

「細かい事は気にしない、怒られたら書き直すまでよ」

「まあそれまでの時間はできたからいっか。手伝ってくれてありがとうね」

「これくらいお安い御用よ、もっとアタシを頼っていいかんね!

 

提出して、流れで廊下をぶらぶら、体をほぐすために散策する。最初の話通りなら二人でどこか行く予定ではあったけど、いったん間が開くと、なかなかその話を切り出せずにいた

結果なにしてるかといえば、どこに向かうわけでもなく、町に行って、交差点を渡って、数ブロックをクルクル回ってる

 

無言にこそはならないけど、特別おどけた面白話を持ってるわけではないから、自然と身の上話や、世間話だったり、スワイヤーは犬猿の同僚の愚痴だったり。脊椎反射でしゃべって、時々話を聞いて、聞こえなくてもそれらしく返事して、隣で歩く彼女は妙に楽しそう

あまり、仕事以外の面の彼女は見ない気がするけど、意外と、下世話な方なのかな。

 

ふと気づいたときに、道を変えて、今度は左折してみよう、右折してみよう、人通りが多くなる、いい加減疲れる

一つ歩きながら、視界の端にふと看板のネオンが目に入り、立ち止まる

 

「あれ、この店新しくなってる」

「ここ?新しくなったというより、まったく別のレストランになったのよ」

「そうなのか、ここらへん詳しいの?」

「よくパトロールでここ通るのよ」

 

結局、予約制だからと、その二つ交差点を渡った向こうにある、俗に言うところの、龍門の料理店らしい所にした

普通この手のものは、何々店といった代名詞が自然と付く、付けられると思ったけど、ここは一向にそういった名称が思いつかない。龍門店?

入ってみると、どこからともなく、酒とその店特有のタレの匂いが鼻をつつく

 

「それにしても、あんまりよね」

「ん、何が?」

「今日の書類について」

「ああ、抗議したことないこともないけどね」

「ねぇもしも辛かったら、ろ」

「転職の予定はないよ」

「あ、アンタ一人ならアタシがやしなえ」

「辞職の予定もないよ」

「もう!つれないわね」

 

数えてないけど、これと似た会話は度々してる。最初はやんわり断ってたけど、どう返しても同じと気づくと、返事はどんどん適当になっていく

 

「ねぇ、アンタってアタシのこと、どう思う?」

「すごい急だな、どうしたの」

「い、いえ...なんとなく、そういうのってアンタの口からきいたことないと思って」

「信頼...してるけど?」

「そうじゃなくて!こう...色々あるじゃない?」

 

スワイヤーの口からも聞いた覚えがない。

質問の意味がわからず、あやふやに流して、結局答えられないで終わった

つれづれに流されたままの質問と思っていたものが、想像よりも長く糸を引いて

次の夜に再びこの話はぶり返された

 

横長な机で、案の定返却されたファイルの加筆修正

任されて隣で退屈気なスワイヤーは自分を見て、あくび一つかいて手持ち無沙汰に呼びかけてきた

 

「うん?」

「昨日の返事、ま、まだ聞いてないわよ...?」

「そんなに気になる?」

「き、興味があるの」

「前言ったと思うけど」

「違う、もっと別の言い方で...」

「好きか嫌いか、とか?」

「そ、そうよ!そんなところ」

「そりゃ嫌いならここにいてもらってないし、好きだけど」

「それって、どういう面での...?」

「どういう面って、どういう?」

「このわからず屋!」

 

そう言って、今にもビンタしてきそうな勢いで、机に顔をうずくまってしまった。

怒らせたかな、しばらくそのままで、会釈代わりに一度頭に触れて、作業を続けた

 

視界の端で動くのが見えて、呼ばれて手元から横に振り返ると、文字通り目と鼻の先に彼女がいて、それほど怖くないが、よくありがちなびっくり演出のようで、思わず身を引くと、その隙間さも詰め寄られた。どうしたかと聞いて何も答えない、代わりに

「アンタがどう思ってるかわからないけど、あ...アタシはアンタの事が...」と

眉間にしわを寄せるような真剣な表情で、自分が変に話しかけても口息がかかりそうで、そのままじっとした

唇がまもなく触れるところで、時間が止まり、ブツンと我に返ったのかみるみる顔が赤く膨らんで彼女はそそくさと席を立つ

 

「で、では!来週の休日に期待しますわ!それまでに考えて頂戴な!」

「ちょっと待って考えるってなにを」

 

ドアが閉まって、声になりかけの絶叫が聞こえた

 

 

 

「だからどうしようかって」「...相手に言わせようとするミススワイヤーもそうですが、それに気づかないドクターもドクターですね。小官が言うべき事ではないですが」「なんでそんな呆れるの?」




クーリングオフしてないからあとで随所修正するかもよ

一週間くらいチマチマ書いてたけど結局勢いで一夜漬けした方が徹頭徹尾でいいや

ちなみにもうすぐ(7月1日)スワイヤーさんの誕生日ですよ
次回はホシグマ(の予定)、スワイヤーも出るよ。なるべく...がんばる

えらべ

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