もてもてドクター   作:雅裕

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強めな妄想小話。お久しぶり、また再開します。


スカイフレア

紙が自然発火するのは華氏451度、摂氏にして意外に高く220度ほど

 

「あなた、そこをどいてくださいます?」

 

さては長い時間寝たのか意識は朦朧としていて、五体満足を確認するために手を動かすと、右手からペンが落ちた。元々仮眠を取るつもりだったのだろうか

ああ、やらかしてしまったな。そう思うと窓から刺す光から顔を逸らして目を閉じた

 

「そう。なら失礼」

 

突如、膝の少し上、太ももの辺りに何かが乗った気がした。

何事かと首を伸ばして下の方を見ると、自分の上で、スカイフレアはまるでそこに居るのが当然かのように、凛とした顔で自分が夜なべして書いた論書に目を通していた

 

「ど、どうして...」

「なにかしら?ん、ここ漢字間違えてるわよ」

「どうしてこんな所に座ってるんだよ!」

 

ささっと足を引っこ抜いて、座りなおり改めて聞いた

 

「あなたがどかないからでしょう?ここはわたくしの席よ」

「そう決まった覚えはないし、というか起こしてよ」

「これで起きたのだからいいじゃない」

 

雑。それ以上にらしくない

それはそうと誤字の確認は後回しに、部屋中を見渡して時計を確かめる

時折、いや頻繁にに時計の位置が変わる。メリットは壁にかつて時計が飾ってあったであろう痕跡が残らないこと、デメリットは言わずもがな

幸い今日も昨日と変わらない位置にあった。

昼は越したか、ランチタイムは過ぎてるし、なにか用意しよう

 

「どこにいくのかしら?」

「ちょっとご飯でも作ろうかなって」

「なんならわたくしが作って差し上げましょうか?」

「結構です」

 

実際彼女の手料理には思い返すだけで鳥肌がよだつような出来事の方が多い

以前、体調を崩したとき、親切にも看病してもらったことがある

基本問題はなかったが、そこで出された粥は、むしろシュルレアリスムとして語られるある種の芸術品の方が近いものがあった

皿と"黒く蠢く何か"。正直食べようとすれば1d3/1d20(正気度ロール)は免れないが、自信満々に差し出されたのを断ってひんしゅくも買いたくないからと、断腸の思いで嚥下した

 

やたらとその体調不良が長引いてしばらくしたあと、めったにそんな機会はないが、話の流れから偶然、スカイフレアの料理を拝むことができた

だし巻き卵を電子レンジで創造しようとするし、コンロを教えても"そんなもの邪道ですわ"と、卵をフライパンに入れてファイヤー、ブレイズ、インフェルノ

目が痛いほどの烈火が天井に届きそうになくらいになり、急いで止めた。

その件もあり、自分もさしてうまい方でもないが手取り足取り、猫の手ひき肉包丁たまねぎみじん切り。最近はチャーハンと称して白米を炒めたものが出された。これは大きな進歩だ、ほんとうに、本当に

 

「結構上達してるんですのよ?」

「成長は認める。えらいぞ」

「当然ですわ。もっと言ってちょうだい」

 

さあどいたどいた、とでもいわんばかりにキッチンに行こうとするスカイフレアを通せんぼして、食べたのは結局引き出しに入れてあった、インスタントカップ麺。

以前、食べたことがないからと、食べさせたことがあるが、微妙な反応だった。別に"こんなにおいしい物初めて食べましたわ!"などと期待していたわけではないが、少し拍子抜け。スカイフレアは思うほど平べったくはなかったわけだ

 

同じように、ジャンクフードに連れて行ったこともある

別にわざわざあの微妙な反応から何かが変わる事を期待するほど自分は酔狂でもない

"あなたはどこにいくにしても危なっかしいのよ"と言ってきかないし本人が、いないものと思って行動してと言うから、本当にそのようにしたのみ

その割には、しきりに話しかけてくる。

 

購買部に通えば腕を引っ張って、自分にはよくわからないアンティーク類やイヤリングを買いたがり

町に赴けば、人込みが苦手なのか異常に声は小さくなって、後ろをことさらにぴったりついてくるようになり

いつのまにか後ろか横にいるのが当然のようになって、でかいポンチョが持ち物の大半を占めるようになった

 

「とりあえず注文しましたが...なんですのこれ」

「...知らない?」

「み、見たことくらいはありますわ!で、なんですのこれ」

「ほら、ハンバーグみたいなのにパンを挟んだものだよ。君が持ってるのはパンではなく米だけど」

「ふーん...」

 

一足先に食べ始めた自分を真似て同じように、だが手掴みに対して抵抗ありげに食べて、やっぱり微妙な顔だった。思えばわからないという顔の方が近しいかもしれない

 

「うん、おいしいわね」

「本当に?」

「食べれなくはないわ」

 

そいつはおいしい物に対するものの言い方じゃない

 

「お世辞できたんだ...」

「おいしいのは本心よ?」

「どっち...」

 

彼女はむっと、少し拗ねた。

 

最後にスープを飲み干して、席を立ちがった。相変わらずスープ最後の方がしょっぱい

適当に片付け、それで誤字はどこだと座る彼女の隣に行くと、ありとあらゆる荒を改善点まで含めて指摘され、最後に漢字間違いについて触れられた

うん、あとにしよう。と再び自分の席に座り、彼女はそのままその論書を読み返している

 

「そういえば、いつからここにいたの?」

「ちょうどお昼くらいよ。食堂に中々来ないから呼びに来たのよ」

「なんでそれで起こさなかったのさ」

 

少し前まではたたき起こされ、お叱りを受けるところだったのに

 

「知りませんわ。気づいたらあんな時間だったんですもの」

「そんなのは時間の無駄ではなかったの?」

「確かに無駄よ。...でもすべてがじゃないわ」

 

そうか。とペンを握りなおすが、ほどなくしてその意図がつかめず、頭がハテナでいっぱいに埋められる

小首をかしげて、どういうこと?と問えば彼女はむっとしてから、言葉を探って間を置いた

 

「では何が無駄ではないって?」

 

確かに反応した声が聞こえたはずが、一向に返事が返ってこない。ふと目を向けると言葉を考えてるのか視線があっちこっち向いて落ち着かない

 

「無駄じゃないとは言ってないわよ。ただ...わ、わからないかしら?」

 

気付くと彼女は、手に持った書類で口元を隠して、その手元にあたった光がかすかに歪んでいる

 

「どうしても言わなければダメかしら...?」

「差し支えなければね」

 

「だ..だってこう言ってしまったらまるで...まるでわたくしが」

「よ、要するにおそらく」

 

非常ベルはここぞとばかりに鳴り始める




こんなものでいいかしら、見当がつきませんわ。
あら、ホシグマじゃなくてごめんなさいね、
どうあがいてもうまくいかなかったのでまた修行し直します

えらべ

  • ホシグマ
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  • ラップランド
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